Jekyll&Hyde in Hagen(2011/07/03)1幕
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ご存じの通り、J&Hはプロイダクションによって演出も、選曲も異なります。それがおもしろいところであると思っているので、一体どうなっているのかわくわくそわそわ行きました。そんな私を待っていたのは、J&H史に残してもいいんじゃないかと思うほどのとんでも演出でした。みんな〜、これ見ようよ〜、私と一緒に「ありえない!!!」と叫ぼうよ〜!
場所はドイツのエッセンから電車で30分くらい。ガイドブックに載っているのっていない以前の普通の街です。特にこの街の劇場の舞台が評判が高いわけでも、話題のキャストが出るわけでもありません。ただ、私の動ける日程でJ&Hが見られるのがここだけだったので行ったまでです。
まず、この演出は現代版です。みなさまスーツだったり白衣だったり、現代的な衣装を着ています。また、劇場が劇場なので皆様ミュージカルというよりオペラ的な歌唱です。ちゃんとミュージカルっぽい人も少しはいますが、アンサンブルはオペラだなという声でした。セットはちょっとモダンな感じのする病院。真ん中にある水槽が印象的なスタイリッシュな固定セットで、ここから場面移動はありません。この演出の特徴、この3点については特に不満もありませんし、これはこれでおもしろいと思っています。オペラ的な歌唱についても、「ドイツの町の劇場」みたいなところであればそうだろうと思っていたので納得済み。場面転換がない点についてはもう少し工夫してほしいかなと思いましたが、工夫すれば乗り切れるかなという範囲でした。だからちょっと期待してたんですが、ふたを開けたらとんでもないものが出てきたんですけどね(笑)。
音楽についてはさすがでした。ミュージカルならもう少しキレがほしいかなと思うところもありましたが、歌手にぴったり合っていましたし、聞かせるところはちゃんと聞かせてくれる、ワイルドホーンにぴったりの重厚な音!教会の鐘の音を思わせる前奏のあと、病院と思わせる場所で電話が鳴ります。出てきたのは黒い服に白衣をまとったパンチパーマの男・・・え、ジキル?絶えずポケットに手を突っ込んでいるため、若干感じの悪い先生です。このころはジキルはどういうタイプなのかつかもうとしていましたが、今となってはそんなことどうでもいい(笑)。最初の父上の話は電話で行われます。これが意外とぴったりと来る。最初の曲は「Ich muss erfahr'n」。訳がウィーン版と違ってちょっと戸惑いました。でも、この曲はとても好き。 続いて「Fassade」。場面転換がないので、同じ場面にいろんな人が集まってきます。最初はリザとジキルの婚約パーティーかと思ったのですが、パーティーだとは思うのですが、二人のためのものではないように感じました。白い猫を抱えた黒いドレスの印象的な高慢そうな女性がいるとおもったらビーコンズフィールド夫人でした。いかにも彼女らしい高慢で鼻もちならない雰囲気。早速盲目の男性(司教)に猫ちゃんが手を出してトラブル起こしてました。アンサンブルの一部の方はマイクをつけてませんでした。小さい劇場、オペラ畑の人ということで、声は十分に響いていたと思います(最前列なのでよくわからず)。こういうところは好きでした。オペラ畑の人がミュージカルやるのは複雑な気分じゃないかと思いつつ、この珍しい取り合わせが結構しっくりきてよかったです。(ちなみに、東洋人の男性を2名ほど発見。感覚的には中国人っぽい気がしました) アンサンブルさん達が去って病院のシーンに。サイモンは一目で分かる、金髪長身で若くていけ好かない感じのする見た目のいい9頭身でした。昨日からなんかスタイルのいい男をいっぱいみてる気がする!サイモンがいけ好かないのはいつものことですが、ジキルもなんか不良医師って感じでいけ好かない(苦笑)。 ジキルとアターソン。アターソンはアターソンだかダンバース卿だか分からない恰幅のいい紳士でした。いかにもオペラ〜な歌い方をする人でしたが、人当たりがよくてジキルに兄貴風吹かせているあたりが結構好みでした。 ジキルとリザの婚約パーティはカット。サイモンが個人的にダンヴァース卿を訪ねてきた感じのシーンあり。リザに未練たらたらのサイモンをダンヴァース卿がうまくなだめる感じでした。 リザが登場してびっくりした。ボブショート、オレンジのミニスカワンピース、ロングブーツに膝まで来る長いファー、そして緑に染められた革のコート!確かにお嬢様と一瞬で分かる服装でしたが(どれもこれも金がかかってそう)、え、でも、リザってこういうキャラだったっけ?箱入りのお嬢様というよりはちょっと遊び人風。水槽の金魚に餌をやってたらサイモンに絡まれ、水槽用の網で水をひっかけておっぱらっておりました。それはいいとして、曲の最後に足でジキルを誘っていたのにはびっくりです。サイモンじゃなくても切れます、というか、リザってそんな子だったかしら?ところでこの曲の中でリザがサイモンに「若いブロンドの子でも探したら?」ということをいっていてるのですが、それは「若くてかわいい子」という解釈でしたが、これ、「若くて頭の軽い子」という意味だったのかもしれないと今更感じました。 爆笑しすぎて歌どころじゃなかった「Nimm mich wie ich bin」最初は良かったんですよ。不良ジキルがリザに甘えるところなんてちゃんと恋人同士に見えて、これなら二人が互いに惹かれるのも自然だと思えた。何というか、普段突っ張ってる男が自分に対してこういう風に甘えてきたらそりゃほっとけないよねという感じ。二人とも声はきれいだし、途中までは良かった。リザがジキルのジャケットを脱がし、ジキルがリザのファーをとり、色っぽい雰囲気にこれからどうなるかと思ったらリザがひざまずいてジキルのズボンに手をかけたときはもう吹き出したくて仕方なかった。後ろ後ろ、ダンヴァース卿いるから!歌い終わっても、客席は拍手していいんだか笑った方がいいのか分からないような妙な雰囲気でした。壁をたたいてダンヴァース卿は自分の存在を二人に知らせるんですが、殺意に満ちた音でした、当然だ(笑)。そしてこんなに雰囲気の悪いジキルとダンヴァース卿の会話も初めてだ。「彼は私と結婚するの、お父様とじゃなく」を聞いてのダンヴァース卿が本当に自分でなくて良かったと思っている感じがします。たぶん嫌いなんでしょうが、それは花嫁の父だからという感じでもなく、人間的に彼が好きになれないというか、まあ、当然だよなあというところがありました。そのあとジキルとアターソンが夜の街に出かけていくんですが、明らかにノリノリで出かけていくジキル・・・。なんというか、誠実さのかけらもないジキルです。 幕が下りて、幕前でルーシーと女の子達が歌っています。お客さんはジキル達を含めてなし。曲の最中の男達の合いの手はオケピットからあがります。このあたりの工夫は好き。「Bring on the」は英語言語そのままでした。黒のボンテージのMaricelがとってもセクシーだけどかわいらしくっていいわ。手の動きや腰の動きかがなりきわどい感じです。曲のあとに出てくるスパイダーが、短いシーンなのに素晴らしくインパクトがありました。歌もせりふも少なくってもったいなかったです。背は高くないけど、腕の入れ墨と相まって押しの強い雰囲気でした。そして上手の方でアターソンが帰ろう帰ろうといってるのに帰らないジキル。アターソンを先に帰してルーシーと話してるのですが・・・ええとこのあたり聞き取れませんでしたが、どうしてもジキルが本気でルーシーに惚れちゃったように見えでしまいました。この段階で自分からキスしちゃだめだってば・・・。「友達が必要だったら・・・」といっても「友達じゃないだろうが!」とつっこみを入れたくて仕方ありませんでした。ジキルが去ってからもうれしそうに、どこかはにかんだように名刺を見るルーシーはかわいかったです。 そして病院に帰って「Dies ist die Stunde」。前奏の曲がなくってびっくりでした。あの曲もいい曲なのにもったいない・・・。絵の裏の隠し戸棚から薬を出し、ビデオをセットするジキル。このビデオを使って変身のシーンをやることはプログラムを見ていて分かりましたし、現代ものをするなら当然かなと思いましたが、せっかくのワイルドホーン先生の最大の名曲(多分)、もうちょっとじっくり歌ってほしかったなあ。 そして薬を注射して「Die Verwandlung」。この舞台は半分くらいオペラだと思ってみていたので動きがあまりなかったのは気にならなかったですが、やはりちょっとさみしい。しかし、外見の変化が全くないまま「ハーイド」と言われても、なにをどうつっこんだらいいのか悩みます。 声の使い分けは良かったと思います。なんというか、使い分けているという力の入った状態でなく、でもちゃんと別の人に聞こえる声。音域が違うのでしょうか、ハイドの方が聞きやすい声質でした。そしてその場で「Welch Gefuhl, lebendig zu sein」名曲2曲続けてです。私はこっちの曲の方が好きなんですが、これまたつっこむのに忙しくて聞きそびれた・・・。いい声だと思ったんですけどね。この演出でプールは執事でなくちょっと貧相な感じのするお医者さんです。この曲の始まりでいつものように金魚に餌をやっていたら案の定ハイドに首を捕まれて水槽に沈められる・・・本当にプール役の役者さんの顔を水の中に突っ込んでました・・・。水しぶきがすごくてびっくり。このまま殺されちゃうのかと思いましたが、ビデオの三脚を持ってプールが応戦したりなんだりで結局一命は取り留めました。しかしここまでビデオに撮られてたから証拠がありまくると思うのに特にジキルの状況に変化なし。ただ、このあとプールがジキルの使いっぱしりになるのはこいつに逆らったら殺されるという感覚だとは感じました(と真面目に考察をしていた時が私にもありました)。 奇行に走るジキルをなだめるアターソン。このアターソンは結構好みでした。恰幅が良かったりジキルより結構年上というのはオペラ補正ということで若干頭の中で修正すると、ちょっと兄貴風を吹かせる友人という雰囲気が気に入りました。リザをなだめるところも、ちょっと年上のお兄さんのようで好感度高かったです。4重唱での声の深い響きも良かった。「Henry,bitte〜(ヘンリー、頼む)♪」という声がよく響く響く。ここで歌唱力が印象的なアターソンというのも珍しいです。 プールが戻ってきてルーシーを部屋の中に入れます。ルーシーの服は本当に現代風で、かわいかったです。傷の手当てを頼みにきたと言うより、寂しくなってジキルを訪ねてきた感じでした。ジキルはルーシーの傷の手当てをするのですが、腕の傷にキスするジキルにびっくりしました。どう見ても誘ってるようにしか見えない・・・。そして二人で退場していくわけですが・・・なにする気だジキル・・・(このシーンの舞台写真をミュージカル仲間に見せたところ、全員「デンジャラスゲーム」だと言ったところからどんなシーンか分かっていただけるかと・・・)。このあたりのことが全く信用のおけないジキルでした。1幕の時点でルーシーに手を出す(決めつける)ジキルって前代未聞じゃなかろうか・・・。そして、ルーシーもジキルとハイドが同一人物なことに気づいて、お願い。 そして病院に盲目の司教が訪ねてくる。照明が落ち、薄暗い空気の中、司教は杖を奪われ、それで殴られた後窓際で刺殺されます。ガラス窓に血の跡が残る。とても分かりやすい、自分を馬鹿にした者への復讐でした。自分の膝元で証拠たっぷり残して殺害をしているわけですが、後始末はプールがやったと勝手に推測してました。そういう描写はありませんでしたけど、何となくそう思いました。
二幕は普通のJ&Hになる・・・そう思っていた時期が私にもありました・・・(笑)。2幕に続く予定。
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旅(2011/07/02-2011/07/10) | Link |
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(2012/03/11(Sun) 14:40:30)
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ミュージカル・キャリアコンサート・PartT「Try to remember」(2012/03/04)
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ヤマハエレクトーンシティ渋谷 出演者: 宝田明 / 光枝明彦 / 流けい子 / あぜち守 / 世古潤一 / 宮本竜圭 / 沢木順
★★★★☆
「60歳未満の若造は放っておいて、ミュージカル界でキャリアを積んだベテランでコンサートをしよう!」というテーマの元に開かれたコンサート。全席自由、会場は150人とか200人しか入らない小ぢんまりした場所、楽器はエレクトーン1台。常日頃、ドイツのSound of Musicのコンサートをうらやましく思いながら指をくわえて見送っていた身の上ですが、日本にもこんなに素敵なコンサートがあったのかと開眼する素晴らしさでした。トークは達者だし、皆様歌に若い勢いはなくともちゃんとパンチのある音階のしっかりした、表現豊かな歌唱力をお持ちで、ただただうっとり聞き惚れました。だって、全員ちゃんと背景の見える歌を聞かせてくれるんですもの・・・言う事ありません。 惜しむらくは、彼らの思い入れのある作品と私の好きな作品の時代と場所が違うこと。やはり私は欧州大陸側のミュージカルが好きですけど、彼らにとって名作ミュージカルはやっぱりWE、BWの英語ミュージカルなのですよね。ちょっと残念でしたが、それ以外は本当に楽しいコンサートでした。ただ、あまりに楽し過ぎて、どうして今の日本のミュージカル界は・・・と思ってしまったのも事実(苦笑)。沢木さんをうまく使えなかったのは日本のミュージカル界の損失だと、今でも思ってるわけですよ・・・。歌唱力はそりゃオペラ歌手には劣るかもしれません。けれどこの年齢になってもしっかり広い音域をキープし、日本語をしっかり聞き取れるように歌い、歌でなく演技として歌うこの方々はのようなミュージカル俳優、やはり私は大好きです。いつかこの方々に日本ミュージカル界の問題点とか語ってほしいわー。「セルバンテスをやりたいと言ってはいけない」とか、禁句が多すぎてとてもできそうにないけど(笑)。
印象的だった曲をいくつか。 マイフェアレディの「運が良けりゃ」。誰が歌うのかと思ったら、まさかの合唱(笑)。これがまあ、男性キャスト全員にはまるはまる(笑)。全員遊び人というか、なんだろうな、日本人離れした軽やかさを持ってる。こういう人たちだから、ここまでこの業界で生き残ってきたのかと、しみじみ。 サウンドオブミュージックの「Climb every Mountain」。もーーーーー、素晴らしかった!!!!サウンドオブミュージック、映画時代からの大ファンのお母様も拍手喝采!黒いドレスに黒いショールが本当に修道女のようで、その高く響く声が祈りであり、厳しき母の導きであるように思えました。美しくて包容力があって、厳しさと、愛と、祈りと、すべてがその声にありました。 サウンドオブミュージック「エーデルワイス」。この曲は結局一つの花の歌ではなく踏みにじられた故郷を思いながら歌った歌なわけですが、そういう悲しさがにじみ出ていました。故国への深く静かでおしつけがましくない愛を感じました。 シャンソンの「ジャッキー」。歌詞をすっぱり忘れてる鳥頭ですが、とても気に入りました。物語性のある歌を、情景を見せてくれる人が歌ってくれれば気に入らないわけない! ラ・マンチャの男「見果てぬ夢」。若干ぷるぷるしすぎのおじいさん演技が気になりましたが、歌詞がガンガン心に届く。実りがたい夢を、敵の多い道を、この人は歩んできたのだろうと思わせる。夢をかなえることが大切なのではなく、その道のりが大事。そのことをしみじみ考えさせられた。 タイタニック「Still」。元から大好きだった曲なんですが、やっぱりいい歌だ〜。包み込む光枝さんの声と高貴な流さんの声がまさに品のいい老夫婦でした。こんな年の取り方って、人類の永遠の憧れだと思うの。 美女と野獣「愛せぬならば」。ちょっと大仰だったのでもう少し演技をおさえてほしかったけど、でも、ノーメイクなのにそこに野獣がいた・・・。そこに至るまでのあらすじを解説するレベルの入れ込み。「彼女を愛することができなかったら、もう滅んでも構わない」。醜い姿でも、愛する心は尊いと・・・ああ、カジモドやってほしかった・・・。細かいところなのですが、ほんの少し触れただけだと思ったのに彼女の服の袖を引き裂いたという演技がとても心に来ました。彼女を傷つけてしまった自分に、改めて傷ついているようでもあり、そしてそれでも愛している自分のことに気付いたようでもあり。 オペラ座の怪人「ミュージックオブザナイト」。優しく包み込むような歌声が美しい〜〜〜。もうおじいちゃんの年齢なのに、こんな高低差のある歌が歌えてしまう不思議。ファントムにしてはいい人さが前面に出てしまってるかなと思いましたが、コンサートとしてその歌声を堪能しました。 ファンタスティックス「雨が降る」。実は全く見たことのない作品のひとつ。少年少女の恋を先ほど老夫婦を演じた二人がやってるのにこれはこれでしっくりくるのが不思議。湿った空気、二人だけの世界。独特の空気感があって、面白かったです。 屋根の上のバイオリン弾き「サンライズサンセット」。なにが驚いたって、最後の7人のハーモニー。これだけの人数がいて、声の美しいハーモニーを楽しめるって珍しい・・・!
というわけで、大変お得なコンサートでした。調子に乗って、是非次回もやっていただきたいです!
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(2012/03/04(Sun) 22:56:42)
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