観劇+αの日々
■Kバレエ くるみ割り人形(2014/12/22) ソワレ
マリー姫:神戸里奈
くるみ割り人形/王子:井澤諒
ドロッセルマイヤー:スチュアート・キャシディ
クララ:荒蒔礼子
雪の女王:中村春奈
雪の王:池本祥真
★★★★☆
井澤さんの主演&王子デビューの公演。昨年のシンデレラが玉突き事故(としか言いようが…)で流れてしまったため、本当に待ちに待ったというべき公演でした。とてもよかった…というか、ようやく、ここまできてようやく見られた、Kバレエらしい楽しい公演でした。劇場を出た時のふわふわした感覚、幸福感、これがあってこそ「くるみ」です。
今回のくるみ、友人が見に行きたいと言ったのでキャストを上から下までじっと眺めていた時期がありました。この公演、とても魅力的でした。井澤さんの王子が不安ではありますが、それ以外に不安要素はなし。神戸さんは最近本当に光り輝いてますし、キャシディさんは鉄壁。荒蒔さんは3年目ですから大きく外すことはないでしょうし、中村池本コンビの雪の国はそれだけでも見る価値があるというもの。ただ、年末の平日の昼間という、誰が見に行けるんだという極悪日程だったためにお勧めできなかったんですけどねえ…(私は一年に一度の閑散期のため、有給たたきつけ)。これを見てほしかったなあとちょっと途方にくれたりもしました。
なにがよかったって、神戸さんのマリー姫が本当に良かった!ニキヤはまあ普通でしたが、ジュリエット、カルメンと、今年の彼女は輝きが違いました。贅沢をいえばもうちょっとドラマが欲しかったなあと思いましたが、「くるみ割り人形」に「ロミオとジュリエット」「カルメン」並みのドラマを求めるのが無茶というものです。もちろん、今の彼女ならもうちょっと掘り下げられる気がするのですが…。そう期待してしまうほど、特別な輝きを持ったマリー姫でした。ソロが幸せにあふれているのは当たり前。1幕で登場したときの幻のような存在感、クララの冒険物語の始まりにふさわしい雰囲気がありました。呪いがとけた後の喜びもきらめくようだったし、クララにやさしく語りかけているのがまた印象的でした。細かいところですが、最後のクララとのお別れのシーンで、ちゃんと別れを悲しんでいてくれたのがうれしかったです。その別れ方に、「助けてくれてありがとう、会えてよかった」という気持ちもこもっていて、クララと同じように彼女と別れるのがさみしかったです。
井澤さんの王子、多分今まで見た井澤さんで一番よかったです。踊り自身は本当に良かった!マチネに池本さんの鉄壁ともいえる踊りを見ているのに、見劣りがしないほど。柔軟性と足の力は池本さんのほうが上かもしれませんが、回転は井澤さんのほうが軸がきれいなんじゃないかと思うほど。ほっそりとした足に白いタイツがよく似合っていますし、足のラインが本当にきれい。全体的に少年のような細い体型なのにリフトで不安に感じるところもない。若干サポートで細かい取りこぼしがあった気がしましたが、昨日の遅沢さんの失敗に比べたらかわいいもの。今まではらはらしていたのが申し訳ないくらい、素敵な王子でした。物語としてもクララが思わず助けたくなるような哀れさあり、夢の中の王子のような美しさあり、クララへのあたたかな心遣いあり。「指揮官」というと首をかしげますが、王家に仕え、姫と結ばれる…という物語がしっくりくる王子でした。
パートナーシップ…というところまではあと一息でしたが、なんとなくお互いの雰囲気が合っていたのがうれしかったです。予想通り、あたたかな雰囲気のお二人。派手に技術を誇示するタイプではなく、丁寧な踊りと丁寧な物語。ゆっくりゆっくりその世界に浸っていくような心地よさでした。クララと同じ目線で幸せな気持ちでふたりのことを見ていました。だから最後、手を振り遠くに消えていく姿を、別れたくないと思いながらずっと見ていました。とても楽しかったです。
細かいキャストはマチネと似ていました。マチネと同じ方々も調子を上げていて、そういう意味でもいい公演でした。
最近若手男性の顔が見分けられるようになってしまったために楽しくて仕方ないパーティーの招待客紳士たち。福田さん、篠宮さん、杉野さん、石橋さんがずらっと並んで踊る姿は目の保養以外のなんでもありませんでした(後ろに栗山さん。あと一人は西口さん?)。こういう端役ばっかり見てるのもなあと思いつつ、やはりどんな役でも舞台の上にいると好調不調が分かるなあと思ってしまい、結局目が離せなくなってます…。…初日の杉野さんが微妙に話の輪に入れず寂しそうにぽつんとしていたのが忘れられない…(今回はとても楽しそうで良かった)。クリスマスプレゼントのシーンや人形劇のシーン、いろんな人が楽しそうに会話していて、そのにぎやかさがとても好きです。どこまでアドリブでどこまで決めているのかと思ってみていましたが、酔っ払い石橋紳士は今回は「飲めないけどすすめられて飲んだらべろんべろん」という演技でした。しっかり者の山田夫人との相性も相変わらず素晴らしく、大変目の保養でした。フリッツと長島少年の小芝居もちょっと違ってました。クララからくるみ割り人形を取り上げる時の二人のやり取りが明らかに違って面白かったです。
矢野さんのフリッツですが、いきなり出てきたのに大変楽しいです。本当に楽しそうに踊ってるし、踊りの中でクララにお辞儀するあたりのかわいらしい紳士ぶりも素敵。いたずらっ子で長島少年と色々やってるのも楽しく、ドロッセルマイヤーにネズミを捕られてしょんぼり→返してもらって大はしゃぎの流れもとてもかわいらしい。調べてみたら今年入団…というか今年スクールを卒業したみたいです、パフォーマンスのプログラムにいました。いきなり出てきたのに驚きの安定感で驚きました。ちょっと先が楽しみな方です。ちなみに少年の中では和田少年も気になりました。いたずらっ子で生き生き踊ってるのがかわいいし、帰り際に大人しく母親にコートを着せられて帽子をかぶせられてるのがまたかわいい。女性は安定の山田夫人と湊少女以外にようやく西成夫人が見分けられました。なんとなくアラビアも踊れそうな雰囲気の方でした(花のワルツコールドにもいらっしゃいますが)。
ねずみの王様吉田さんは栗山さんに比べると残念ながらちょっと普通。品格のある栗山さんと違ってなんとなくねずみの粗暴さを表そうとしてる気がするのですが、ちょっとまだ迫力不足かなあ。登場シーンは自分の目でなく被り物のほうの目で見ている感じがしてそこは好きなのですが。ネズミ二匹はなんとなく小生意気な方とそれ以外という見分け方をしています。チーズ弾、今日は完璧でした。なにより井澤王子が「クララをかばわねば!」と焦って動いたせいで被弾したのがよくわかりましたし、そのあときれいにチーズがネズミ陣営に転がって行った。チーズ、なかなか回収が難しいのでこれは良かったと思っていたら、なんとはしゃぎすぎたネズミがチーズをいつの間にか階段セットの下に落としてしまい、ネズミ退場の際に舞台上に置き忘れ!そのあと無事に回収できましたが、周りが常連さんばかりだったので回収が終わるまでみんなそわそわしてました(苦笑)。
中村池本雪の王国ペアは本当に素晴らしいです。さすがにお二人ともお疲れなのか若干取りこぼしはありましたが…。空中でさらに飛び上がるような動きに、あれだけテンポが速いのにふりを追うだけでなくちゃんとニュアンスまで拾う池本さんの踊りの素晴らしさ。舞台中央での跳躍は高さもありながら貫録もあり、何度見ても見惚れます。女性の踊りはどうしても男性よりも地味になりますが、間違いなく堅実にうまい春奈さんの踊り。足さばきの細やかさも素晴らしいですが、ラストの手の位置を変えたフェッテが美しく決まっていました。堂々とした踊り、今日も素晴らしかったです。
人形はちょっと変更あり。
花のワルツの中村篠宮ペアが鉄壁過ぎました。本当に華やかで品のある雰囲気。篠宮さんはあの難度の高い振付を踊りながらもとてもさわやかで驚かされます。春奈さんはいつも通り、雰囲気ぴったりの踊り。益子さん、マチネはどうなるかと思いましたが、ソワレのほうが雰囲気が落ち着いた気がしました。こちらのほうが好きです。
スペインはキャストは同じなのに雰囲気が一変しました。ようやく4人がちゃんと踊ってるように見えました!女性の華やかさ、明るくきりっとした男性の踊り。メリハリがすごくそろっていて、見ていて気持ちよかったです。余談ですが、このメンバーだと男性の背の高い方は栗山さん…と思いましたが、西口さんも背が高く、背の高さでは全く見分けがつきませんでした。
ロシアは坂元さんが絶好調!息をのむ高さを飛んでいました。それに矢野さんがつられてしまったのか、彼のほうは終盤ちょっと失速。ただ、失敗はしつつも最後は笑顔でまとめてくれたのでなんとなく「凄いもの見た」気分は壊れませんでした。(矢野さんのこういうところがすごいと思う)。
書く場所のない長島さん。パーティーの少年は兼城さんの代役だと勝手に思ってます…(去年兼城さんがそこにいたのを覚えてる)。兵隊のほうは彼の本来の役だと思います。舞台の中で何度か兵隊が目立つところ、2幕が分かりやすいですがネズミ軍団の襲来を伝えたり、花のワルツを仕切ってたりするのは基本的に彼だと分かりました。なんのことはないのですがなんとなく目を引きます。少年もなんだかんだ言っていつも面白いことしてますし。湊フランス人形との踊りも大変かわいらしく、実はいなくてはならない存在だと気付きました。
ドロッセルマイヤーとクララも今日が一番よかったと思います。キャシディさんについてはほんのちょっとの雰囲気の違いかと思います。荒蒔さんは調子を上げていると思います。踊りがどんどん軽やかになるし、感情も豊かになる。人形劇やくるみ割り人形がねずみの王様にやられたとき、心の底から心配する姿を見ていると、ドロッセルマイヤーに選ばれるにふさわしい少女だと思えます。
とってもいい公演でした。そう、Kバレエのくるみは、こうあってほしいのです。ようやく見たいものが見られた公演でした。
ゆず
2014/12/23(Tue) 01:47:46
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