観劇+αの日々
■Kバレエ ドン・キホーテ(2016/03/12 マチネ)
キトリ:白石あゆ美
バジル:伊坂文月
メルセデス:浅野真由香
エスパーダ:堀内將平
ドン・キホーテ:スチュアート・キャシディ
ガマーシュ:井澤諒
サンチョ・パンサ:酒匂麗
Bunkamura オーチャードホール
★★★★
年明けてから1回目のKバレエの公演です。今回、仕事とか私用とかでこの日一日しか行けなかったのが大変残念です(本来はこの日も仕事入ってきたけど却下したという事実)。
幕が開いて、さあ主演が出てくるまで兼城さんを捜そうかと思えば、なんか益子さんがいたずらしてるし、石橋さんがうろうろしてるし、修道士の格好をした池本さんが彼らしいいつもの穏やかな顔でお祈りしてるし、栗山さんっぽい人がいるし、なんか目が泳いで仕方ありませんでした。忘れてた、この作品、始終人がいるから見るとこだらけで大変なんだ・・・。どこ見たらいいのかわからないとくるくる目を回しながら、作品の楽しい空気を味わっていました(というか闘牛士たちが最初のシーンにいるとは知りませんでした、びっくりです)(ちなみに兼城さんは舞台下手側、2階部分にいて降りてきていました)。
常に目が泳いでる状態でしたが、ちゃんと舞台の中心にいた主演の白石さんと伊坂さん。まさに「ドンキホーテ」という作品らしい軽さと華やかさ。特徴的だったのが1幕の終わり、駆け落ちのシーンがぜんぜん駆け落ちに見えない。いたずらっ子のように笑うキトリなんて、ちょっとした婚前旅行くらいにしか思ってないようにしか見えない。二人っきりで泊まりがけの旅行楽しいねーという感じが、そのあとの狂言自殺にもつながる、コメディにぴったり、なんとも軽やかでかわいらしいカップルでした。お互いが本当に好き合っている雰囲気もぴったり。ちょっとやきもちを焼かせてみたり、相手を困らせてみたり、そのひとつひとつがお互いのことをわかってるなあと感じさせます。
それにしても白石さんのキトリのキュートなこと!技術的にお見事という感じではありませんでしたが(というか、1幕軸がぐらついてちょっと見ていて不安に)、その姿がいちいちキュート。笑顔が本当に印象的。柔軟性を感じさせる軽やかな踊りも大変キュート。みんなに愛されていることがわかる、かわいらしいキトリでした。
伊坂さんの踊りははじけて少しはみ出している感じ、それがこの作品の派手な空気にあってるなあと思いましたが、2幕以降のほうが華やかさと技術のバランスが整っていた気がします。すっと軸の通ったピルエットのきれいなこと!話が進むにつれて軽さがありつつも軽すぎない、ちょうどいいバランスになっていった気がします。
キトリがとにかくかわいいのと、バジルが脳天気な感じだけどはじけてて、とてもバランスがよい公演でした。技術的にぱーんと派手で、お祭りみたいに盛り上がる感じではありませんでしたが、みんなにこにこ楽しそうで、その空気に巻き込まれてこちらも楽しい気分になりました。ちなみに、片手リフトも別にそんなにも求めていないのですが、二人とも息がぴったり、危なげなく長時間の制止を見ることができました、さすがお見事としか言いようがありません。
お目当ての一人のびっくりキャスト井澤ガマーシュ。これが本当にかわいい!ガマーシュって若干お金持ちを鼻にかけているイメージがあったのですが、そういうところを感じない、本当にかわいいだけのガマーシュ。すっとんきょうなことをしているのに不思議なくらい違和感がなく、ただただかわいい。なんと言ったらいいのか、おかしなことをしている変な人というより、ただただかわいいだけの生き物。キトリへのアピールも楽しかったし、酒場のシーンのどたばた劇は最っ高に楽しかったです(バジル狂言自殺後にバジルが足を動かしたことを賢明に訴えたり、もう一度刺してみようとするいつもの動きがいちいちかわいい)。相変わらず白タイツの似合う美しい足で、マネージュとかふつうに飛んでほしいと思ってしまうところもありましたが、大変かわいいガマーシュでした。
メルセデスは姉御肌の切れ味さっぱり浅野さん。明るい感じだけど姉御肌のメルセデスで大変かっこよかったです。しかしなにより魅力的だったのが堀内エスパーダとのやりとり。堀内エスパーダはどちらかというと渋めの色男でいろいろ女の子にちょっかいを出してるのですが、最終的に感じるのがメルセデスを包み込むような愛情。花形闘牛士として決めるときは決めてるのですが、姉御肌のメルセデスすら包み込んじゃえるような器の大きさが印象的でした。年齢的にもメルセデスの方が姉さんに見えたりエスパーダに年上の余裕を感じたり、そういうのが「大人の恋人同士」という感じで、みずみずしいキトリバジルカップルといい感じで雰囲気が異なっていてバランスがよかったです。
ちなみに堀内さんはジプシーのシーンでも親分として活躍。若いはずなのに、真ん中にどーんと立ってると頼もしさを感じるのでこの役はぴったり。ジプシー女の蘭さんも色っぽく、彼女をはべらす姿も堂に入っており、短いシーンですが大変見応えがありました。ところでジプシーのシーン、前回なかったバジルの踊りが復活していてうれしかったです。意気投合してひょうひょうと踊るバジル、軽やかに飛び跳ねる伊坂バジルを見ながら、このシーンが復活してよかったとしみじみ思いました。
ドンキホーテは鉄板キャシディさん。このすっとんきょうな作品の中でもとぼけた役ですが、、不思議なことに彼がすっとんきょうな役をしっかり人間味のあるように演じてくれたせいか、彼がいることによって物語が変に浮き足立ったものになっていない気がしました。彼自身は別になにか変なことをしているつもりはない、ただ自分が信じるままに生きているだけ。それが感じられて、どのシーンがどうという感じでなく、とにかくそこにいてくれてよかったと思える存在感でした(狂言自殺をするバジルを見守るときの何事にもうろたえないところがすてき)。
ロレンツォはお久しぶりニコライさん。相変わらずのイケメン無駄遣いですが、こちらはすっとんきょうな役で愛嬌もあり魅力的。マスコットのようにかわいいサンチョは酒匂さん。ぺたりとおしりをついて座るところがかわいいし、ゴムボールのようによくはねるはねる。ドンキホーテとは主人と従者というよりはどこか老人と孫といった感じ。サンチョがドンキホーテを慕っているのはもちろん、ドンキホーテがサンチョを見守っている感じの暖かさが素敵。この三人は公演日程中固定でした。派手なシーンはそんなにありませんが、舞台上で細々おもしろいことをやってくれるのでずっと見ていたかったです。
全体としては森のシーンが若干雑なのが気になりました。どこがどうというのではないのですが、なんとなく足の動きや手の動きが荒っぽいと感じました。白鳥の時なんかは感じなかったので不思議です。
さて、闘牛士とクラシカル・ジェンツ固定だった池本さん。まあそこしかいるところないよなあと思いつつ、もっと踊りが見たいなあと思いつつ見ておりました。相変わらず良くも悪くも別世界。本当にラインそのものがきれいで、なんでもない動き一つひとつがきれいで見ほれてました。バレエって曲線の美しさだなあと思うライン。栗山闘牛士と闘牛のまねごとをして牛の動きをするところがささやかですが本当に美しかったです。本当に、反った背中が描き出すラインそのものが美しい。ジュッテ飛んでいてもひとり足の角度が違ったり、いろいろさすが。クラシカルジェンツも結婚式にふさわしい明るい雰囲気に的確な踊り、楚々とした雰囲気と、なんでもない動き一つ一つ見ほれてました。・・・まあそんなところが「・・・バジルじゃないよなあ・・・」と思わせる原因でもあったのですが。踊りがうまいことは誰が見ても明らかなことなので、彼の個性を生かせる作品と役があると良いなあと願っております(ブルーバード程度じゃもう物足りない)。
兼城さんは目立つところでは最初にタンバリンを持ってキトリと戯れるように踊ってるシーンが一番大きな役だったかなあ。軽やかに楽しそうに踊っているので見ていて心地よかったです。脇でいろいろ楽しそうにしていたので見ていて飽きませんでしたが、ジプシーにいなかったのはちょっと残念でした。相変わらずのいい笑顔、相変わらずの軽い踊りでした。柔軟性がアホみたいに高い方なので、それが生かせる役に出会ってほしいなあ・・・。
花売り娘は美奈さんと矢内さん。美奈さんは相変わらず若干おとなしめですが、的確な踊り。矢内さんは背も高く、ジャンプも軽やかで静か。腕が堅いのが若干気になりましたが、たしかに抜擢したくなる雰囲気はありました。白鳥が楽しみです。
石橋さんの闘牛士はまた渋い感じで魅力的(クラシカルジェンツ見たかったなあ)。踊りでいったら池本さんとは比較にならないのですが(失礼)、なんか不思議としっくりきます。前日エスパーダをやっていた西口さん、雰囲気がどう変わったか楽しみにしていたのですが、どちらかというとお疲れが見えてしまって残念でした。
個人的ラストのお楽しみ、ラストシーンのエスパーダ。バジルが嬉々として床屋仕事をしている姿を横目に、舞台下手のエスパーダを見るのが好き。一番多いパターンとしてはエスパーダが配下の闘牛士に闘牛士の動きを教えているのですが、今回もそのパターン。大仰なまでに闘牛士ポーズを取る石橋闘牛士とさらにダイナミックに動くエスパーダ。なかなかかっこいい姿でした。
派手ではないけど堅実におもしろいドンキホーテでした。どうやらシネマではこの公演が上演されるようでとても楽しみです。
ゆず
2016/05/14(Sat) 02:21:34
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