観劇+αの日々
■Kバレエ くるみ割り人形(2014/12/20) ソワレ
マリー姫:浅野真由香
くるみ割り人形/王子:伊坂文月
ドロッセルマイヤー:杉野慧
クララ:河合有里子
雪の女王:中村春奈
雪の王:池本祥真
★★★☆
ミスの目につく公演でした。例えばドロッセルマイヤーの金の杖の出現失敗(こんなミス見たことない)。例えばチーズ砲弾の空中崩壊(壊れたのではなくきれいに真っ二つになったので何が起こったか謎)。例えば中国人形女性の青い布が取れなくって1回退場(見たことないわけではないけどあまりない)。一つ一つのミスに関連性はないと思います。けれどなんと言ったらいいのかな。舞台って、なにかわからないけどすべてがうまく回って予想以上に面白くなることってあります。それの逆パターンを見ているようでした。全てがちぐはぐでかみ合ってなくって、だからミスを引き寄せた。そんな公演でした。
もともと、キャスト発表時点から不安の付きまとうキャストではありました。でも昨年の伊坂さんのくるみ割り王子は良かったし、杉野さんのドロッセルマイヤーもよかった。浅野さんはなんとなくイメージがありませんが、悪いイメージもない。うまくかみ合わばきっと面白くなる…と思ったのですが、かみ合わなかったんです。
ちょっとショックだったのが杉野さん。マチネの紳士があまり楽しそうでなくって、アラビアに疲れが見えて不安だったのですが、その不安が的中したような感じです。はっきり彼らしくないと思ったのが2幕のクララとのパドドゥ。踊れてるのに、不安そうなんです。前方席だから見えてしまったのかもしれませんが、なんとなくおっかなびっくり踊ってるのが伝わってくる。杉野さんの、特にドロッセルマイヤーは物おじせず堂々としたところが大変魅力的で、踊りの不足なんて感じさせない勢いが魅力的で、そういう魅力が全部なくなっていた踊りでした。しかも踊れてなくって不安そうなのではなく、2年目の役で、ちゃんと踊れているのに不安そうという、一番まずい状況でした。また、クララも「悲しい」「不安」は表現できているのですが、「楽しい」が全く伝わってきませんでした。メイクも悪かったのかもしれません。不安そうなクララとドロッセルマイヤーのパドドゥは本来のものと全く異なり、好きなシーンなのにさっぱり心が躍りませんでした。…ふたりともちゃんと踊れていたのですが…。
困ったのが浅野さんのマリー姫。まるで「金平糖」のようでした。マリー姫の、呪いにかけられて助けを求める姿や、呪いが解け、愛する人と結ばれる喜び、そういうのを感じず、ただ微笑みの美しい女性でした。でも、この「くるみ割り人形」にはちゃんと物語がなくては成り立ちません。そして浅野さん自身、「金平糖」のヴァリエーションを美しく踊るだけで見惚れるというほどにはうまくないということも、分かってしまいました。まるで発表会のように自分に課せられた踊りを全うする…Kバレエでこういう踊りを見るのはすごく久しぶりだと思います。
伊坂さんのくるみ割り王子はちゃんとくるみ割り王子でした。兵隊たちを指揮する指揮官であり、呪いにかけられた青年。本来の姿を失っていることに苦しみ、愛する女性の苦しみを嘆き助けを求め、呪いが解けたことを全身で喜ぶ。踊りもしっかりしているし、サポートも丁寧。でも、バレエって一人で頑張ってもどうにもならないし、彼自身、そうやって一人で中心に出ていくタイプでもないし、そこまで圧倒的な実力があるわけでもない。丁寧に役作りをして物語を作るタイプの方だと思うので、彼のいいところは失ってないのはわかるけど、それが生かされてない公演でした。本当に良かったんです。くるみ割り人形と王子の踊りわけもはっきりしていたし、王子に戻った時なんとなくはっと見惚れる品の良さがある。サポートは出すぎることなく引きすぎることもなく、ちゃんと支えてる。ソロは派手ではありませんが、踊る喜びが生きている喜びと言わんばかりの華やかさがある。クララとの別れも暖かさと別れに対するもの悲しさがあり…本当に良かったんです。でも、一人で踊ってる以上に、一人で演技してるのってさみしいですよね…そんな公演でした。
色々ぐだぐだだった中で、「パーフェクト」と言いたくなった雪の女王と王!特に池本さんの王!素晴らしいです!主役を重ねてきたせいか、風格が増してきました。威厳を備えつつも、相変わらず柔軟性の高い美しいアラベスク。空中での姿勢がいちいち美しいですし、あれだけバタバタした曲なのに音に追われている感じがせずに音の中で自由に踊ってる。春奈さんも細やかな足さばきであの難度の高い振付をこなしていました。堂々とした踊りで、本当に二人とも見ていて気持ちよかったです。
人形たちのキャストはそんなにマチネとは変わらず。席の関係でマチネはあまり見えなかった井澤さんの花のワルツはいいところもあり悪いところもあり。ソロがすっごくきれいに決まっているところがあったり、若干サポートが不安だったり…。王子の時はいいところが開花するといいなあと思っております。
公演前から絶対にあると信じ込んで楽しみにしていた石橋さんのアラビア!彼はどこか暗い影がある雰囲気があると信じているので楽しみにしていましたが、楽しかったです。井上さんとニコライさんがパートナーで、石橋さんは愛人といった感じでしょうか?二人の男を従わせる美しい女王の井上さん、隣にいるのは自分がふさわしいと信じて疑ってないニコライさんと、一歩下がってるけれど食いついている感じの石橋さんと言ったらいいのか…面白い雰囲気でした。
酒匂さんはフリッツも中国人形も絶好調だったり、蘭さんは光でも放ってるんじゃないかというほど目を引いたり、福田さんのスペインがとっても楽しそうで幸せだったり、湊さんは子供も粉雪も可愛かったり、荒蒔さんの子供が可愛かったり、篠宮さんの花のワルツが鉄壁だったり、加瀬さんのフランスがちょっといい感じだったり、和田さんは子供もロシアもなかなか良かったり、坂本さんは意外と大きいけどロシアでは派手に飛んでいるなあと思ったり。いろいろ言いましたが、結局は好きなバレエ団の「くるみ」です。楽しかったです。
ゆず
2014/12/21(Sun) 02:17:20
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