ドン・キホーテ
2007/07/20
オペラパレス

キトリ吉田都
バジルスチュアート・キャシディ
ドン・キホーテルーク・ヘイドン
ガマーシュサー・アンソニー・ダウエル
サンチョ・パンサピエトロ・ペリッチア
メルセデス浅川紫織
エスパーダビャンバ・バッドボルト
ロレンツォディヴィッド・スケルトン
花売り娘長田佳世
東野泰子
ドルシネア天野裕子
闘牛士杜海
田中一也
ニコライ・ヴィユウジャーニン
ピョートル・コプカ
リッキー・ベルトーニ
スティーブン・ウィンザー
妖精の女王浅川紫織
キューピッド副智美
闘牛士ピョートル・コプカ
田中一也
リッキー・ベルトーニ
スティーブン・ウィンザー
石黒善大
内村和真
アントレ長田佳世
東野泰子
神戸里奈
小林絹恵
副智美
日向智子
中谷友香
白石あゆ美
杜海
ニコライ・ヴィユウジャーニン
第1ヴァリエーション長田佳世
第4ヴァリエーション東野泰子


 さて、海賊での哲也怪我→降板の流れでキャストが大きく変わったこの公演。 平日なんていけるわけないじゃないかー!と怒鳴りながらもチケット取った上に無茶して足を運びました。

 これがすごーーーく楽しかった!! 細かいところを見れば突っ込みどころ満載。 とりあえず黒タイツとショッキングピンクの靴下はやめてくれとか、 エスパーダ埋もれすぎとか、闘牛士の踊りそろわなすぎとか、一つ一つあげていったらきりがない。 でも、見ている間は突っ込みいれつつも楽しくって楽しくって仕方なかったし、見終わってからも体がぽかぽかして とても楽しかった。 「すごかった!」というより、楽しかった、幸せだった。 とても心地良い、不思議な舞台でした。

 今日の舞台が面白かった一番の立役者はなんといっても主役ペア。 都さんのキトリとキャシディさんのバジルなんて、絶対見られないと思っていたのに・・・。 キトリが出て来た時のあの鮮烈なかわいらしさ!! 思わず身を乗り出したくなるようなかわいらしさでした。 うーん、やっぱり私は、「おてんば娘」を演じている都さんが一番好きです。 「2羽の鳩」以来の胸のときめきでした。 闊達としていて朗らかで、町の人気者と言うのもなるほどとうなずけるものがありました。 キャシディさんのバジル、案の定気品ありすぎでちょっと重いバジルでしたが、かっこよかった! 一応ファンなんでファンの贔屓目はかなりあると思うのですが、こんなかっこいいキャシディさんは久しぶりです♪♪ というか、こんなかっこよくって細いキャシディさん、ロイヤル時代の写真でしか見たことないよ・・・(感涙)。 ロットバルトやコンラッドで感じた「もう踊らんでええ」感は全くなく、「これからもがんがん都さんと一緒に 踊ってね♪」という気持ちになれました。 メイクが濃い役が多かったから忘れてたけど、彼はまだそこそこは若かったよなと、 さわやかな笑顔を見ながら思っていました。 うう、あの明るくって優しくって朗らかで、でもどこか軽やかな笑顔を見れただけでも、今日来たかいがあるってものです。 さらに痩せてくれたし、そりゃ確かにソロは一部危なっかしかったけど、あれだけ低くなった跳躍も回復していたし、 足も開くようになってきた、一安心です。 このまま次のシーズンも突っ走ってくれると私はとても嬉しい。 そのときは回転の軸が通ってくれると、さらに嬉しい。
 Kバレエは好きなバレエ団なのであちこち目のやり場に困るのですが、今回はなるべく主役の二人を見ていました。 技術的云々の話じゃなくって、存在感云々の話でもなくって・・・そんなところを越えて、この二人を見ているのは 楽しいものでした。 一つ一つの動き、一つ一つの表情、二人とも、一瞬一瞬をキトリとしてバジルとして生きていることを 楽しんでいるように見えました。 二人とも体に馴染んでる役だからか、何をやっても無理がない。 ちょっとした会話が、ちょっとした掛け合いが、その役そのものの言葉のように見えてきます。 舞台の下手に座っておしゃべりしている姿があまりにも様になっていて中心の踊りそっちのけで見入ってしまいました。 舞台を降りているかのようにリラックスして言葉を交わしたり肩をつついているように見えるのに、 ちゃんとキトリとバジルなんですよね。 付き合いの長い、仲の良い恋人同士そのまんま。 ちょっと堂に入りすぎちゃって恋人同士というか夫婦なんじゃないかと思ったときもありましたが、その辺はご愛嬌(笑)。 ジプシーの野営地に着いたときも、良い感じで仲良しさん。 二人のこういう幸せそうな踊り、見たかったのよ〜♪ 踊っていてもいなくてもそのまんまである二人を見ているのはとても幸せでした。
 本音を言ってしまえば二人とも踊りの面では首をひねるところがありました。 キャシディさんのピルエットはいっぱいいっぱいの上に軸が取れてない。 手の指先も、振り付けによっては乱暴になってる。 都さんは海賊のころよりまともにはなってたけど、やっぱり腰が心配。 あと少し腰を反ればさらに美しくなるのになんだか別の形でごまかしていたシーンが何度かあった。 リフトの形が崩れているところもあった。 そして、あんな情緒のない都さんのフェッテなんてありえない。 手の勢いだけで無理やりまわしてるように見えて、びっくりしました。
 まあ、文句があるといってもこの程度なんですけどね(笑)。 全体的に見てしまえば、踊りの面でもこの二人は別格でした。 都さんの足には、ピンでも突き刺さっているんでしょうか。 軸がしっかりしていて、本当に驚くほどぶれない。 アラセゴンを耳の横まで持ってきてトウで立ってアンオーでバランスを決める、 そのあとでバジルがすかさずサポートに入るんですが、いや、それ、サポートいらないから。 そのまま一ミリも動かないんじゃないかと思うほどきれいなバランスでした。 ピルエットの軸も驚くほどぶれない。 しっかりしていて、それでいて軽やかでやわらかい。 腕の動きも本当に柔らかくって優雅で、それでいて全体の雰囲気は気の強い町娘。 そんな雰囲気のバランスが絶品でした。 キャシディさん、やっぱり踊りが大きくって舞台栄えします。 問題がないわけじゃない踊りだったけど、アルブレヒトよりかっこよかったと思います (コンラッドやロットバルトなんて、比較対照じゃない)。 どこにいてもふっと目の行く存在感はさすが。 うーん、この派手さ、確かに哲也のバジル、キャシディさんのエスパーダは派手で豪華な仕上がりだったろうなと思います。 男性主役が2人いるようなものですが、そのあたりがこのバレエ団の魅力ということで(笑)。 おっと、話がずれました。 相変わらずサポートは上手いし、都さんとの息もぴったり合ってる。 リフトは軽やかで、女性の重さを全く感じさせない。 お互いのかもし出す雰囲気がよく似ていて、二人で踊っていると魅力が2倍3倍になると感じられました。 ターンは危なっかしいけど、跳躍は十分面白かった。 足のラインがとてもきれいで、中空に放り投げられた黒い足のラインにうっとり。 ふくらはぎからつま先にかけてのラインが、本当にきれいなんです。 確かにキャシディさんの当たり役はバジルではないと思います。 でも演じなれてるから、自分の合わない役と自分との妥協点を見つけ慣れているという感じ。 自分のバジルはこういうものだという確かな主張が見られたので、思ったほど違和感はありませんでした。 軽やかでどこかお調子者じみた笑顔がとにかく魅力的だったので、大概のことには目をつぶれてしまいました。 女の子に軽く声をかけられて、でも、不誠実に見えない。 久しぶりに、ファンでよかったとしみじみ感じました。

 今日は席も後ろで、オペラグラスを使っちゃうと視界の範囲も限られちゃうので殆ど二人の記憶しかありません。 もう一回見れないことが悔やまれるくらい素敵な舞台だったので、それはそれで幸せなのですが。 たまに目を外すとこれまたずっと見ていたくなる素敵な紳士、ガマーシュが!! ダウエル卿のガマーシュは、存在がなにやら面白おかしい上に佇まいが紳士という素敵な方でした。 立ち姿が美しいのはもちろん、足のラインまで美しく・・・ええと、この方っておいくつでしたっけ?? 思わず我が目を疑ってしまいました。 一番目を疑ったのは1幕。 バジル、ドンキホーテ、ガマーシュが一列に並んでいた時の後姿。 これから舞踏会が始まるんじゃないかと思うほどの気品に唖然としました。 ドン・キホーテという作品としてそれが正しいかというとちょっと微妙かもしれませんが、 あの美しさはちょっと忘れがたいです。 ガマーシュもドンキホーテも本当に生き生きのびのびと舞台に立っていらして、とても楽しかったです。 決闘のシーンなんて、最高♪ 他にもこまごま舞台の端でやっているみたいなので、その辺は明日以降の課題です。
 都さん&キャシディさんの日はもう一日あったのですが、私が今日の舞台を見に行った理由はただ一つ。 浅川さんのメルセデス!!! ものすごく楽しみにしていたんですが、見に行けて良かった! そりゃ、都さんとは比べるべくもありませんよ。 同じ振り付け踊られちゃうと、存在感云々は仕方ないにしても、踊りが小さいということは仕方ないにしても、 動きが硬いとか、手の動きが直線的とか思ってしまう。 でも、彼女のくっきりとした目鼻立ちと気が強そうな雰囲気とメルセデスというキャラはぴったり。 彼女は近頃破竹の勢いで伸びている人だと思うのですが、その勢いとあいまって見ていて気持ちの良い 踊りでした。 気風の良い姉御って、いいなあ。 残念だったのは、エスパーダとカップルに見えなかったことかなあ。 エスパーダ埋もれすぎ、探さないと見つからんよ状態だったので、なんかバランスが悪い。 メルセデスの方が背がすらりと高かった割には、エスパーダにスマートさがなく・・・・。 代わりがいるかなとメンバーの顔ぶれを思い出し、こりゃ宮尾さんが重宝されるわけだと、ちょっと 途方に暮れました。 メルセデス自体は間違いなくはまり役。 次にキャスティングされたら、絶対に見に行きます。 本当に彼女のくっきりした踊りは見ていて気持ちが良い〜♪
 花売り娘は佳世さんに自然に目が行きました。 また一際、動きがやわらかく大きくなった気がします。 この暖かさは、本当に変えがたいです。 副さんのキューピッド、彼女も腕の使い方がやわらかくなったなと思います。 でも、やっぱり彼女の踊りは堅実だけど華がないのでソロだとちょっと寂しいわ・・・。 口元に人差し指を立てる動きなんて、かわいらしくって良かったけど・・・ちょっと惜しかった。 闘牛士、エスパーダを筆頭にばたばたと色気がなかったのはどうにかならんかったのだろうか・・・・。 アントレのドゥさんとニコライさんはもう少しそろえる努力をしたほうがいいんじゃないだろうか・・・。
 後ろの席じゃなかったら絶対もっと見たブーベルさん! キャスト表に名前はなかったけど、ちゃんとあちこちにいたところを見つけました。 ジプシー達の野営地での踊りの軽やかさと鋭さは健在。 ソロは無くとも目立つ位置にいてくれたのがなんとなく嬉しかったです。 絹恵さんの踊りも相変わらず魅力的だったんだけど、そこまで目が行かなくって、残念!。

 文句はいっぱいあったのに、残ったのは幸せな気分だけ。 一瞬一瞬をその役として生きることを楽しんでいたキトリとバジルの温かな笑顔だけ。 今までもずっと一緒に生きて生きて、これからも一緒に生きていくんだと思えた二人の暖かさだけ。 なんだか分からないけど、とにかく幸せな舞台でした。 こんな幸せな出会いがあるから、舞台に行くのってやめられない!



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