観劇+αの日々
Kバレエ 海賊(2015/06/20)
メドーラ:ニーナ・アナニアシヴィリ
コンラッド:遅沢佑介
アリ:井澤諒
グルナーラ:小林美奈
ランケデム:石橋奨也
ビルバント:ニコライ・ヴィユウジャーニン
サイードパシャ:スチュアート・キャシディ
神奈川県民ホール
★★★★☆

 一度やってみたかった、「Kバレエ全公演観劇」をやってみました。前回の「海賊」は7回見てるので6回なら問題ないだろうと思ってのことでした。結果的には、これだけ見てもまだ映画が楽しみなくらいには楽しめました。

 最後となったこの回は最後だから全体を見る・・・という目標を立てたもののそれが実践されていないのはいつものこと。兼城さんが物乞いと海賊にいるのに、いったいほかのどこを見ろと・・・。
 そんな感じだったにも係わらず、全体的におもしろいと感じたのでやはりよい公演だったのだと思います。部分部分見ていくとちょっとした取りこぼしのようなものもあり、「今までの集大成」と言うほどまとまりのあるものではなくとも、確かに楽しい公演でした。

 ニーナさんについては今回が一番よかったと思います。登場シーンあたりがどうもちぐはぐだったのがきれいにまとまっており、力任せという感じをあまり受けませんでした。そのほかKバレエ特有の振り付け部分の音の取り方もスムーズになってました。美奈さんのお姉さんぶりも相変わらず。彼女も踊りがどんどん安定してきた気がします。
 そしてやはりこの二人は陽と陰、太陽と月のように思えます。そんな二人の性質の違いがこの物語にぴったりで、明らかな「年齢の壁」があるにも係わらず、この二人の姉妹というのは悪くないと思ってしまうのです。
 遅沢さんのコンラッドは相変わらず堅実な踊り。ソロもびっくりするほど軽やかでした。助けてくれたメドーラの手の温もりにふれて・・・というところも、手の中からすり抜けていくメドーラの手の温もりが感じられるかのよう。まっすぐに一目惚れして幸せです、ではなくてどこか切なさを残しているのが遅沢さんらしいコンラッドでした。メドーラとの踊りもまとまってきて、特に洞窟でのパドドゥがなんか付け焼き刃だったのがちゃんと暖かみのあるものになっていて安心しました。
 井澤さんのアリ、見た目がたまに橋本アリを思い出させますが、彼よりもっとコンラッドの後ろに控えている感じ。コンラッドの忠臣という雰囲気がとても強く、本当にあらすじ通りのアリです。演技がとても細やかで、たとえば漂着してから目覚めるまでの時間の、途切れ途切れの意識をなんとかつかもうとしているかのような指の動きや、意気消沈しているコンラッドをなんとか励まそうとしているところ、そしてメドーラとの出会いを見守っているところなど、大変印象的でした。踊りはソロもよかったのですが、2幕の冒頭の海賊たちと踊るところが迫力はあるけど軽やかで気に入りました。
 ニコライさんのビルバントも相変わらず好調。踊りはそんなに細やかでもないのに、決して力押しでもないバランスはさすが。鉄砲の踊りで女奴隷をどちらかというと侍らせる雰囲気でしたがちょっとしたやりとりが楽しかったです(蘭さんとだと踊りながらなんとなく駆け引きを楽しんでいる感じでした)。一歩先が見えているようなビルバントで、冒頭の漂着シーンで「戦えない」と判断するのが早い(これはアリも同じ)。コンラッドほどでなくともある程度部下たちから信頼を得ているのは確実で、その存在感が彼の手下として見えているのは二人でも、もっと大きな組織立ったなにかを感じることができました。女奴隷たちやメドーラのことをどちらかと言えば宝石のように「戦利品」ととらえていることが伺え、コンラッドとの間にある埋めきれない溝を感じました。
 頭がいいのは石橋さんのランケデムも同じ。「ビジネス」と言いたくなるくらいしっかり働いていました。最後にメドーラをパシャに届けに行くシーンも「お買い上げいただいたから納品まできっちり」とでも考えているかのよう。パシャを上客だと理解してるけど、金を出すまでは特別ひいきにすることもなく、ちゃんと守らせるルールは守らせている。「商品」と「客」に使い分ける顔もはっきりしている。鞭の音でグルナーラたちを踊らせるシーンが印象的でした。伊坂さんのお金持ちとのやりとりから、「客」からのリクエストに応えて場を盛り上げているのがはっきりわかりました。それにしても美奈さんと石橋さんの組み合わせはいいですね!松岡さんと輪島さん以来、グルナーラとランケデムが踊ってるのは「パドドゥ」だと感じさせる組み合わせでした。

 兼城さんは物乞いか海賊のどちらかと思ったらまさかの両方。大変うれしかったのですがおかげさまで目が全く足りませんでした。物乞いは女物乞いをかわいがっている感じが、すごく兄妹っぽくて好きです。背中が大変柔らかい方ですので、見慣れたはずの物乞いおきまりの踊りも足がとんでもない角度であがっておりました。パシャが登場するあたりのちょっとしたソロはまるで空中で止まっているかのよう。ぴょこぴょこ飛び回る姿が大変かわいく、また、女物乞いとふたり強かに生きてきたんだろうと思える雰囲気が好きです。海賊の男たち、前回は若干当てはまってない感じもしましたが、今回はきれいにはまっていた気がします。ぴったりきっちり踊ってるけど上品になりすぎないところが素敵。舞台にいるときはちょこちょこ見ていたのですが、鉄砲の踊りで同じくビルバントだった杉野さんがビルバントの踊りをまねしているところに女奴隷よろしく寄り添って気持ち悪がられていたのがおかしかったです(こういうところまで見ているから目が足りない)。
 お金持ち→海賊の伊坂さんは自由そのもの。奴隷市場でも楽しかったですし、洞窟のシーンも楽しかった。舞台の端の方にいても愉快そうに踊るように歩いているその姿だけで楽しい。ビルバントとの手下としてのふてぶてしさ、鉄砲の踊りの色気と、どのシーンも外れのないおもしろさでした。役固定だった篠宮さんも楽しかったです。奴隷市場でのあの場慣れした落ち着いた雰囲気はいったいなんなんだろう・・・。石橋さんと一緒の時はビルバントと部下としてふたりは対等という感じでしたが、伊坂さんとだと伊坂さんの方が若干格上という感じです。伊坂さんほどのふてぶてしさはなくとも、なんとなく底知れない感じのする存在感が好きです。コンラッドに襲いかかるあたりの踊りはふたりとも軽やかで無駄に見応えがあります。
 杉野さんの酔っぱらいぶりがいろいろでおもしろかったとか、池本さんは海賊なんだか王子なんだかたまにわからなくなるけどシェネが美しくて見ほれたとか・・・そんな風にあちこち見てるので目が足りません。
 オダリスクはファーストキャストでなかったのがちょっと残念でした。きれいにまとまってるけど、やはり千秋楽はファーストキャストを見たかったなというのと、蘭さんはやはり鉄砲の踊りが見たかったなというのがあります。

 さて、終盤で印象的だったのはメドーラでした。海賊たちの諍いにおびえていたメドーラでしたが、コンラッドがビルバントを殺すときその姿をずっと見ていました。アリが殺されたせいか悲しみに暮れているグルナーラはその様子を見ていないのに、メドーラはずっと見ていました。その姿がとても心に残りました。
 アリの弔いをするとき、メドーラはコンラッドを見ていません。一人海を眺めている。コンラッドはアリの羽根を海に返し、自分の海賊帽は甲板に捨てる。何度見てもそう感じました。ビルバントを殺したことを見ていたこと、アリを弔うところを見ていなかったこと、そのふたつが私の中でとても印象的で、彼女にならコンラッドを任せられると感じました。コンラッドと出会ったときの彼女でなく、今の彼女なら。メドーラがなにか劇的に変わったわけではないのですが、でもやはりこの物語の中で彼女は変わっていて、なんの憂いもなく旅立っていく二人を見ることができました。

 決して全体が見れていたわけではないのに、終わってみるとメインストーリーがおもしろいという大変不思議な公演でした。細かいところも大変おもしろい作品ですので見ることができるならまだまだ見たいと思えました。
 振り返ってみると3キャストとも雰囲気が違い、なにがどうなるかと思っていたキャスティングがうまくはまっていた気がします。メインキャストも脇もおもしろく、ああ、Kバレエの「海賊」はおもしろいなあとずっと思っていました。引き続き映画館での上映が楽しみです。
ゆず
2015/06/28(Sun) 02:20:23

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