★★★★ NHKホール
「ルグリと吉岡さんの手紙のパドドゥ(生演奏)にいくら出せるか」を考えてからチケットをとりました。 結果的に当たらずとも遠からず。 東京バレエ団はあまり見ないのでこのバレエ団の売りがなんだかよくわからないのですが、バヤデールはコールドの美しい新国立か足音の静かなKでみたいなあというのが本音。 ペトルーシュカは以前も見たことがある気がするのですが、そのときと同じようにいまいち波長が合わず。 スプリング&フォールは残念ながら苦手なタイプの作品・・・。
というわけで、手紙のパドドゥを見に行ったようなものでしたが、本当によかった! ルグリのオネーギンについてはもうなにも言うことがありませんね。 有意義な日々を過ごして年を重ねることのできなかった哀れな男、けれど美しさと品格をすべて失ったわけではないのがさすがと言うべきバランス。 昔はこちらの愛情をすげなく袖にした男がひざまずき許しを請うのは女の理想の一つだと、少しわかりました。 年を経ても、かつて愛した男は、落ちぶれたとしてもその魅力をすべて失ったわけではないと感じられる。 吉岡さんのタチアーナは美しい貴婦人の姿でありながらもどこか少女らしいはかなさを持っているのが好きです。 年月が彼女をあどけない少女から美しい貴婦人に育てたのはわかるけど、少女の面影が残っているから、その胸のうちにまだ情熱が残っていないわけではないのがわかる。 よくよく思い出すと年齢差のある外見の二人ですが、オネーギンは普通以上に老け込み、タチアーナは若々しいままだった・・・と思えたのか違和感はありませんでした。 二人の言葉にならないパドドゥ、堪能しました。 見に来てよかった・・・。
ボレロはどちらかというと演奏に感動しました。 今までずっとテープだったので、初めて生演奏で聞くことができたのが一番の収穫でした。 まるで遠くから音が聞こえるような冒頭部分から徐々に音が重なっていき、最後には耳をつんざくような打楽器の音! 今まで出会いたくって会えなかった人にようやく会えたような気分です。 堪能しました。 ギエムの踊りについては、彼女が「最後」と言ってからずいぶんたったことを改めて思い出させられました。 「最後」と言ったということは彼女はそのとき以上を望めないとわかっていたのでしょう。 今見るべき彼女の踊りではない。 でも、彼女の踊り、先日のカルメンなんかは高い評価を得ていた気がしますので、彼女が踊るべき時期が過ぎたわけではない。 なんとなく、進化する彼女に一般人はついていけていないように思えました。
というわけで、オネーギンやっぱり好きです。 ・・・そばまでは行ってるのだから、もうちょっといけたらいいんですけどね、シュツットガルト。
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