ドン・キホーテ
2007/07/22
オペラパレス

キトリ康村和恵
バジル清水健太
ドン・キホーテルーク・ヘイドン
ガマーシュサー・アンソニー・ダウエル
サンチョ・パンサピエトロ・ペリッチア
メルセデス樋口ゆり
エスパーダ宮尾俊太郎
ロレンツォディヴィッド・スケルトン
花売り娘長田佳世
東野泰子
ドルシネア天野裕子
闘牛士ビャンバ・バットボルト
杜海
ニコライ・ヴィユウジャーニン
ピョートル・コプカ
リッキー・ベルトーニ
スティーブン・ウィンザー
妖精の女王樋口ゆり
キューピッド副智美
闘牛士ビャンバ・バットボルト
ピョートル・コプカ
田中一也
リッキー・ベルトーニ
スティーブン・ウィンザー
石黒善大
アントレ長田佳世
東野泰子
神戸里奈
小林絹恵
副智美
日向智子
中谷友香
白石あゆ美
杜海
ニコライ・ヴィユウジャーニン
第1ヴァリエーション長田佳世
第4ヴァリエーション東野泰子


 そんなわけで結局4公演連続の観劇となりました。 4回連続で見て飽きるんじゃないかと思ったのですが、とんでもない。 見れば見るほど見所が多くなって、結局全公演楽しんでしまいました。 というか、この一週間7公演、全部お付き合いしても飽きなかったと思います(笑)。

 というわけで、半分くらいこの公演自体のまとめです。 演出云々については、私がこの作品を以前に見たときの記憶がないので、 どこがこのバレエ団オリジナルのかさっぱり分からないまま書き進めておりますので、ご承知置き下さい。
 さて、本日の主役はなんといっても康村さん。 この公演を最後にしばらく休養に入るとあっては、見ているこちらにも力が入るというものです。 対するバジルは清水さん。 この公演は、最初は哲也バジルのはずが橋本さんになり、橋本さんも怪我をして清水さんになったのですよね。 せっかくの休養前最後の公演なのに、パートナーが二人も変わって康村さんも大変だなと思っていました。
 どうなることかと思っていたこの二人の組み合わせですが、蓋を開けてみたらすごくよかった。 ぱっと出てきた瞬間いいと思うようなところはなかったけど、でも見ているうちにどんどん好きになって行きました。 なにより、移籍が決まったばかりなのだからもっとゲストっぽい雰囲気かと思ったら全くそんなことがない。 いつから一緒にレッスンをしていたのか聞きたくなるくらい周りに雰囲気に溶け込んでいる。 そしてなにより、康村さんとお似合いなのだ。 このバレエ団で「この組み合わせが素敵!」というペアはなかなかいなかったけど、 松岡&輪島に続いて「この人にはこの人!」という組み合わせが出てきた気がします。 雰囲気が似ていると言うか、決めポーズのラインが似てると言うか、お互いの間にある雰囲気がいいというか・・・。 これからもこの二人で踊って欲しいなと思える二人でした。 うーん、そういう意味でもこの時期の康村さんの休業は残念だわ・・・。
 康村さんは相変わらず柔軟性が高くって、勝気でコケティッシュな感じがしました。 今日は前方席だったので、ロレンツォに持ち上げられてガマーシュのところに連れて行かれるときの「っき〜〜〜」という なんともいえないうなり声まで聞こえて、面白かったです。 とにかく勝気でプライドが高くいキトリでした。 ガマーシュのところに行くように言われて「絶対にいや!」と椅子にしがみついてみたり、足を組み替えながらそっぽを向く 様子がとてもかわいかった。 とにかく気が強いので、ガマーシュに扇子を突きつけてやり込めてしまうあたりなんて本当に似合ってました。 そしてスカッとして笑いながら去っていく時のかわいらしいことかわいらしいこと。 二羽の鳩のときもそうだったのですが、彼女は勝気そうに見えて、それでも内面のやさしさと言うか 女性的なやわらかさが見え隠れしているので、こういう強さを見せてもきつくなりすぎないのが面白い。 ドンキホーテの夢のシーン、彼女は本当に良く白が似合います。 昨日の祥子さんも良かったけど、今日の康村さんも素敵でした。 グランフェッテは4人見た中で一番バランスがよかった気がします。 最初はダブルとシングルの半々でしたが、最後はシングルのみ。 でも結構ゆったりと踊ってくれたので、力技でない、柔らかなフェッテでとても素敵でした。 バランスもなかなかきれいに決まって、安心して見ることが出来ました。 なにより康村さん自身本当に丁寧に、楽しそうに踊ってくれたので、見ているこちらもとても楽しかったです。
 清水さんのバジルも、なかなかバランスがよかったです。 上品すぎず、でもほどよく垢抜けていてかっこよかった! なにより、キトリと幼馴染と言うような雰囲気がよかった。 技術的な面では、なにより細かい足さばきにうっとり。 こういう丁寧さ、確実さはこのバレエ団では久しぶりに見たかも。 輪島さんとはまた違った意味で膝から下がすらりと美しくって、見惚れてました。 リフトも丁寧で素敵でした。 なにより片手リフト! 1回目もよかったけど2回目が本当にすごくって。 このまま降りてこないんじゃないかと思うほど延々とリフトしてました。 安定感も抜群で、康村さんが手をアンオーにする余裕があるくらい。 いいものを見せていただきました。 レッスン期間がどれだけあったのか分かりませんが、違和感なく踊っているあたりはさすがプロ。 哲也の振り付けのリズムがつかめなくってばたばたとしてるソリストクラスとはわけが違うわ・・・。 とはいえ輪島さん、宮尾さんと違って、根っこにあるリズムは哲也のそれとは違うもの。 手の指先までとてもきれいだし、派手さは足りないけど、基本がしっかり出来ていて安心して見ることが出来ました。 良い人が入ったなあと、しみじみ思ってしまいました。

 さて、昨日はなかなかかっこいいバジルを見せてくれた宮尾さん。 どんなエスパーダを見せてくれるかと思いきや・・・えらいことになってました。 昨日は何とかごまかしてきれいに見せていたところが全て裏目に出てしまった感じ。 エスパーダの振り付けは、派手な見せ場はそんなになく、基本さえ出来ていればきれいだと思うのですが、 案の定宮尾さんはそれが一番苦手みたい。 とりあえず、その着地の前からばらけてる足をどうにかしてくれ・・・・。 手の指の先のニュアンスがばらけすぎてかっこよくないよ・・・。 自分で振り回した布の引力に振り回されないで、お願いだから。 見た目はそこそこかっこよくってこれならいけるかと思いましたが、やっぱり何か大事なところが抜けている感じ。 見ていてとても気持ちのいい踊りをしてくれる方なのでこれからも主要な役にキャスティングされたら是非見に行きたいのですが、そのときはこのこけおどしのような感じが抜けてくれるといいなと思ってやみません。
 メルセデスは、今回も相変わらず地味・・・。 うーん、メイクがなんだか怖いのでしょうか。 色気よりもそっちを先に感じてしまいます。 踊りは堅実なんですが、何かあと一味欲しいです。
 キューピッドは副さんでした、神戸さんだとばっかり思っていたので、ちょっと意外。 彼女の踊りは好きなので、嬉しい。 前回はちょっと華がないとか存在感が薄いとか言ったけど、今回は席が前方のためかそういうことは良く分からない。 彼女の楚々とした、愛らしい雰囲気は本当に素敵です。 舞い散る落ち葉のようにくるくるひらひら舞っている腕のひらめきがかわいらしくって、 しみじみと見とれていました。 あの腕のやわらかさと優しさとかわいらしさを前方席で眺められて嬉しいです。
 花売り娘のお二人は、さすがに板についてますね。 何の不安もなく見ることができました。 かわいらしくって、でもどこか勝気なところも見え隠れしていて、またそれが二人のかわいらしさを際立てている気がします。 長田さんは本当に全身を大きく使って大きく踊る人なのだと、初めて知りました。 3幕の酒場でリズムを取っているところ、かっこよかった! 東野さんはやっぱりふんわりおっとりと優しい踊りでした。 彼女のかわいらしい踊りも、好きです。
 相変わらず追っかけています浅川さん。 彼女のくっきりとした顔立ちはあの黒い衣装に映えますね。 踊りもいつもどおりかっこよくて、素敵でした。 もう一人昨日から気になっている人。 おっとりした美人さん・・・中島郁美さんでしょうか? 踊りがやわらかくって表情が生き生きしていて、思わず目で追ってしまいました。
 相変わらず、ブーベルさんのことは目で追っかけています。 1幕はロレンツォの影になって全く見えず、涙を飲みましたが(苦笑)。 2幕はその分しっかりと見ていました。 あのすっきり通った線と、小ざかしい表情が本当に魅力的。 身が軽くってすばしっこくて、何度見ても飽きません。 踊ってるところはもちろん好きなんですが、キトリにショールをもらったり、 他の人たちに踊ろうと声かけて回ったりするところも好きです。 3幕は一部あんまりいい表情をしていなかったのがちょっと気になりました。 まあ、踊ってもいないどころか動いてさえいないときに見ている私が悪いのですが(苦笑)。 踊っていなくても、誰かとしゃべったり移動してる時なんかは、楽しそうでした。
 踊ってる時も楽しそうじゃなかったのはドゥさんです、全く! 最初に出てきたとき「とりあえず振り付けがグランジュッテなんで飛んでおきます」という感じの顔をしていてびっくりしました。 それで踊れてるならまだいいんですが、全然足が上がってないし!! 闘牛士なんだからせめてかっこよく見せて、それでなくても、楽しい作品なんだからせめて笑ってよ! 私がファンだからそんなところまで見えてしまうのかなあと思っていたら、母親も気付いてました。 宴会じゃないんだから、もっと気合を入れて手拍子をしてくれとのことでした。 ビルバントはとっても素敵だったし、昨日のエスパーダもなかなか素敵だった。 この人は本当に、いい時と悪い時の落差が激しいです。 3幕のアントレは笑顔も戻り、そこそこ生き生きと踊っていてくれたのですが、ニコライさんと全然そろってない! そろってないなんてもんじゃなく「そろえる気がない」。 お互いソロでも踊ってるのかと思うくらいばらばらでびっくりしました。 せめてそろえる気概くらい見せて欲しいものです。 金曜日と比べればすこーしだけましでしたが、まだそれでも全然たりてない・・・。 二人とも、個々で見ればスマートだしさわやかだしで、かっこいいものでした。 でも、お互いけんかしたんじゃないかと思うくらい遠い世界で踊られちゃうと、見てるこちらの気分も盛り下がります。 もったいない・・・。
 散々言っておりましたが、闘牛士は最後までスマートさとかっこよさがたりませんでした。 ビャンバさんも気合を入れて踊っていましたが、とても楽しそうでしたが、なんかばたばたした感じが抜けないのよね。 田中さんも、おんなじ。 ただ、この二人は本当に楽しそうに、力いっぱい踊っていてくれるように見えるので、個々で見ている分には 「これで良いか」と思ってしまいます(ファンの贔屓目)。 ただ、闘牛士については衣装も悪い気がします。 重いのか、布が堅いのか、それともサイズが合ってないのか。 なんかちぐはぐした感じがするんです。 闘牛士はいまいちでもアントレではかっこよかったなんてこともあったので、原因の一端はあるかなと 思ってしまいます。 今まで、例えばくるみのドロッセルマイヤーとか、白鳥のロットバルトもそう感じました。 あちらはそれでも衣装が見事だし似合ってたので目をつぶれましたが、そこまで見事でもなく、似合ってない場合は ちょっとどうにかして欲しいなと思ってしまいます。

 さて、この公演の一つの大きな楽しみはガマーシュとドンキホーテでしょう。 この二人を見るためだけでも足を運ぶ甲斐ありますよ、本当に。 今日は半分くらいこの二人を見るための回と思っていたのですが、他にも見所満載で結構見逃していました。 惜しいことをしました。
 二人ともとにかくお芝居が丁寧。 人が見ていようと見ていなかろうと、必ず何かやっています。 二人ともある意味道化役なのに真剣に、楽しんで演じられている気がしてとても気持ちがいい。 なにより二人とも気品が半端じゃないから、どんなにすっとんきょうなことをやっても品格を失わない。 1幕の舞踏会の真似事のシーンは何度見てもうっとりしてしまいます。 今日もキホーテの美しい後姿にうっとり。 彼はすっとんきょうなことをやっていますが、キトリをドルシネア姫と間違えて跪くところも美しいし、 剣を取る姿も様になっている。 主張も一本筋が通っている、なかなか素敵なご老人です。 ガマーシュはこちらもすっとんきょうだけど、明らかにいいところのご令息。 上品な服を、優雅に着こなし、カサを差す手、ハンカチを取る指先、一つ一つが絵的で上品です。 鼻持ちならないところもありますが、最後にはバジルにお祝い金も上げる、本当にいい男です(笑)。
 お気に入りはなんと言ってもこの二人の決闘シーン! 鞘当の部分から毎回ちょこちょこ違って面白かった。 そして決闘になると回を増すごとに熱くなり、どこまで演技かどこまで本気か分からないほどの迫力でした。 「騎士なのだから剣はお手の物」「貴族なのだから剣術くらいたしなみとして当然」という二人の剣術は、 迫力はありながらも上品でお見事! はやし立てる酒場の方々、そして自分の身の上を思ってキホーテに声援を送るキトリ (なんだか切羽詰っている感じがまたかわいい)なども含め、楽しませていただきました。
 1幕のキトリをつれていると思って振り返ったら口に薔薇くわえたガマーシュがいた、 サンチョに骨付き肉をもらったけど、対処に困ってとりあえず汚れた指先を拭いてみたなんてシーンも好き。 ジプシーからもらっためちゃくちゃ臭そうな上着を、恐る恐る着て、それでも上品に着てしまう ガマーシュさんが素敵。 エスパーダとなんか和やかに話しているのも楽しそうで素敵。 そして3幕できれいな衣装に着替えて出てきたときのあの貫禄と存在感! さすがとしかいいようがありません。 キホーテは全ての幕の終わりを締めてくれます。 あのきりりとした立ち姿の美しさがあってこそ、この作品は輝くのだと思います。 サンチョも、かわいかったし。 今日はいつもより高く放り投げられていて、大変そうでした。 振り回されつつ、きょとんと大きく見開かれた目が、かわいかった。 ロレンツォとのやり取りは1幕からどたばたしていて可笑しかった! 1幕の魚とフランスパンを振り回してのおっかけっこ、 2幕のバジルとキトリの行方についてのやり取り、 3幕幕前でのお酒のとりあいっこ。 こまごましたところで楽しませていただきました。
 そんなわけで、キャラクテール達が大いに盛り上げてくれた作品でした。 彼らがいたからこそ、こまごました不満も忘れて楽しめたのかなと思います。

 今日の公演は、「康村さんを送り出す」公演でもありました。 舞台の上も客席も、彼女を気持ちよく送り出そうという気持ちでいっぱいであったと思います。 色々トラブルはありましたが、そんな中で最高の形で送り出せたのではないかなと思っています。 深々とお辞儀をする康村さんの姿が、忘れがたいです。
 康村さんの踊りは本当に素晴らしく、この公演でお休みというのは残念です。 でもきっと帰ってくると信じて、待っています。 そしてそのときの公演は、もう少しゲスト無し元ロイヤル組み無しでもレベルが高くあって欲しいなと思っております。

 とても楽しい4公演でした。 見に行けたことに、そして公演に携わってくれた全ての人に、感謝!

 追記:そういえば、パンフレットが売り切れてました。 びっくりです。 哲也の降板によって、捌けたチケットの枚数は減ったと思うのですが・・・。 いつもと客層が違ったから読みきれなかったのかなあと、眺めておりました。



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