観劇+αの日々
■Kバレエ 海賊(2015/05/30) マチネ
メドーラ:白石あゆ美
コンラッド:宮尾俊太郎
アリ:福田昂平
グルナーラ:浅野真由香
ランケデム:益子倭
ビルバント:兼城将
サイードパシャ:ニコライ・ヴィユウジャーニン
オーチャードホール
★★★★★
こういう公演があるからKバレエに通うのはやめられない!
そういう公演でした。キャスト表を見たときからバランスの良さそうな公演でしたが、バランスよく、まとまりよく、ストーリーも踊りもおもしろい、よい公演でした。すごく楽しかったです。
一点だけ難点がありまして…。この公演、ずっと追いかけてる兼城さんの久しぶりの公演でした。年末の「くるみ割り人形」の時から確信はしていましたが、やはりお怪我でお休みをしていたようです。久しぶりに、久しぶりに彼の姿が見られる、しかもちゃんと役が付いている。それがうれしくてうれしくて、メインの踊りでなくても彼の姿を追いかけていました。ストーリーのメインはメドーラでありコンラッドでありそしてアリであることはわかってはいたのですが、結構ストーリーそっちのけでビルバントを見ておりました…。そのせいで感想の軸が若干ずれているのはご了承ください。そういう意味でももう1回見たかったです(でももう1回あっても多分をビルバント見てる)。
冒頭、海賊たちが商戦をおそうシーン、一番驚いたのがアリの凶悪さでした。福田さんのアリが想像していたよりずっと凶悪な笑顔で笑っていました。血なまぐさい行為を望んでいる笑い。そういうアリがまず珍しく、また福田さんがそういう表現をしてくることに驚きました。
全体的にストーリーがまとまっていると感じた公演でしたが、このアリの気質がストーリーの根底にあるように思いました。宮尾コンラッドはどちらかというと穏やかな気質をしています。海賊業をしていて、人を引っ張っていく力はあるけど特に残忍さは感じない。そういう血なまぐさいところはアリが引き受けていた感じがしました。汚れ仕事をアリが引き受けているというよりはそれぞれ己に見合った仕事をしている感じ。それでもアリはコンラッドに仕えているのはわかりましたし、右腕であり、臣下でした。アリがコンラッドの行動に文句をつけることはない、そしてアリを失ったらコンラッドは海賊ではいられない。このあたりがすんなり理解できる組み合わせでした。
また、「くるみ割り人形」のときに感じたとおり、宮尾さんと白石さんはとても相性がいいです。二人が並んでいる姿を見るとしっくりくる。白石メドーラはどこかおっとりした感じの女性でした。なんとなく見ていて危なっかしいところがあって、海賊と一目に恋に落ちるのもなんだか納得できてしまう。宮尾さんと並んだ姿がすごくしっくりくるというのもありますし、また、彼女のおっとりしたところがあるから宮尾コンラッドの物腰の柔らかなところもそんなに強く感じなかったのかと思います。踊りとしてすごく美しかった、というより、二人が並んでいる姿を見るとなんだか気持ちが暖かくなるような雰囲気。洞窟での二人のパドドゥも踊りが美しいとかそういうことを強くは感じなかったのに、幸せそうな二人を見てこちらが幸せになるような思いで見ていました。
いきなり結末の話になりますが、アリと生きるためにコンラッドは海賊であり、メドーラと生きるためにコンラッドは海賊をやめたのだとすんなり理解できる組み合わせでした。宮尾コンラッドがどちらかといえば流されやすいところがあり、海賊業が天職であるアリと生きるのなら海賊でいるし、そういう血なまぐさい世界と縁がないメドーラと生きるのなら海賊をやめるしかない。前者を今まで以上に感じたせいか、後者もすんなりと理解することができました。主演はあくまでメドーラとコンラッド、でもアリは主演に等しいキーパーソンである…。最後にそう感じられた、とても良い公演でした。
浅野さんのグルナーラも魅力的でした。しっかり者だけどどこかふんわりした感じがあるというか…明らかに白石グルナーラのお姉さん。柔らかい雰囲気が姉妹だと感じさせたし、しっかり者のところがお姉さん。踊りについて驚くようなところはありませんでしたが、とらわれの哀れさも姉としての強さも感じられたので好きでした。たぶん今まで見た彼女の役の中では一番よかった。
今までの役の中で一番よかったのはグルナーラのお相手ランケデムの益子さんも同じでした。益子さんはどちらかというと「自分」を押す力が強くって若干くどく感じることがあったのですが、それを感じない。彼の気質からすると陽気な感じがするかと思ったらそんなところは全くない小悪党。金にがめつく、悪人面のよく似合う、いい悪党でした。
ベテラン陣のランケデムを思うと若干底の浅い普通の悪党の益子ランケデムですが、しっくりきたのは全体のバランスと兼城ビルバントとの相性の良さがあったからだと思います。兼城ビルバントもどちらかといえば普通の小悪党。変にこじれたところがなく、良くも悪くも浅い。コンラッドに逆らったのも腹の底からの怒りというより、どちらかといえばムカついたとか、そういう浅さを感じました。ランケデムを切り捨てるときでさえ、つまらない奴と手を組んだとあっさりと切り捨てる。そういう浅い奴だからメドーラに裏切りを暴かれて今度は自分が殺される可能性がでてきたときのおびえ方がとにかく惨めったらしくて情けない。だから宮尾コンラッドが、一時は仲間であったこの哀れで惨めで情けない男を、わざわざここで殺す必要はないって思うのも分かったんです。どちらかといえば穏やかな宮尾コンラッドなら、メドーラの前で彼を殺すわけがない。そう思えたので、なんだかファンなのにほめてるんだかいないんだかわからない文章になりましたが、ランケデムもビルバントも大変バランスがいいと感じました。
踊りについて、兼城さんはどちらかというと飛ぶ、はねるがうまい方だと思うので若干の物足りなさを感じつつも、一つ一つ丁寧な動きは見ていて大変幸せでした。実はいろいろ難しい鉄砲の踊りは、細かく一つ一つのポジションが的確にはまっており、雰囲気としてもしっとりした曲調の中にもビルバントの増長ぶりが感じられ、なかなかおもしろい雰囲気でした。
グランパドトロワ(と言っていいのでしょうか、メドーラとコンラッドとアリの踊り)は本当に素晴らしいものでした。白石メドーラは大変踊りが安定しており、軸がしっかりしてるから安定感があるのに彼女の雰囲気もあってふんわりとかわいらしい。そして福田アリ!このバレエ団に在籍してる人にとってアリという役が特別なものでないわけがなく、たった1回の公演でいかに踊りきるか…という勢いを感じる踊りでした。思い入れと気迫は感じましたが、それが空回りになっておらず、力強さを強く感じるいい踊りでした。
Kバレエはある程度公演期間があるせいか、初日は暖まってないことがまれにあります。それを全く感じない公演でした。それを強く感じたのは2幕冒頭の海賊たちの踊り。コンラッドに対して「俺たちの親分!」という勢いを強く感じました。
脇のキャストは印象的な方はこの後の公演でも変わらないのでまたの機会に。ソワレにはいなかったのは蘭さんのギリシャ娘。どちらかといえば鉄砲の踊りのほうが似合う方ですのでちょっと不思議な気持ちでしたが、色の薄い衣装を身にまとった蘭さんもなかなか素敵でした。もう一人、ソワレはビルバントだった杉野さんは海賊の男たちの一人でした。海賊たちの酔っ払いダンスを始める役割でしたが、こういう部分はうまいですね。後ろの方でなんかお酒飲まされてるなあと思っていたら、とても自然な流れで舞台の前方に飛び出してきました。なかなか楽しかったので、メインの役についてない後半でもぜひやっていただきたいです。
全体的に勢いがあり、バランスよく物語のある良い公演でした。まだまだおもしろくなる余地はあるけど不足を感じない良い公演でしたので、このキャストで是非また見てみたいと思っています。
ゆず
2015/06/07(Sun) 00:42:01
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