シンデレラ
2006/12/17
新国立劇場

シンデレラアリーナ・コジョカル
王子フェデリコ・ボネッリ
義理の姉マシモ・アクリ
篠原聖一
仙女湯川麻美子
父親石井四郎
春の精西山裕子
夏の精西川貴子
秋の精高橋有理
冬の精寺島ひろみ
道化グレゴリー・バリノフ
ナポレオン八幡顕光
ウェリントン市川透
王子の友人陳秀介
冨川祐樹
江本拓
中村誠


 久しぶりの新国立のバレエでした。 海外のゲストを呼んだ公演だったら始めてかも? 三杏さんのドンキも、三杏さんのジゼルも見られなかったから本当に久しぶり。 久しぶりの新国立はコジョカル人気のすごさでチケットが取れず(苦笑)。 泣く泣く4階席となったのですが、ここが異常に見づらい! 背もたれに背中をつけると舞台の前方が見えなくなってしまう。 ちょっと見えなくなるなんてかわいいもんじゃなくって、主役の頭のてっぺんさえ見えなくなることがあるというレベル。 一体どういうコンセプトで劇場を作ればこんな事態になるんだ・・・。
 ぐちぐちいいながらプログラムを開いてみる。 芸術監督が牧阿佐美というのもそれってどうなのかと思ってたのですが、登録ダンサーの半分弱が 彼女のバレエ団の方(出身じゃなくって、現在在籍ね)。 キャストの書いてある冊子をめくったら今度は「小姓たち:小林紀子バレエアカデミー」の文字。 加えてバレエミストレスの小林紀子ですか・・・。 今まで大して興味がなかったので気にもしてませんでしたが、新国立ってこんなことになってたんですね・・・。 設立して来年で10年だったと思いますが、これでいいのかと真剣に頭を抱えてしまいました。

 そんなこんなでテンションが低いまま始まった舞台なのですが、やっぱり相性悪いです、このバレエ団。 1幕・飽きた、2幕・面白かった、3幕・そこそこ面白かったがあっさり終わった・・・こんな感じかしら? この間のマリインスキーの「海賊」から技量を引いたような感じの舞台で、 どうにもこうにも舞台の世界に入っていくことが出来ませんでした。 コジョカルはかわいかったんですけどね〜、彼女がいたから見に来てよかったかなと思えたけど、 彼女がいなかったら観る価値はあるのかなと真剣に考えてしまった。 というか、彼女がいてもこの演目をもう一度見たいかと言われたら、微妙。 コールドはきれいだったし(星の精好きー!)、男性のソリストの踊り(丹精でそろってて勢いがあっていいなあ)も結構安心して見れたのですが、 いまいち盛り上がることができませんでした。
 コジョカルは案の定かわいかったです♪ 1幕はかわいらしいけど、良い意味で普通の女の子。 特別お姫様オーラも放っていない、灰色の服を着ていても魅力が失せることはありませんでした。 ほうきとの踊りもかわいかったわ。 個人的にはマイペースにふき掃除をしているところが印象的だったけど。 どこか物悲しそうな顔に浮かんだ穏やかな微笑が素敵でした。
 主役は素敵だったんですが、なんかそれだけだったんでかえって損した感じ。 バレエを見ているのに「主役がだめでも脇がきまってるとか、ストーリーが好みだったらOK!」なんて考え方をしているから、 ちょっと息が合わなかった感じがしました。 さらに息が合わなかったのが義理の姉の二人。 ほかの方の感想を見ていると見せ場のひとつのように思えたんですが、1幕はちっとも笑えませんでした。 私の引き出しの中に「醜さ」を笑うという部分がないんです。 役者が観客を笑わせたいという気持ちと、観客の多くは楽しんでいるというのだけが伝わってきて、 どう反応したら分からずに完全に硬直していました。 2幕はまだウェリントンとボウニー、もとい、ナポレオンのおかげで楽しむことはできましたが・・・・。 結局3幕での仲直りのシーンも、ほろりとくるどころか「さすがちゃっかりしてるなー」と思ってしまいましたって、 これは私が汚れてるせいか(笑、だって身内が玉の輿に乗るんですもの、祝福してあげなくっちゃ、自分のためにも)。 この二人がもっと楽しめたら、印象も違ったんだろうなとは思います。

 1幕は姉妹がそんな感じだったし、お父さんは存在意義が分からないし、 仕立て屋さんとかがずらずら来るあたりは何でこんなに人がごちゃごちゃいなくっちゃならないか分からなかったしで 困っていたのですが、目を引いたのはダンス教師。 軽やかな身のこなしと、なんとも明るいオーラ。 見ていると気持ちが華やかになる踊りでした。 この人、なんかの機会にまためぐり合えたらいいなあ。 仙女はトウが綺麗に立ててないのが気になって気になって・・・・。 四季の精、春は良かったんですが、夏がすさまじくってその後気持ち的に復活できず。 久しぶりにフォローする気のできない踊りを見ちゃったよ・・・。 振り付けと衣装は「春夏秋冬」という感じはしましたが、踊り方が同じで季節を感じられなかったのが残念。
 セットや衣装はきれいだったんですが、残念だったのは馬車。 そりゃとってもきれいだったんですけど、何で一瞬なんでしょうか・・・。 少しはうっとりできるかと思ったんですが、風のように疾走していってしまってちょっと切なかったです。 急いでいるのかもしれないですが、でも初見の人でもオペラグラスを取り出す時間くらいほしい・・・。 1幕は助長で演出としてもあららだったけど、2幕の最後の演出は好きです。 鐘が鳴って、帰ろうとするシンデレラ、追いかける王子。 12個の鐘が鳴ると、魔法はいつの間にか解けてしまうという演出に、すっかり飲み込まれました。 帰ろうと大慌てのシンデレラもかわいかったし、逃げ帰る魔法の解けたシンデレラもかわいかった! ちなみにグランパドドゥは楽しんだはずなんですが、すでに記憶のかなた。 やっぱり私にはバレエは向いてないかも(苦笑、ってすでにそれははっきり分かってることですが)。
 個人的にうけたのが2幕のナポレオンとウェリントン。 幕が上がった直後にウェリントンがナポレオンの同時代の軍人だと思い出してよかったわ。 イギリスがナポレオンに対して苦々しい思いを抱えていることは知っているので、 二人の扱いに思わず苦笑。 こういうことを女王陛下のお膝元でやってしまうあたり、さすがイギリスというべきなのかしら。 2幕は道化も面白かったし、このウェリントン&ナポレオンと姉妹たちのやり取りも面白かったんで、 結構楽しめました。 三杏さんのマズルカはちゃんと見つけられました。 相変わらずまっすぐで気持ちの良い踊りでした♪

 この作品のあらすじを見たとき、もしかしたら苦手かもしれないと思ったのですが、予想通りでした (観客を笑わせる道化役は苦手である率が高いし、シンデレラストーリーはあまり好きではないし、 姫と王子に憧れがないし、純粋に踊りが美しいシーンが続くと飽きる(もちろん「眠り」も好きではないです、苦手ではありませんが。リラが好き))。 実際に見たら何か違うことを感じられるかなと思ったのですが、 やっぱり感想はあらすじを読んで感じたこととさして変わりはないです。 コールドはきれいだったし、男性陣も端正にきれいにそろって踊っていたし、コジョカルはかわいかったし、 全部がだめというわけではないのですが、ちょっと肩透かしを食らったような公演でした。



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