観劇+αの日々
■Sabrina Weckerlin(サブリナ・ヴェッカリン)とスポットライトミュージカル(その1)
国外のミュージカル俳優を紹介するとき一番確実でわかりやすいのが「日本でも上演されているこの作品でこの役をやった」という紹介の仕方ですが、前も述べたようにSabrinaはこれがとても難しい。彼女が出演するガラコンサートなどを見ていると彼女は確かに評価されているのが分かるのですが、とにかく輸入作品への出演が少ない。ウィキッドに出演したのは2008年のことですし(ドイツ語圏初演キャストコンサートのサイトで言っていますが、ファーストキャスとではないです)、MAも同じくらい古い話です(2012年の公演の時も出演はしてましたが)。最近出演したものと言えばN2Nのドイツ語圏初演くらいでしょうか。
彼女がよく出演するのは初演作品、そしてオリジナル作品がとても多いです。MAもN2Nもドイツ語圏では初演でした。ワイルドホーンのアーサー王、それから今ミュンヘンで出演しているBussiもオリジナル作品です。そして彼女が一番出演しているのは「スポットライトミュージカル」というドイツのFuldaという地方都市のプロダクションの公演です。スポットライトミュージカルはこれまで6作品を作っていますが、そのうち5作品に出演し、うち2作が初演のタイトルロールです。来年上演予定の「メディクス」にも出演すると、先日発表がありました。私はスポットライトミュージカルはとても好きで何度も見に行ってるのですが、曲はワンパターンだし脚本も詰めが甘く、極めつけがテープ演奏と、なにがSabrinaを引きつけるのかよく分かっていません。ただ、観客としては、詰めの甘い脚本も彼女が血肉の通った人間にしてくれるので、大変うれしく思っています。
少し長くなりますが、個人的趣味としてスポットライトミュージカルに出演していたSabrinaの魅力について語ります。ちなみに、このプロダクションの旗揚げ公演は「ボニファティウス」という作品で、Sabrinaも何度目かの再演で出演していてCDも数曲ですがあることにはあります。ただ、個人的にこの実在の宣教師「ボニファティウス」さんの樅を切り倒したエピソードが嫌いで嫌いでどうしようもないので、この作品についてはスルーさせていただきます。
話はさかのぼりますが、私が彼女を初めて見たのは2005年、「三銃士」のベルリン公演でした。ただ、どんな感じだったかはPatrick Stankeのダルタニアンともども、きれいさっぱり忘れています。このときはエリザベート初演コンビPia&Uweのミレディとリシリューに魅了されていて、若いカップルのこととかわりとどうでもよかったです。次に見たのが2007年、ドイツのミュージカルプロダクション、ステージエンターテイメントのミュージカルガラ公演。Thomas BorchertとPia Douwes目当てに見に行きました。このときのSabrina正直、声が大きいことは分かったのですが、力一杯ぶん投げているだけで情緒もへったくれもない、たしかにすごい迫力だけど、声が大きけりゃいいってもんじゃないという感想で、あまりいいイメージはありませんでした。
私の中での評価が変わったのが「聖女エリザベート」。実在の聖女の物語です。そのころドイツ語圏のCDをかなり片っ端から集めていたのですが、あまり派手ではないけど地味に堅実におもしろい演技をするChris Murrayが出演しているということにひかれてCDを買いました。物語は少しも聞き取れませんでしたが、聞いているうちになにか引きつけられるものがありました。そんなわけで物語を日本語で調べられる範囲で調べて、2009年、実際に見に行きました。「聖女物語」と言いますが、修道女の黒い服をまとった女性が愛を唱える作品、とは全く違います。あらすじはだいたい史実通りなのですが、Sabrinaのちゃきちゃきした現代っ子らしさが生きた作品だと思います。政略結婚であっても夫婦仲のよかった夫ルードヴィッヒとのラブストーリー、そして現代だったらNPO法人でも立ち上げてたんじゃないかと思うような働きっぷりが大変魅力的でした。Sabrinaってどちらかというと頭が良くって、強いかっこいい女性に見えることが多いです。しかしエリザベートはそんなに計算高くなく、不器用で、真っ直ぐだからこそいろいろなことを成し遂げられる反面、自分がどうすれば幸せになれるかを知らず、そして意図しないところで敵を作っていくタイプだと感じました。信仰の側面は言葉で語られたのかもしれませんが聞き取れるはずもなく、けれど彼女が「私はこれをやらなくてはならない」と真っ直ぐな目で語りかける姿には説得力がありました。宗教にはなんとなく懐疑的な私にとってはむしろ変に慈愛深き人に愛を語られるより「これが私のやるべきこと」と真っ直ぐな瞳で訴えかけてくれる方が理解しやすかったです。エリザベートは最期衰弱死なのですが、完全に弱り切ってぼろぼろで、それでも最期に迎えにきてくれた死別した夫の幻を見て、「自分は戦い抜いた」と誇らしげに笑う姿が大変大変愛らしく、ころっと彼女の魅力に落ちました。
Sabrinaの声は相変わらずパワフルでした。でもパワフルなだけでなく、孤独や悲しさ、愛(夫への愛を含む)を伸び伸びと歌う姿にかつて感じていた「声は大きいけど情緒もへったくれもない」頃の面影はなくなっていました。パワフルだからこそ強さと弱さがコントロールできて、弱いシーンでも弱くなりすぎない。力強くかっこいいけど、かわいらしい側面もちゃんと見せてくれる。そんなところが彼女の魅力なのだと、そのとき感じました。
まだぜんぜん語ってないのでとりあえず一区切りしてまた改めて語ります。
ゆず
2015/12/12(Sat) 01:24:14
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