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  Kバレエ カルメン(2014/10/11) ソワレ

ドン・ホセ:福田昂平
カルメン:神戸里奈
エスカミーリョ:杉野慧
ミカエラ:荒蒔礼子
モラレス:石橋奨也
スニガ:スチュアート・キャシディ

 福田さんの主演デビューとなる公演。大変、大変良かったです!こういう公演があるからKバレエを追いかけるのが辞められないんですよねえ。

 とにかく全体がよくってなにから書いたらいいのかわからないのですが「カルメン」という作品を見たという満足感があります。
 まず、カルメンとホセがちゃんと「カルメン」であり「ホセ」であった。カルメンは誰でも愛するけど、誰のものでもない、彼女一人のもの。全部わかったうえで艶っぽい視線を投げかける。これが佐々部カルメンと違っていて、うまく言えませんがなんというか、安心しました。例えばスカートをたくし上げるという動きについても、佐々部カルメンが「みんなが喜ぶから」やっているという感じで、求められたらどこまでも行ってしまう気がしました。今はいいけれど、いずれは搾取される側に回るんじゃないかというタイプ。逆に神戸カルメンは奔放に見えて、「ここまではいい」「これ以上はダメ」というラインがしっかり決まっているように見えました。だから安心して見ることができる。あと、これは「もしかして」レベルの思い付なのですが、なんとなくカルメンはこの世の中すべてを憎んでいるような気がしました。いろんな人に愛情を振りまくのはただの憂さ晴らし。登場したときのけだるげな表情が、なんとなく苛立ちを感じたんです。その対象がなにか…と思ったのですが、「人生そのもの」というのが一番しっくりする気がしました。
 福田ホセは生真面目一直線。わき目も振らずまじめに生きてきた。女たちがケンカしたときに律儀に記録を取っていたのがなんとも象徴的。ほんの少しだけ、そうして今まで生きてきてこれからも真面目い生きていくことに若干の迷いがあったのかもしれません。1幕のミカエラとのやり取りでそんなことをちょっと感じました。このまま彼女と生きていく規定通りの生き方でいいのかと、ちょっと迷っていたからこそ、カルメンにいいようにされてしまったのかもしれません。
 これは初日からもしかしたら違和感としてあったのかもしれませんが、この演出、カルメンがホセを愛するタイミングがほぼありません。一夜を共にするシーンがないせいもあるのでしょうが、縄をほどいてくれのシーンは駆け引きであってホセが籠絡されるのは仕方ないとして、カルメンは計算通りのことをして計算通りの結果を得ただけ。そしてホセと再会するよりも先にエスカミーリョに出会ってる、ホセに心惹かれる間もなく、ホセの知らないところでエスカミーリョに出会ってるんです。ホセは酒場に来たときにカルメンを探す姿で彼女への愛情を表現することができます。けれど再会を喜ぶとき、ホセの喜びに比べて、心のどこかにエスカミーリョが引っかかっているカルメンのホセに対する愛情はどこか薄いように思うんです。それをはっきり感じたのが密輸組織に引き入れた時のシーン。そう、このシーン、「密輸組織」という言葉が背景というより、物語の大きなカギになっている気がしました。カルメンは一緒にいたいから愛故にホセを巻き込んだのでなく、ダンカイロたちと手を組んでホセを密輸組織の一員にした…ように思いました。なぜそうしたのかまでは描かれていませんが、ダンカイロたちがホセに無理やり酒を飲ませていたあたりなんてまさに判断力を鈍らせているように見えました(この、無理矢理酒を飲まされて酒の高揚感と恋によった感覚でめまいを起こしながら踊るカルメンを見るホセがなんとも破滅的でぞくぞくするほど美しかった、そしてカルメンはホセを愛しているというより、非日常に酔っているようなホセをすべて理解した上で誘っているようだった)。こうなると印象が逆転するのがミカエラがやってきて、カルメンがホセを追い払うシーン。このシーンが、カルメンがホセに示した唯一の愛情に見えました。本来、組織に一度足を踏み入れた人間を簡単に開放してはいけないはずなんです、モラレスたちのように。けれどカルメンは「飽きた男を捨てた身勝手な女」を演じる、そうして、ほかの人間が自分のやることを止められないようにする。エスカミーリョにだってたいして興味があるわけではないのに、ことさら彼への愛情を強調する、カルメンの身だって危険だったはずなんです、だからばかな女を気取る。そこまで頭のいい女性だったんじゃないかと思います。
 でも、そんなカルメンの思いは届かない。カルメンに必要だったのはエスカミーリョのような男、一瞬の勝利のために祝福としての愛情を求めるような男。人生のすべてをかけて一人の女性を手に入れようとする男ではない。
 生真面目一直線で、燃え上がる思いをどんな風にコントロールしていいかわからない…闘牛場の前のホセはそんな感じでした。カルメンはホセに愛情のようなものがないわけではないけれど、それをホセが求めるようには表現できない。ホセはカルメンを手に入れたいという思いだけが残っているようでした。どうしようもない叫び声が聞こえた気がしました。カルメンを射殺したのはもちろんホセの本意ではありません。ただカルメンを手に入れたかっただけだと、亡骸を抱えた姿を見ながら思いました。手に入れたかったけど、そこにいるのは求めたカルメンじゃない。抜け殻のように立ちすくむ姿に圧倒されました。元に戻ることはできないし、どこか目的地を定めて進むこともできない。「どうしたらよかった、どうすればいい」と問いかけるような姿に、兵士たちが一瞬気圧されたのもわかります。どうすることもできず、ただカルメンを抱えて足を進めるしかない姿に、なんとも言えない悲しさを感じました。

 振り返ってみるといろいろ予想というか予定というか違うところがあって汲み取れなかった部分もある気がしました。つまりもう一度見たい。皆に愛され、皆に愛情を注ぎ、けれどどこか厭世的であったカルメン。普通の、普通にまっとうな、どこか面白味のない人生をそれでも真っ直ぐに生きてきたホセ。田舎から出てきた純朴な少女ミカエラ、彼女に対するカルメンは、そうやって真っ直ぐに純朴に純粋に生きてきた彼女に対するいら立ちがなかったろうか。密売組織という法に反する組織、武器を持って嬉々と踊るカルメンの根底には厭世的なものがあったのではないだろうか。なんというか、まだ拾いきれていないところがある気がするんです。

 踊りについても大変楽しかったです。神戸さんのカルメン、とても期待していました。かわいらしい少女というイメージの方ですが、少女といってもなんとなく濃い輪郭を持っている気がしたんです。ミカエラの時も、むしろカルメンのほうがいいのではないかと思いましたが、やはりカルメンのほうが魅力的でした。子供っぽさは感じず、間違いなく低い身分の中でしっかりと自分の足で立っている女性でした。踊りについての安定感は言うに及ばず。とにかくなにをやっても危なげがなく安定感があるので見ていてとても楽しいです。あと、ようやくちゃんと群舞に紛れないカルメンだったと思います(苦笑)。
 福田ホセも予想以上に素敵でした。演技はうまくはまればはまるだろうと思っていましたが、踊りもどちらかと言えば飛ぶ跳ねるがうまいのではと思わされますがそれがきっちり様になってる。また、生真面目なのが多分彼の本質で、それがあるからこそ籠絡されていく様がなんとも魅力的でした。

 びっくり面白かったのが石橋モラレス。伊坂さんのちょっとユニークなモラレスとは違うガラの悪いモラレスだったのに、物語にしっくりなじんでました。肩をいからせて歩くような不良タイプのモラレスでしたが、娼婦と戯れる姿も自然。そんなちょっとダメな感じのモラレスだったので、山中でのホセとのやり取りが印象的。この時のモラレスは自分のことでなくホセのことを思っていた気がするんです。自分がこれからどうなるかわかったうえで、「お前はこれでいいのか」と破滅に向かっているホセに問いただしている気がしました(だからホセも真っ直ぐに同僚の目を見ることができなかった)。
 杉野エスカミーリョ、衣装が普通に似合っていて驚きました。なんで遅沢さんはあんなに罰ゲームみたいに似合わなかったのですか…。踊りについては若干いっぱいいっぱいなところがありましたが、そのいっぱいいぱいさが妙に役にはまる。遅沢さんが大ベテラン闘牛士なら杉野さんは新進気鋭の若手。今度大きな勝負にでるから特別に美しい女性の祝福を望んでいるように思いました(だから蘭さんともやりとりがあるのですが、顔の傷指摘してなかったかなあ)。とにかく魅力的な伊達男で、酒場のシーンでは出てきた瞬間にごくごく自然に視線をさらっていくようなタイプ。山中のシーンのホセやカルメンとのやりとりも、いろいろ世の中を分かっているようでそれが必死なホセとのいい対比になっていました。
 荒巻さんのミカエラは今までみた中で一番「ミカエラ」かもしれません。技術や存在感としては弱いのですが、本当に純朴な少女。特別美人というわけでもなく、けれどきっと皆に愛されてきた(カルメンと違った意味で)少女だろうと思える。1幕で兵士たちとやりとりをしているとき、男性に触れられたり近くに寄ってこられるだけで戸惑うという、年頃の純朴な少女という姿が印象的でした。乱れたスカートのすそを直すという些細な仕草が、とてもかわいらしい、「普通の少女」でした。
 レメンダードで見れなくてひとりでいじけている兼城さんを大道芸人で見つけて一安心。元の顔が分からないタイプのメイクですが、はっきりわかりますね。相変わらずの足の細さ、でもその足で繰り出されるのが信じられない脚力、それからあっさりと180度開いている柔軟性。見られてうれしかったです。踊りが終わってもちょこまかと周りを賑やかしているのがかわいかった。
 長島さんはいつもなにか面白いことをやってるし、春奈さんはなんとも輪郭がくっきりしていてかわいらしい。闘牛士たちはみんな華やかで誰を見たらいいか迷う…大変楽しい公演でした。こういう、若手の1回公演がいい方向に作用した公演っていいなあと改めて思った次第です。

Kバレエ
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(2014/10/13(Mon) 00:20:15)





  Kバレエ カルメン(2014/10/11) マチネ

ドン・ホセ:宮尾俊太郎
カルメン:佐々部佳代
エスカミーリョ:遅沢佑介
ミカエラ:浅野真由香
モラレス:伊坂文月
スニガ:スチュアート・キャシディ

 バカな女とバカな男が自滅した話。ストーリーとして余りにも身も蓋もなくこれでいいのかと思ったけど、話の方向性としては二人とも同じ方向を見ていたのでよかったのかと思います。多分この二人、お互いに相手を愛したことなんて一瞬もない。
 カルメンは「子供」でした。彼女の思い描く「世界」には自分しかいない。誰も彼もが自分を愛してくれるのが当たり前で、だからほほえみを投げかけている。ホセの気を引こうとしたのも彼だけが自分の方を振り向いてくれなかったから。自分と一緒にきてほしいといったのも別に彼を愛していたからでなく、そうやって自分を愛してくれる人に囲まれているのが好きだから。だからホセが自分を独占しようとした意味は分からなかったし、自分と一緒にいてうれしいはずなのに母親のことをミカエラと嘆くことも理解できなかったから、追い払った。本能のままに生きている子供。自由というよりはただ本能に流されるままに生きているだけ。そんなカルメンでした。
 一方ホセはずっと流されていた。多分、彼も本心ではカルメンを愛していなかったんじゃないかと思います。ミカエラは愛情豊かだけど表現が慎ましやかだから、ホセに気持ちが届いてなかったんだろうと思います。だから愛情表現がはっきりしてる(ように見えるけど決して愛情ではない)カルメンが自分を愛していると勘違いしたんだと思います。カルメンを愛したと言うより、自分を愛してくれると思ったカルメンに流されたという感じ。驚くほど芯のない男です。ホセはカルメンが自分を愛してくれたと思ったから別の男たちと軽く戯れているのさえ理解できない。カルメンが自分だけを見てくれることを求めている・・・のだけど、そこまでカルメンを愛しているように見えないのがホセという男の芯のなさだと思います。
 多分カルメンもホセも、お互いがなにか勘違いをしていることは気づきつつ、最後まで「住む世界が違う」ことに気づかなかったのではないかなあと思います。ホセはすでに破滅しているといえましたが、その破滅にカルメンを巻き込んだ感じで、愛を得るために殺したという感じはしませんでした。カルメンもなぜホセがそこまで逆上したか理解していないでしょう。すれ違ったまま滅んだ二人でした。お互いすれ違っていたのでそれはそれですっきりしましたが。

 カルメンの印象が変わったのでエスカミーリョの印象も変わりました。白石カルメンの時はお互いに割り切っていて、一瞬の情熱に命を燃やす同士お互い割り切ってつきあうように見えましたが、佐々部カルメンに対してはもっと刹那的なものに見えました。このエスカミーリョは1試合ごとに女を変えると言われても納得します。カルメンは本当に刺激的な男性の魅力にめまいを起こしていましたし、エスカミーリョも彼女に勝利を捧げるというのは嘘偽りはないでしょう。ただそれらすべてが表面的で、刹那的なものに見えました。多分白石カルメンだったら別れるときもあっさり終わりそうなのですが、佐々部カルメンはエスカミーリョとの関係が終わるときはこじらせそうなイメージ。・・・まあ、エスカミーリョとカルメン、どちらが先に相手に飽きるかという話ですが・・・(多分1週間以内の話)。
 それにしても遅沢エスカミーリョ素敵です。今日で最後なのでしみじみ眺めていましたが、衣装が変でもとても素敵。闘牛場前のところも個人的には金がピカピカし過ぎていてじゃまですが、赤い衣装は本当に彼に似合います。カルメンに贈り物を持っていくために山中まで行くのもそこまで彼女を愛しているからでなく、一瞬の情熱であれ全力になる彼の気質に思えました。どうしても「伊達男」というように横文字でなく漢字で表現したくなるのが遅沢さんなのですが、芯が通っていそうに見えるのにどこか浅いというか一瞬の情熱のためにすべてを傾ける雰囲気が素敵でした。

 浅野さんのミカエラ、大変かわいらしかったです。バランスとしてもちょうどよかった。神戸さんよりもちろん地味な感じなので、「田舎のお嬢さん」という雰囲気にぴったりでした。かわいらしいけどあか抜けず清楚。きれいだから男たちが群がるのもわかるし、明らかに世間ずれしてないから男女問わず思わずからかってみたくなるし、その楚々とした雰囲気が腹立たしくもある。でもホセよりずっとしっかり芯のある女性だと思いました。彼女は彼女の人生をしっかり生きてると思えましたもの。
 やっぱりキャシディさんはすごいなあと思ったのは、登場するとやっぱりそこに目がいくから。それだけ存在感があるから、酒場でこてんぱんにされるのにも妙な説得力がある。存在感のない若手がよってたかって囲まれてこてんぱんにされてもただのいじめみたいでおもしろくありませんもの。いつも偉そうにしている偉い人が、酒場で若い娘にこけにされるというのがおもしろいんです。陰湿に感じず、からっとした笑えるシーンに思えるのは、やはり彼の存在感と威厳あってのものだと思わされました。酔っぱらってぐでんぐでんでも品があるというのもありますしね。
 モラレスの伊坂さんはさらに役と本人が一体化した感じがしました。ちょっと鼻についた彼らしい踊りも影を潜め、彼しか踊れないけど、キャラクター寄りになりすぎず、でも個性を感じる役。存在感があり、しめるところはしめるけど、軽いところは軽い。兵士らしくきりりとしているところも、酒に飲まれてぐでんぐでんなところも違った魅力がありつつも、ちゃんと一人の人物の多面性になっていました。1幕2場へのつなぎの踊りがユニークで好き。

 池本さんと井澤さんは気がつくと目がいきます。多分役は固定かと思いますが、群舞にいても紛れることはありません。池本さんは軍人として出世の途中でとりあえず一時地方の現場に行ってこいといわれて、井澤さんは貴族の3男坊が家にいてもうだつが上がらないから軍隊に放り込まれて・・・などと勝手に物語りを作ってしまうくらい個性がありました。池本さんは品の良さを漂わせながらもそこそこ楽しんでいるようでしたが、井澤さんは「堅苦しい実家を抜け出してほっとしたのもつかの間、密売人たちに銃を向けられて、こんなんならいくら肩身が狭くっても実家にいればよかった・・・」という感じでした。踊りの方も池本さんは相変わらず恐ろしいレベルで軸がしっかりしていますし、井澤さんはとても優しい。くるみやシンデレラが楽しみです。
 酒匂さんとニコライさんの密売人も楽しげでした。どうしても兼城さんだと妖精さんになってしまいますが、酒匂さんだとちょうどいい感じに「悪ガキ」といった感じです。やはり物語りを進めるしっかりした大人と、話をひっかき回すような悪ガキの組み合わせは楽しいです。
 春奈さんは輪郭のくっきりした踊りで、久しぶりに堪能しました。杉野さんはソワレにエスカミーリョなのに相変わらずの全力投球。若干くたびれた感じのする労働者がなんともつぼにはまってます。


Kバレエ
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(2014/10/11(Sat) 23:39:35)





  Kバレエ カルメン(2014/10/09)

ドン・ホセ:熊川哲也
カルメン:白石あゆ美
エスカミーリョ:遅沢佑介
ミカエラ:神戸里奈
モラレス:伊坂文月
スニガ:スチュアート・キャシディ

 Kバレエのカルメンでした。多分その説明が一番ふさわしいです。今まで見たことのない作品だけれど、特別斬新というわけでもない。古典とは違うけど、ベースがクラシックで踊りと演技、それから楽しそうなわき役たちがいる、いつものKバレエの作品。そんなわけで結論から言うと好きです。オペラを知らないので詳しいことを語れないのが残念です。

 白石さんのカルメンが素晴らしく美しかった!多分Kでの主役は若手公演以外はこれが初めてだと思いますが(記憶にあるのが秋元さんとのキトリくらい)、堂々としていて不足を感じませんでした。妖艶に見えて可愛らしい、色っぽいのに子供っぽい。次になにをするか分からないのが刺激的で、自分一人のものにしたいと抱きしめてもするりと腕をすり抜ける。踊りも安定しているし、うっとりするほど美しいつま先。艶っぽく誘っても下品にならない。奔放で可愛らしい。とても魅力的でした。個人的に印象的だったのが2幕の山中でのシーン。自分を独占しようとするホセを「つまんない男」と若干見捨てたように見えました。けれどミカエラがやって来て母の病気を嘆くとき、「ああ、この人はここにふさわしくない」と思ったように見えました。なんでしょうか、その前のシーンでは見捨てたように見えたのに、この場面ではホセに対する最後の愛着のようなものがあった気がしました。身内の不幸を嘆くような人を自分は巻き込んでいけないと思ったように。でも最後は周りがそんなカルメンを見て驚いてるから、「せいせいしたわ!」とばかりに周りを盛り上げる。ああ、いい女だなあと思った瞬間でした。
 ホセは終盤で火がついた気がしました。序盤の真面目さがちょっとしっくりきませんでし、踊りもそこまで派手ではないのでこちらも出方を探るような気分でした。物語が進むにつれて、ホセはどんどん変わっていく。ラストの、カルメンに執着し周りが見えなくなった様はさすがの迫力。世界が変わってしまったのがはっきりと分かった。
 神戸さんのミカエラは本当にかわいかった!神戸さんなのでもちろん華はあるのですが、なんと言うかつまらない女。今は可愛らしいけど、結婚したら良妻賢母になる未来が見える女性。1年後どころか5年後10年後どうなるか想像の付く女性。きっと最初は良き妻でだんだんよき母になって、10年後くらいには3人の子供を育てながらも微笑みや温かさを絶やさない女性になれると思うタイプ。それのどこが悪いのかという感じですが、隣に1秒先も予想のつかないカルメンがいると、一瞬ぐらつくのがわかる気がするんです。ミカエラの隣で予想通りの穏やかな人生を歩むか、それともカルメンと一緒に刺激的な人生を送るか。今まで堅実に生きてたからこそホセが一瞬迷ったのもわかる気はしました。それにしても神戸さんは最近踊りが安定指していて細やかで見ほれます。若くってかわいらしい外見は相変わらずなので、踊りの一つ一つが正確なのに、正確であるという重みを感じず軽やかなことに驚かされます。
 エスカミーリョがなんとなく変な感じがするのは気のせいでしょうか…。1幕の衣装が妙でびっくりしましたが、チラシのときからそうでした、あれ。2幕もカルメンへの贈り物を入れていたのがビジネスバッグに見えて首を傾げました。振り付けもエスパーダとどこまで差が付けられていたか謎。同じ闘牛士だからこそもっと差違を感じたかったという部分はあります。かっこいいけど重みを感じない男性と言ったらいいでしょうか。一瞬一瞬ですべてを燃やし尽くしているというのかなあ。カルメンに贈り物を渡すためだけに山中のアジトに行っただけですが、それは情熱的だけど多分瞬時に燃え尽きると思った。闘牛場の前でカルメンに口づけるけど、遠くない破局がはっきり感じられた。かっこいいけど、刹那的というとちょっと違うけど、でも一瞬にすべての情熱を燃やすイメージでした。その時はそれが本気だけど、それが長続きしないだろうと思えるというか…なんというかうまく言葉で表せません。カルメンと並んでいると本当に華やかで見目麗しいし、一瞬の情熱であれホセと対峙する力もある。とても見ごたえのある役でしたので、この組み合わせでまた見たいと思えました。

 物語として少し不思議に思ったのが2幕2場の闘牛場前のシーン。カルメンが花嫁に見えました。なにものにもとらわれない自由の象徴が花嫁・・・と思ったのですが、明らかに相手はエスカミーリョではない。このふたり、半年たたずにどちらかが飽きるか別の相手を見つけるかそんな形でごく自然に終わるのが目に見えています。じゃあカルメンはなぜ「花嫁」に見えたかというと、彼女は「そこ」を自分の生きる場所と定めたからかなと思います。「そこ」というのはエスカミーリョの隣、つまり、一瞬の情熱に命を懸けて命を燃やす選ぶ人間がいるところ。おもしろい話ですが、「なにものにもとらわれない、自由である」という生き方にとらわれている。そんな風に感じました。ホセはどうだったのかなあと思います。ホセは言うまでもなくカルメンと別の世界に住んでいる人間です。カルメンはその線を越えられないことを知ったけど、ホセはその線があることに気付かなかったのか、それともその線があったことに気付いたうえで越えようとしたのか。なんとなくカルメンを殺して手に入れようとしたよりも、自分と異なる世界に住んでいる女性がいることを理解できず、その世界を壊すために消したようにも見えたんです。(ホセはカルメンに自分一人のものになることを求めたけど、それはカルメンが生きている限り絶対かなわない)そのあたりがいまいちつかみ切れませんでしたが、何となくこの公演のイメージはそんな感じです。

 舞台としては序盤、ちょっと客席に戸惑いがあった気がしました。なんとなく盛り上がるべきところで盛り上がらない不思議な空気。哲也の踊りもそんな空気を吹き飛ばすほどの華やかさがあったわけでもなく。2場の酒場のシーンで空気があったまってきて、徐々に華やかなシーン以外も話に引き込まれるようになった気がしました。このあたり、客席が慣れていったらもうちょっと違った雰囲気になるかなあと思います。

 時間切れなのでとりあえずここまで。今のKバレエらしい作品で、この後キャストが変わってどうなっていくか、楽しみです。

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Kバレエ
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(2014/10/11(Sat) 02:21:32)





  Theater St.Gallenへの行き方

 スイスのSt.Gallenの劇場はThomas常駐劇場…もとい、地方の劇場ながらなかなか面白い演目をやってくれます。若干演出や脚本に難があったりしますが、大抵は20人クラスのオーケストラ、ドイツ語圏の著名俳優によって作られるミュージカルははるばる行く甲斐があると思えるものです。ドラキュラドイツ語圏初演、モンテクリスト伯、アーサー王世界初演がこの劇場になります。とても魅力的な劇場なのですが、レパートリー制なので同じ演目を1回の旅行で2回見るのがとても難しいのが残念です。今のところ、ミュージカルは2シーズン連続公演ということが多いです。
 St.Gallen自体について軽く触れると、ドイツ語圏でミュージカルの上演もドイツ語ですが、街中では結構英語が通じました。

(以下情報はすべて2013年11月のものをもとにしています)

 チケットは公式HPから購入できます。おうちでプリントがありますので、送料がかからないのがとても助かります。チケットを購入するとPDFがメールで送られてきますので、それを印刷して持っていくと劇場でバーコードを読み取って確認作業があります。プログラム売り場のそばに確認場所がありました。

 ザンクトガレンはチューリヒから電車で1時間程度です。空港から直接行くのがいいと思います。

 劇場は中央駅からバスで2駅ほど行ったMarktplatzから徒歩5分くらいです。一応、「公演の1時間前から終演の2時間後まで市内のバスは乗れます」とチケットに書いてあります。徒歩でも中央駅から15分ほどで、歩いて行っても特に苦にはなりません。

残念ながら良い感じの写真がありませんでしたが、雰囲気だけでも。

Marktplatz。街の中心という雰囲気。
20141005_st_1.jpg

上の写真の反対側。写真の右端に大好きなチョコレートショップがあります(Laderach)。写真にありませんが、この写真の左側にデパート、右の道にそってすぐ左側に肉屋さん(ハンバーガーがおいしいです)があります。とてもいいところなんですが、最近閉店法のせいでほとんど遊べてないのが残念です…(休みと公演の関係で日曜ばかりに行ってます)。
20141005_st_2.jpg

一番上の写真の右側の建物。この右脇を通っていきます。
20141005_st_3.jpg

地下通路への入り口。
20141005_st_4.jpg

こんな風に地面に案内があります。地下通路の中にも同様の案内が複数ありますので、案内に従って歩いていきます。
20141005_st_5.jpg

地下通路を出るとこんな感じ。
20141005_st_6.jpg

ちょっと変わった感じの、モダンな雰囲気の建物です。
20141005_st_7.jpg

20141005_st_8.jpg

 ちなみに、クロークはドイツ語圏では珍しく無料です。

 余談ですが、St.Gallenで公演を見てからチューリヒまで戻ることは不可能ではありません。ただ、日付をまたぐ可能性があるのであまりお勧めはしません。2度ほどやっていますが、空港直結ホテルでもなんとなく駅の雰囲気が悪い気がして引っかかりました。

ドイツ語圏劇場
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(2014/10/05(Sun) 22:51:43)





  スポットライトミュージカルの魅力

スポットライトミュージカルが好きです。
ドイツのFulda発のミュージカル製作会社で、基本的に活動してるのは夏のみ。
ほかの地域での上演も少しはありますが、基本的に夏のFuldaがメインの活動領域です。
演奏はテープでよく「なんで生演奏にしないの?」とつっこまれてますが、「お金がない」で基本却下されてます(つたないドイツ語調べ)。

このプロダクションの作品を見に5回渡独しております。
曲はワンパターンだしダンスは初演が21世紀だとは信じられないレベルだし、いろいろ難点があるのが分かってるのにやめられない理由は一つ。
キャストが本当にいいんです。
「いい役者が出演している」というのもありますが、それよりも楽しいのが、「その役者のための役」であり、「その役者ありきの作品」であるオリジナルミュージカルが見られるというのが楽しいんです。
もとある作品に役者を合わせるのでないから初演キャストの音域に声がぴったり当てはまっているのがまずおもしろい。
声質、ルックス、年齢、役者の持ついろんな側面がいろんなものが作品に影響を与えているのがおもしろい。
役者同士のバランスが年齢背格好に至るまで気を使われているのが楽しい。
それがオリジナルだから、そうやって役者が作品に影響を与えて、作品が仕上がるのが本当におもしろい。
役者の個性を全部引き出して、それを組み合わせて作品にしている。
登用される役者が結構好みなこともあって、この「役者ありき」で作られる世界の楽しさにはまっています。
作品も歴史ものだけれど現代に投影したテーマがないというあたりが大変好み。

いろいろな役を演じられるのが役者としてのゴールだとは分かっているつもりです。
でも、「この人のための曲」「この人のための役」「この人がいるからこその物語」というのはまたおもしろいものです。
Sabrina Weckerlin、Mathias Edenborn、Chris Murrayは「名作」と言われる作品よりこのプロダクションの作品の方が好きです。
「女教皇」ではSabrinaが力強いのにはかなく見える瞬間があるのがとても好きですし、隣にいるMathiasが情けないだめ男でもそこにもの悲しさが見えるのと色気がだだもれなのが大好きです。
また、体格のいいMathiasの隣にいると、決して小さくはないSabrinaがどこか華奢で儚く見えるのがとても好き。
Chris Murrayのフリードリヒはカリスマ的な君主、人間嫌いのくそじじい、だけどどこかチャーミングな人間…と多面的な魅力を見せてくれます。
作品自体に文句があっても、役者の魅力を余すことなく引き出してると思うので、次はどんな役者でどんな作品を作ってくれるだろうと楽しみで仕方ありません。

次に見に行けるのがいつになるか分かりませんが、「夏の航空券は高いんだよ!」と文句を言いつつ、また見に行くと思います。


スポットライトミュージカル
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(2014/10/03(Fri) 23:09:15)




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とんぼのせなか管理人ゆずの 舞台にまつわるあれこれのことやらその他いろいろが書き散らしてあるブログです。 「役者殺すに刃物はいらぬ、うまいうまいと褒めればよい」という言葉を胸にあちこちの劇場を飛び回り中。
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