独断と偏見によるウィーンミュージカルコンサート2来日キャスト紹介 その2 Yngve Gasoy-Romdal
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私事になりますが、ここ2年ドイツの夏劇場にはまっております。今年も7月にいく予定でした。ウィーンミュージカルコンサートがあっても、その合間をぬって、そう思ってました。Yngveの来日が決まったとき、私は旅行の日程を秋にずらしました・・・。彼が来るなら、半端な気持ちではいられませぬ・・・。
彼の登場によって、「ウィーンミュージカルコンサート」は「ドイツ語圏ミュージカルコンサート」の色が強くなってきました(そしてKevinの登場で決定的に)。彼の代表作はなんといってもウィーン初演時の「モーツァルト!」のヴォルフガングファーストキャスト。そもそもドイツ語圏版としては1枚しかCDのないこの作品、ある程度コアなミュージカルファンなら彼の声を聞いているのではないかと思います。ちょっとのどに引っかかりのあるような、独特の声のヴォルフガングです。その後の彼は「ジーザス・クライスト=スーパースター」のコンサートには出ていましたが、ウィーンの大作には出演していなかったと思います(コンサート等については不明)。近年はドイツ語圏、それも地方公演が多いような気がします。ヴォルフガングの後はケルンの「ジキル&ハイド」のタイトルロールやオーバーハウゼン、ベルリンの「美女と野獣」の野獣をやっていたときもありましたが、最近はめっきり地方劇場での出演が多くなってきています。しかも夏場のみということが多く、旅行者としてはドイツに行ったとしてもなかなか会えない役者さんの一人です。 最近のYngveを見る機会に最も恵まれているのがテクレンブルクの野外劇場です。「エビータ」のチェ、「三銃士」のリシリュー、「マリー・アントワネット」のカリオストロ。ミュージカルファンのなかでも彼に対する評価はとても高いようで、DaCapoというミュージカル雑誌の人気投票の「短期公演部門」では上位常連です(昨シーズンは2位)。ちなみにテクレンブルクとはドイツの地方都市で、ローカル路線に乗って人気のない駅で降り立ちそこから日に数本のバスかタクシーで15分位という、陸の孤島のような場所になります。こんなところにはるばる行かなくては見ることのできない役者さんを日本で見ることができるなんて・・・。本当にうれしいというか、未だに信じられません・・・。
彼の魅力はなんといっても「マイクいらず」とうたわれるど迫力の声。ちょっとしゃがれたような声なのですが、とてもよく通り、野外劇場という音響としては役者にとってつらい場所でもその独特の声を響かせています。また、普段は声の迫力がすごすぎて忘れがちなのですが、表情の付け方や演技もとっても細やか。ちょっとしたときに見せる表情は演技のうまい役者の見せるそれと等しいと思っています。若い頃は故国ノルウェーでマリウス、ラウル、トニーなど若手青年らしい役も一通りこなしています。また、シンデレラの王子役で来日を果たしていたりします。今はどちらかというと癖の強い役を演じていますが、声色が独特なのに結構どんな役でもできてしまう、オールラウンドな役者さんだと思っています。 私が彼をみたのは2回。ベルリンの野獣とテクレンブルクのカリオストロです。ベルリンで見たときはその身のこなしやちょっとした仕草なんかがとても少年ぽく、そしてそれが王子になっても変わらず、彼はヴォルフガングを演じるにふさわしい永遠の少年なのだと感じました。・・・と思っていたのですが昨年久しぶりに見たらちょっと小憎たらしい少年の面差しを残しつつも、狂言回しとして物語を回している姿が素晴らしく、この人もいっちょ前の大人になったのかとしばし感慨を受けました(テクレンブルク版のカリオストロは本当に狂言回しと言った風情で物語を回していますし、物語の転機になるわき役のちょっとした行動・・・かと思いきやそれはカリオストロだったということが結構あって、大変おもしろい役所でした)。私が見たときは自慢の歌声がそれほど響かず、それでも十分満足のいく歌声と演技でした・・・と思っていたら翌日に見たミュージカル仲間曰く相変わらずのマイクいらずの声だったようで・・・是非その声を聞きたいと思っています。 今年はテクレンブルクの出演予定者に名を連ねていないのでどこか別の野外劇場に行くかと思えば、予想外の日本での出演。とても器用な役者さんなので、演じればなんでもできてしまう気がします。どの役を演じるか、とっても楽しみです。 ちなみに昨年行われたミュージカルガラのドイツツアーでは「レベッカ」のマキシムや「Tanz der Vampire」のクロロックのパートも歌っていました。実際の公演では演じていませんが、今回のコンサートではマキシムも見ることができるのではないかと楽しみにしています(クロロックも見たかったけど、Kevinがいますし)。
※参考資料 ・公式サイト ・Wikipedia ・facebook
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欧州大陸側来日 | Link |
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(2013/04/16(Mon) 23:47:16)
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『Simple Symphony』『Promenade Sentimentale』『ベートーヴェン 第九』
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3/13 ソワレ ★★★★ 3/14 ★★★★★ Bunkamura オーチャードホール
結論から言ってしまうと哲也はストーリーテラーではあるけど振り付け家ではない、ソリストクラスのダンサーが足りないけれど若手で目を引く人が増えてきたので楽しみ・・・このあたりでしょうか。 ちなみに土曜そはれはそこそこの楽しさだったのですが、日曜日は心の底から楽しかったです!1幕と2幕はいうまでもなく、第九自身にもいろいろつっこみたいところはあったのですが、それらはすべて細かいことだと流せるくらいには楽しい公演でした。オーケストラとコーラスが大変美しく耳が幸せで、それだけでなくバレエが楽しくてこんなに幸せな時間はないと思えました。楽しかったです。
「Simple Symphony」を一言で言ってしまうと省エネ版ラプソディー。3組の男女がそれぞれ踊るのですが、背景のせいかなんとなくラプソディーを思い出します。けれどラプソディーに比べて人数は少ない・・・のですが、その質の面でもちょっといまいち・・・。メインの一組がどれだけ息が合っているかというのがこの作品のポイントだと思うのですが、それが感じられない。荒井さんは相変わらず鉄壁です。ちょっとした足さばきや手の動き、手首の柔らかさも音楽の広い方も、うっとりするほど美しいです。うまい下手のレベルでなく、音を拾うときのちょっとしたニュアンスが、そのときの手首の動かし方とか表情の付け方とか、ちょっとした部分がとても魅力的。難度の高いことをやっていても細々した部分に意識を向けることを忘れないあたりがさすがです。西野さんも悪くはないのですが、明らかに足を引っ張っていて・・・。女性をサポートするという雰囲気になっていないのが残念でした。ただ、彼自身を見ればそこまで悪くなかったです。今までは大きな役になると踊れているのに萎縮しているように見えました。それが感じられず、ちゃんと持てる力を出し切っているのが感じられました。・・・彼自身は100%の力で踊っていたと思うのですが、荒井さんが絶品すぎて、レベルが違いすぎて、残念ながら二人で作品を楽しみながら作り上げるレベルに全く達していなかったのが惜しい限りです・・・。ちょっと目を引いたのが伊坂さん。動きには若干不満が残るのですが、3人の中で一番パートナーとのやりとりを楽しんでいる気がしました。ちょっとして表情の付け方というか、目線がちゃんとパートナーを見ていて、もちろんサポートはもうちょっと頑張れなのですが、ちょっとした心遣いが感じられて楽しかったです。ところで橋本さんはどうしちゃったんでしょうか・・・。シンデレラのときもそうでしたが今回も全く目がいかず・・・ファンとしてはなにがあったのかとはらはらするレベルです・・・。次回はすてきな橋本さんが見れますように。
「Promenade Sentimentale」、こちらは打って変わって楽しかったです。ダンサーの動きがすべて曲線で流れるようにつながっていて引きつけられました。1幕で感じたバレエ団の層の薄さを、こちらでは感じませんでした。ソロを踊った4人はともかく、それ以外の人たちはそれほどうまい人ぞろいというわけではないのに、描かれる曲線がきれいで見ほれました。 二組のペア、白石&遅沢は日の光、神戸&宮尾は月明かりを感じました。光が照っていれば地面にはくっきり影が映る。闇が濃いほど、月明かりは暖かく優しく感じられる。そんな不思議な物語を感じる二組でした。とても意外だったのが、シンデレラではなんの交流も感じなかった神戸さんと宮尾さんにとてもドラマを感じたことです。この二人は全く似合わないと思っていたはずなのに、別の作品でもおもしろいのではないかと思い始めています。リフトが流れるように美しくってサポートに不満を感じませんでしたし、とにかく暖かだった。闇の中で感じる月明かりの暖かさ、それは孤独なときに感じる人の温かさなのかもしれません。なかなかおもしろい組み合わせでした。
「第九」の第一楽章、土曜日ソワレの伊坂さんのソロが意外とおもしろくって満足です。不思議と清水さんを思い起こさせる端正さがありながらも、勢いは彼以上。まあ、その分技術とか存在感とか真ん中で踊るにはもうちょっとがんばってほしいというものはありましたが、まとっている雰囲気がとても好きでした。第一楽章のイメージはマグマというか溶鉱炉というか・・・燃え上がることなくひたすら燃え続けるだけというイメージです。求めているものがあるのにそこには届かず、ただ変わらず熱を持て余すだけ。届きたいところに手は届かない、けれど燃え続ける。そのひたすら燃え続ける熱を感じられて、目が離せませんでした。こう表現したいというイメージが中にしっかりあって、それをぶつけてるという空気がとても心地よかったです。 日曜日の遅沢さんは悪くないんだけど、なにか盛り上がりに欠けました。さすがに遅沢さんもお疲れ気味?焦燥感を表現しているのか、疲れて必死になって踊っているのか、いまいち判断に苦しみました。伊坂さんが自分でも分からないなにかを求めて燃え上がろうとしてそれでも燃え上がらない、という感じだったのに対し、遅沢さんは炎である故に燃え続けなくてはいけない宿命のようなものを感じました。燃えて燃えてそれでなにかにたどり続けるわけでもないのに燃え続ける。そんな息苦しさがあったのですが、それが演技なのか実際息切れを起こしていたのかいまいち判断に苦しみました。踊りも普段は端正だと思っていたのですが若干勢い任せに感じました。それが演出意図なのでしょうか?若干つかみきれずに終わりました。 郡部の中で目を引いたのが最近注目株の池本さん。相変わらず柔軟性が高く、空中での姿勢もとてもきれいでした。ソリストが足りてないのは事実なのですが、それでも男性しかいないナンバーをこれだけおもしろく踊るあたり、やっぱり好きなバレエ団です。 第二楽章は元から好きなのですが、とても楽しかったです。神戸さんの安定感は言うまでもなく絶品。柔らかくってあたたかい、本当に魅力的な踊りです。コールドも好きでした。Kバレエのコールドは結構私の中でバランスがよくて好きです。確かに新国立ほどそろってはいませんがバラバラというわけでもないですし、足音があまりしないのでとても心地よく見ることができます。それにしてもみなさま技術力が高くて、グランジュッテで飛び上がると足がきれいに180度開くし足音はほとんどしないし、さすがです。 第三楽章、初めて眠くならずに見れたかも・・・。どうしても眠くなりがちだったのですが、ありがたいことにとても楽しく見ることができました。ダンサーは特にその人の持つ色合いというか個性というか、そういうものが見ている方にも感じられるのですが、特に宮尾さんとビャンバさんには春の萌葱を感じさせる暖かさと伸びやかさを感じました。杉野さんはそこまではっきりと「緑」を感じなかったのですが、彼自身が今すくすくと伸びていく感じで、それが感じられてここちよかったです。 第四楽章は総力戦という感じで大好きですし、大変楽しかったです。おそらくキャストは前日ソワレと同じかな? 二組のカップルはどちらも楽しそうに踊っていましたが、目を引いたのが日向&伊坂ペア!本当に楽しそうに踊ってるんですよね。息もぴったりで、この二人でなにか全幕ものを見てみたいと思うほど(ドンキホーテなんかよいんじゃないでしょうか、こないだやっちゃったけど)。日向さんは主演をやって自信をつけたのか、輝きが一段違いました。作品を支える人間の一人という自負を持って踊っているように思えました。笑顔ものびのびした動きも魅力的。伊坂さんはサポートが楽しそうというか・・・ちょっとした視線や仕草が優しくてあたたかくて、二人の会話を楽しんでいるような気分になる踊りでした。 第九の初演から今までいろんな人が退団しましたが、初演から残っているのが遅沢さんと宮尾さん。この二人の太陽と月は高身長も相まってとても好きです。初演の時はどこか陰のある遅沢さんに月、日溜まりのような暖かさを持つ宮尾さんに太陽とはなかなか粋なことをするなあと思ったのですが、今回は逆。2幕の時も遅沢さんが光、宮尾さんが陰でした。今後の二人のキャリアを考えてそうしたのだとは思うのですが・・・ちょっといまいちキャラが違う気がしました。 ビャンバさんはなんとなく目が行きます。もちろん悪目立ちしてるんじゃなくて、なんとなくあのあたりの雰囲気がいいなと思うとたいていビャンバさんがいます。あたたかくて本当に踊ることを楽しんでいる雰囲気が好きです。杉野さんは伸び盛りで自分もそれを感じて伸びていこうとする雰囲気がありました。それがちょうど作品にマッチしていて、すがすがしい気持ちになりました。まだちょっと個性の確立が感じられませんが、ルックス的に特に恵まれているというわけでもありませんが不足は感じられないので、これからいろんな役で見てみたいです。池本さんも伸びやかな踊りで好きです。回転は印象に残らないのですが、背中の柔軟性が高いので、後ろ姿でなんとなく彼と分かるほど空中での姿勢がきれいです。意外とさわやかな雰囲気にもマッチする人なので、ジゼルのペザントが今から楽しみです(やるとは誰も言ってない)。佐々部さんもだんだん角が取れてきたと思います。ちょっと堅いというか、あまり個性を感じないところはあるのですが、バランスのとれた体型には恵まれてますし、笑顔もかわいいと思えるようになってきたので、近いうちにあると思う昇格が楽しみです。 歌のソリストは二回連続のテノールの方がすばらしかったです・・・。特に日曜は下手側に座っていたので声がまっすぐ届く幸福感。ルックス的には全く好みではない方だったのですが(失礼)、あの体から、あの艶やかで張りのある声が出るのかと思うと惚れてしまうような美しさでした・・・。間違いなく、この公演の満足度を上げてくれたと思います。普段はミュージカルですのでマイクを通した声なのですが、生声でこれだけ響く声って、確かに魅力的です。 セットは椅子に座って見ているはずなのに、寝ころんで空を見上げている不思議な気分になるものでした。第1楽章は天まで手を伸ばすことのできないマグマの鬱屈を感じ、第2楽章は空から降り注ぐ雨粒を感じる。そして空を感じ最後には宇宙を感じる。広がりを感じるセットがとても魅力的でした。 最後になりましたが、哲也についてはもう言うことありません。この作品はなんだかんだ言ってもラストにあの曲の中でぐるぐる回りたくって作ったんじゃないかと思ってるのですが、さすがに少ししか出演しない分、全力でぶつかってきてくれて満足でした。登場した瞬間なんかは羽の生えていたはずの体に重力を感じて、彼も年をとったなあと思ったのですが、周りの空気全部飲み込んでしまうような圧倒的な回転は健在(というか、パワーアップしてる?)。全幕ものでは哲也がいない日もせっせと通っている身の上ですが、この作品だけは彼の他を圧する存在感が魅力的だと感じられます。1回目の怪我の復帰作だったこの作品、まだまだ踊れるので定期的に見たいと思います。
というわけで土曜ソワレと日曜、あまり変わらないキャストだったはずなのですが、なぜか日曜の方が満足度は高かったです。東京最終日だから気合いが違ったのでしょうか?よく分かりませんが、忙しいさなかいい舞台が見れて気力が回復しました。楽しかったです。
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(2013/04/16(Mon) 00:38:25)
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