Kバレエ 海賊(2017/05/27) ソワレ
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メドーラ:浅川紫織 コンラッド:宮尾俊太郎 アリ:山本雅也 グルナーラ:白石あゆ美 ランケデム:石橋奨也 ビルバント:西口直弥
オーチャードホール ★★★☆
全体的にレベルが高く安定していて見ごたえありましたが、全部石橋ランケデムに持っていかれた…。 楽しみなところは色々あったのですが、久しぶりに名前にある濃いい役を踊る石橋さんということでもともと楽しみにしておりまして…久々ということで大変盛り上がり…記憶のメインが石橋さんです。マチネの篠宮さんとの比較も含め、メモ書き。というか、ランケデムという役が本当に好きなんだなあとしみじみ思った次第。
始終強面だった篠宮ランケデムと違ってよく笑うランケデム。お金持たちに愛想笑いをするのはもちろんなのですが、割とメドーラグルナーラそのほかの女性たちに対しても一瞬で強面に切り替わるわけでもない。これは篠宮ランケデムが強面でもそこまで凶悪にならない(良い意味。本当に深刻に凶悪すぎると物語としてちょっと面白くない)のと逆で、笑っていても「いい人」には決して見えないからできるんだろうと思います。数か月前に同じ場所で真っ白な衣装を着ていい笑顔で踊っていた人とは別人。本当に一瞬、見逃すレベルでまれにすごんでみせるのですが、本当にそれだけで「この人には逆らえない」雰囲気が漂うのがさすが。グルナーラとのパドドゥのシーンでグルナーラにちょっかい出して嫌がられてますが、篠宮ランケデムがすごく物を扱うみたいなのに石橋ランケデムは商品の生きの良さを確かめている感じ。前回の伊坂ランケデムは嫌がるグルナーラをせせら笑いながらも好色さがあったと思うのだけど、そういうのもなくただ純粋にグルナーラがどんな反応を示すか確かめてるみたい。そんな時にすごむでもなくせせら笑うでもなく、でも笑ってるのになんか怖いという雰囲気がありました。 パドドゥはそこそこ良かったのですが、ピルエットのサポートがずれるとかいう、この二人にしては珍しいミスがあったのが気になったりなんだったり。 前回の公演ほどビジネスマンっぽさは感じませんでしたが、それでもグルナーラお買い上げ後もパシャとそのほかのお金持たちを差別することなくちゃんと「お客様」と扱ってるのはさすがだなあと。篠宮ランケデムはちょっと差が見えたので。そして「金」そのものに異様な執着心を見せた篠宮ランケデムに対して、「金稼ぎ」が楽しそうなのが石橋ランケデム。手元に大金が入ってきたことより、自分が見初めて飾り立てた商品が高値で売れて満足という感じです。 そしてメドーラ登場で大いに盛り上がるお金持さん達に気持ちを丁寧に沈めるあたりが本当に商売上手だなあと思うのです。そんな彼が「怖い」面を見せるのが変装したコンラッドを見ているとき。鋭いまなざしで、なにか危機を察知している…のですが、ここでアリとの丁々発止。アリがひっかきまわしてランケデムが平静さを失うストーリーが分かりやすい。この場面は本当に楽しいです。山本アリはほんとに軽やかに踊りますし、そんな彼をなんとか捕まえようとランケデムが右往左往するのが面白いです。頭の良さそうなランケデムの手をするりとすり抜けていくようなところがとてもよかった。 そしてコンラッドが正体を現した後、剣を取るときは篠宮ランケデムが血なまぐさいことを好むように凶悪だったのに対し、割と冷静な石橋ランケデム。自分の商売の場だから平穏を保つために剣を取ることぐらいはできますという雰囲気。このあたりは最後のパシャの館でも感じました。 海賊たちのアジト。前回はへらへら笑って連れられてきましたが、今回は始終強面。多分こっちが素というか、営業用の笑顔になる必要がないから普段の顔になってるといった感じでしょうか。これはこれでふてぶてしく腹立たしかったです。 場面飛びまして、ビルバントに連れ出されるシーン。完全に強面で、なにを考えているかわからない雰囲気。なにをしようと構わないとか、そんなことさえも考えていることが感じられない怖さがありました。そして縄を解かれるときに一瞬下を向いて、喜びを噛みしめているかのよう。ビルバントと手を結び「お前の言うことに従う」というような顔をしつつも、多分本心は別のところにあるとうっすら感じられる不穏さがありました。そして西口ビルバントもわりと影が濃い感じだったので、大変凶悪でした…。そんなランケデムですので、形勢が変わると一気にビルバントを裏切るのは当然。 そして個人的に一番石橋さんだなあと感じるのはパシャの館にメドーラを連れてくるところ。相変わらず「納品まできっちり」のランケデムでした。でもここでも前回よりビジネスマンらしさが減って、「奴隷商人」としてバランスが良くなったと思います。「商人」だけど、あくまで「奴隷商人」というあくどさが出ていたなあと。喜ぶパシャを見てなんか満足げに笑ってましたが、それがちょっと怖かった(ほめてる)。海賊たちの襲撃のあたりは最後の見せ場、ちょっとしたソロがあるのがうれしいです(このあたりでもお仕事きっちりやります感があるのが石橋ランケデム)。チャンバラは決して弱そうには見えないのに始終アリに押され気味。足を切られ、逃げられずそこをビルバントに殺される流れはいつものことながら好きです。なんというか、この時の一瞬でこと切れるのはリアリティ的にはよろしくないかもしれませんが、なんというか、好きな終わり方です。今回ひどくあっさりしているように見えて、それが彼のランケデムにぴったりくるように思えました。
というわけで、記憶力の限界、残っている限り吐き出したランケデムメモでした。もう少し踊りのこともかけたらよかったのですが、なかなかうまく記憶に残して文字に起こせないです…。彼のランケデムの踊りは軽妙さもありつつも悪人ぽくて好きなのですが。
そのほかのこと。 とまとめてしまうのも失礼なのですが、やはり踊りの安定感がマチネとはレベルが違いますね。宮尾さんのコンラッドの中心にいるべき存在感と包容力。メドーラといるときの温かさ。そしてアリといる時も年の離れた兄弟のようでほのぼのしました。メドーラグルナーラ姉妹も大変美しく目の保養。正直、海岸で出てきた時にこんなに安定していて華やかに踊れるのかとちょっとびっくりしました、さすがに技量が違った。山本さんのアリも軽やかですごく的確な踊り、でもコンクールっぽさは抜けたと思います。 西口さんはやはり背が高いので映えますね。鉄砲の踊りとか、どちらかといえば背が高い方の蘭さんと一緒に踊るのにちょうどいいバランスで大変目の保養でした。なにを考えているかわからないところもあり、どちらかというと強面の時より笑ってる時のほうが怖いタイプかなあ。笑って聞き流したように見えて、しっかり根に持ってそう。アジトに帰ってきたあたりかなあ、どこかコンラッドに不満を持っているように見えて、機会があったらこの一団を乗っ取ろうとしているようにも見えました。 奴隷市場でのお金持ちたちは、井澤、堀内、栗山、益子。ちょっと益子さんというのが意外でしばらくわかりませんでしたが、多分彼。女の子にあんまり興味のない軽い感じかと思いきや、意外とねちっこい感じのお金持さんでした(ほめてる)。堀内さんの場慣れした感じのお金持さんも見たかったんですけどね、基本ランケデムが見たいですし、地べたにいる兼城さんが大変楽しそうだったのでそちらを見ていたらまったく目が足りませんでした。あのくせのある動き、見ているとなんかはまります、前回公演でも見たいし、そのあと映画館で見たのにまだ飽きない。たまにぴょこぴょこはねてるのもまた楽しいです。そしてそのあと女の子にちょっかい出してたり仲間たちと話してたり井澤お金持に足蹴にされてたり大変楽しいのですよ(こんなとこまで見てるから注意力が散漫になる)。 海賊のアジトのソロ、矢内さんの踊りが安定感があって魅力的でした。トリプルピルエットを危なげなく連続させたのは見事でした。 細かい海賊たちの小ネタ。コンラッドにあれこれ言われて不機嫌な西口ビルバントが酒を飲むも気に食わないようで、井澤海賊に八つ当たりでお酒をかけていたのがなんかおかしかった。気付いたら女奴隷といい感じになっている篠宮海賊、女二人の取り合いになりそうなところを、いい感じで井澤海賊が声をかけて「そんなことより踊ろうぜ」と中央の踊りの輪に入っていった流れが見事。こういう、脇の細々したアドリブのような演技からメインの踊りに入る流れがスムーズというのは本当にすごいなあと思います。杉野海賊が前回にまして少年っぽく見えたのがなんか不思議でした。ビルバントがコンラッドにけんか吹っかけた後、手下の堀内海賊が両手を地面につけさせられていたのがなんとなく堀内さんらしいなあと。なんか強そうな雰囲気なので、そうでもしておかないと危なっかしくて仕方ないという感じがしました。堀内さんの鉄砲の踊り、良さそうだったのですが完全にビルバントに気を取られていて目が足りなかったマチネとソワレでした、残念。 パシャの夢の中のシーンで宇多さんを見つけて一安心。今日も美しかったです。あとは河合さんが美しかった。蘭さんの女奴隷大好きなのですが、今回は特に憂いの表情に色気があり、素敵でした。盧さんと辻さんがすごく目に入ってきたので、良かったのかもしれません。
そんなわけで主演クラスはメインでしっかり踊り、脇も楽しく、Kバレエの海賊はいいなあと改めて思った次第です。まあ、ランケデムにいいところ全部持ってかれてますけどね!
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(2017/05/28(Sun) 02:04:25)
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Kバレエ 海賊(2017/05/27) マチネ
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メドーラ:矢内千夏 コンラッド:杉野慧 アリ:益子倭 グルナーラ:浅野真由香 ランケデム:篠宮佑一 ビルバント:兼城将
★★★★☆ オーチャードホール
勢いがあり、なにか足りないところがあるような気がしつつもそれが気にならない、よい公演でした。 まずよいなあと思ったのがグルナーラメドーラ姉妹。しっかり者でみんなの中心にいるグルナーラと天真爛漫でどこかおっとりしたメドーラ。みんなのお姉さん、みんなの妹という雰囲気がとても良かった。 コンラッドはどこか育ちのいい雰囲気。人をまとめる器量は感じるけど、荒っぽさはそんなに感じない。キャシディさんほどではありませんが、どちらかといえば元王族より。根っからの悪人という感じがしないので、メドーラが彼になにか惹かれ恐れずにその手を取ったのが不思議ではない。二人が出会ったとき、なにか物語が動いたような、これからなにかが始まるかのようなそんな雰囲気があったのがとても良かった。 アリは部下というよりは友人に近い感じ。それこそ生まれたときの身分の違いでコンラッドに仕えているけど、年頃も近く、お互い気の置けない友人という感じでした。ほっそりとした体にシャープな踊りでなかなか魅力的。朗らかな二人に対して、若干不穏な空気を漂わせているのがビルバント。ちょっとしたマイムでも、なにかこいつはやらかすんじゃないかというような緊張感がある。(書くところがないんでここに書きますが、冒頭の嵐のところで天気が変わったことを察知する動きがよかったなあと) どちらかというと口当たり軽めだったところにやってくるランケデムは問答無用の悪人。ランケデムはコメディよりのタイプと根っから悪人タイプがいますが、明らかに後者。なにかぞっとする薄暗さがありつつも、彼生来の明るさがあり、暗くなりすぎず、でも悪人で程良いバランス。 というわけで、幕あきから大変楽しい公演でした。 奴隷市場はランケデムの独壇場。切れのある踊りにどこか人を見下したような雰囲気。こじきズを見下してたり、パシャに見初められなかった女たちをぞんざいに扱ったり、女好きなところは見せずグルナーラを物のように扱ったり、そういう悪人なところがはまるはまる。パシャの相手をしているときも比較的悪人面で、パシャだけを商売相手と見ているのか、そのほかの金持ちには若干冷ややか。そんな強面の彼がパシャから金を受け取ったとき、まるで狂ったように笑うところとか本当にぞっとした。そしてそんな「悪人」タイプのランケデムだから、そういう影をいっさい感じない、からっとあかるいアリの存在が映える。くそ生意気な小僧に翻弄される姿は大変楽しかったです。勢いがある二人の丁々発止はとても楽しかった。 とにかくランケデムが楽しかったのであまり周りが見れてないのですが、河合さんと矢野さんの乞食ペアはよかったです。河合さんかわいいし、矢野さんは程良くこきたない悪人で、でもほどよくかわいくてよかった。 周りにいるお金持ちさんたちは井澤さん(だまされる)、石橋さん、山本さん、栗山さん。相変わらず石橋さんのお金持ちさんは手の位置が謎でぽやぽやしていてお気に入り。メドーラ登場後、せっせとランケデムを買収しようとして失敗しておりました(さらにその後見張りを買収しようとして失敗)。
2幕の海賊たちのアジトは問答無用で楽しいですね!魅力的な男性ダンサーが多いバレエ団ですので、本当に勢いがすばらしい。今回はメインの役にいない井澤さんもいて満足。以前に比べてがっちりした体つきなりつつも、踊りの切れの鋭さは相変わらず。久しぶりにメインの役で見たいです。 メインの海賊たちの個性もここではっきりしてきます。コンラッドはやはり生まれの良さがにじみ出る。人の良さ、それから育ちの良さ。キャシディさんの系統で、でも彼ほど存在感があるわけではないから彼以上に飛ぶ勢いのある、杉野さんらしいコンラッド。ちょっと海賊の首領だと思うと泥臭さが足りない気はするのですが、メドーラが惹かれるには程良いバランス。どちらかというと悪ふざけをしている男の子たちという雰囲気に近いかなあ。 それはアリも同じで、全く血生臭さを感じない、まっすぐで素直なアリ。恐れていた「熊川アリ好きだー!」という雰囲気はほとんどなく、コンラッドと悪ふざけをしているのが楽しいとか、そっち寄り。身分や立場の違いはありつつも、コンラッドもアリも一緒に生きていることがとても楽しそうで、よい組み合わせでした。益子さんの踊りは結構勢い任せという感じがしていたのですが、今日は体力的に余裕があるのか切れよくシャープな踊りになっていて驚きました。よかったです。 ビルバントは人の話を聞かないタイプ。自分と同じ意見の相手には同調するけど、誰かの意見に耳を貸すとかそんなことはないだろうなあ。コンラッドが手を焼いてるのが理解できます。若干短絡的なのは相変わらずでした。鉄砲の踊りの細かい足裁きはとても楽しかったのです。周りの海賊たちが足を踏みならしているときの、床をなめるような足の動きがとても好き。ただ、ちょっと「足をむやみにあげすぎるな」と言われてるのかアラベスクが妙に低いことがあったのが気になったかなあ。もうちょっと女性とのバランスが考えられたら美しいと思うのですが。 グランパドトロワは本当に華やかで楽しかった!益子さんは切れ味鋭く絶好調、杉野さんの踊りはどうしても基本に忠実であればあるほど美しく見えるキャシディさんの踊りに負けているところはありつつも勢いがあってよい。そして矢内さんの踊りは安定感があって技術的にしっかりしていてとてもよかった。軽いんだけどくるくるよく回るグランフェッテは見事の一言です。良いものをみた!と問答無用で思えたあたり、さすがKバレエの海賊。 鷹揚な感じの杉野コンラッドが女奴隷たちを解放するのはとても自然だしとても気前がいいのは彼らしい。まあ、そこでビルバントと衝突するのはとても自然。自分の言い分が通らなかったビルバントが逆らうのは当然で、でもコンラッドはそんなビルバントの気質を見抜いた上で見捨てず部下にしていた気がしました。しかし、短絡的なビルバントだったので、割と頭の良さそうなランケデムを解放したら、そりゃランケデムの方が勝つよなあとしみじみ思いました。 それにしても、杉野さんは悪役を演じると本当に20代前半か!?と思う色気なんですが、女性が絡むと健康的になるというか。グランパドトロワの時にも感じましたが、メドーラとのパドドゥではっきり感じました。しっとり色っぽいという雰囲気にならず、ほのぼのふんわりした雰囲気になるのがこの二人らしいなあと思いました。 パシャの夢の場面、振り付け変わったのでしょうか?今回から?女性が徐々に出てくるあたりも含め、以前より「パシャの手をすり抜けていく幻」という雰囲気が強くなった気がします。グルナーラの嘆きの踊りも変わったかしら。 そして連れ戻されるメドーラですが、どこかパシャが本当にメドーラに心惹かれてるんじゃないかと思える緊張感がありました。それにしても矢内さんのメドーラと浅野さんのグルナーラは姉妹感があって良いです。 最後の海賊の襲撃。相変わらず短絡的なビルバントなので、ランケデムを始末してやれやれこれで無事に元に戻ると思ってる雰囲気。コンラッドが自分に対して手を下すなんてことはないと信じていて、そういう甘さが兼城ビルバントらしいし、そういう甘さが杉野コンラッドっぽいなあと思いました。常々、アリを撃った後のビルバントがなぜ単発式の銃をコンラッドに向けたか謎だったのですが、このビルバントなら自分の勝利を確信して、手元の銃にもう弾が入ってないことを忘れるだろうなあという、妙な説得力がありました。必死でコンラッドを守ろうとするアリの美しさと、ビルバントも含め部下として守ってきたコンラッドのつめの甘さと、それからそんなコンラッドに甘えてい他のに最後に覆されるビルバントの惨めさと。きれいにまとまったいいラストでした。 どちらかといえば朗らかなコンラッドなので、アリがいなくなった今、男同士でやんちゃするでもない、別の生き方があるだろうと思えました。そしてメドーラと二人、別の世界でいきる方が彼らしいと、そんな風に感じられるラストでした。
細かいこと。篠宮ランケデムはかなり悪人でしたが、全体のバランスが変わったらコメディ寄りにもなると思うのでちょっと見てみたいです。鉄砲の踊りそのほか二人は堀内さんと栗山さん。栗山さんは案の定の安定感。栗山さんはちょっと意外でした。アジトでのソロはやはり美奈さんが美しかったです。
最後はゆるゆるとでしたが私の見える範囲ではほぼスタンディング。若手公演らしい、いい舞台でした。
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(2017/05/27(Sat) 22:34:32)
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レ・パティヌール メモ書き(2017/03/15 ソワレ)
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大変楽しかったです。 キャスト違いで見る予定なので少しだけメモ書き。
ブルーボーイ:酒匂麗
「ボーイ」という少年のかわいい感じがとても魅力的。 生き生きとした伸びやかさに本当にぴったり。
ホワイトカップル:中村祥子/宮尾俊太郎
白が似合う華やかでゴージャスなカップル。 やはり目を奪われる。
ブルーガール:中村春奈/白石あゆ美
二人ともコケティッシュで本当にかわいい! ポワントワークがフラフラしている部分がまたスケートっぽくて楽しい。 本当にかわいいんだけれど、しっかり芯の通った踊りの二人なので本当にかわいい楽しい。
レッドガール:井上とも美/岩渕もも
こちらはなんか闊達な雰囲気のペア。 岩渕さんが今まで見たことないくらい生き生きしていらして楽しかったです。
ブラウンカップルはだいたい予想した感じの踊りでしたが、西口さんがのびやかに踊っていることにびっくり。背の高い方なので、もう少しコントロールがきくようになったら見事だろうなあ。期待しています。
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(2017/03/17(Fri) 00:04:06)
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Kバレエ ラ・バヤデール(2016/11/19)ソワレ
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ニキヤ:中村祥子 ソロル:遅沢佑介 ガムザッディ:浅川紫織 ブロンズ・アイドル:井澤諒
★★★★ オーチャードホール
華やかで分かりやすい、魅力的な公演でした。 祥子さんも遅沢さんもマチネとは打って変わって年齢を感じる組み合わせ。登場したソロルを見て「早く身を固めなさい」と思うくらいはある一定の年齢。ニキヤはさらにソロルより少し年上という感じでしたが、それがとてもしっくりくる。ずっとずっと昔から、幼い時から2人は知り合いで、その頃からソロルはニキヤに憧れを抱いていたみたい。それこそ、どこか田舎の村で生まれた2人、ニキヤはその美しさが評判になり巫女として寺院に引き取られる(ニュアンスとしては「売られる」に近い感じ)ことになる、ソロルは彼女に少しでも近づくために村を出て戦士になった…なんていう物語を感じてしまう。ソロルにとって幸せとはニキヤとの短い逢瀬なんだろうとすんなり納得いく雰囲気でした。ニキヤは望んだ人生ではなかったけど、ずっと自分を忘れず会いに来てくれるソロルの存在に救いを見出しているようでした。2人が長い時間を重ねてきたということがよくわかり、これがストーリーのひとつの軸に感じられました。 ガムザッティもそこそこの年齢に感じました。この辺りはラジャが絶妙で彼女の伴侶には自分の跡を継ぐにふさわしい人物でなければならないと思いつつも、娘にふさわしく、また彼女の望む相手を選ばなくてはならないと難儀し、なかなか相手が見つからなかったように思えました。ガムザッティは肖像画(前回と同じ、熊川さんと宮尾さんを足して二で割って遅沢さんを数滴足した感じ)を見て運命の相手にようやく出会えたというような雰囲気になります。それでようやくラジャも決心をした様子。 ソロルとガムザッティが出会った時、それこそ一目会って恋に落ちるという感じでした。2人で見つめ合い、ソロルがガムザッティの手を取る仕草になんとも言えない色気を感じました。しかしまあ、ちゃんとソロルへの愛情が感じられるニキヤとガムザッティだったのですが、女の戦いは完全にソロルそっちのけでプライドのぶつかり合いなのがすごかった。ガムザッティの俗世の欲にまみれたとも言える豪奢な衣装と存在感、俗世から切り離されたようなニキヤの美しさ。見事でした。 3幕はとても華やかに。初演の浅川さんのガムザッティは年下の宮尾ソロルを包み込む感じがありましたが、今回はなんとなく力づくでソロルの気持ちを引き寄せようとしてるみたい。ソロルはどちらかといえばニキヤと別れる方向に傾いていてると感じました。まあ、俗世から切り離されたニキヤの世界に一生付き合うのは辛いだろうなあと思うところもあり、この辺りは納得。でもソロルはニキヤを思い出す、忘れられない。2人の間にあったものって積み重ねた時間だったのかと思いました。ソロルはニキヤを忘れられない。子供の頃から積み重ねたものが彼女を忘れさせてくれない。この辺りはニキヤからもそれを強く感じました。その踊りの中で、ソロルと会うことが喜びなのではなく、ずっと思っていてくれるからそれを信じていて生きてきた、それを失うかもしれないという深い悲しみを感じました。この2人の関係は切ることができない。だからガムザッティがニキヤを殺さなくてはと思ったことにも納得。ガムザッティは自分の伴侶としてソロルを閉じ込めることはできても、結局心は奪うことができない、そんなことを感じたニキヤとソロルの思いの深さでした。
そして納得のできない形でニキヤを見捨ててしまったソロルが深い苦しみの中に陥るのは当然で。阿片に手を出してしまうあたりはすごく納得。 影の王国で出てきたニキヤは燦然と輝く、女神のようでした。美しく、気高く、どちらかといえば手の届かない存在。触れるのをためらうような、本当に美しいその姿。それは長い時間をかけてソロルの胸のうちに描かれるようになったニキヤへの憧れの結晶に思えました。今までのニキヤより、ずっと美しく見えました。ニキヤの姿がソロルの憧れの結晶のように見えたから、影の王国にいたコールドたちが皆ニキヤの姿だったことが腑に落ちました。憧れ続けていたから、ニキヤの形をした幻影をたくさん思い浮かべ、その中で彷徨っているような雰囲気。物語としてはソロルの物語で、憧れ続けたニキヤをずっと追いかけているように思えるシーンでいた。ニキヤの幻の中でさまよって、ずっと長いことかけて積み重ねた思いをよみがえらせ、ニキヤの元へいってしまう。そんな物語に思えました。 照明も薄暗いのではっきりしないのですが、ガムザッティにかみついた蛇は白蛇ですよね?「白蛇」は「神の使い」とも言われていることをなんとなく思い出しました。影の王国のニキヤがあまりにも女神のように美しかったから、そこにいたのが「神の使い」であるほうがつじつまが合う気がしました。 ブロンズアイドルは井澤さん。無私というか無我というか、穢れを全く感じない踊り。一点の雑味もなく、すべてを洗い流すような美しい踊り。動き一つ一つもすばやく丁寧ですし、なにより、その澄んだ雰囲気が物語に、祥子さんと遅沢さんの雰囲気にピタリとはまっていたと思います。 最後に出てきたニキヤは本物のニキヤ…と言ったらいでしょうか。ソロルの中で神格化したニキヤではなく、本物のニキヤ。彷徨って彷徨って、ソロルはようやく本物のニキヤに再会する。幼いころからの思いがようやく成就する、ようやく幸せになれる、そんな風に感じるラストシーンでした。なにかだまされてた気がしますが、「ハッピーエンド」というような幸せな気持ちになるのがK版のラバヤデールだと思っています。そういうところが好きです。
キャストは若干の変更あり。マグダヴェヤは酒匂さん。表情も見えず顔立ちも分からないのに、兼城さんと明確に雰囲気が違うのが分かるのがおもしろい。飛んで跳ねるのは確かなのですが、どちらかといえば重厚感を感じ、物語を重くしているような感じです。おびえる姿からも、普段どんな扱いをされているかなんとなく想像ができる。 太鼓の踊りは初演から引き続き杉野さんオンリー。杉野さんがいなかったらK版のラバヤデールには太鼓の踊りがなかったのではと思っているのですが、ますますその思いが強まります。初演は気力で押し切ってる感じでしたが、迫力はさらに増しつつも、なんというか、ちゃんとコントロールが利いているような安心感があり、見事でした。ちなみに太鼓メンバー男性は本田さん以外よく分かってませんでしたが、とりあえず苦行僧にいなかった兼城さんがいたことだけは分かりました。 影の王国のメンバーも細々替わっておりました。ソリストはさすがファーストキャストは美しいなあといった感じです。春奈さんのふんわり空気を含むようなアームスに見ほれました。 踊りについて、祥子さんは大変美しく、浅川さんも堅調、遅沢さんお疲れ・・・といった感じでした。 とても楽しい公演でした。
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(2016/11/30(Wed) 01:04:40)
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Kバレエ ラ・バヤデール(2016/11/18)マチネ
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ニキヤ:矢内千夏 ソロル:山本雅也 ガムザッディ:中村春奈 ブロンズ・アイドル:篠宮佑一
東京文化会館 ★★★☆
踊り的には破綻がないけれど、淡々と進んでいく、Kバレエとしては珍しいバランスでした。
矢内さんも山本さんも踊りはとても丁寧。ただ、どうしても感情表現が淡泊で物足りない。特にソロルは踊りは本当にサポートも含めきれいにまとまっていたのですが、結局彼はなにを考えていたか分かりづらく、そのために物語が薄く感じました。ちょっともったいなかったです。 矢内さんは相変わらずすらりと長い手足で、特に足を前後に開くジャンプは足がきれいに伸びていて大変好きです。最初はもう少し華やかさがほしいかと思いましたが、楚々とした感じがまだ年若いせかんから隔絶された世界にいる巫女という雰囲気を感じさせ、だんだん魅力的に思えました。ソロルとの若々しい…子供っぽいと言ってしまってもいい恋、ガムザッティとのやり取りで自分の中にあるソロルへの強い思いに気づき、そしてその攻撃性におそれを抱く。印象的だったのは3場での花籠の踊り。ソロルの愛を信じ、その愛を抱いてそのまま寺院で巫女として生きていくように見えました。ソロルからの愛は疑っていないと思いますが、その悲しげな表情が、どこか彼の婚約を祝っているように見えました。彼は私を愛してくれている、でも私は巫女であるから結ばれることはない運命、仕方がないと、愛されている幸福と、ソロルとの別れの悲しさの狭間にいるような感じで、とても魅力的でした。だからこそ、蛇の毒で死の際にいるとき、大僧正の申し出を断る…というよりそんなこと聞こえてもいない、全く関係ないという悲しさを感じました。 ガムザッティの春奈さんは登場時はまさに愛されて育ったお姫様。若々しくおおらかで朗らかで、幸福感にあふれている。すべてのものを持っていると理解しているからこそ、朗らかでいられる。そんなまさにお姫様。だから自分の夫となるべき人が自分の知らないところで情熱的な誓いをたてていたことに怒った…という感じでしょうか。ニキヤに対し、この世界のものはすべて自分が持っていると示すような迫力がありました。悪女に目覚めた…というか支配者階級の人間に目覚めたような雰囲気。最後にニキヤを殺すと決意をするシーンはかわいらしいお姫様ではなく、王者のような威厳すら感じました。そして、このシーンの華やかで美しいガムザッティと、どちらかといえば素朴だけど清楚な美しさを持ったニキヤ…という対比は大変美しかったです。 どちらかといえばソロルへの愛情というより、求めるものは全て手にいれないと気がすまない…というようなガムザッティだったと思います。グランパドドゥが若干バラバラに踊ってる雰囲気だったのが残念。ガムザッティのソロは本当に軽やかに華やかに踊ってくださって見ほれました。
細々としたこと。 演出はほぼ変更なしだと思いますが、最後が少し変わったかな。ブロンズアイドルは最後にセンターで踊り終わってましたが、舞台下手にはけました。その後のニキヤとソロルの踊りも若干違った気がします。この場面、以前は布を使った演出があり、坂はその白い布で覆われていたと思いましたが、それがなくなりスモークになっていました。ヴェールを持ったニキヤが最初に出てきてソロルが追いかけてくる。最後は坂の上のニキヤとソロル…とここは変わりませんでした。 篠宮さんのブロンズアイドルはやはり踊りのむずかしさを少し感じてしまった気がしました。でも、昂った感情を鎮める…と言うのか、凹凸のあるものを平らにならしていくような感じがして、ラストシーンにうまくつながった気がします。途中文句を言いつつもここでブロンズアイドルで一呼吸おいてラストの二人を見ると「良かったねえ」と思えてしまうあたりがずるいです。 マグダヴェヤは兼城さん。足が骨に飛ぶための筋肉をこすりつけたようで、なにひとつ無駄なもののない細さで、見ていてむしろ恐ろしい。空中で飛んでさらにまた上に飛ぶような、重力を感じさせない跳躍。ひょいひょいと軽やかに動く中に柔軟性も感じられて、いつものように見惚れました。マグダヴェヤはほとんど表情も見えず、演技もおびえてるようなものが中心です。それでも個性が伝わってくるのがなんとも不思議です。なんとなく地べたに座ってる時にちっちゃくまとまってる感じのマグダヴェヤで、それもあってかどちらかといえば物語を深く考えると暗い役割なのにどこか口当たりの軽さがありました。ソロルにアヘンを勧める時も持ち前の軽さでひょいひょい勧めている感じがあって、逆に修行が苦しいから苦行僧ってアヘン常用者だろうかだろうかとかなんとか考えてしまいましたよ、ええ。動きの激しい踊りですがバタバタ騒がしいことなく、ずいぶんまとまっていたと思います。1回しか見られなかったのが少し残念でした。 そのほかの苦行僧、本田さん、和田さん、坂元さんは見分けがつくものの、他は全く分からず。太鼓の踊りのメンバーもおそらく苦行僧と同じかと思いつつも、本田さん以外見分けがつかず。というかなぜわかる本田さん。
そのほか細々はソワレ以降の公演で。
さて、最終日終わりまして、昇格のお知らせがありました。順団員の宇多さんが昇格されたとのことで、一人喜んでいます。以前横浜のスクールパフォーマンスの順団員の公演で見た時に、なんとなく凛々しい踊りをする方でずっと気になっていたのです(顔の覚えが悪い私でもすぐ覚えられたきりっとした感じの美人さん)。この公演でも扇を持った人たちの中にいたり、影の王国でも最初の群舞の一列目にいらっしゃいました。エキゾチックな雰囲気の似合う方だったので扇を持った姿は踊りも含め予想通り大変魅力的だったのですが、影の王国の静かな白い姿も美しかったです。いつか正団員になってほしいなあと思っていましたので、いきなりの昇格に驚きました。くるみ割り人形でも見られるものと期待しています(パーティーの時の夫人にいると私がうれしい)。
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(2016/11/20(Sun) 22:50:16)
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