コッペリア(2010/10/03)
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★★★★
コッペリウス:ニコライ・ヴィユウジャーニン スワニルダ:神戸里奈 フランツ:橋本直樹
神戸&橋本のコッペリア、見て参りました! 今までずっとコッペリウスさんはキャシディさんで、これからもそうなんだろうなと思っていたら、今回は驚きのニコライさん! ドロッセルマイヤーにキャスティングされているときに気づけばよかったのですが、これはびっくりしました。 というわけで、Kバレエのコッペリアと言えばこの人の神戸さんと、初役の橋本さん&ニコライさんというちょっと新鮮な舞台になりました。
まず喜びが一つ。 指揮者が福田さん♪ 指揮の善し悪しなんて分からなかった私に、指揮によってオーケストラの、作品の雰囲気は全く違うと教えてくれた人です。 楽器の一つ一つの音がはっきりするのにまとまりがよく、ドラマティックで踊りたくなる、バレエの音楽といったらこの人でしょう!という人。 井田さんの指揮もよくなってきてるけど、やはりベテラン福田さんの音はとってもいいです。 コッペリアの、あのおもちゃ箱からこぼれだしてくる幸せそのもののような音が、きらきら輝くようにこぼれ落ちていました。
全体的にとっても楽しかったですが、後一息。 哲也も荒井さんもちょっと下り坂なのかしらと昨日は思ったのですが、改めて思い返すと昨日の二人のすごさを感じました。 (キャシディさんのコッペリウスは相変わらず絶品だったのでニコライさんがおよばないのは仕方ないと思えた) 神戸さんのスワニルダは、やっぱりこの作品に一番あっていると思います。 コケティッシュでちょっと意地悪な女の子。 そんなところがいたずら好きのスワニルダにぴったりだなと思うのです。 2幕の自由に動くようになって鏡を覗いてからが本領発揮。 鏡の中の自分に浮かれたりコッペリウスを思う存分振り回したりしながら何とかフランツを起こそうとしたり、果てはコッペリウスさんの大切な本を破いてみたり。 本当にかわいらしい。 (個人的になかなか思い通りにいかなくて最後の方で途方に暮れるあたりがとってもかわいくって大好き!) いつ昇格するのか哲也に問いただしたいです。 そりゃ荒井さんの安定感にはおよびませんが、華やかでかわいらしい踊りはやっぱり目の保養です。 橋本さんは「さすがこの役のベテランですね」と言いたくなるくらいぴったり(実際は初役)。 哲也の時も思いましたが、この作品はフランツが自然におばかで、そんなところがかわいいと思えなくては成り立ちません。 とってもおばかでかわいいフランツでした。 コッペリアからの投げキッスを受けて浮かれてるのも、彼女が好きというより「やっぱり俺ってかっこいいよね」というばかっぽさが透けて見えて楽しかったです。 いろいろほんとだめな奴ですが、そういうところがすべて許せてしまう、フランツらしいフランツでした。 舞台の上にいるとき、いちいち楽しそうに友達と笑いあってるのがかわいいし、哲也のとちょっと違う「俺ってかっこいい」オーラもかわいいし、かわいい子にふらふらついてっちゃうだめなところもかわいいし、それでもスワニルダが好きっていうのはちゃんと本当に見えるし、うん、フランツそのものだ。 哲也がお調子者なら、橋本さんはひょうきんな奴。 哲也をなぞるのではなく、ちゃんと独自のカラーがあってほっとしました。 あと一息なのはやはりそのコメディのセンスと踊り。 観客を笑わせるその0.5秒のタイミングが、あと一息でした。 昨日はもうちょっとおかしかったのに・・・・という部分が何度かありました。 一番印象的だったのが2幕最初のコッペリウスとの「だるまさんが転んだ」のところ。 二人とも初役だったからかもしれませんが、若干段取りっぽさがありました。 踊りも軽やかで伸びやかなんですが、まだ哲也の方が軽くて迫力がある。 改めて哲也の力を感じました。
さて、今回一番のチャレンジと思ったニコライさんのコッペリウス。 表面的にはとてもよかったです。 ふつうにニコライさんでなくコッペリウスさんだったし、変態おじさんでなくどこかかわいいじいさんだった。 物語の流れを阻害することはなかったし、かわいくっておかしくってほのぼのしたけど、何か分からないけどひと味足りない。 多分、それは物語の中心でないところのちょっとした仕草や表情なんだと思います。 コッペリウスさんはもっといちいちかわいかったと思う。 ニコライさんはどこか偏屈おやじの面が強いような気がしました。 しかめっ面が偏屈おやじに見えるか、どこかかわいく見えるか、その差っていうのを言葉に表すのは難しいです。 たまに笑うと、それはかわいかったし大好きなんだけど、常に笑ってたらコッペリウスさんじゃないしね。 難しいな。 それと、2幕のフランツとのやりとりはフランツともども、昨日の二人の息の合い具合を感じました。 本当にコメディは難しい!
ソロで意外とよかったのは中村春菜さん! ブライドメイド一番手の抜擢だったのですが、柔らかな腕の使い方に大きくふんわりと空気を包み込むような踊りがとっても魅力的でした。 ソリスト不足のKバレエにあって、もしかすると真っ先にソリストになるのは彼女かもしれません。 逆にちょっと心配になってしまったのが副さん。 伸び悩んでいるソリストといえば彼女と神戸さんだったのですが、神戸さんはちゃんと自分のカラーを見出し、その道にまっすぐ進もうという自信がみなぎっていた。 でも副さんは残念ながらそれが見えなくて、スワニルダの友人の中でたった一人のソリストなのに、その影がかすんで見えた。 少し前まで、ファーストソリストに昇格できるかと思ったのに、今は・・・。 好きなダンサーなのでがんばってほしいです。
さて、今回の舞台で一つ不満があるとしたら「ジプシーの登場、もっと遅くして!」ということでしょうか(笑)。 登場した瞬間から遅沢ジプシーから目が離せなくて・・・。 麦穂の踊りとか、かなりスルーしてます、ごめんなさい。 チャルダッシュでさえ怪しい。 戦いの踊りはさすがに見たけど・・・。 二日連続で言うのもなんですが、やっぱりいいですねえ、遅沢さん。 1幕なんてプリンシパルは彼だけですから存在感も違います。 踊りも少ないけど、格の違いを見せつけるかのよう。 彼は長身だから気づきにくいのですが、とても良いバネを持ってる。 登場シーンも少ないもんだから体力が余ってるのか、これでもかと柔らかで力強い跳躍を見せてくれました。 ザンレールを斜めに飛んだのって言うのかな、さらっとすごいことしてくれていました。 松根さんのジプシー(舞台復帰おめでとう!)も悪くないけど、やっぱり吉田さんに比べると上品な気がする。 そういうこともあって、遅沢さんがこのジプシー集団の「異端者」の空気を引っ張っていっているような気がしました。 カード遊びをしているところ、飲み過ぎ完全酔っぱらいなところ、スワニルダに飲み過ぎをたしなめられるときのやりとり、ジプシー娘との間の濃密な空気、お酒で服が汚されて切れたとき、酔っぱらいとして邪険にされつつも村の女の子にちょっかい出しつつ舞台はじを回り中央に戻る瞬間。 どれもとても自然で、素敵でした。 二羽の鳩の愛人が見たいんだけどなあ、やってくれないかなあ。
祈りは松岡さん。 言うまでもない、さすがの安定感です。 浅川さんが透明なら、松岡さんは空の青さ。 清々しく、美しい祈りでした。 浅川さんに比べて安定しており、その辺はやっぱりさすがファーストプリンシパル。 個人的にはもう少し腕が柔らかい方が好みかな。
いろいろ思うところもありましたが、とっても楽しい舞台でした。 コッペリアは大好きな舞台なので、橋本さんにはもっとがんばってもらってこの舞台を背負ってほしいです。 本当はあと1、2回S席で見ても良いくらいには好きな作品なのですが、今回は日程があわず断念。 また近いうちにやってくれるとうれしい!
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(2010/10/03(Sun) 22:33:18)
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コッペリア(2010/10/02)
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★★★★☆
コッペリウス:スチュワート・キャシディ スワニルダ:荒井祐子 フランツ:熊川哲也
いやー、楽しかった楽しかった! 主役三人が若干パワー不足かなと思ったり全体が若すぎていまいち迫力がなかったりしたりしたが、なんか、そういう細かい(?)ことがどうでもよくなる作品。 前回、哲也が怪我してるときに見たけど、今回の方がずっと楽しい。 それは哲也の存在かなと思う。 フランツというキャラクターの、あの浮気性だけど憎めない軽さは、残念ながら輪島さんや清水さんでは出せない(橋本さんだとどうだろう?)。 結局フランツは最後まで懲りたのか懲りてないのか分からないし、スワニルダも似たようなもんだし、コッペリウスは明らかになにも変わらずせっせと人形作り。 誰一人懲りてないこの作品には、軽い人間がメインを張るのに似合ってる。
哲也はフランツそのものなのです。 彼の中にある少年っぽさを凝縮するとフランツになると思う。 浮気者でお調子者で、それは根っからで直るものではなくて、でもそこが腹が立つんじゃなくって「もう、仕方ないなあ」と笑ってすませられるような性質。 スワニルダが好きだけどコッペリアはかわいいから投げキッスをとばすし、ジプシーはミステリアスで魅力的だからちょっと踊ってみたいし、そういうあたりがスワニルダには申し訳ないけどかわいいなと思ってしまう。 踊りについては回転はいいけど跳躍はどんどん衰えてるなあ・・・。 昔はなにをやっても素晴らしかったけど、今は「素晴らしい」踊りのパターンが少なくて、振りのバリエーションが減ったと思う。 でもフランツについてはそんなことをさしおいて、彼がそこでにこにこ笑っていれば、それでいいやと思ってしまう。 お芝居の部分もおかしかったし。 1幕の終わりのはしごを持ってくるばか姿とか、2幕のコッペリウスのやり取りとか、本当に楽しいです。
荒井さんのスワニルダは本当にかわいい。 神戸さんのかわいさはちょっと小悪魔的でコケティッシュだけど、荒井さんのかわいさは幼いかわいらしさ。 年を経るごとにどんどん幼くなるのだから、プロってすごい。 ちょっとふくれっ面してみたり、すねてみたりするしぐさがとってもかわいい。 足裁きもとっても細やかで軽やか。 個人的には遅沢ジプシーに八つ当たりをするようにしていたのがとっても好きでした。 あと、2幕で中国人形の動きをまねるところとか。 もう、本当に、目が溶けそうなくらいかわいいなあ。 麦穂を振っても音がしないとフランツが言うときも、その寂しそうな顔がとってもかわいいのだ。 フランツはそういうスワニルダの女の子っぽさが苦手のようだけど、見ている分にはかわいくって仕方なかった。 コッペリウスの家に忍び込んだり、そのほかいたずらをするのも彼女が意地悪だからと言うより幼い愚かさといった感じ。 ただちょっと気になったのが彼女の足の強さ。 荒井さんと言えばその鉄壁さが魅力だったのですが、ここしばらくその完璧ぶりにかげりが見えるような・・・・。 若干気になっています。
キャシディさんのコッペリウス。 いつ見てもいいなあと思います。 カーテンコールまで完璧に「コッペリウス」のまま。 カーテンコールで最後に出てきたのに、真ん中じゃなくってスワニルダと祈りの隣に行くのが、「男なんかの隣になんかいられるか!」というコッペリウスの気持ちそのままで素敵。 そのあと、じっとスワニルダを見ていたり、それを彼女がたしなめたり、いや、ほんと、カーテンコールまでおいしいです。 かわいいというか、マスコットというか・・・。 一歩間違えばただのきもいおっさんなのに、なんだかにこにこしながら見ることのできる不思議な人です。 動きの一つ一つが自然なのにどこかおかしい。 しかめっ面なのに、どこかかわいい。 動きが鈍いようでリフトのタイミングは相変わらず完璧。 彼が幸せそうにしていればこっちも幸せな気分になるし、困り果てる姿はどこかかわいらしく笑みがこぼれてしまう。 コッペリアが動いたと思えば嬉しそうにお辞儀をし、本気で振り回され、本を破られて途方にくれる。 ああ、やっぱりかわいくっていいなあ。 3幕でコッペリアを直してもらって、機嫌を良くして家に帰る途中、仕事の踊りの姫ちゃんとちょっと仲よさげに手を振ったところで気分がなんとなくほっこりしました。
狂喜乱舞したのは遅沢さんのジプシー! この人はこういうアウトローな役を演じると異常に光ります。 もうプリンシパルになっちゃったから踊らないと思ったよ・・・(涙)。 でも、見てみるとしみじみ分かる、この役はこの人以外に踊れない。 女ジプシー3人を束ねる存在感と、異端者であるという雰囲気。 短い登場時間でそれを明確に表現できるのは彼だけ。 できればもっと踊ってほしかったけど、作品の流れを阻害するからできないのかなあ。 ほんのわずかの彼の踊りは、びっくりするほどシャープで美しかった。 特別難しくはないのだろうけど、一つ一つの所作が、「完璧」というのにふさわしい動きだった。 ちなみに彼がカーテンコールででてきたのには笑ってしまうかと思った。 さすが、プリンシパルは扱いが違う。 (近頃なくなったけど、こういう小さな役にうまい人が出るという贅沢も、たまにはやってほしいもんだ) しかし恰好がアウトローだから、コッペリウスを囲んで盛り上がっているシーンは何となく妙な感じでした(笑)。
それにしても、荒井さんはかわいいし、哲也はおばかだし、コッペリウスさんはマスコットだし、遅沢さんは色っぽいし、ああ、神様、私はどこを見たらいいの!?
ピーター・ライト版も見たことはありますが、私はやっぱりK版が好き。 曲の順番が独特だったり、コッペリアの作品じゃない曲が入ってたりして正統派じゃないのでしょうが、話がとんとん進んでいくのが楽しい。 とても分かりやすく起伏に富んでいて、にこにこ笑っているうちに幕が下りる。 コッペリウスが主役というのはどこの版もある意味同じと思うけど、報われない学ばない、懲りずに人形を作り続けるそのひたむきさというかばかさというか、そういうところが好き。 報われるからでなく、好きだから続けるコッペリウスの姿を見ていると、なんだか幸せな気分になるのです。
2幕のコッペリウスとスワニルダのやりとりが好き。 愛する人形が動いた喜びがいちいちかわいらしい。 そして思いの外コッペリア(スワニルダ)が手に負えないおてんばで途方に暮れている姿がとてもかわいらしい。 それは幸せの姿の一つなのかなと思うと、それはそれで切なくもあるのだけど。 2幕のはじめは人形たちは好き勝手動いていたけど、2幕の終わりではほとんどその場で動かない。 けれど人形でないスワニルダは手足を伸ばし、コッペリウスの手の届かないところへ飛び出していく。 人形との対比で、スワニルダがとても自由に見えるのが好き。
3幕でコッペリウスは半狂乱になっているけど、それを癒すのがぴちぴちの若い娘さんを巻き尺ではかること、そしてきれいに着飾ったコッペリアを受け取ることというのが好き。 宿屋のおやじもなかなかナイスな男です。
この作品のコーダを見ると、何ともいえない幸せな気分になる。 私も一緒に手をつないで、踊りたくなる。 幸せが舞台からぽろぽろこぼれて、こっちも幸せな気分に、楽しい気分になる。 弾むような音楽、笑顔で踊る人々、幸せを振りまくスワニルダとフランツ、そして相変わらずのコッペリウスさん。 ああ、なんて人生は素晴らしいんだろう! そんな風に自然に思える素敵な終幕です。
さて、踊りの話に戻りますが、個人的に忘れてはならない星野姫ちゃん! 今回はコッペリアでした。 お人形のようにかわいらしい〜。 この作品である意味一番大変な役。 三幕は「仕事の踊り」を踊っていました。 相変わらずのかわいらしい踊りに癒されました。
日向さんはスワニルダの友達。 かわいらしいけど、やっぱり手足がちょっと堅いなあ・・・。
浅川さんの祈りは若干安定感にかけましたが、相変わらず美しかったです。 白という色さえ持たない、透明な踊り。 光も放たずただ透明であるという美しさが、祈りというこの役にぴったりでした。 でも、回転はしっかりお願いします。
ところでKバレエの女性ソリスト不足ぶりはもう突っ込みたくもないのですが、今回は男性もちょっといまいち。 フランツの友人にビャンバさんも伊坂さんも浅田さんもいなくって、そりゃ西野さんはかっこいいけど、ちょっとさみしい男性陣でした。 ちなみにビャンバさんの宿屋の主人は楽しかったです。 この人はコミカルな役を含め、癖のある役を演じると光ります。 (モンゴルでは王子ばっかりだったとは、なんかもったいない気もする・・・)
細かいところにつっこみはありつつも、「ま、いっか」。 完璧な舞台も大切ですが、最終的に大切なのは「いろいろ言いたいけど、楽しいから良いか」と思えることだと思います。 そういう意味で、相変わらず素晴らしい舞台でした。
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(2010/10/03(Sun) 22:24:52)
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