観劇+αの日々
Kバレエ ラ・バヤデール(2016/11/18)マチネ
ニキヤ:矢内千夏
ソロル:山本雅也
ガムザッディ:中村春奈
ブロンズ・アイドル:篠宮佑一

東京文化会館
★★★☆

 踊り的には破綻がないけれど、淡々と進んでいく、Kバレエとしては珍しいバランスでした。

 矢内さんも山本さんも踊りはとても丁寧。ただ、どうしても感情表現が淡泊で物足りない。特にソロルは踊りは本当にサポートも含めきれいにまとまっていたのですが、結局彼はなにを考えていたか分かりづらく、そのために物語が薄く感じました。ちょっともったいなかったです。
 矢内さんは相変わらずすらりと長い手足で、特に足を前後に開くジャンプは足がきれいに伸びていて大変好きです。最初はもう少し華やかさがほしいかと思いましたが、楚々とした感じがまだ年若いせかんから隔絶された世界にいる巫女という雰囲気を感じさせ、だんだん魅力的に思えました。ソロルとの若々しい…子供っぽいと言ってしまってもいい恋、ガムザッティとのやり取りで自分の中にあるソロルへの強い思いに気づき、そしてその攻撃性におそれを抱く。印象的だったのは3場での花籠の踊り。ソロルの愛を信じ、その愛を抱いてそのまま寺院で巫女として生きていくように見えました。ソロルからの愛は疑っていないと思いますが、その悲しげな表情が、どこか彼の婚約を祝っているように見えました。彼は私を愛してくれている、でも私は巫女であるから結ばれることはない運命、仕方がないと、愛されている幸福と、ソロルとの別れの悲しさの狭間にいるような感じで、とても魅力的でした。だからこそ、蛇の毒で死の際にいるとき、大僧正の申し出を断る…というよりそんなこと聞こえてもいない、全く関係ないという悲しさを感じました。
 ガムザッティの春奈さんは登場時はまさに愛されて育ったお姫様。若々しくおおらかで朗らかで、幸福感にあふれている。すべてのものを持っていると理解しているからこそ、朗らかでいられる。そんなまさにお姫様。だから自分の夫となるべき人が自分の知らないところで情熱的な誓いをたてていたことに怒った…という感じでしょうか。ニキヤに対し、この世界のものはすべて自分が持っていると示すような迫力がありました。悪女に目覚めた…というか支配者階級の人間に目覚めたような雰囲気。最後にニキヤを殺すと決意をするシーンはかわいらしいお姫様ではなく、王者のような威厳すら感じました。そして、このシーンの華やかで美しいガムザッティと、どちらかといえば素朴だけど清楚な美しさを持ったニキヤ…という対比は大変美しかったです。
 どちらかといえばソロルへの愛情というより、求めるものは全て手にいれないと気がすまない…というようなガムザッティだったと思います。グランパドドゥが若干バラバラに踊ってる雰囲気だったのが残念。ガムザッティのソロは本当に軽やかに華やかに踊ってくださって見ほれました。

 細々としたこと。
 演出はほぼ変更なしだと思いますが、最後が少し変わったかな。ブロンズアイドルは最後にセンターで踊り終わってましたが、舞台下手にはけました。その後のニキヤとソロルの踊りも若干違った気がします。この場面、以前は布を使った演出があり、坂はその白い布で覆われていたと思いましたが、それがなくなりスモークになっていました。ヴェールを持ったニキヤが最初に出てきてソロルが追いかけてくる。最後は坂の上のニキヤとソロル…とここは変わりませんでした。
 篠宮さんのブロンズアイドルはやはり踊りのむずかしさを少し感じてしまった気がしました。でも、昂った感情を鎮める…と言うのか、凹凸のあるものを平らにならしていくような感じがして、ラストシーンにうまくつながった気がします。途中文句を言いつつもここでブロンズアイドルで一呼吸おいてラストの二人を見ると「良かったねえ」と思えてしまうあたりがずるいです。
 マグダヴェヤは兼城さん。足が骨に飛ぶための筋肉をこすりつけたようで、なにひとつ無駄なもののない細さで、見ていてむしろ恐ろしい。空中で飛んでさらにまた上に飛ぶような、重力を感じさせない跳躍。ひょいひょいと軽やかに動く中に柔軟性も感じられて、いつものように見惚れました。マグダヴェヤはほとんど表情も見えず、演技もおびえてるようなものが中心です。それでも個性が伝わってくるのがなんとも不思議です。なんとなく地べたに座ってる時にちっちゃくまとまってる感じのマグダヴェヤで、それもあってかどちらかといえば物語を深く考えると暗い役割なのにどこか口当たりの軽さがありました。ソロルにアヘンを勧める時も持ち前の軽さでひょいひょい勧めている感じがあって、逆に修行が苦しいから苦行僧ってアヘン常用者だろうかだろうかとかなんとか考えてしまいましたよ、ええ。動きの激しい踊りですがバタバタ騒がしいことなく、ずいぶんまとまっていたと思います。1回しか見られなかったのが少し残念でした。
 そのほかの苦行僧、本田さん、和田さん、坂元さんは見分けがつくものの、他は全く分からず。太鼓の踊りのメンバーもおそらく苦行僧と同じかと思いつつも、本田さん以外見分けがつかず。というかなぜわかる本田さん。

 そのほか細々はソワレ以降の公演で。

 さて、最終日終わりまして、昇格のお知らせがありました。順団員の宇多さんが昇格されたとのことで、一人喜んでいます。以前横浜のスクールパフォーマンスの順団員の公演で見た時に、なんとなく凛々しい踊りをする方でずっと気になっていたのです(顔の覚えが悪い私でもすぐ覚えられたきりっとした感じの美人さん)。この公演でも扇を持った人たちの中にいたり、影の王国でも最初の群舞の一列目にいらっしゃいました。エキゾチックな雰囲気の似合う方だったので扇を持った姿は踊りも含め予想通り大変魅力的だったのですが、影の王国の静かな白い姿も美しかったです。いつか正団員になってほしいなあと思っていましたので、いきなりの昇格に驚きました。くるみ割り人形でも見られるものと期待しています(パーティーの時の夫人にいると私がうれしい)。
ゆず
2016/11/20(Sun) 22:50:16

名前:
題名:
コメント:

[TOP]
(c)FLEUGELz
Netmania