観劇+αの日々
Kバレエ 海賊(2017/05/27) マチネ
メドーラ:矢内千夏
コンラッド:杉野慧
アリ:益子倭
グルナーラ:浅野真由香
ランケデム:篠宮佑一
ビルバント:兼城将

★★★★☆
オーチャードホール

 勢いがあり、なにか足りないところがあるような気がしつつもそれが気にならない、よい公演でした。
 まずよいなあと思ったのがグルナーラメドーラ姉妹。しっかり者でみんなの中心にいるグルナーラと天真爛漫でどこかおっとりしたメドーラ。みんなのお姉さん、みんなの妹という雰囲気がとても良かった。
 コンラッドはどこか育ちのいい雰囲気。人をまとめる器量は感じるけど、荒っぽさはそんなに感じない。キャシディさんほどではありませんが、どちらかといえば元王族より。根っからの悪人という感じがしないので、メドーラが彼になにか惹かれ恐れずにその手を取ったのが不思議ではない。二人が出会ったとき、なにか物語が動いたような、これからなにかが始まるかのようなそんな雰囲気があったのがとても良かった。
 アリは部下というよりは友人に近い感じ。それこそ生まれたときの身分の違いでコンラッドに仕えているけど、年頃も近く、お互い気の置けない友人という感じでした。ほっそりとした体にシャープな踊りでなかなか魅力的。朗らかな二人に対して、若干不穏な空気を漂わせているのがビルバント。ちょっとしたマイムでも、なにかこいつはやらかすんじゃないかというような緊張感がある。(書くところがないんでここに書きますが、冒頭の嵐のところで天気が変わったことを察知する動きがよかったなあと)
 どちらかというと口当たり軽めだったところにやってくるランケデムは問答無用の悪人。ランケデムはコメディよりのタイプと根っから悪人タイプがいますが、明らかに後者。なにかぞっとする薄暗さがありつつも、彼生来の明るさがあり、暗くなりすぎず、でも悪人で程良いバランス。
 というわけで、幕あきから大変楽しい公演でした。
 奴隷市場はランケデムの独壇場。切れのある踊りにどこか人を見下したような雰囲気。こじきズを見下してたり、パシャに見初められなかった女たちをぞんざいに扱ったり、女好きなところは見せずグルナーラを物のように扱ったり、そういう悪人なところがはまるはまる。パシャの相手をしているときも比較的悪人面で、パシャだけを商売相手と見ているのか、そのほかの金持ちには若干冷ややか。そんな強面の彼がパシャから金を受け取ったとき、まるで狂ったように笑うところとか本当にぞっとした。そしてそんな「悪人」タイプのランケデムだから、そういう影をいっさい感じない、からっとあかるいアリの存在が映える。くそ生意気な小僧に翻弄される姿は大変楽しかったです。勢いがある二人の丁々発止はとても楽しかった。
 とにかくランケデムが楽しかったのであまり周りが見れてないのですが、河合さんと矢野さんの乞食ペアはよかったです。河合さんかわいいし、矢野さんは程良くこきたない悪人で、でもほどよくかわいくてよかった。
 周りにいるお金持ちさんたちは井澤さん(だまされる)、石橋さん、山本さん、栗山さん。相変わらず石橋さんのお金持ちさんは手の位置が謎でぽやぽやしていてお気に入り。メドーラ登場後、せっせとランケデムを買収しようとして失敗しておりました(さらにその後見張りを買収しようとして失敗)。

 2幕の海賊たちのアジトは問答無用で楽しいですね!魅力的な男性ダンサーが多いバレエ団ですので、本当に勢いがすばらしい。今回はメインの役にいない井澤さんもいて満足。以前に比べてがっちりした体つきなりつつも、踊りの切れの鋭さは相変わらず。久しぶりにメインの役で見たいです。
 メインの海賊たちの個性もここではっきりしてきます。コンラッドはやはり生まれの良さがにじみ出る。人の良さ、それから育ちの良さ。キャシディさんの系統で、でも彼ほど存在感があるわけではないから彼以上に飛ぶ勢いのある、杉野さんらしいコンラッド。ちょっと海賊の首領だと思うと泥臭さが足りない気はするのですが、メドーラが惹かれるには程良いバランス。どちらかというと悪ふざけをしている男の子たちという雰囲気に近いかなあ。
 それはアリも同じで、全く血生臭さを感じない、まっすぐで素直なアリ。恐れていた「熊川アリ好きだー!」という雰囲気はほとんどなく、コンラッドと悪ふざけをしているのが楽しいとか、そっち寄り。身分や立場の違いはありつつも、コンラッドもアリも一緒に生きていることがとても楽しそうで、よい組み合わせでした。益子さんの踊りは結構勢い任せという感じがしていたのですが、今日は体力的に余裕があるのか切れよくシャープな踊りになっていて驚きました。よかったです。
 ビルバントは人の話を聞かないタイプ。自分と同じ意見の相手には同調するけど、誰かの意見に耳を貸すとかそんなことはないだろうなあ。コンラッドが手を焼いてるのが理解できます。若干短絡的なのは相変わらずでした。鉄砲の踊りの細かい足裁きはとても楽しかったのです。周りの海賊たちが足を踏みならしているときの、床をなめるような足の動きがとても好き。ただ、ちょっと「足をむやみにあげすぎるな」と言われてるのかアラベスクが妙に低いことがあったのが気になったかなあ。もうちょっと女性とのバランスが考えられたら美しいと思うのですが。
 グランパドトロワは本当に華やかで楽しかった!益子さんは切れ味鋭く絶好調、杉野さんの踊りはどうしても基本に忠実であればあるほど美しく見えるキャシディさんの踊りに負けているところはありつつも勢いがあってよい。そして矢内さんの踊りは安定感があって技術的にしっかりしていてとてもよかった。軽いんだけどくるくるよく回るグランフェッテは見事の一言です。良いものをみた!と問答無用で思えたあたり、さすがKバレエの海賊。
 鷹揚な感じの杉野コンラッドが女奴隷たちを解放するのはとても自然だしとても気前がいいのは彼らしい。まあ、そこでビルバントと衝突するのはとても自然。自分の言い分が通らなかったビルバントが逆らうのは当然で、でもコンラッドはそんなビルバントの気質を見抜いた上で見捨てず部下にしていた気がしました。しかし、短絡的なビルバントだったので、割と頭の良さそうなランケデムを解放したら、そりゃランケデムの方が勝つよなあとしみじみ思いました。
 それにしても、杉野さんは悪役を演じると本当に20代前半か!?と思う色気なんですが、女性が絡むと健康的になるというか。グランパドトロワの時にも感じましたが、メドーラとのパドドゥではっきり感じました。しっとり色っぽいという雰囲気にならず、ほのぼのふんわりした雰囲気になるのがこの二人らしいなあと思いました。
 パシャの夢の場面、振り付け変わったのでしょうか?今回から?女性が徐々に出てくるあたりも含め、以前より「パシャの手をすり抜けていく幻」という雰囲気が強くなった気がします。グルナーラの嘆きの踊りも変わったかしら。
 そして連れ戻されるメドーラですが、どこかパシャが本当にメドーラに心惹かれてるんじゃないかと思える緊張感がありました。それにしても矢内さんのメドーラと浅野さんのグルナーラは姉妹感があって良いです。
 最後の海賊の襲撃。相変わらず短絡的なビルバントなので、ランケデムを始末してやれやれこれで無事に元に戻ると思ってる雰囲気。コンラッドが自分に対して手を下すなんてことはないと信じていて、そういう甘さが兼城ビルバントらしいし、そういう甘さが杉野コンラッドっぽいなあと思いました。常々、アリを撃った後のビルバントがなぜ単発式の銃をコンラッドに向けたか謎だったのですが、このビルバントなら自分の勝利を確信して、手元の銃にもう弾が入ってないことを忘れるだろうなあという、妙な説得力がありました。必死でコンラッドを守ろうとするアリの美しさと、ビルバントも含め部下として守ってきたコンラッドのつめの甘さと、それからそんなコンラッドに甘えてい他のに最後に覆されるビルバントの惨めさと。きれいにまとまったいいラストでした。
 どちらかといえば朗らかなコンラッドなので、アリがいなくなった今、男同士でやんちゃするでもない、別の生き方があるだろうと思えました。そしてメドーラと二人、別の世界でいきる方が彼らしいと、そんな風に感じられるラストでした。

 細かいこと。篠宮ランケデムはかなり悪人でしたが、全体のバランスが変わったらコメディ寄りにもなると思うのでちょっと見てみたいです。鉄砲の踊りそのほか二人は堀内さんと栗山さん。栗山さんは案の定の安定感。栗山さんはちょっと意外でした。アジトでのソロはやはり美奈さんが美しかったです。

 最後はゆるゆるとでしたが私の見える範囲ではほぼスタンディング。若手公演らしい、いい舞台でした。
ゆず
2017/05/27(Sat) 22:34:32

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