電車に揺られてケルン入り。 ケルンといえば大聖堂! 中央駅に近づき、窓から見えるかなー、と思っていた私の目に真っ先に入ってきたのは。
 ジキル&ハイド上演中のミュージカルドームの青い屋根でした。
 ・・・・・・・・・・・。
 誰か景観を害するとかって文句つけなかったのか!? 私ならつけるぞ! 「お母さんはそんな子に育てた記憶はありません!」などというなぞの言葉が頭をぐるぐる回る中、 荷物を引きずりつつホテルへ。 道すがら、何度もポスターを発見し、胸が躍る。 ああ、懐かしい、この感覚、一昨年、ストークオントレントでJCSを見たときの感覚と同じだ・・・。
 ホテルに荷物を預け、劇場へ。 チケットボックスへ直行。 二度見ることを伝えるのに一苦労したあほはこいつです。 そのとき「本当!?」と驚かれたあほもこいつです。 さらに「あなたって面白い人ね」といわれたあほもこいつです。 ただ単に英語がへたくそで、簡単なことを伝えるのにすごく苦労してただけです。 ・・・よくこの英語力でヨーロッパ旅行なんてするよ、ほんと・・・。 ちなみに最後のあほは、懲りずに一列目のチケットを取ったこと。 全体を見るために後ろのほう!っと思ってたのに「一列目と二列目があるわ」と言われたとたん、 思考回路停止。 即座に最前列のチケットを取ってました。 昼の部4列目、夜の部1列目、いったいどうやって全体を見るのでしょうか? あほすぎ。
 とりあえずケルンに来たら大聖堂!ってことで適当に観光して劇場に戻る。 劇場内は、ほとんど赤と黒でコーディネイトされていました。 言葉だけならなんかおしゃれなんですが・・・・誰がライトも赤にすると決めた! 歩いてるときは気にならないんですが、キャスト表をメモした後など目がちかちかしました。 しかし、昼はともかく、夜はなかなか不気味でいい感じはいい感じでした。 あと、試験管もどきのグラス入りの謎の飲み物JH7も販売しておりました、もちろん色は赤。 アルコールかと思って飲みませんでしたが、惜しいことしたかも。 東宝もやってくれないかな〜、これ。

 そんなわけで、ケルンのジキル&ハイドです。 見に行って、しみじみ、この作品は中毒患者を作りやすいのかなーなどと思ってしまいました。 お前が言うなと、この作品の総計観劇数を思い出して感じたりしましたが、 まあそれはそれとして。 うわさどおり劇場はかなりすっかすかといった感じでした。 雰囲気も落ち着いてたし。 そんな中、明らかに他と違う空気でこの劇場に来ている方がいらっしゃいました。 ソワレの方が多かったけど、マチネにもちゃんといた。 きっとかなり入れ込んでるんだろうなー、という感じでした。 ソワレに行ったときもぎりのおねーちゃんに「また見るの!?」と言われた私が言うのもなんですが。 (でもやっと、この「作品」に入れ込んでる自分に気づけたかも・・・)

 私はウィーン版が好きで、それはもう過去の記憶となって、がっちり美化が進んでます。 そんな人間の言葉だと思って以下の文章は読んでください。 公平な目で見てウィーン版とケルン版を比べてどうだったかなんていう気はさらさらありません。

 先に悪い点を言ってしまいます。
 まず、オケが軽い。 オーケストラは二階のはるか上の方にいるんですが、そのせいかなんだか知らないんですが、 音に深みがない。 音楽がきれいな作品なんで、結構がっくり来ました。 あ、でも、オケが遠いおかげで舞台が近い(役者が近い)っていうのはちょっとうれしかったです。 一列目に座ってると、特に。 あと、鐘の音が本当に教会の鐘の音に聞こえる美しさでした。 これは素晴らしかったです。
 些細なことなんですが、ダンスシーンで軽やかさがなかった。 あくまでウィーンと比べて・・・なんですが、きれいだけど、日常っぽさがないなーと感じました。 些細なところなんですが、すごく気になりました。 当たり前にきれいに踊ってしまうところがさすがだと思ってたからかな?
 そして、これは全体的なことなんですが・・・なんかメリハリが足りない。 特にマチネは、ミシン糸のような適度なたるみが常時あるなんて思っちまったよ、わはは。 でも、マチネソワレ共に、息が詰まるほど緊張するとか、そんなことがなかった。 原因の一つが劇場。 まず横幅が広くて、ウィーンのときに比べて拡散してしまうイメージがある。 あと、奈落が浅いのかルーシーの部屋がせり上がってこない。 この辺で微妙にテンポが悪くなってる気がした。 照明も、暗い、明るいのメリハリが足りなかった気がするし・・・。 出演者についても同じで、なんか間が悪かった気がしました。 偉そうな言い方かもしれないけど、実際見てて、あまりに早くてついていけないことがあった。 この辺もっと印象に残ったのに流れてったなー、というシーンがいくつもありました。 だからのめりこめなかったのかも。
 そのせいで、怖くなかったんです。 本当に震えるほど怖かったシーンっていくつもあったんですが、あっさり流れていきました。 つまらん。
 とか言いつつ、この作品が近場でやってたら絶対リピーターになってます(笑)。 リピーター心に火をつけたのは、役者さんたちが客席に下りてくる機会が多いこと。 次来たら絶対あそこの席座るーーー!と燃えておりました(笑)。 なんだかんだ言って、楽しかったです。
 あ、そうだ。 ダンヴァース卿と「Nur sein Blick」は今まで見た中でベストでした。

ちょっくらキャストのことでも。

03.11.03 マチネ ソワレ
Jekyll/Hyde Hans Holzbecher Drew Sarich
Lucy Jessie Roggemann Anna Montanaro
Lisa Nicole Seeger Silvia Vicinelli
Utterson Thomas Christ
Sir Danvers Carew Thorsten Tinney
Nellie Karin Germann Brigitte Oelke
Simon Stride Frank Rainer Roebling
Spider -
Poole Michael Autenrieth
Lady Beaconsfield Beatrix Reiterer
Bischof von Basingstoke Mathias Schiemann
General Lord Glossop Ray Strachan
Sir Archibald Proops Heiner Dresen
Lord Savage -


 今回、かーなーり、いい加減にキャスト名をメモしたら、ぜんぜん分からなくなりました。 えらそうに書いてみましたが、信じないでね、って感じです (ファーストキャストに色つけたりもしましたがね・・・ほんとに信じないでください)。 ああ、もう、ほんと、あほだな・・・・。 ちなみに、一番自信がないのがルーシー。 何やってんだ、ほんとにほんとに良かった人の名前をメモし忘れるなんて!!!

 気を取り直して、それぞれの感想を少し。

 ジキル&ハイド(マチネ)
 観ている間中、なーーんか見覚えあるなーと思っていました。 マチネのときはキャストはチェックしたんですが、それをプログラムのほうで確かめなかったため、 誰が誰だか分からないはずなのに、なんか見知った人が歌ってるように見える。 一幕の中盤にようやく気づきました、アターソンです! そう、彼は私がプログラムを見たとき「苦手かも・・・」と思ったファーストアターソンでした。 すごく不思議な気分で観ていました、まさか彼がジキル&ハイドやるとは。 (キャスト表冊子そんなことまったく書いてなかったので・・・いやはや)
 えー、演技の面でいいますと、なんというか・・・。 良い言い方をすれば、今まで見たことのない斬新なと言うか・・・。 突っ込みどころがありすぎると言うか・・・・。 「え、ちょっと待って、それあり!?って、ケルンじゃこの方向性がスタンダードだったらどうしよう・・・」 などと思ったのですが、ソワレにはそう思ったところのほとんどがなくなってました。 いったいなんだったのだろうか・・・?
 ジキルはまあ普通・・・(と言うかなんというか・・・まとめ辛いのよ)、 ハイドは声をつぶしたような感じでした。 それなのに、高音まで出るし、結構伸びるので、不思議な感じでした。 あと、すごく「身体」というものに執着してる感じがありました。 それは自分に対しても、他人に対しても。 「あ、なるほど」と何度か思った記憶があります。落ち着いてみたらもっと別の感想が書けたのかもしれないんですが・・・むむむむむ。 ただ、まだ自分のことで精一杯と言う感じがしました。 リサとのやり取りがいまいちだったのが心残りです。

 ジキル&ハイド(ソワレ)
 幕開けの病室からして、すごーくぴりぴりしてました。 そうそう、これが見たかったのと、うれしくなりました。 リサとのやり取りも、初々しい感じがあるところがまた素敵。 ハイドは、良かったです。 「Alive」の髪振り乱し暴れまくって歌うところが本当にかっこよくて。 これこれ、私はハイドにこれを求めてる!と思いながら見ていました。 本当にかっこいい♪ ジキルの人の話し聞かないっぷりもなかなかさえていました。 結構好きです。 そういえば、はじめて、なぜジキルはハイドがいなくなったと思って結婚式に向かったか ということが分かりました。
 彼、声量が足りないのか、伸ばすところで数テンポ遅れてから歌い始めるところがありました。 ブレスが入ったり、曲のテンポが速くなるよりは、曲はたっぷり聞かせ、声は途中から最後までめいっぱいのほうが かっこいいなーと思いながら聞いておりました。

 これは二人に言えたことなので、おそらくケルン版のスタンダードだと思うのですが、 やっぱりウィーン版と根本的に違いました。 東宝版でもあったのですが、ジキルのせりふの途中にいきなりハイドになる、ということが 何度かありました。 たぶん東宝版より多かったとおもいます。 常に身体の中に自分を支配しようとしている人格があって、それを押さえつけている、 だから少し油断するとそれが見えてしまう・・・そんな感じでしょうか。 結構、物語をひっくり返すだけの力のある違いだと思うのですが、どうも私の中では消化し切れませんでした。 まあ、それは先入観が色々あったりしたわけですから、仕方ないかと・・・。

 ルーシー(マチネ)
 うーん、ちょっと「Schafft die Manner ran」のところで照れがあるかなーと思いました。 でも、かわいかったし、「Nur sein Blick」は本当にすっばらしかったです。

 ルーシー(ソワレ)
 もしかしたら、今まで見てきたルーシーとまったく違うタイプだったのかと、いまさら思っています。 観てるときに感じたのは、とにかく無邪気だということ。 天真爛漫と言うか・・・。 「Jemand wie Du」を歌い終えたとき、あんなに幸せそうに笑うルーシー、初めて見ました。 あと、「Gefahrliches Spiel」のラストで、確かに楽しんでるように見えたルーシーも。 帰ってきてから気付いたことがあまりに多くてうまく言えないんですが・・・、 娼婦と言う仕事も、ある意味天性という面もあったのかなーと。 それで彼女の無邪気さが損なわれるわけでもなかった。 今まで見た中で、一番、本当にかわいいルーシーだったけど、それと矛盾してるわけでもなかった。 ハイドにとらわれたのは、彼女なら当然で、ジキルに惹かれたのも、やはり彼女なら当然で。 観ているときにはかわいいなーとしか思ってなかったんですが、思い返してみると不思議な形で ルーシーという人物像が固まっていた気がします。 一番、もう一度見てみたいキャストです。
 もちろん、歌も抜群にうまいのです。 本当に「Nur sein Blick」は、鳥肌立つくらい素晴らしかった!

 リサ(マチネ)
 悪くないって言うか・・・良かったと思います。 でも、ジキルが応えてくれないと、リサは生きない。 本当に彼女はジキルのことが好きで好きでっていうのは分かるんですが、とにかく空回りしてる感じでした。 観てるときはいいなーと思っていたんですが、なんか記憶があいまい・・・。 あ、「Nur sein Blick」は彼女も素晴らしかったです。 ソワレも観たかったなー。

 リサ(ソワレ)
 パーティーのシーンの時にはアンサンブルに埋もれそうな勢いだったのですが、ジキルが出てきて 俄然魅力と存在感が増しました。 やっぱり、ジキルあってのリサだなー、本当に彼女はそれだけだから。 ウィーンのリサより若くて初々しい感じ。 付き合いがすごく長いというほどでなくて、だからこそ無条件に何でもかんでもジキルのことを 許してはいけないと思ってる感じでしょうか。 「Da war einst ein Traum」を歌い終わったあとジキルに声をかけられ、振り返りそうになり、 それでも彼のところに行かなかったところがとにかく切なかった。 彼を許してしまいたい、でも、そうしてしまったらもう自分は彼を信じられなくなる、といったところかな。 それでもジキルを愛しているという「Nur sein Blick」がとにかく切なくてきれいで。 ルーシーとは別の意味でかわいかった。 「Nur sein Blick」は無邪気に夢を見て幸せそうなルーシーと、信じていたものに裏切られている リサと、明暗がすごくきれいで、本当に満たされました。 好きです♪

 アターソン
 悪いわけじゃないんだが・・・中途半端なおかっぱもどきの髪型がどうにも気になって・・・・。 あ、ちなみに、彼、ジキル&ハイドにも(他にもサイモンとザベージに)キャスティングされています。 マチネはジキル&ハイドとアターソンを取り替えることもできたわけですな。 面白いなー、そっちも観てみたかったなー。
 まあ、普通にアターソンでした。 今まで見てきた中で、ちょっと世渡りがうまそうな感じかな? ジキルをしかりつけるところが好きでした。 まあ、そんな感じで。

 ダンヴァース卿
 いやー、良かった。 なんか分からないけど、ダンヴァース卿を思わず目で追ってしまう日が来るとは。 ジキルをしかりつけるところも、リサへの愛情の現われに見えました。 理事会のときもなんか妙に素敵だったし。 「Loslassen」のはもう、本当に絶品で。 このときの「お前の望むままにしなさい」と言うまなざしが、最後の結婚式のシーンに つながっているように思いました。 実は結婚式のシーンで一番印象に残ったのは彼でした。 まあ、それもいろんな意味でどうかと思いますが・・・。

 ネリー(マチネ)
 ネリーでした、まあ、普通に・・・。

 ネリー(ソワレ)
 ぶらぼー、姉御!!って感じです。 いやー、面白かった面白かった! 「Madchen der Nacht」での、夜にしか生きられないという哀しさがいい。 それを知ってるネリーと、分かってないルーシーと・・・とにかくすばらしい重唱でした。

 サイモン
 声が甲高くて、なんか妙にまるっちい声で、「こ、これがサイモン!?」と思いましたが、 観ていくうちにどんどんサイモンに見えてきました。 ウィーンと比べて年齢設定がリサと同じように、少し若いように思いました。 その分、ジキルいじめにも少し遠慮があったように思いますが・・・まあ、どちらが人としてましかは置いといて。 やわらかい笑顔がすっごいむかつくやつでした。 結構好きだわ♪

 スパイダー
 まあ、その、なんだ。 ふつーで特に印象に残ることもなく・・・・、終わり。

 プール
 丸かった。以上!
 というのもあんまりだってのは分かってるんですが・・・・。 なんか流れていってしまいました。 ジキルとのシーンで、もっと厳かにやってほしかったかな。

 ビーコンズフィールド伯爵夫人
 かなり好きです。 絶対未亡人だと信じてます、で、プループスと仲良し(笑)。 ちょっと年はいってるけど美人なおば様といったところでしょうか。 ザベージにも愛されておりました、素敵・・・。

 グロソップ司教
 なんか、丸かった・・・・。 すごくいやな感じのおっさんでした。

 ザベージ
 サイモンにちょっと外見が似てたかも。 軽薄そうというか、薄情そうな感じがしました。 ビーコン夫人の気を引こうとしてる場所が結構あって面白かった。

   アンサンブルでは、でっかい帽子をかぶったにーちゃんと、壊れた傘をさしているおば様が目にいきました。 二人とも頭がかなりやばい感じでした。 それがすごく印象的。

 全体的に、ウィーンより勢いに任せるエンターテイメント作品に仕上がってた気がします。 なんだかんだいいましたが、面白かったです。 また観たいんですけどね・・・・さすがにこれはもう、何をどうあがいても無理ですが・・・。
残りわずかになった通帳を握りしめながら、遠いお空の下にある青いドームに思いをはせています。


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