ロミオとジュリエット(2011/06/04) Kバレエ
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ロミオ:遅沢佑介 ジュリエット:浅川紫織 マキューシオ:西野隼人 ティボルト:ビャンバ・バットボルト ベンヴォーリオ:秋元康臣 ロザライン:松岡梨絵 パリス:宮尾俊太郎 ★★★★☆
昨年に引き続き実現した遅沢ロミオ。今年のジュリエットは浅川さん。ロザラインにキャスティングされていることを振り返るまでもなく浅川さんにジュリエットというのは意外なのですが、今のKバレエで遅沢ロミオにふさわしいのは浅川ジュリエットかなとは思います。
予想通りと言いますか当たり前と言いますか、前日の神戸&橋本と全く違う。たとえば冒頭のロザラインとのシーン。橋本ロミオはただただ年上のきれいなお姉さんにあこがれて恋の歌めいたことをささやいているのに対して、遅沢ロミオは憧れ以上の思いを彼女に抱いている。ちょっと恋わずらいの貴公子遅沢ロミオはベンヴォーリオ、マキューシオといるとちょっと兄貴分といった感じです。身長、踊り、全体の雰囲気、どれもほかの二人と質が違う。三匹の子犬がじゃれあっているようだった前日とは大きな違いです(笑)。昨日は三人を服を同じにしてシャッフルしたら分からなくなると言いましたが、今日の組み合わせはロミオなら分かります。ちょっと異質で浮き世離れしたところが魅力的なロミオでした。 対するジュリエットも神戸さんと全く違う。本当に幼くって子供だったお転婆娘神戸ジュリエットに対し、浅川ジュリエットはもう少しお姉さんで、確かにこの時代だったらそろそろ結婚を・・・と考えるのも分かりました。キャピュレット夫人が松根さんだったから、親子としてみたときちょっとちぐはぐだったのがもったいない。でも子供っぽいかわいらしさもちゃんとあって、予想よりは正統派のジュリエットでした。 バルコニーのシーンも全く違って、これだから舞台ってやめられないんだと思わされました。同じバレエ団の人が同じ振り付けを踊ってるのに、こんなに違うんですもの。昨日の二人より、若干色香の強いバルコニーでした。特にロミオの方がジュリエットより先に進んでいる感じがしたのが印象的。ロミオが幼いジュリエットの手を引くように、少女のジュリエットが目覚めていくような組み合わせでした。ちなみに、踊りの安定感はさすがプリンシパルでした。ほんのちょっとした部分の安定感が別格。もちろん(見てないけど)マルケス&哲也には負けるんでしょうが、やっぱりこの二人はさすがだと思わされました。 神戸&橋本が結構異端に感じたので、今日の組み合わせは異端といえどけっこうスタンダードに思えました。ロミオは若干無骨だけど、Kバレエらしい腕白さやかわいさもあるけど所作が本当に美しい貴公子だし、ジュリエットはちょっと大人びているけれどかわいいし、毒薬を飲む前、幸せな時間が取り戻せると思っているように見えました。 マキューシオは西野さん。死んでいく演技はやっぱり橋本さんに比べると助長ですが、軽やかな感じは好きです。ベンヴォーリオとよく似てるので、舞踏会で二人で踊ってるところが好きでした。 ベンヴォーリオは秋元さん。昨日までマキューシオをやっていたせいか、若干見分けがつかない(苦笑)。とても軽やかで楽しいベンヴォーリオでした。ひょうきんで弟分という感じが好みで、マキューシオより好きでした。 ロザラインはお久しぶりの松岡さん。松根さんもよかったですが、当たり前ですが格が違います(階級が違うんだから当然)。やっぱり華やかで美しいです。ロミオたちを軽くあしらう姿すら魅力的。ティボルトと並ぶとロザラインの方が背が高いかもと危惧したのですがそんなことはなく、堅物ティボルトと華やかなロザラインはきちんと似合いのカップルでした。やっぱりこの二人好きです。そりゃロザラインは軽い女で男好きですが、ティボルトのことは本当に好きだったと思うのです。ティボルトの死後の嘆きは本物だったと思う。それはモンタギューへの憎しみなんかではなく、純粋に愛する人を失ったものの嘆きだと思う。騒ぎを見守っていた街の人たちになにが起こったか問いただし、振り払われ、嘆き苦しむ姿を見て、そう思いました。ティボルト自身だめな奴だと思うのですが、でもロザラインは男好きでもやっぱりティボルトが一番好きと思える、そんな二人でした。 ティボルトは本日もビャンバさん。写真を見たときは大変違和感がありましたが、すっかり見慣れました。元々おもしろい個性を持っていて演技部分が好きだったので、今回今まで以上にすらりと細くなって足の指先までシャープになっていたのがとてもうれしい。ロミオとのチャンバラシーンは昨日以上にすごかった。マキューシオが死んだ後のロミオの顔が、うつむいた顔を上げた瞬間のその表情が、何かにとりつかれたような、何かを失ったような、なにをしてもおかしくないそんな雰囲気があった。そしてその後のティボルトとのやりとりもすごかった。今までこのシーンはティボルトが若干押されているイメージがあったのですが、そんなことはなかった。二人とも本気でやっているので、どちらが勝っても負けてもおかしくないように見えました。だから、その気迫がとても怖かった。今日は死に際はちゃんと剣が刺さってて一安心。でも、このシーンはティボルトの迫力が本当に怖い・・・。 演出の変更として気になっていたティボルトの死後、キャピュレット卿がモンタギューの旗を破らなくなったこと。あのシーンを見ていると両家の溝がより深くなった感じがしていたのですが、それがなくなったのが結局この悲劇を両家の争いという形でなく個人の問題にしたのかなと。うまく言えないんですが、墓所でジュリエットの亡骸を残していくキャピュレット卿を見たとき、彼女の死を両家の争いによって生じた問題でなく、家のために彼女に結婚を押しつけようとした彼の罪の報いのようにキャピュレット卿が感じているように思いました。キャピュレット卿があまり嘆いてなかったのは、起こった出来事が自業自得であるからと、苦しくも飲み込んでいるからだと感じました。
そのほかの方々。まず、昨日のジュリエット神戸さん。私は彼女の「仕事きっちり」の職人芸に近頃惚れ込んでいます。昨日はヒロインとして舞台の中心にいたけど、今日はちゃんと脇に回ってる。だからといって存在感がないわけじゃない。ちょっとした踊りでそれこそ0.1秒の違いでしょうが動きに余裕があり、安定感がある。腕の動きも優雅。ジュリエットの死に驚き嘆くシーンも一番自然。小さい役だけどちゃんと彼女の魅力が詰まっていて、うっとり見ていました。 この日のびっくりキャストは伊坂さんのマンドリン!え、ちょっと、伊坂さん休まなくていいの!?あの天性ともいえる明るいキャラクターはオレンジの衣装でも健在でした。マンドリンが出てくると浅田さんを見なきゃ伊坂さんを見なきゃでも秋元さんも西野さんも今日だけ!と思って視線がさまよって大変でした(笑)。
細かいところいろいろありましたが、一番の感想は「楽しかった」です。私自身が元々この物語をロミオとジュリエットのラブロマンスとして見ていないせいもあるんでしょうが、特に物語り前半の皆が楽しそうに踊ってるシーンは本当に楽しかった。楽しくて、楽しくて、やっぱり私はKバレエが好きなんだなという意味で満足した公演でした。私はこの演目は正統派ではありませんがこのバレエ団に似合っていると思っているので、これからも再演を続けてほしいです。
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(2011/06/10(Fri) 00:34:07)
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