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  Kバレエ ロミオとジュリエット(2014/06/13)

ジュリエット:荒井祐子
ロミオ:宮尾俊太郎
マキューシオ:福田昂平
ベンヴォーリオ:栗山廉
ティボルト:杉野慧
ロザライン:浅野真由香
パリス:ニコライ・ヴィユウジャーニン

Bunkamura オーチャードホール
★★★☆

 Kバレエの若手公演はうまい具合に化学反応が起こらないとつらいということを如実に感じた公演でした・・・。くるみ、バヤデールといい具合に化学反応が起きた作品が続いてたから忘れてましたが、こういう、テンションがあがらず過ぎていってしまう公演があったことを、久しぶりに思い出しました・・・。
 先にまずかったことを言ってしまうと、荒井さんと宮尾さんはやっぱり相性が悪いと思います。再演に引き続き2回目だから・・・と思いましたが、残念ながらさっぱり心動かされませんでした。荒井さんのジュリエットはKバレエ初演で一番最初に見たジュリエットですが、本当に感動的で大好きですし、宮尾さんもうまく作品にはまればいいということをバヤデールで感じました。お互いの呼吸が伝わってこないと言うか・・・それぞれ以前よりうまくなっているのが分かるのに、バラバラの世界で踊っているようにさえ感じました。一目惚れの運命の恋は「なんで恋してるの?」と思わせちゃだめなんですよね・・・。荒井さんについてはその手の不満を感じたことはありませんし、宮尾さんもバヤデールでガムザッティと「運命の出会い」をしていました。そのとき感じた胸の高鳴りを今回は感じることができず、そして二人の若い故の疾走が物語の要となる作品では、二人の間の愛情が感じられなければほかがどんなにもり立ててもおもしろくないものだとしみじみ感じました。

 全体的に若手公演というせいもあってか、序盤が固く、さらに言えば主演カップルがあまり場を暖められず、なにが原因と言いきれないですが、盛り上がりに欠ける公演でした。今回が初役という人も多く、そういえば退団者多かったなあと久しぶりに思い出してしまいました。
 そんな中ですごく印象的だったのがまず井上さん。1幕の冒頭はこんな大きな役が付いたのは初めてであろう栗山ヴェンヴォーリオ(とても細身で端正、そして宮尾さん以上と思われる長身!)とこれまた抜擢と言っていい福田マキューシオががちがちに固く、まず盛り上がれませんでした。Kバレエのダンサーって飛んで跳ねてがうまいという以上に、舞台の上でいきる、演じる喜びを知っていると思うのですが、それが感じられない。若い、ある意味盛り上げ役と言っていい二人にそれを感じなくてどうしようかと思っていたのですが、そんな中見える井上さんの踊りがなんとも鮮烈なこと!一挙手一投足が流れ星のように強い光を放っており、しかし動きが正確で勢いがあり、思わず目がいきました。勝ち気でどこかコケティッシュ、みんなを引っ張って行けそうな姉御肌でもあり、大変魅力的でした。
 お目当ての杉野ティボルト、よかったです。2幕がとてもよかったので1幕を思うとまだ調整中だったかなと思うのですが、出てきた瞬間からぶち切れた目をしており、なんというか、作品に入れているという安心感がありました。若いなあと感じるところありつつ、帽子が似合わないなあと思うところはありつつ、でも臆すことなく舞台の真ん中にいる姿、切れてても品格を失わない所作がとても気に入りました。なんとなく剣の強いティボルト・・・という感じがしました。
 マキューシオベンヴォーリオはどこから・・・と言うわけでもありませんが、マキューシオが引っ張っていく形で徐々に作品に入っていった気がします。福田さんのマキューシオは品のよい端正さがあるけれどひょうひょうとつかみ所がなくそして女好き。2幕でいろんな娘さんたちと仲良くしていましたが、それが絵になるというかほほえましいというか、不思議な雰囲気です。ロミオの恋わずらいを心配したりベンヴォーリオを引っ張っていったり、若干兄貴風吹かせているところも好印象。後半になるほど足取りも軽くなり、ひょうひょうと生きていることそのものが楽しそう。不思議とあの奇抜な色の衣装も似合っており、最初はどうなるかと思いましたがとても好きになりました。ベンヴォーリオも話が進むにつれて個性が見えてきます。細身の長身ということで一瞬弟分に見えないのですが、どこかおっとりしている雰囲気が末っ子気質という雰囲気を感じました。踊りもさわやかというか軽やかと言うか・・・もうちょっと足先までコントロールできてる方が好みですが、あの長身なので今は厳しいかなあとも思います。先々楽しみです。
 もともとティボルト大好き人間なのでティボルトとマキューシオの決闘が結構クライマックスになりがちなのですが、今回は間違いなくそのパターンでした。まず酔っぱらいティボルトがすてき。多分、キャピュレット卿にこってりとしぼられたのでしょう。完全に前後不覚であり、けれど品格を失っておらず、ちゃんと色気も伴っているのに驚きました。うーん、このバランス、どうやって覚えたのかしら・・・。踊りにも安定感があり、ファンとして一安心です。マキューシオとの決闘シーンはお互いの力の加減を知ってるからこそと言うか・・・全く手加減なしという決闘で迫力がありました。このシーンはティボルトが弱い、マキューシオが強いどちらかを強く感じるのですが、今回は後者でした。1幕からティボルトは結構強いように思えたのですが、ひょうひょうとしていてマキューシオの腕前はそれ以上。ギャップ萌えと言いますか、迫力満点でなおかつティボルトを軽やかに手玉に取るマキューシオがとても魅力的に見えた瞬間でした。
 マキューシオの死はティボルトも見たいしマキューシオも見たいしで視線がさまよっておりましてなんとも言いがたいのですが・・・ティボルトの方を結構見ていたのですが、「自業自得だ」と言わんばかりの表情には空恐ろしさを感じます。目のはしにマキューシオが入る程度だったのですが、血が流れているという演技、程良く力の抜けた踊りが魅力的で、思わず見入っていました。
 ・・・と、このあとロミオとティボルトの決闘になるわけですが、今回一番印象的だったのはこのあたりでした。そのあと、あまり心に残らなかったのが残念です・・・。
 マンダリンボーイズ(勝手に命名)は皆さん良いバネを持っているので視線が定まらず大変でした、目が足りない・・・。とりあえず池本さんが相変わらず端正でつま先がきれいなのと、兼城さんが軽やかだったのが確認できたので満足します。2幕のモンタギューボーイズ(勝手に命名)の中に浜崎さんがいた気がします(キャスト表がないので自信なし)。足のラインがとってもきれいになってました。
 女性については大好きな日向さんがジュリエットの友人しか出ず、この役がいまいち好きになれないのでテンションが低いままです。浅野さんのロザラインは悪かったところはないのですが、でも印象が薄のも事実・・・。
 演出として大きな変更はなかったと思います。なにせ再演をあまり見てないので印象が薄のでよく分かりません。
 というわけで若干テンションいまいちですが、始まりましたロミジュリ月間、今回もちょっと通います。

Kバレエ
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(2014/06/13(Fri) 23:31:41)





  Kバレエ関係色々

Kバレエ関係についてちょっと情報がでましたので遅ればせながら参考までに。

カルメン
「新作」とのことなので新演出なのでしょう。
予想外の作品で、驚きました。
キャストは以下の通り。
ドン・ホセ:熊川哲也、宮尾俊太郎、福田昂平、遅沢佑介
カルメン:白石あゆ美 、佐々部佳代、神戸里奈、浅川紫織、ロベルタ・マルケス

入団、退団情報
うっすら気づいてはおりましたが、ビャンバさんは退団とのこと。
とても好きな方だったので、寂しいです。

【カンパニーダンサー 合格】
小林 美奈
中西 夏未
涌田 美紀
和田 瞬

【準団員 合格】
青柳 風香
片岡 沙樹
直田 夏美
盧 文伊
宇多 優里香

【入団】
First Artist
篠宮 佑一

【退団】
First Soloist
ビャンバ・バットボルト

Artist
池田 理沙子
栗村 萌絵


Kバレエ
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(2014/05/19(Mon) 23:20:52)





  Kバレエ ラ・バヤデール(2014/03/24 ソワレ)

ニキヤ:荒井祐子
ソロル:熊川哲也
ガムザッティ:白石あゆ美

★★★★☆
オーチャードホール

 とっても楽しいバヤデールもいよいよ最後になりました。ファーストキャストの公演、ちょっと不思議なバランスでした。
 驚いたことに、哲也のソロルが結構控えめ。どーんと俺様オーラ全開でくるかと思ったのですが、意外なくらい控えめでした。それが意図的なものか必然的なものかはわかりませんが、バランスとしてはこれでよかったと思っています。そして、本当に丁寧に踊って、演じていると感じました。「海賊」の冒頭でも感じた感覚です。一挙手一投足、とても丁寧に動かしている。「運命の作品」という、繰り返し聞いたあの言葉は嘘ではないのだと感じさせられました。

 この公演、舞台は女性二人のものでした。ニキヤとガムザッティの印象が大変強いです。二人とも控えめでけなげなのに、物語の印象に残ったのはそんな二人のいじらしさでした。
 荒井さんのニキヤはとても優しかった。巫女として心を殺して役目を果たそうとしているのに、大僧正が苦行僧達に水を与えることを許すとほっと安堵するのがわかりました。巫女として人生を全うしようと思っているように見える女性で、ソロルとの逢瀬は幸薄い彼女の人生の中で、唯一の幸せにも思えました。けれど、どこかその愛が一瞬のものであると知っているように思えました。ソロルと踊っているときだけは人間に戻れているかのように朗らかなのに、けれどこの時この場での幸せ以上のものを求めていないように思えました。ソロルがこの瞬間、ニキヤを心から愛していたのは間違いないでしょう。けれどソロルはそれ以上先のことなんてなにも考えていなかった。ニキヤもそれは分かっていたけど、それでいいと割り切って一瞬の喜びに身を浸している気がしました。
 ガムザッティはかわいかった、けなげでいじらしくて切なかった・・・。というような言葉をガムザッティに対して並べることになるとは思いませんでした。みんなに愛され、箱入りで育った女性。とても控えめでどちらかというと恥ずかしがり。ソロルの肖像画に一目惚れして、「こんな素敵な方と結婚できるの?私が。本当に?」と戸惑うみたい。そして初めて出会ったときも「本当に私みたいな娘でいいの?」と問いかけるみたい。ソロルが自分のことをにくからず思ってくれることに気づいて、ちょっとためらいがちに笑うのが大変かわいらしい。ソロルも、どちらかといえば一目惚れという感じでした。あの高圧的なラジャの娘がこんなにかわいらしかったら、そりゃ驚くでしょう。
 そんなニキヤとガムザッティだったので、二人の諍いのシーンがむしろ悲しかった。ガムザッティにとってはようやく出会えた運命の人で、どうしても離したくない。けれどニキヤがとても素敵な女性だと思って、彼女に負けてしまう、でもソロルは失いたくないといういじらしいまでの必死さがある気がしました。ニキヤは、本来自分の気持ちをそこまで主張するように思えませんでした。戦士であるソロルの、巫女である自分への愛はいつか消えるものだと知っているように思えました。けれど、ガムザッティとソロルが結婚すると聞かされ、ニキヤはムキになって反論する。聖なる炎の前で誓ってくれたのだと、たぶんそうやって主張したことがないでしょうに、ガムザッティに宣言する。そしてそんな風にラジャの娘に刃向かう、感情を露わにする、ソロルに固執する自分に驚いているようでした。ナイフでガムザッティを傷つけようとした自分に、そんな強い感情を持っていることに戸惑っているようにさえ見えました。二人ともどちらといえば控えめなのに、ただそればかりは譲れないと争う姿は、女の恐ろしさというより悲しさを表しているように見えました。
 このソロルはどちらかといえばガムザッティ寄りだったと思います。ニキヤのことを思い出しても、彼女のことを忘れようとする。巫女との一時の気まぐれだったと思っているように。そう自分に言い聞かせているみたいに。そんな姿を見て、ガムザッティは戸惑います。やはり自分みたいな女では彼につりあわないのではないかと、不安そうにしている姿がいじらしい。なんというか、けなげで愛らしい姿が決して押しつけがましくないのが白石さんのすごいところだと思いました。
 このニキヤ、多分自分から身を引いたと思います。それが身を裂くようにつらいことだと分かっていても、それが運命だとあきらめて、また一人の巫女に戻った気がするのです。花かごを送ったとき、ニキヤはそれが「別れ」を意味するものだと分かっているように思えました。最初の贈り物で、そして最後の贈り物。最後の贈り物であることは理解しているしとても悲しいけれど、美しい贈り物は本当にうれしいというように、喜びと悲しみが入り乱れた踊りに思えました。ソロルはニキヤと別れ、ガムザッティの元に行くつもりであったと思います。けれどそれはそっと身を引くのであって、こんなに面と向かって裏切ることではなかったのでしょう。良心の呵責に耐えきれないように、ニキヤをまっすぐ見ることができないように思えました。そんなソロルを見て、ガムザッティが苦しんでるのが分かるのです。やはりあなたの心はあの巫女のものなのかと、とても悲しそうな目でじっとソロルを見ているのです、世界中に彼しかいないみたいに。ガムザッティはニキヤを殺すことを承知はいていなかったと思います。けれど、ソロルを手に入れるにはそうするしかないと思ったのではないでしょうか。けれどニキヤは大人しく身を引くつもりだった・・・だから花かごに蛇が仕込まれていたことにショックを受ける。ソロルから身を引いて、ひっそりともう一度巫女として生きていこうとしたのに、生きていることさえも疎ましく思われてるとは思ってもいなかったでしょう。だから自分から死を選ぶのも分かる。ガムザッティはニキヤがいなくなり、ようやく自分がソロルを手に入れると思えたよう。こう書いてしまうとひどい女のようですが、それは確かにガムザッティの弱さではあったけど、そこまでしないとソロルを手に入れられないと思ったガムザッティの弱さが、なんとも言えずいじらしく、悲しかった。本当に不思議なくらい女二人の物語で、そして二人の女が一人の男を取り合うのに醜さを感じず、二人のひたむきさが、一途さが胸に痛いばかりでした。

 2幕の1場の寺院では、ソロルは「どうしてこうなったのか」と思い悩んでいるようでした。彼はガムザッティを選んでいたのですがあくまでニキヤの前からそっと消えるつもりでいたので、自分の選択のどこが間違っていてこんなことになったのか問いかけているようでした。このあたりのバランスがまた不思議だったのですが、ソロルの自己主張があまり強くなかったので、ニキヤとの関係を自然消滅させようとしていたように思えるソロルのことが腹立たしくありませんでした。
 2幕は始終ニキヤの物語だった気がします。なぜ最後にソロルがニキヤを選んだのか・・・ということはほとんど感じず、ニキヤがようやくソロルを求めた物語と感じました。控えめで物静かなニキヤ、最後の最後で自分にはソロルが必要だとようやく認め、彼のことを求めた、そしてそれにソロルも答えた。そんな物語に思えました。池本、宮尾も一回はガムザッティを選んだソロルでしたが、この2人ははっきりとガムザッティを忘れ、ニキヤの元に行きました。今回はガムザッティを忘れたかというとそこまでの強烈さは感じず、ではなぜソロルはニキヤを選んだかもはっきりせず、けれどニキヤがソロルを手に入れたことは理解できる、不思議なバランスでした。
 とてもいじらしかった2人の女性。そのため、ニキヤが蛇となってガムザッティに襲いかかったと思えませんでしたし、ガムザッティがそこまでされなくてはいけないかと思ってしまいました。崩れ落ちる寺院を見ながら、むしろ蛇にかまれたガムザッティは先に寺院を抜け出し助かったのでは・・・などとさえ思ってしまいました。本当に幸せになってほしいガムザッティでした。
 ブロンズアイドルの踊りは一片の濁りもない光。光に導かれ天上世界に向かっていった気分でした。雑味の全くない、鋭くも冷たさを感じない池本さんの踊りはさすが。一ミリもぶれない雰囲気の踊りで、軽やかで人間味を感じない踊りでした。ようやく見ることができましたが、満足です。
 天上世界でニキヤは微笑みながらソロルを呼んでいる。自分の幸せなんて考えたことのなかった彼女が、初めて見せる「わがまま」といったらいいのでしょうか。悲劇の中に身を沈めることをいとわなかった女性が、自分の幸せを求めている。不思議とすがすがしい気分で観劇を終えることができました。

 そんなわけで予想外にニキヤとガムザッティの物語でした。お互い自己主張が激しすぎず、ひたむきでいじらしく、なんとももの悲しい物語でした。ソロルについては腹立たしい以前に特に感情が沸き上がりませんでした。女性2人が奪い合うほど魅力的だったとか、なんで気持ちが変わったのかと問いただしたいとかいう気もなく、けれど不思議とニキヤとガムザッティの物語は成立していました。そして女2人が大変もの悲しいので、あまりソロルが自己主張しすぎるとむしろ腹立たしくなるなあと思えたのでこのバランスは間違ってなかったと思います。じゃあ熊川ソロルに存在感がなかったかというと、踊りについては文句なしですねえ・・・。振り返って気づいたのですが、ソロルはそこまで踊るシーンがないのに、あえて増やそうとしていない。このあたりが今の彼の限界であると感じつつも、もちろんスタンダードな「バヤデール」としては文句なく踊ってますし、若手を見ていても踊りが足りないとは思いませんでした。「踊り足りない」とばかりに増やすことなく、基本をきっちり押さえて見せ場はきちっと見せる。踊りでは全ての面で格の違いを見せてくれました。いくらストーリーで存在感がないとかいっても、これだけ踊れる人の踊りを見ると客席が暖かくなって舞台にのめりやすくなるのも事実。女性2人が演技をしやすい環境を整えて、2人の物語を彩ったともいうことができます。そのバランスが、なんとも不思議でした。
 ソリストとして気になったのは春奈さんの第2ヴァリエーション。コールドは疲れるどころか回を重ねるごとによくなっていたのですが、彼女はその中でもひときわ光を放っていました。細かい動きでも軽やかでしかも安定している。動きの全体が柔らかく、そして堂々としている。とても魅力的でした。この日は湊さんが弾むようにかわいらしく、井上さんも堂々と踊っていました。3人とも安定感と個性があり、コールドの美しさ以上にソリストとしての輝きがあり、見ごたえがありました。
 伊澤さんの苦行僧は兼城さんに比べると人間らしいというか男くさいというか。生身の人間を感じさせつつも軽やかで、芯の通った動きが魅力的でした。伊澤さんの踊りは品はいいけれどなにかインパクトが足りないと思っていましたが、とても魅力的でした。
 杉野さんと蘭さんはもういうことありません。とっても楽しそうです。問題はジャンペの踊りでキュートでコケティッシュな蘭さんと小芝居がおもしろい杉野兵士、どちらを見れば悩ましいことです(笑)。
 1幕3場の男性陣で目が行ったのが益子さん。なんというか、はじけるように踊っておりました。その日のマチネ、結果的にはたった1回となったブロンズアイドルを踊ったのですが、きっとうまくいったんだろうなあと思える踊りでした。栗山さんは背も高く品もよく、いろんな役をやってほしいと思えるタイプでした。ちょっと堅い気がしたのですが、そのあたりは慣れてくればよくなるのかなと。川村さんはどうしても表情が硬いのが気になります。浜崎さん、結構好きなのでがんばってください・・・。(キャスト表に名前がありませんので、間違ってたらごめんなさい)
 そんなわけで、メインはなんとか全キャスト見ることができました。はっきり見逃したのは益子さんのブロンズアイドルくらい。どれもカラーが違い、とても楽しい公演でした。余りに肌になじみすぎてうまく言えないのですが、多分Kバレエの作品の中で一番好きです。ストーリーの割合も多く、踊りは正当はな踊りからキャラクターまでそろってる。男女ともに見せ場が多く、とても楽しかったです。まだまだ見足りてないので、再演が今から楽しみです。

Kバレエ
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(2014/03/31(Mon) 23:46:30)





  Kバレエ ラ・バヤデール(2014/03/22 ソワレ)

ニキヤ:浅川紫織
ソロル:遅沢佑介
ガムザッティ:井上とも美

★★★★★
オーチャードホール

 ニキヤとソロルの組み合わせとしては一番見たかった2人。先日後半だけ見ましたが、ようやく全編見ることができました。ほんっとうに面白かったです。
 完全にニキヤとソロルの物語でした。ガムザッティの存在感が薄くてかわいそうになるほど。一度はガムザッティの手を取ったソロルですが、ソロルにとっての運命の女性は最初から最後までニキヤでした。卯用曲折ありながらも、ソロルがニキヤを手に入れるまでの物語でした。ラ・バヤデールらしいどろどろした人間の感情の重さがありつつも、美しいハッピーエンドとして終わる。本当に面白かったです。

 とにかく、今の2人でこの作品を見ることができたのがなにより幸せです。浅川さんも素敵でしたが、それ以上に遅沢ソロルが「今見ておくべき」ソロルでした。精悍な男らしい物腰がうっとりするほど美しく、王子ではないのに気品のある立ち姿にまず見惚れました。戦士という設定に恥じない力強さと、巫女の隣にあっても不自然でないスマートさ。存在感全てが今見ておくべきソロルで、見るほどに見惚れました。
 浅川さんのニキヤは凛と美しかったです。登場した瞬間からそのたたずまいがそもそも悲劇性を物語るような薄幸さがありつつも、押し付けがましくない程度の意思の強さを感じました。寺院の巫女たらんとして感情を見せず凛とした姿を保っていたから、解き放たれたようにソロルと踊る姿が印象的。幸福そのもののように、自由と愛を歌う。2人のパドドゥは本当に素晴らしかったです。溢れる感情を隠すことなく、喜びを歌うように踊り、その踊りが音楽となる。1幕1場が一番音楽性を感じました。踊っている2人というより、2人が音楽そのものであり、喜びそのものに思えました。また、相変わらずリアリティを感じる2人ですので、年相応に、熱を感じ、色気を感じる2人でした。美しい音楽そのもののような踊りだったのに、触れ合う中で戦士であるソロルが引っ張る形で巫女のニキヤとの踊りに色香を感じるのが、なんとも言えず刺激的でした。
 ひとつ引っかかったのは、そこまでソロルはニキヤを求めていたのに、なぜ一瞬でもガムザッティを選んだかということ。ガムザッティに確かに心動いた瞬間もあったでしょうが、どちらかといえば理屈で感情を押し殺しているように思えました。花かごの踊りも、完全にニキヤとソロルのものでした。ガムザッティが自分はここにいるとソロルに訴えてはいましたが、そこはソロルの気持ちを取り戻そうとするニキヤと、そんな彼女への未練を振り払おうとするソロルの物語でした。まっすぐにひたむきにソロルを見つめ、求めるニキヤと、そんなニキヤを見ることすらできないソロル。花かごを渡すことがある意味ニキヤへの裏切りになると分かりつつも彼女に渡すソロルと、それでも贈り物を喜ぶニキヤ。そんなニキヤを、迷いながらも見捨てたソロルが幸せになれるはずがない。1幕が終わった時点でソロルが幸せになることはないと思えました。

 悔悟と懺悔で自分を殺しかねないと思えたソロル。意識を失うまで、それを望んで、阿片を吸い続けているように思えた。意識を失ったらそこでニキヤに会えると予感していたかのように。影の王国はソロルが望んで思い描いた世界のように思えました。だからそこがどこであるかなど気にせずにニキヤを探している。逆にニキヤは感情が薄く、彼女自身の意思というより幻影のように思えました。その幻影をソロルは追い求める。そこにあるのが幻影だとどこかわかっているように見えて、それでも姿がひと時でも消えたら気も狂わんばかりに追い求めていた。「苦悩する遅沢さん」が好きな身の上としては、1幕以上に引き込まれました。なぜあの時手を離したかと自分を責め続けながらニキヤを求め続ける。彼の幸せはどこあろうとニキヤのいる場所であり、もうなにがあろうと決して手を離さないと思っているようでした。そして最後、ニキヤの幻影を追って黄泉の世界に旅立って行ったように思えました。彼女が向っていくところがどこであれ、それが幻影であれ、彼女がいないところではもう生きていけないと分かっていたから。
 ニキヤはしっかりした芯を持っている女性でしたが、ガムザッティやラジャに復讐する女性には思えませんでした。それでもガムザッティが蛇に襲われることに違和感がないのは、因果応報という側面を強く感じるからかもしれません。ガムザッティ自身悪女ではありませんが、それでも滅ぼされるに足ることをしたと納得できます。もちろんラジャも。誰の意志かということがはっきりしないため若干唐突感がありますが、それでも物語の展開としては納得できます。
 不思議なくらい、2幕ではどろどろした感情を感じませんでした。それでもブロンズアイドルの踊りは浄化に思えました。どちらかといえば清々しさを感じる伊澤さんのブロンズアイドルが、因果応報によって、もしくは天の罰によって滅んだ人たちの苦しみさえも洗い流しているように思えました。
 これはソロルとニキヤの物語。最後には苦しみの果てに二人とも救われたように思えました。全てから解放されて魂の自由さえも手に入れたソロルが自由と愛を歌いながらニキヤを求める。ブロンズアイドルによって浄化された光の中にいるニキヤは幻影でなく本物のニキヤで、現実世界でも、影の王国でも手に入らなかったニキヤを、ソロルはようやく手に入れたように思えました。ソロルにとってものすごく都合のいい物語なのですが、なぜか不満は感じませんでした。とても気持ちよく、光に包まれた二人を見守ることができました。
(作品ジャンル全く違うのですが、ミュージカル「エリザベート」の最期の曲、「ベールが落ちる」を思い出しました。「全てが終わった。自由になった、どうか救いを。記憶を消し、魂の帰れる場所を与えて(ざっくりした訳)」という言葉のイメージが一番しっくりきたのです。なにもかも洗い流され、記憶も過去もしがらみも全て捨てて、自由になり光の中で再びまみえたように思えたのでした)

 そんなわけでソロルとニキヤの物語という側面が強すぎたため語り損なってしまいましたが、ガムザッティは先日ほど悪女さを感じませんでした。どちらかといえば穏やかなラジャの娘で、兵士たちも彼女にあこがれ、彼女に選ばれることはないとわかりつつも彼女が一人の男のものになることを残念に思い、しかしその幸せを祈っているように思えました。そんな風に愛されることが当然に思える女性。ニキヤに出会い、彼女への嫉妬心がガムザッティを狂わせたように思えました。そんな「愛される資格を持った女性」が「因果応報」で死んでいったのは、「人を呪わば穴二つ」ということなのかもしれません。ニキヤを疎ましく思い、彼女を見捨てたことが彼女に報いとして返ってきた。そのことに不自然さは感じませんでした。
 同じように「人を呪わば」を感じたのが大僧正でした。彼のニキヤへの愛は、それが愛だと彼が受け入れるより先に、いえ、受け入れがたいと思っているからか、ソロルへの憎しみに変わっていました。ソロルを憎み、彼を滅ぼそうとした思いが結果的にニキヤを滅ぼし、大僧正にも苦しみを与えた。ところで大僧正の存在感が濃いにも関わらずなにか薄味に感じていたのですが、彼の物語が1幕で終わっているからかもしれません。熊川版の展開では2幕に出番はないですが、ニキヤを失った後の彼がどうなったかは気になります。ニキヤがいなくなって元通り…になるわけはありませんから。

 苦行僧が何なのかいまいちよくわからないし、理解しなくてもいいやと思えてきたこのごろですが、あれは妖精さんです。パックのようにぴょこぴょこはね回ってるので妖精さんでいいのです。人間たちに住む領域を侵された、かわいそうな妖精さんたちなのです(変な設定まで付け加える始末…)。また、兼城さんが絶妙に人間くささを持たず、重さを持っていないので「妖精」だと思い始めたらそれで納得できてしまいました(笑)。兼城さんの軽やかさは本当に不思議です。空中でさらに一段あがるかのように重さがない。とても好きです。
 ジャンペの踊りはなにはなくとも蘭さんです!他の人を見てみたのですが、彼女のちょっとしたニュアンスの付け方がとても魅力的。ほんの少しのアクセントなのですが、繰り返しの多い振り付けの中でとても映えます。この場面は後ろの兵士たちの小芝居もおもしろいので目が足りません。若干エロおやじ入ってる杉野さんがおかしくってたまりません。
 太鼓の踊りはすっかりはまりました。クセになる音と振り付けです。この場面だけ何度も繰り返し見たいくらい。杉野さんが今回も抜群に楽しく踊ってくれて見ほれました。それにしてもずっと走っているようなとんでもない振り付けです…見ているだけで息切れしそう。
 パ・ダクシオンはピンク組に若干の疲労が見えて心配です。青組はむしろ調子をあげているのではないかと思うほど。4人の動きがとてもきれいにそろって素晴らしかった!蘭さんの踊りはここだとちょっと色気がありすぎるなと感じたり、新居田さんの動きは若干堅いなあと思うことはあれど、基本的に安定していると思います。浅野さんと春奈さんの柔らかくも芯のしっかり通った踊りは本当にすばらしいです。男性二人も素敵なのですが、後ろに控える兵士チーム?も素敵です。この場面では名前がでてこない役ですが、さすがKバレエの男性チームだと思わせてくれる動きです。
 影の王国のコールドはやはり調子をあげているようで、うっとりするほど動きがそろっていました。第2バリエーションの白石さんがちょっとお疲れのようで心配。
 この演目ではどこから探してきたのか立ち役の男性が多いです。体格のいい壮年の男性たちばかり。もちろんバレエ団にもソロのない男性陣はまだいると思いますが、さすがに学校を出るかでないかの若手ばかりでしょう。そういう若い子達よりは、明らかに舞台慣れしていない感じでも年輩の男性の方が雰囲気がでていいと思っている次第です。
 まだ熊川荒井を見る予定はありますが、若手公演はこれで打ち止め。今までなんで上演してこなかったのだろうと思うくらいこのバレエ団の個性にぴたりとはまった良作だと思います。男女ともに見せ場のある踊りが多いですし、王子と姫の物語でないので若手の主演抜擢にもぴったり。物語も分かりやすく、Kバレエらしくどろどろし過ぎず、それでいてダンサーによって幅広い物語の解釈がある。このバレエ団によくあった、いい作品になっていると思います。若手の4パターン全て見ましたが、若干浅川&遅沢のときのガムザッティが弱いかなと思ったくらいで、全体のバランスも絶妙。同じバレエ団でこれだけ違う物語ができるのだと、むしろ感動しています。まだほかにも見てみたいと思うキャストもありますので、今後の再演が今から楽しみです。 

Kバレエ
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(2014/03/23(Sun) 01:56:09)





  Kバレエ ラ・バヤデール(2014/03/22 マチネ)

ニキヤ:佐々部佳代
ソロル:宮尾俊太郎
ガムザッティ:浅川紫織

オーチャードホール
★★★★☆

 ガムザッティ目当てで取った公演でしたが、大変おもしろかったです。
 日向&池本に続き、ニキヤの物語でした。最後に勝ったのはニキヤの愛。しかし日向ニキヤと違いそこにあったのは女の執念でなく、無垢な少女の一途な愛でした。こんなにさっぱりした気分で見終わったバヤデール、初めてです。

 佐々部さんのマリー姫は苦手だったのですが、理由がわかりました。彼女の踊りはまだ子供っぽいのです。年齢的にも若いでしょうからそれも当然なのですが、マリー姫はクララと比べて「大人の女性」でなくてはならない。そのあたりに違和感があったのだと思います。ニキヤは完全に子供でした。10代中頃の、無邪気な少女でした。ソロルの愛が全てと、心の底から信じられる少女。将来のことなんてなにも考えてないし、だから結婚してほしいとかそんなことも全く考えてない。ただ愛し愛されている幸せが全てで、それさえあればほかに何もいらないと信じられる少女。そんな無垢で無邪気な天衣無縫さが、大変かわいらしかったです。巫女として凛としたたたずまいをしているのに、苦行僧からソロルのことを聞かされたときにぱっと顔を明るくするあたりから本当にかわいらしかった。ソロルと密会し、花が咲き誇るみたいな満面の笑顔で踊っているのも愛らしかった。そんな風に生身の少女として笑い喜ぶ姿を見ていると、彼女は巫女なのだからと自分を言い聞かせてなんとか身を引こうとした大僧正の心に火をつけたのもわかる気がしました。
 一方のソロルもニキヤに負けず劣らずの脳天気ぶりでした。年齢的にはニキヤよりずっと上なのでしょうが、同じように将来のことなんてなにも考えていない。今、ここにあるニキヤとの愛だけが全てと思えて、幸せな時間を謳歌している。悲劇性を全く感じさせない二人で、その朗らかな空気感がぴったりでした。宮尾さんの踊りもさすがに堂々としてきて、凛とした気品がある。ニキヤの目線からすれば「大人の男性」である頼もしさと美しさがありました。少女があこがれる王子様、という表現がしっくりきます。若干頼りなさを残したニキヤに、ぴったりのソロルでした。佐々部さんが小柄というのもあり、「大人と子供」という雰囲気も強く感じられました。
 ガムザッティは「才色兼備」という言葉がぴったり来る女性でした。皆に愛されるラジャの娘として、それにふさわしい品格を身につけようと努力し、それを手に入れた女性。心根も温かそうで、誰からも愛され、あこがれられる女性だったでしょう。そうなれるように、彼女は自分を磨き、成長してきた。そしてまたさらに一歩「大人」となるため夫を迎える。そんな「結婚して大人になる」という成長過程を彼女が頭の中に思い描いているように感じられました。彼女自身、すてきな男性に心ときめいたという以上に、一人の男性の伴侶となることに覚悟を決めたように思えました。一方のソロルはガムザッティに一目惚れ。運命の人にようやく出会えたと思っているようにすら見えました。そういえば何度もペアを組んでいるこの二人、雰囲気もぴったりでしたし、背格好もちょうどお似合いなので、ぴったりのカップルという雰囲気でした。ニキヤとソロルもすてきなカップルだと思ったのに、それ以上に運命的にお似合いの二人だと感じられました。
 この作品の見所の一つに、ニキヤとガムザッティの対比というのがあると思うのですが、「無垢な巫女と貴族の令嬢」という対比以上に「子供と大人」という対比を感じました。佐々部さんが小柄なこともあり、浅川さんと並ぶと本当にまだ成長途中の少女にしか見えません。浅川ガムザッティは年齢にふさわしい、知的で品格のある淑女たるべく努力してきた女性に思えました。一方、佐々部ニキヤは天衣無縫の少女。着飾ることもないし、年齢そのままに子供のままである。けれど子供っぽいなりに間違いのない美しさも持っている。ガムザッティが戸惑ったのも当然です、ニキヤはガムザッティが持ち得るはずのない美しさを持っていたのですから。「彼女の方が魅力的だ」、そう思う男性がいたら、誰からも慕われるべく努力してきたガムザッティでもかないません。だからこそことさら意地悪く、自分がいかに財産的に豊かであるかを示そうとする。愛されているかを、年端も行かない少女に無理矢理示す。ニキヤは本当に心から宝飾品に興味がないように思えました。彼女にとってソロルからの愛が全てで、本当にそれ以上のものを必要としていないように思えました。だからこそ、それを否定され子供っぽくムキになる。ニキヤが本当に子供だったので、大人であるガムザッティが本気で牙をむくのが哀れでもありましたが、ガムザッティも決して悪人ではないこともわかりました。そんな不思議なバランスを持っていました。

 1幕3場のソロルは、どこかガムザッティの伴侶に足りうる男性になろうとしているように思えました。もちろんガムザッティに惹かれたのはその美しさであり、それは運命の出会いで一目惚れだったのですが、象の上で胸を張るソロルは、ラジャの娘であるガムザッティにふさわしい、ラジャに婿養子として迎えられる男としてふさわしい人間になるようにしているように思えました。二人のパドドゥのうっとりするほどぴったりでした。ソロルもニキヤと踊っていたときの子供っぽさはなく、大人の男性としての芯の強さを感じました。一瞬ソロルはニキヤを思い出しますが、ガムザッティはそのことに気づかず、どちらかといえば別世界に迎えられることを不安に思っているソロルを励ましているように思いました。
 ニキヤにとってソロルの愛が全てであったからこそ、裏切られたときの痛々しさは例えようもありません。ほっそりとした小さな体が本当に幼く、かわいらしく頼りなく、ソロルからの愛を失っただけで、世界中の全てから見捨てられたように感じているように思いました。けれどソロルからの花を受け取ったとき、理由はどうあれきっとそれが初めて受け取るソロルからの贈り物だったのでしょう。うれしくて仕方ないというように踊る姿がいじらしくって仕方なかった。ガムザッティはこれから死んでいくニキヤを少し哀れに思っていうようでした。ニキヤのことを嫌ってはいても、殺したいと思うほどには憎んでなかった気がしました。どこか動揺を隠すように、努めて明るく振る舞いながらソロルに接していうように思いました。ソロルの心はガムザッティのものでしたから、ソロルはガムザッティの手を取り去っていく。ソロルの愛が全てだったニキヤはそれを失ったと確信して死を選ぶ、それが彼女にとって全てだったから。愛こそが全てだと、強く感じるニキヤでした。

 ニキヤを失ったソロルは、後悔というより自分の選択に迷いを感じているように思えました。ガムザッティを選んだことに後悔はないけれど、それによってニキヤが死んでしまったことで、その選択に迷いが生じているようでいた。ソロルの友人がソロルに阿片を進めたのは彼の朗らかさが失われたから。ほんの少しの気紛らわしのために阿片を進め、ソロルも少しの気分転換くらいの気持ちで手を出し、引き返せなくなったように思えました。
 影の王国は、どちらかの夢というより、二人の夢の中という気がしました。どちらが主体的であったかということはなく、お互いに惹かれて夢の中で再会したように思えました。ニキヤはソロルの愛を少しも疑っていないように見えました。裏切られても、彼の真実の愛は自分のものであると、そう信じているように思えました。ソロルはガムザッティに一目惚れし、彼女と幸せになれたでしょう。ラジャの婿養子になるという気負いはあれど、打算以上の愛でガムザッティに惹かれていたと思います。この夢の中で、ソロルはガムザッティとニキヤと、二人の女性の間で心が揺れ動いているようでした。けれど夢の中で、ニキヤの一途で濁りのない愛に触れているうちに、子供のようにただ愛していたときの喜びを思い出したように思えました。そうして、自分を求めると疑ってないニキヤを追い求め、黄泉の世界に旅立っていったように思えました。
 ガムザッティにかみついた蛇も寺院の崩壊も、ニキヤの強い思いが要因であると思いました。そこにあったのは憎しみというより、子供っぽい怒りかもしれません。その怒りに飲み込まれたガムザッティは因果応報というよりむしろ哀れでしたが、ニキヤの気性がまっすぐすぎたからか、負の感情はあまり感じませんでした。
 だからブロンズアイドルは浄化ではなく祝福のように感じました。ずっと見守っていて、そして最後に勝った愛を祝福するようでした。伊坂さんは全幕で見ると若干踊りに不安を感じることがあるのですが、さすがに1曲だけですので見事でした。軸がしっかりしているのにとても軽やか。どこか暖かみもあり、とても見応えがありました。

 そして最後は純粋な、打算のない、無垢な、子供の愛が勝つ。最後まで一度もソロルの愛を疑っていなかったニキヤのまっすぐな思い、そして子供のようにただ愛を求める無邪気さを取り戻したソロルの朗らかさ。驚くほど、さわやかなラストシーンでした。ラ・バヤデールという、人間の負の感情渦巻く物語が、こんなに暖かく終わるとは思いませんでした。とても気持ちよく、楽しかったです。

 踊りの面では若干お疲れの方が見えてきたかなあと思うのですが、影の王国のコールドは美しさと、そしてちょっと空気をはらむようなアームスの動きまでそろってきたように見えて驚かされました。ジャンペの踊りは脇の兵士たちが楽しそうですし女性陣の踊りも生き生きしてとても楽しいです。女性の中では山田さんがちょっとした緩急の付け方に見応えがあって好きです。パ・ダクシオンだと山田さんがちょっと堅く見えるのが残念ですが。ここは中村さんが抜群の安定を見せてくれます。宮尾さんのソロは一か所ほかのソロルより簡単になっておりましたが、多分初見だと気づかないでしょうから問題なし。

 今のところ極度にお疲れの方はなし。長期戦、皆様ケガなく乗り切れますように…。

Kバレエ
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(2014/03/23(Sun) 00:54:22)




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