| 海賊 |
| 2007/05/26 |
| Kバレエカンパニー オーチャードホール |
| メドーラ | 康村和恵 | |
| コンラッド | 輪島拓也 | |
| アリ | アレクサンドル・ブーベル | |
| グルナーラ | 長田佳世 | |
| ランケデム | 宮尾俊太郎 | |
| ビルバント | ビャンバ・バットボルト | |
| サイード パシャ | イアン・ウエッブ | |
| ギリシャの少女達 | 東野泰子 | |
| 樋口ゆり | ||
| 神戸里奈 | ||
| 小林絹恵 | ||
| 副智美 | ||
| 浅川紫織 | ||
| 柴田有紀 | ||
| 鶴谷美穂 | ||
| 浅野真由香 | ||
| 白石あゆ美 | ||
| 海賊の男達 | ドゥ・ハイ | |
| ニコライ・ヴィユウジャーニン | ||
| 小林由明 | ||
| 田中一也 | ||
| ピョートル・コプカ | ||
| 安西健塁 | ||
| リチャード・バーマンジ | ||
| リッキー・ベルトーニ | ||
| イアン・バードン | ||
| 長島裕輔 | ||
| 高島康平 | ||
| 内村和馬 | ||
| 物乞い | 白石あゆ美 | |
| 小林由明 | ||
| パ・ド・トロワ | 神戸里奈 | |
| 渡部萌子 | ||
| 副智美 | ||
| 鉄砲の踊り | 中島郁美 | |
| 沖山朋子 | ||
| 木島彩矢花 | ||
| ドゥ・ハイ | ||
| ニコライ・ヴィユウジャーニン |
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久々の割引公演。
一昨年の「くるみ」からちょこちょこと足を運んでいますが、目に見えてレベルが上がっていくのが分かるのが嬉しい。
昨年の「くるみ」の時も、哲也出演の公演より面白かったのですが、この回もすごーーく面白かった!
ちなみに、お星様が多めなのは「お安いから」というのもあります。
でも、それを差っぴいても、客席もあったかくて、舞台もバランスがよくって面白かったです。 ちなみに、今回も引き続いて関係者席のすぐ後ろ。 この席は舞台も見やすいし、見覚えのある方がそばにいてくれたりするので、本当においしい。 すっかり癖になってるところです。 |
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まず、何が良かったって、ブーベルさんのアリ!
最高!
思わず日程表をチェックして、もう一度彼のアリが見れないか確認してしまいましたよ。
彼を見てしまうと、哲也のアリは存在感が濃すぎるし、橋本さんのアリは存在感が薄すぎる。
最初に海賊たちの姿が浮かび上がった時から違いました。
コンラッドとアリの存在感のバランスがすごくいい。
あくまでその場面の中心の軸はコンラッド。
でも、傍らに確かに他の海賊たちと違う色の存在がいる。
存在感はありつつも、物語の軸をコンラッドにちゃんと譲っている、理想のアリでした。
個人的に、その芝居を好きになれるかは最初の5分くらいで決まります
(そして何故か、最初の5分が好きな話は、最後の5分も好きなのよね)。
このプロローグの部分だけで十分すぎるほど痺れ、これはいけると確信しました。 その確信は、そのまま夜の部を見て帰ってきた今でも正しかったと思ってます。 私にとってのベストコンラッド&アリは輪島さん&ブーベルさんです。 輪島さんのコンラッドはキャシディさんと比べて線が細く、ちょっと悪どい感じがします。 メドーラに対して野卑な下心がうっすら感じられて(そういえば、市場で金持ちを騙す時の騙し文句が 「ものすごいグラマー!」だった)、でも、真っ直ぐに通すべきところはしっかり通す ようなところもあり、良い面と悪い面のバランスがとてもよかった。 線が細いおかげで、なんか妙によわっちくても納得してしまう。 キャシディさんだと見掛け倒しという感じだったんだけど、こちらは見かけどおりという感じ。 その弱さと、海賊らしい悪どさがいい感じに混ざり合ってたんでしょうか、 存在感や雰囲気、行動のパターンがすごく自然でした。 子供っぽいから、考えや行動に足りないところがあっても、許せてしまうのかしら? ブーベルさんのアリは「従う」ということが骨身にしみてるアリ。 コンラッドに従うという以外の行動パターンは彼の中にはない。 そこには何の理由もないけど、彼はコンラッドに従う。 コンラッドにつき従うことこそが、彼の人生なのだ。 そういうことが行動の一つ一つに気持ちいいほど現れているアリでした。 こういう無条件の忠誠って、大好きです。 そしてまた、手を胸に当てた時の姿が驚くくらい美しいのよ! そのまま彫刻にして、ぼんやり眺めていたくなるくらい美しい。 多分、そうやって手を胸に当てて、コンラッドに頭を下げるのは、アリにとって一番美しい瞬間なのでしょう。 本当にきれいなのに、存在感がちゃんとあるのに、コンラッドより目立ちすぎることなく、 彼を立てることを決して忘れないのも好き。 「コンラッドに従うために生まれてきたアリ」、でした。 コンラッドに対して跪いている姿が彼にとって最も美しい姿であると思えて、客席を驚かせる技巧も持ってる。 アリとして、満点に近いと思いました。 というわけで、この二人のバランスは、このストーリーの上である種理想だったと思います。 はっきり言って、キャシディさん&哲也or橋本さんより、ずっとアリの存在感と演技に説得力がありました。 これがキャシディ&ブーベルになるとどんな風に雰囲気が変わるのか多少気になりますが、さすがにもう行けません・・・。 今日の公演の合言葉は「バランスがいい」。 それはメドーラの康村さんも同じでした。 12日の公演ではそこそこいいとしか思わなかったのですが、今日は何故かしっくりと腑に落ちました。 恋に落ちる瞬間も、むずがゆいほど甘酸っぱいものでしたし。 戸惑いとときめきの合い中の感情が、なんとも魅力的でした。 グルナーラのことを忘れがちなのも、何故か目をつぶれました、自分でも不思議なのですが。 メドーラ、コンラッド、アリの三人のバランスはとにかく素晴らしかった。 パドトロワの煌めきは、目もくらむばかりでした。 この場面に限って言えば、今日が一番好き! 初日のみ実現したベストメンバーを見ていないから言えるのかもしれないのですが、 12日のようにパドドゥ+αになっておらず、三人それぞれ見せ場があり、お互いの魅力を発揮しているように見えました。 客席のテンションも高かったのか、アリがメドーラを頭上にリフとしたシーンで自然に拍手が起こりました。 24日も、この日の夜の部も拍手は起こらなかったので、とても嬉しい。 誰かが劣ることもなく、誰かがはみ出すこともなく。 アリが自分の技量を最大限に発揮しながらも、コンラッドとメドーラの魅力を引き立てるようなパドトロワでした。 「ブラボー」に相応しい踊りで、満足でした。 長田さんのグルナーラで一番印象に残っているのは、2幕も終盤の再会のシーン。 仕草や表情がちゃんと「お姉さん」なんですね。 グルナーラが「お姉さん」に見えると、メドーラが「妹」に見えてくるから不思議です。 「来てはだめ」というような厳しい表情、そして何より再会した瞬間のメドーラを気遣うその仕草。 「大丈夫?何かひどいことされなかった?」というような仕草が暖かかった。 そして彼女も従ってはいなかったけどハーレムの人間なのだから、そんな感じの服装がどこか痛々しかった。 1幕はそんなに姉妹のように見えなかったのですが、このシーンで納得させられました。 踊りについては、相変わらず芯のしっかりしたもので安心しました。 宮尾さんのランケデムはなんと言うか・・・舞台度胸があるなあと。 はっきり言って、うまくないです。 軸も取れてないし、ジャンプは背が高いから飛べてるように見えるけど、荒っぽい。 踊りを見ていると振りを追うくらいしか出来ない技量しかもっていなさそうなのに、 ちゃんとランケデムを演じていることを楽しんでいるのが興味深かった。 輪島さんや橋本さんがどこか軽妙な悪役だとしたら、彼は小ざかしい悪党。 彼が出てくるだけで空気が悪くなるような悪党でした。 しかし、舌なめずりする姿も鞭を振る姿もどこか芯の通った色気があって、魅力的でした。 パシャのところに戻ってきたとき、同じ動きをしているのに輪島さんはどこか軽妙だったのに対し、 宮尾さんはぞっとするような暗さがあって面白かった。 演技の面では面白いところもいくつかありましたが、踊りの面では本当にいいところなし。 ジャンプの着地の時、深いプリエをしていたのは印象的でした。 たしか、この動きは輪島さんのときにはなかった。 今回は脇役だったので、踊りとしていいところなしでもまあ良いかと思えましたが、 次のバジルは本当に心配。 主役ははったりでどうにかなるもんじゃないよね・・・ (この抜擢については、芳賀さんの代役だと思ってます)。 基礎練習をしっかり重ねて花開いて欲しい人ですが、ちょっと心配です(チケット確保済み)。 ビャンバさんのビルバント、確かに面白かったです。 ドゥさんのときのストーリーの分かりづらさ、動きの小ささなんかがきれいに解決していたと思います。 特に冒頭の浜辺でのシーンはわざとらしさもなく、すっきり見ることができました。 踊りについては結構重いところもありましたが、結構面白いビルバントでした。 メインの部分では通常公演と変わらない、もしくはそれ以上のものを見せてくれたと思います。 ただ、やっぱりそのほかの部分で「割引公演」と感じることはありました。 ブーベルさんがアリをやってるので、仕方ないと言えば仕方なかった物乞いの踊り。 特に重要なシーンではないのですが、物足りなくって、ついうっかり夜公演に足を運んでしまいました(笑)。 女性三人のパドトロワも、いまいちでした。 もともとこのシーンは本役の方々でもあまり魅力的には思えません。 それをさらに小粒にした感じなので、どうも面白みに欠けると思えてしまいました。 抜擢なのは分かりますが、渡部さんはアラベスクがきれいに上がってなくて不満・・・。 せめて高さくらいそろえてくれると嬉しいんだけど。 副さんは地味だけど相変わらず堅実な踊り。 彼女は軸が結構しっかり取れてるように見えます。 神戸さんも彼女らしい華やかさでした。 でも、もともとあんまり面白くないんで、やっぱり面白くない・・・。 細々とした不満はありますが、それでもやっぱりこのコンラッドとアリはもう一度見たい! コンラッドの細さと若さは、情けなかったり頼りなかったりあっさり罠にはまってしまうのも納得のもの。 それでも海賊の首領に見えたのは不思議です。 若いから、「若頭」に見えたのがよかったのかしら? 市場でのアリとビルバントとの3人の踊りはなかなかリズミカルで楽しかった♪ ブーベルさんは言わずもがな、輪島さんもなかなかいいばねを持っているので、心地よく見ることができました。 踊りは相変わらず荒っぽいところはありますし、キャシディさんに比べればサポートがいまいちだったり、 動きや存在感が小さかったりはします。 演技も微妙に「それ、ランケデム入ってる」と思うところはありました。 でも、彼特有の伸びやかで瑞々しい踊りは本当に気持ちい! いつまでもいつまでも見ていたい踊りでした。 そう思っていたからか、キャシディさんのときは短いと思っていた踊りのシーンが結構長く思えました。 悪どい顔してるのに踊りはスマートで、面白かったです。 アリは、何度も何度も言ってますが、本当によかった! 姿かたちが美しくって、いて欲しいところにいて欲しい場所にいてくれて、 来て欲しい時に来て欲しいタイミングで来てくれる。 まず何をしていても本当に美しい。 シャープな体つきと、そしてただ立っているだけでも感じられるほどよい緊張感。 この体つきの美しさは哲也や橋本さんで感じられなかったのはもちろん、 今までの彼のほかの役からも感じられることはありませんでした。 何をしていてもしていなくても、ぼんやりと見入ってしまいました。 最初の浜辺のシーンでアリが他の海賊たちを従えて出てくるところ。 確かに彼もコンラッドの手下の一人なんだけど、「そのほか大勢」とは違う統率力と存在感を持っている。 「奴隷」でも「右腕」でも良い、とにかく彼はコンラッドの傍らにいるための、特別な存在でした。 市場のシーンでも、パドトロワでも、技術力は高いのに、安定した踊りを見せてくれました。 下手奥から出てくるところ、あのジャンプをなんと言ったらいいのか分からないのですが、 その高さに客席がちょっとだけざわつきました。 哲也ほどではありませんが、こういう風に客席がざわめくのは好きです。 どの場面かは忘れましたが、ピルエットを回りながら足を下ろしていくという振り、 棒でも突き刺さってるんじゃないかと思うほど軸が通っていて安定していてスマートで、美しかったです。 海賊たちと踊ってるシーンでは振りとか立ち居地とかそういう意味でなく、 どこか浮き上がって見えるような、不思議な存在感がありました。 もちろん、どんな時でも主役のような存在感を発することは無く・・・どうしたらこんなことができるのかしら。 2幕の中ごろ、ビルバントがコンラッドに切りかかってくる時に飛び出してくるアリ。 このときの様子が正に風のよう。 予想もしなかったところから疾風のように飛び出してきてビルバントの手をさえぎった、そんな風に見えました。 このシーン、取ってつけたようであまり好きではなかったのですが(コンラッドがあまりにも情けない)、 まるでコンラッドが反応するより早くアリが飛び出してきたように見えて、とても自然でした。 以下、最後の部分のネタばれを含みます。 読みたい方は反転してみてください。 そして、最後の展開もとても自然でした。 その姿を見て、「彼は彼の生を全うした」のだと、自然に思えました。 コンラッドにつき従い、彼を守ることを旨としていたアリ。 それしか頭に入っていなかったから、自然と体が動いた。 それが彼の人生の全てだったから、自分が代わりに撃たれたことも気付かず、ビルバントに切りかかろうとした。 ただひとえにコンラッドのことだけを考えているのが分かったので、その姿に心打たれました。 個人的に、こういう物語の流れは泣けてきて仕方ないです。 このあたりの流れが変な力みなどなく、すごく自然で、流れ着くべきところに流れ着いたのだとさえ思ってしまいました。 刺激的でありながらも、物語の流れはとても静かだったと思います。 主役というほど自己主張はしていないけど、ある意味この物語のもう一人の主人公はアリだったと思えるラストシーンでした (上で言っていた「最後の5分も好き」はここ)。 このシーンを見るためだけでも、もう一回彼のアリは見たいんですよ・・・。 本当に素晴らしかった。 前のシーンで静かに心打たれていたので、次の朝焼け?のシーンが驚くくらい美しく見えました。 それは眩しいばかりの暁光に見えて、思わず目を細めたくなるほどでした。 確かに突っ込みどころの多いラストシーンなのですが、そんなことを忘れるような清涼な美しさがありました。 こうして新しい世界に旅立っていく物語もありなのだと思えました。 本来なら突っ込むべきところであるはずなのに、勢いに飲まれてしっかり説得されてしまいました。 そんな、不思議な魅力がありました。 とにかく、まとまりの良い面白い公演でした。 何よりブーベルさんのアリは絶品です。 これはもっといろんな人に見て欲しかったなあ。 再演があったら、ブーベルさんのアリ、ブーベルさんのアリと大騒ぎしてると思います。 それがいつになるかはわかりませんが、そのころには輪島さんも今より一回り大きくなってると信じてその日を待ちたいです。 |