Tanz der Vampire
(ソワレ)
2007/10/06
Theater des Westens Berlin

Graf von KrolockThomas Borchert
SarahKatrin Löbbert
Professor AbroniusJens Janke
AlfredAlexander Klaws
ChagalJerzy Jeszke
MagdaKatja Berg
HerbertHaldor Laegreid
KoukolStefan Büdenbender
RebeccaSvenja Kühl
TanzsolistenKym Boyson(Rote Stiefel Solo/Nightmare Solo)
Silvano Marraffa(Weißer Vampir)
Vanni Viscusi(Rote Stiefel Solo/Schwarzer Vampir)
GesangssolistenSven Fliege
Philipp Hägeli
TanzensembleMilena Alaze
Hannah Carter
Tiziana Doneda
Philipp Kempster
Ákos Tihanyi
Christopher Tölle
GesangsensembleFanny Drenthe
Anne Hoth
Nina Janke
Christopher Morandi
Christina Ogink
Stephanie Sturm


注:キャストは6日ソワレのものですが、感想は5・6日通しの2幕の感想です。

Totale Finsternis
 螺旋階段がちゃちくみえて、心の中で絶叫。 下手サイドから出てくるのは納得しましたし慣れましたが、ちゃちいのは許しがたい。 幅が狭いのがいけないのか、高さが足りないのがいけないのか・・・(多分両方)。 非常階段の中腹に、居所なさげに立っているThomasクロロックの微妙さにちょっと涙。 こういう時ファンとしては「Thomasでっかいから仕方ないよね☆」の一言で済ませたいのですが、 Philippクロロックの時はそんなに気にならなかったので(彼のほうが多少低いけど、見た目大して変わんない)、 調整しだいで何とかなるのかなと思ってしまいました。 好きなシーンだけに、むなしくって泣けてくる。 さらにこのシーン、音響さんに直談判したくなるくらいオケと声のバランスが悪かったんです。 耳を塞ぎたくなるくらいうるさい「Totale Finsternis」なんて、何の嫌がらせですか?
 今回見た中ではThomas&Katrinペアが一番気に入りました。 あとの二組は声の相性が悪いのか、お互いの声をはじきあっているという感じで、きれいな重唱に聞こえなくって残念。 Thomas&Katrinペアは二つの声が溶け合うという感じではなかったけど、弾くことなく溶けることなく真っ直ぐ耳に飛び込んでくる。 力いっぱいぶつけるような声で、それでいて乱暴さを感じさせない声で、とにかく気持ちよかった。
 ちゃちいちゃちいと言いつつも、それでもこの場面は視覚的にも楽しい。 螺旋階段がちゃちくって寂しかったので、背後のご先祖様の肖像画を観察。 一人、「こういう絵画見たことあるよ!」という人がいてびっくり。 この「絵が歌っている」雰囲気、好きです。 怖いもの知らずといった雰囲気のザラ、威圧感たっぷりの指先と翻るマントが鮮やかなクロロック。 かなり満足したんですが、3回見て1回の満足じゃ、ちょっと確率低いかな。

Carpe Noctem! - Fühl die Nacht!
 6日ソワレは、今まで見た中で一番面白かった! Schwarzer VampireとWeisser Vampire&Nightmare Soloのバランスがよかったのでしょうか。 オケがよかったのでしょうか。 なんだか分かりませんがとにかく舞台にのめりこみました。
 何が良かったかって、やはり「物語」としてきれいに成立していること。 踊りがうまいとか素敵というのはあったけど、それ以上に物語として面白かった。 何度も言いますが、Vanni ViscusiのSchwarzer Vampireが本当に良かったのです。 5日ソワレはなんとも味気なかったのですが、6日は本当に良かった、目が離せなかった。 ちょっと話は外れますが、人間には恐怖を快楽として楽しむという部分があります。 一番分かりやすいのはジェットコースターでしょうか。 100%安全だと分かった上で、恐怖を楽しんでいる。 それに近いものがあったと思います。 何をしでかすか分からない化け物の存在を、客席という100%安全なところから楽しんでいるようにさえ思えました。 とても魅力的で、とにかく恐ろしくって目が離せなかった。
 これはアルフレートの悪夢なのだから、彼くらいインパクトのある存在が中心にいてくれて、 物語を引っ張って入ってくれると安心します。 5日ソワレがいまいちだったので6日マチネもちょっとおっかなびっくりだったのですが、 10秒もしたら「この人なら大丈夫」と思えました。 メイクは濃いし、体格を覚えられるほど見てないからダンサーとして見分けはつかないし、 踊り方もそんなに違うとも思えなかったのですが、何故か「この人は面白い」とすぐ思えました。 登場してすぐのNightmare Solo(ザラダンサー)を押し倒してからごろごろ回るシーン(他に言い方が思いつかなかった・・・)、 5日ソワレは別に何ということはなくて、かえって不思議なくらいでした。 6日はもう、ものすごいことになっていてびっくりしました。 この振り付けなんだから、そうなるはずよね! 吸血鬼の「血を吸う」という行為は人間の三大欲求のうちの二つ(食欲と性欲)を満たすものだというのを以前どっかで 読んだことがあるようなないような気がするのですが、VanniのSchwarzer Vampireは正にそんな感じ。 セクシャルな魅力(という言葉で表せるほど上品なものではないが、もちろん品性を欠くものでもない)もあるのですが、 捕食者が獲物を捉える瞬間を見ているような緊迫感がありました。 夢の中と言うことで、ザラが半分抜け殻のように意思を持っているのか持っていないのかわからないのもいい感じ。 憧れであり獲物であり、そして生贄でもある。 逆にWeisser Vampire(アルフレートダンサー)は程よく自我を持っている感じ。 そのわりにまた彼が弱々しいと言うか女性的なんですよ。 Schwarzer Vampireがザラの代わりにアルフレートを自分の獲物と認めても仕方ないという雰囲気がありました。 アルフレートとSchwarzer Vampireでザラの取り合いのシーンは、Schwarzer Vampireのことしか見てなかった(苦笑)。 ものすごい目つきで奪おうとしてます。 アルフレートが血を吸われる前、彼がSchwarzer Vampireに掲げ上げられるシーンがとにかくきれいだった。 生贄が捧げられたというか・・・一瞬時が止まったように見えました。 そしてその静寂をゆっくりと破るように、アルフレートが降ろされていく。 血を吸われるシーンも、乱暴でありながらもどこか様式めいた美しさがある。 そうなることが決まっていたからそうしたというか・・・。 振り付けがそうだからそうしたというのではなくて、そう定まっていた運命をそのままなぞったような美しさがあった。 アルフレートの姿を見つめるザラは相変わらず魂が抜けたまま。 そんな彼女を見下ろすSchwarzer Vampireの視線の冷たさが好きでした。 アルフレートの血を吸って満ち足りたから、もう彼女に用はない。 ゴミくずでも見るように見捨てて去っていく。 生気を感じさせないザラと、生を全うし荒い息遣いが伝わってくるSchwarzer Vampireの対比が面白い。 それから横たわったアルフレートを足先で転がして去っていく。 派手なシーンも好きですが、こういうなんでもないシーンも印象的でした。 静かですが、絶対的な存在感がありました。 存在感があるから、彼が去っていく後姿も印象的だし、去っていくことで場の空気もはっきりと変わる。 そのあとのザラとアルフレートのダンスはしっとりしていて温かい。 バレエを見るようになって気付いたんですが、こういうリフト関連って本当に基本はバレエなんですね。 見覚えのある型がいっぱい出てきてびっくりしました。 今回初めて気付いたんですが、この時点ですでにアルフレートは牙付でした。 どこで付けたのかちっとも気付かなかった・・・。
 そして無事に逃げおせたと思ったそのとき、Schwarzer Vampireが再び襲い掛かってくる。 この時の登場の仕方、とても好きです。 地の底からいきなり飛び上がってくる感じがします。 Schwarzer Vampireがザラの血を吸うシーンは何度見ても曲と照明がきれいにあっていて、うっとりします。 Schwarzer Vampireの急襲の驚きから醒める間も無く、今度はアルフレートがザラに襲い掛かる。 このシーン、Schwarzer Vampireは獲物に襲い掛かる感じだったのですが、 アルフレートの方はどっちかというと腐肉に食らいつく獣のように見えました。 ヴァンパイアとしても、全く格が違う感じ。 そのあとの真っ赤に染まった口元を見せるシーンも二人とも雰囲気が全く違う。 自分の行ったことにどこか誇りを感じているようなSchwarzer Vampireと、 「してはならないことをした」という悔悟と欲を満たした満足感があったアルフレート。 この対比がきっちり見れて満足でした。
 そして二人のヴァンパイアは去っていき、生贄の少女は消えていく。 この一連の流れが本当にきれいで、去っていくSchwarzer Vampireとアルフレートを見送り、 掲げられたザラを眺めているうちにこの曲は終わっていました。
 終わった瞬間、本当に何が起こったか理解できませんでした(笑)。 6日ソワレは本当にのめりこんでいて、曲が終わった瞬間に「今自分はどこで何をしているんだ?」と首を傾げたくらいです。 冗談のようですが本当に「私何してたっけ?」と思うくらい、まるで夢の中につれていかれたようにのめりこみました。 その後クコールが出てきた辺りでようやくストーリーのおさらいができました。 面白かったのもありますが、珍しい経験ができたという意味でも印象的な回でした。

 (最後にこっそり言うが、踊りは良かったけどコーラスはもすこしがんばってください。 あと、序盤の照明が明るくって舞台が狭くって役者さんがみっちり詰め込まれていて、ちょっと雰囲気台無しだった。 後半に行くにしたがって、そんなことどうでもよくなってきたけどね)

Ein perfekter Tag
 このシーンの目覚まし時計の音、ハンブルクより長くないかな、ちょっと耳障り・・・と感じたのは5日ソワレは感じたのですが、 6日はそんなこと全く感じませんでした。 目覚まし時計の音なので、眠い時ほど耳に堪えるみたいです(笑)。
 ここは、かいがいしく働くクコールがとにかくかわいい! アルフレートの声にうっとりと聞きほれていたり、「これはザラが用意してくれた朝食か?」なんて言われて 「いや俺俺」という反応をするのもかわいい。 うっとりしてる表情なんて不気味なはずなのに、なんか不思議なときめきを覚えるかわいさでした。 本当に幸せそうな、天の調べでも聴いているような顔をしてるんですもの。 アルフレートもクコールも、思いっきりマイペースで動いているのがなんかおかしい。 かわいいかわいいと言っておりますが、クコール、アルフレートが歌っている最中に客席に向けて盛大に尻の穴を掻いて 色々台無しにしておりました(笑)。 臆面も無くこんなことする役者、初めて見た(笑)。 ちなみに、客席の皆さんも大笑いしてたから、みなそっちを見てたのね。
 教授の着替えを、ちょっと不器用に手伝うアルフレートがかわいいな〜。 そして部屋をひょこひょこ出て行く教授の足取りと後姿が、またかわいいのでした。

Für Sarah
 一人部屋に残されたアルフレートがかばんを整理していると、そこにはスポンジが。 そしてザラのことを思ってこの曲になります。 ビッグナンバー続きでちょっと重い気もしますが、アルフレートがザラを思い出すまでの流れは好き。 このときのアルフレートがザラを思い出す瞬間の、やさしい表情と音楽のやわらかさが結構好きです。 歌うと「もっと精進せんかい!」という気分になりますが。 音を外すレベルでもないし、ちゃんと伸ばすところは目いっぱい伸ばしてるんですが、力いっぱいやってるといった感じ。 今回は歌が達者な方が多かったせいか、このいかにも「がんばってます!」という感じがちょっと気になりました。

In der Gruft
 舞台の高さが無くって、結構無理やりすぎて困る。 アルフレートが、つり橋から直接棺の上に降りるのもいまいちだし、何より教授を引き摺り下ろそうとするシーンが 無理やりすぎてつまらないです。
 ところで、棺の中に入ってるのは誰かなあと、上から覗き込みつつ思っていました。 誰かが入ってるのは分かるけど、微妙に見づらい角度だったので本人かダミーか分からず。 というか、あの棺の長さだと足の部分とかどうなってるんでしょうか? ちょっと気になります。
 あんまり好きなシーンではないのですが、ぶら下がっている教授がかわいかった♪ アルフレートが杭を刺せなくって「何でだ〜」と甲高い声で縮こまりながら言うのがとにかくかわいかった (足もちゃんと持ち上げて「まあるい」感じで震える声で言ってるんですよ〜)。
 そのあとのマグダとシャガールのシーン。 普段は「おやすみなさい」モードだったんですが、今回ばかりはマグダがかわいかったから楽しかった♪ 自堕落でかわいいんですよ。 色気は生々しくきわどい感じ。 それでも下品になることが無いのが好き。 棺から出てくる時の「起き上がるのもめんどくさい」という風情がかわいくってしばし観察。 棺の端に体を沿わせるように持ち上げて、天辺まで来ちゃったらうまく降りることができなくって悲鳴を上げて転がるという感じ。 このだらだらぐでぐでした感じが、つぼにはまりました。 ヴァンパイアになってからの生活を楽しんでる感じ・・・というとちょっとイメージが違うな。 その生活に浸りきって、(自分やシャガールに対して)呆れつつも、満喫して、溶けきっているような感じでした。 シャガールに対する「ああ、もう、これだからこいつは」という表情が、コケティッシュでかわいかった。 1幕と違って、呆れつつも避けたり嫌ったりはしてないのですよ。 とはいえ愛情を抱いてるというのもまたちょっと違う感じでした。
 そして相変わらずかいがいしく働いているクコール。 棺の蓋が動いているのを見て悲鳴を上げるところとか、「Schlafen」としゃがれ声で新入り2人に言いつけてるところとか、 かわいくって仕方ない。 2人を棺に押し込めて静かになったと思ったら、それでもまた歌ってる。 棺の上に座って勝ち誇った顔をしていたらまた2人が騒ぎ出して切れ掛かった声を上げたり、本当にクコールはかわいい。 最後のガッツポーズは、完全に客席を味方に付けているとわかる拍手と共にお気に入り。 見た目はグロテスクなのに、本当にかわいいな〜。

Bücher, Bücher! / Noch mehr Bücher!
 このシーンはFür Sarahがなくなったのでテンポがよくなった。 ちょっと寂しいことも無くはないけど、この辺りの畳み掛けるような雰囲気はいいなあ。
 ChristinaもKatrinもかわいいザラだったけど、このシーンははっきりKatrinのほうがコケティッシュでかわいかった。 Christinaもちょっとふっくらしてる感じがかわいくって、それはそれで目の保養だったけど。 このシーンのアルフレートとザラのかみ合わない会話はいいねえ。 あと、誇らしげに大きなスポンジを取り出してみせるザラのあほっぽさも好きです(笑)。

Wenn liebe in dir ist
 何を血迷ったか、3回ともアルフレートとヘルベルトでなく、鏡の中のアルフレートを見ていました。 鏡の手前ではアルフレートはヘルベルトに振り回されながら踊っているのですが、鏡の中では一人で「振り回されながら踊る」を 再現していて、うまいな〜と思いつつ見ていました。 小道具あり、2人組みの踊りで振り回されるほうだけという難しい条件の中でうまーく踊ってます。 セットや暗がりをうまく利用していて、振り付け自体のうまさにも感動。 ダンサーさんも、一人で踊っているのは錯覚ではないかと思うほどきれいに踊っていて感動。 オペラグラスで見てしまうと顔の造詣がはっきり違うのが分かるけど、遠目だと分からないのが面白い。 アルフレートが鏡に自分しか映ってないことに気づいておっかなびっくり鏡に近寄るのも面白かった。 6日のマチネだったかな、背中しか見えないのにちゃんと鏡の手前側のアルフレートと 同じようにヘルベルトの動きにおびえているように見えて、びっくりしました。
 口に本挟まれちゃうヘルベルト、何をあせっているのかと思ったら本に牙が刺さったのね(笑)。 必死に抜く姿がかわいかった。 必死に逃げるアルフレートだけど、逃げる距離が短かったからちょっとつまらなかったなあ。 もう少し余韻に浸りたいところです。 ここの待ち構えるヘルベルトの表情も、好きだし。
 逃げるアルフレートと追うヘルベルトとのやり取りは、ハンブルクで見たのが一番好きです。 今まで書いていなかったのでここで書きます。 押し倒されかかっているところでアルフレートがあさっての方向をさして ヘルベルトの気を引いている隙に逃げようとするが、ヘルベルトに気付かれて足元すくわれて元の木阿弥 という流れをお互い必死にやっているのが好きでした。 華麗な音楽、古典的どたばた喜劇、でも本人たち命がけで真剣、場内爆笑という雰囲気が好きだったなあ。
 Haldorヘルベルトの魅力が炸裂するのは教授が出てきてから。 アルフレートにのしかかって噛み付こうとした時、教授登場。 ステッキでお尻ペンペンをするのですが、こんな派手にお尻振るヘルベルトなんて初めてだ(笑)。 その振り方が叩かれつつもキュートで場内爆笑。 そのあとの教授とアルフレートのやり取りもおかしくって、皆笑い転げてます。 ただでさえドイツ語で聞き取りづらいっていうのに、笑い声がすごくって何がなんだか(笑)。 教授はアルフレートにあーだこーだ言い始めると、いきなり股間を覗き込んでアルフレートを脅かすし、 大慌てでかばんで前を隠すアルフレートが間抜けでかわいかったし。 テンポも良く、大騒ぎのまま二人は去っていきました。 素でやってるようにしか見えないのに、ちゃんとお芝居になってるあたり、さすがです。
 そして置き去りにされたヘルベルト。 この時のちょっとひねくれたように笑うヘルベルトが、一番好き。

Sie Irren, Professor!
 「教授」「んー?(興味なさそう)」「アリボリの理論は(中略)」 「それはアリボリのじゃなくって自分の理論だ(切れそうになるのを必死でこらえる震える声)」このやり取りが妙にかわいかった。 それにしてもこの2人、本当にボケとボケで突っ込み不在だ・・・(笑)。
 この二人、息ぴったりでいかにも付き合い長そうな雰囲気でしたが、 考えてみればJensがベルリンに来たのって、私が観劇する一月くらい前のことなんですよね。 それなのにこんなぴったりなんてすごいなあと、観劇後かなり経ってから気付きました。

Ewigkeit
 そろそろ読んでいる人も飽きそうなものだけど、やっぱり言わせてくれ。 狭い!明るい! もう少し、人影が薄ぼんやり見えるくらいがいいです。 はっきり見えすぎてしまって、なんか雰囲気がない。 歌はそこそこ聞き応えあるし動きのおどろおどろしさもあるけど、なんか台無し。
 こういう集団で出てくるシーンって、一番上手い人と、一番下手な人はやけに目に付きますね。 もう人間やめてるんじゃないほど化け物化け物して怖かった姐さんと、やる気あるのかないのかわからない気の抜けた 兄さんがやたら目に付きました(苦笑)。
 中2階最前列だと通路を歩く皆様も上からよく見えたけど、やっぱり一度脅かされてみたいなあ。

Die unstillbare Gier
 Thomasの「Gier」聞いたとき、本当に幸せでした。 よかったとか上手かったとかじゃなくって、なんだろうかこの幸せはと思ったら、「言っていることが分かる幸せ」でした。 すっかり忘れていましたが、前回ハンブルクで見たあとにこの作品の一部の曲を訳していました。 ドイツ語一年生の訳ですからそれはそれで惨いものでしたが、それでも「やらないよりまし」にはなりました。 その中でもやっぱり「Gier」が一番好きで、「意味が分かった状態で生で聞きたいな」と思っていました。 それで今回、ようやく長年の念願かなってThomasの「Gier」を聞けたのですが・・・ 上記のようなことを思ってたこと、忘れてた(苦笑)。 確かにほぼ覚えてるけど、ちゃんと訳した時のノートを持って来ればよかったと後悔した次第です。 ちなみに、自分で訳すと確かに間違いは多いですけど、覚えやすくっていいですよ。 役者さんたちは全体の物語を表現しつつ単語一つ一つにも意味をこめているわけです。 全体の訳は頭のいい人の訳や日本語版を参考にし、単語一つ一つの意味は自分訳で拾うといい感じです。 音と意味と単語をいっぺんに頭に入れるから、歌が好きな人なら比較的簡単に覚えられると思います。
 それはさておき。
 Thomasのクロロック、本当によくなったなあと、しみじみと思いました。 声を低くしていたり、声のねちっこさを隠していたり、テンションを下げてみたり。 なにより血が赤い感じがしない冷たさがあったので、場の雰囲気にとてもあっていた (前回は明らかに赤い血が流れていたんで、別の意味で泣けた)。 歌っているというより、言葉が音楽を綴っているような感じの歌い方もよかった。 後半は歌い上げてるけど、特に前半は叫ぶことさえなく、本当にしゃべっている感じでした。
 Thomasは指先の動きがきれいだと思うのですが、このシーンもしみじみ思いました 一つ一つの墓の碑銘をなぞるように触れていった時、遠目ながらその指先に見入ってしまいました。 そして誰かの墓に触れた時、何かを思い出したかのように口を開く。 この辺りの流れの美しさは、さすが。
 今回印象に残ったシーン。
 冒頭の若い時を歌う時の声が本当に優しくって温かかった。 それは懐かしさであり、憧れでもあったと思う。 そのころの全てに対する愛情、それは自分に対してのもの、人生そのものに対するもの、そして傍らにいたものに対するもの であったと思います(愛情の強さは挙げた順で、多分あってると思う)。 この優しさが後のシーンときれいな対比になっていました。
 牧師の娘のことを語ったとき、墓に足乗せて歌っておりました。 このシーン、少し艶かしいことが語られていると思います。 はっきりとは言葉になっていなかったと思うのですが、「夜」とか「彼女の白い肌」という単語があるので、そう思ってます。 そうくるかなと思っていたらちょっと違い、5日ソワレは首をかしげたまま終わりました。 6日ソワレを見て、「こう来る」と思っていたことと全く違っていたことに気づきました。 クロロックは笑っていました、牧師の娘ですら自分に身を任せたことをあざ笑うかのように。 多分彼は、牧師の娘を愛したことはなかったのでしょう。 彼女が生きていた時も、今現在も。 牧師の娘の肌に詩を書いたとき彼の心にあったのは背徳による喜びと、 この世に対する諦めというか、失望だったような気がします。 何も感情がないような、冷たさがありました。 そのあとのナポレオンの小姓のことを語ったときは愛情や、人としての温かさを垣間見ることができました。 だから、そこにあった悲しみの深さが痛々しかった。 それは自分が持っていて欲しいと思う感情を自分が有していないことに気付いてしまった者の失望と諦めだったから。 これがあったから、クロロックはどんなに生きながらえても彼の望む物を手に入れられないと すんなり理解することが出来ました。 この二つのシーン、「持っていて欲しいと思うものを他者が持っていない失望」と 「持っていて欲しいと思うものを自分が持っていない失望」という似ているようで正反対の感情が語られていて 興味深かった。
 今回特に印象的だったのが「人は人間性を、そして金や名声を信じる」のシーン。 クロロックの姿の中に、人を愛を、そして神を信じていた若者の姿が見えました。 年老いた吸血鬼の姿の中に、確かに年若い清廉な青年の姿が見えて・・・とても不思議でした。 この時の、跪きながら星を仰ぐクロロックの真っ直ぐな眼差し、そしてその清廉さを否定するような異様な白い肌、 白髪交じりの長髪そして吸血鬼(つまり神の加護から外れた存在)を象徴するような外見の不調和が、 言葉にできないほど美しかった。 星明りというのは明るいものではないから「星明りに照らされて」なんていう言い方は間違っているのは分かるのですが、 それでもそこにある光は淡い星明りなのだと感じられました。 一つ思ったのは、彼はかつて神を、人を、愛を信じていたのではないかということ。 他の人と同じように信じていた・・・ではなくて、人一倍真っ直ぐに信じていた。 信じていたころの自分を懐かしく愛しく憧れを持って思い出せるのに、一方で信じていた自身を、 信じる者を嗤うことができる。 この対比が本当に面白かった。 すごく印象的だったのですが、この背徳的というか倒錯的な美しさが感じられたのが5日ソワレだけだったのがちょっと残念。 (上記2点で分かった教訓:「こう来る」と思って観劇すると失敗します)
 怒りは感じなかった。 そこにあったのは果てなく続く熱の無い砂漠のような渇き。 見ているこちらの心まで空っぽにするようなむなしさ。 何かを与えてくれるというより、こちらの中にあるものを全て奪い去っていくような感覚。 自分の中身が空っぽになったような、不思議な感覚でした。
 そして最後は客席の方に振り返り、人の業をまるで人でない者のように遠くから見つめるように言う。 2004年に見たとき、たたずむクロロックの姿がある種の神の様に見えたことを覚えています。 西洋の言葉で言う「神」より東洋の言葉で言う「神」に近いんだけど、そのあたりの細かいことは 話していると長くなるんで省略 (日本語で言えば「神」だけど、英語で言うなら「God」でないことは確かだけど、 だからといって他に良い言葉が思いつかない)。 今回は人よりは神に近く、神よりはもっと俗っぽい存在のように見えました。 ただそこに存在するものでは無くって、この世の終わりまで見届けようという執念と言うか、執着と言うか、 そういう俗っぽい感覚がありました。 そんな彼もかつては人であったし、神(これは英語でいうと「God」)よりも人に近い存在なのだ。 このアンバランスさが、面白かった。
 Philippクロロック、「声高い〜」とばかり思っていましたが、この辺りからかっこよく見え始める。 色々思ったことはあるんですが、観劇直後のメモが明らかにThomas優先だったので、 観劇から一月以上たった今となっては何がなんだか。 もったいないことをしたと思っています(でも多分、同様の過ちは今後も何度も繰り返すでしょう・・・)。 Philippクロロックは若かった。 若いまま人生を打ち切られ、外見は老いることができたけど内面は年を重ねることができなかった感じ。 Thomasクロロックは何もかも諦めているようだったけど、Philippクロロックはまだ何かを求め続けている気がしました。 求めても手に入らないことは分かっていても、まだそれが理解しきれずにいて (もしくは理解するのを拒んで)求め続けている感じ。 この熱さは結構気に入ったというか、同調できたので、前半部分がもう少し「冷たい」と好みかなあと思っています。 何ヵ月後かに見るのは楽しみだけど、二日続けて見るのはちょっとまだ厳しいかなという感じ (普通の人は二日続けてなんて見ません)。
 長々書いていた最後にまとめを書くのもよろしくない気もいたしますが、一言で言うなら Thomasクロロックは「渇き」、Philippクロロックは「飢え(かつえ)」を感じました。 やっぱりこの曲は、各役者さんの個性の違いが一番見れて、面白いです。
 さらにThomasについては5日と6日でかなり違っていました。 歌い方でなくって解釈というか、重きを置いている部分が異なっているような気がしました。 「なんだかよく分からないけど違う」という一言ですませたおかげでいったいどこがどう違ったのか 今となっては思い出せないのですが、5日は過去への憧れ、6日は諦めと失望をより強く 感じたような気がします、多分。

(こそっと一つだけ突っ込み。墓場の部分から駆け下りてくるシーン、申し訳ないが一番年齢が出るね(苦笑)。 ハンブルクでのThomas、Aleks、ベルリンでのThomas、Philipp、某動画サイトでKevinを見て、 明らかに異なる動きがしっかり年齢で別けられてちょっとだけ苦笑。 オケピットに落ちるんじゃないかと思うくらいの勢いで駆け下りてくれるのが一番好きだけど、 それって結構難しいのかなと思ったのでした(駆け下りる時じゃなくって、止まる時))

Tanzsaal
 荘厳な音楽なのに、冒頭部分が妙に間抜けで楽しい。 微妙におしゃれしてるクコールとか、ばればれな隠れ方してるのにばれない教授&アルフレートとか。 重々しい音楽にいきなり加わる、二人がヴァンパイアを殴った時の間抜けな音が何故か音楽にマッチしていて好き。 そのあとの気絶した2人を引きずって行くシーン、何度見てもアルフレートが素でかばんを忘れているように見えて面白い。 本当に、演技は面白いのよね、アルフレート。
 クロロックが出てきて、やっぱり「Totale Finsternis」と同じ悲鳴を上げる。 こんな螺旋階段じゃ、消化不良だよ・・・・。 普段よりちょっと目線を反らしておりました。 2人ともアレンジし放題のソロを聞きつつ(Thomasの声が力が入りすぎておらず、高くなりすぎておらず、いい感じ)、 ヴァンパイアたちの奇妙なダンスと、 それを無理やり真似しようとばたばたしているアルフレートと教授を見て楽しんでました。 このシーンも、かっこいいのに間抜けだわ。 それにしてもクロロックの白いハンカチ、演出上必要なものとはいえ、よく似合っています。
 クロロックがヘルベルトに合図して、それからヘルベルトがザラを呼びに行く。 この流れ、初めて気づきました。 心得たように場を後にするヘルベルトがかっこいい。 あと、螺旋階段の下にたたずむヘルベルトもかっこいい。 初見前に「螺旋階段はヘルベルトすら上ることが許されていない」というのを聞いていたので、 このシーンはいつも見てしまいます。
 ザラが登場するシーンも、見逃したくないポイント。 しかしやっぱり狭いよ、この非常階段・・・。 Christinaザラはどこか震えているように見えました。 Katrinザラは震えつつも「私は伯爵に認められた貴婦人」という自負があるように見えました。 不安を押し殺しつつ、胸を張っていた。 どこか自信に満ちた眼差しが、かっこよかった。
 この後の流れはとても好き。 一つの異常な、ありえない世界を完璧に丁寧に描いているので、息をするのも忘れるくらいの勢いで見ています。 お芝居はリアリティのあるものか、完全に違う世界を作り上げて嘘をつき通すものか、そのどちらかであって欲しい。 そういう思っているので、この辺りの「別世界を徹底して描きあげる」という雰囲気はとても好き。 存在しえない世界なのに、確かにそこに存在しているように見えて、このシーンは出演者問わず好きです。
 クロロックがザラのことをほとんど見ずに手を差し伸べて、体を引き寄せるタイミングが好き。 まるで儀式めいた美しさがあって、一気に世界に引き込まれる。 強い力で体を引き寄せられた辺りから感じられるザラの「あれ、なんかこれちょっと違う?」という感じの戸惑いが、 なんともいえず好き。 このあたり、クロロック二人の動きが同じなのに、印象が全く違っていて面白かった。 Philippクロロック場合、いつものように堂々として見えた。 ザラの頬を撫でる指先は、どこか値踏みするようなものがあった。 自分が目をつけた娘が、自分が望むものであるかを確かめているようだった。 クロロックはザラの首を傾けさせ、肩にかかっていた髪を払う。 この時ザラは「ちょっと待って」と言うかのように片手を上げるのだが、その手をPhilippクロロックは 無意識のうちに振り払ったように見えた。 Thomasクロロックの場合、その立ち姿には普段感じられない緊張感があった。 ザラの頬に触れる手は彼女を値踏みするものではなく、手の中にあるザラの価値を改めて確認するためのもの。 彼女が自分の望みに適う娘であると理解したうえで見つめてる。 まるで口付けでもするかのように、彼女に顔を近づけ、そして首筋に狙いを定める。 ザラがクロロックの動きを止めるように上げた手を、軽やかに押さえつける。 彼女がそうするというのは予想済みだったのか、どこか楽しんでいるかのように見えた。 この、Philippクロロックの微妙な余裕のなさと、Thomasクロロックの余裕綽々といった風情が、 実にこの二人らしいなと思ったのでした。 「Gier」の時に感じた二人の性格そのままなの。 それは当たり前のことなんですが、なんだか印象深いものがありました。
 血を吸う瞬間の赤い照明、音楽の転換、そして舞台の隅でさりげなく直立姿勢で倒れるアルフレートとあわてて支える教授。 この演出は完璧だなあと思う瞬間です。
 ザラを抱え上げ、ザラが眷族に加わったかのことを披露するかのクロロック。 この時、床に滴ったザラの血をすくってなめるヴァンパイアの勢いというか、生々しさが、怖かった。
 クロロックの腕から下ろされ、一時立てたかのように見えたけど崩れ落ちるザラ。 場はざわめくけど、クロロックは手を貸さない。 床に崩れたザラが上体を起こし、クロロックと共に歌う。 このシーンが、この作品で一番好き。 半分心ここにあらずという感じのザラと、少し冷たく見下ろす感じのクロロック。 そんな2人は今まで一番近しいところにいるように見える。 例え「Totale Finsternis」でばらばらに聞こえたとしても、このシーンだけはちゃんと二つの声が一つに聞こえる。 二つの全く違った声が、絡み合って耳に届くのが、本当に心地いい。
 クロロックの口元の血は、やっぱり偶然が作用するところが大きいなと思いつつしっかり観察しておりました。 5日のソワレは口の右側に一筋、白い肌に赤い血がまるで描いたかのようにきれいに流れていてうっとりとしてしまいました。 ちなみにそれ以外、6日のマチネソワレとか、5日ソワレの左側の口元とかは特筆することもなく普通に赤く染まっておりました。 本当に偶然の力が大きいです。 血は口元を汚すだけだったり、真っ白い襟飾りまで滴ることもあったりでした。 口元は真っ赤で襟元は真っ白というのも、真っ白い襟飾りに赤い点がぽつぽつ見られるのも両方とも好きなので これはどちらでもよいのですが。 ハンカチを含め、赤、白、黒のバランスが見事です。
 このあたりのクロロック、口を大きく開けていることが多いような気がしました。 真っ赤に染まった口を見せ付けるような感じ。 赤く染まった牙が印象的で思わず見入ってしまいましたが、舞台の上の人とはいえ、人様の口元を覗き込むのは あまり行儀のいいことではないですね(笑)。
 半分くらい我を忘れて見入って、聞き入っていたところで、メヌエットスタート。 全体的に夢が醒めると言うか、我に返るような感じがします。 ハンブルクの時は妙にすかした顔をしていておかしかったThomasクロロック、ベルリンではまだ微妙に神妙な顔をしていました。 このシーンは口元を白いハンカチでぬぐうクロロックを見るのが好きで、 他のものそっちのけで、彼の姿を追いかけております。 それはさておき、このあたりのPhilippクロロックの小芝居がとても印象的でした。 貴婦人を見るような目でザラを見上げ、手にキスした時は惚れ惚れした。 このときの戸惑うようなザラがまたかわいかったのよ。 ザラの首筋の血を指先ですくってなめる動きはゾクゾクした。 お互い、互いのほかに世界は存在しないと思っているように見つめあっていたのも印象的。 無論クロロックだからほぼ無表情なんですが、それがかえって魅力的だった。
 そして踊りは続き、ヘルベルトが侵入者ペアに気付く。 クロロックに報告して、そのあたりからヴァンパイアたちが一方に集まるのね、なるほど。 このときの教授は、すっかり目的を忘れて踊ることに熱中しているのが笑えます。 そして、ばれたことに気づいた時ぴたりと硬直するのがまた面白い。 アルフレートが燭台を持ってクロロックに襲い掛かるシーン、久々に劇場が狭いことを思い出した・・・。 ハンブルクでは数歩ためらいながら歩いて、その後クロロックに駆け寄るんだけど、 ベルリンではちょっと歩いただけですぐゴールでした。 寂しい。 おっかなびっくりのアルフレートを脅かした後、Philippクロロックはヘルベルトと一緒に声を上げて笑っていました。 Thomasクロロックは声を上げずにヘルベルトと顔を見合わせて笑うのみ。 この笑い方がまた余裕綽々というか人をばかにした不気味さがあって、ヘルベルトと共にアダルトな魅力を かもし出していました。 そして教授の機転で燭台は十字架となり、倒れるクロロック。 ただ、この倒れ方、Thomasいっつも下手だと思うのですよ・・・。 Philippクロロックの倒れ方というか脅え方がまたきれいなだけに、最後の最後でちょっと残念でした。
 そして崩れるクロロックのお城が映像で映し出され・・・いや、きれいだけどね、分かりやすいけどね。 私が求めてるのはこれじゃない。

Draussen ist freiheit
 このシーンのKatrinザラの豹変っぷり半端じゃなかった。 本当にきっちり化け物になっていて、びっくり。 Christinaザラとの格の違いを一番感じたのがここでした (観劇日時点ではKatrinザラがファーストキャスト)。 やっぱり、オペラグラス無でも「ザラがヴァンパイアになってる」ということが分かるとよいですね。
 それにしても哀れすぎるのがアルフレート。 ザラに襲われる、何度となく、まな板の上の鯉のように、押さえつけられながらびちびちと抵抗しているのに 血を吸われ続ける。 ありえない情けなさというか、哀れさに、思わず涙。 そしてヴァンパイアになった後も、教授に襲い掛かろうとするもザラに必死に何度も止められ、結局彼女に従う。 尻に敷かれすぎと言うか、なんと言うか。 悪夢よりひどい結末よね(笑)。

Der Tanz der Vampere
 というわけで、最後です。 マグダヴァンパイアがまたかっこいいのです。 見た目がかっこいいことは今までもありましたが、今回は歌声もかっこよくって耳が幸せ。 自在に音符を操るようにアレンジし、軽やかに力強く歌ってくれました。
 ダンスの面では、また狭さが際立った感じ。 パズルでもしているかのように、人と人がぶつからないように注意するかのように皆様動いてるんですもの。 本当に「ぎりぎり最低限のスペースで動いてます」という感じでした。 好きなシーンなのに、もったいない・・・。
 ちなみに、途中からVanniがSchwarzer Vampireの格好のまま踊ってることに気付き、そっちばかり見てました。 相変わらず目がいっちゃっている、Schwarzer Vampireのままでした。 このシーンは踊り的にそんなにかっこいいわけではないと思うんですが、演出の仕方で派手に感じられます。 Vanniもいい感じに派手に踊っていてくれて、満足。
 最後に舞台に赤い血を模した幕が下がってくる。 なんでかは分かりませんが、これを見ると「また見たいなあ」と思えます。 この回もしみじみ「ああ、また見たいなあ」と思いながら、眺めておりました。

 カーテンコールのことはあまり書く気はないんですが、ちょっと珍しかったので自分のためのメモ書きとして。 5日のソワレのThomasの様子がちょっと普段と違ってびっくりしました。 慎ましやかというか、存在が薄いというか・・・「主演なんだからもっとどーんと出てきなさいよ!」と 背中を押したくなるような雰囲気でした。 Thomasに対してこんなことを思う日が来るなんて思いもよらずびっくりしていたのですが、 6日はいつものThomasに戻っていて一安心いたしました(笑)。

 全く話が外れて申し訳ないのですが、「牧師の娘」って、キリスト教徒にとっては何か意味のあるキーワードなのでしょうか? オーブリー&マチュリンシリーズ(英国海洋小説)で「牧師の娘でレズビアン」という比喩が出てきたのですが、 それが「船員たちの夜のお相手をする女性ではない」ということを意味していたのです。 それを思い出し、ちょっと引っかかっています。 こういう宗教がらみのキーワードはさっぱり分かりません。
 それを差っ引いたとしても、今回の観劇はキリスト教徒吸血鬼の関係(知識的なものではなく、感覚的なもの)が 分からないと、この作品を根っこから理解することはできないんじゃないかと思えました。 物語に溶け込んでいる宗教って、地元の人にとっては「これって宗教?世界的常識じゃないの?」という ものだと思っていますから(無論、日本も同じ)。 そう感じられたことが、ちょっと大めの収穫でした。

 なんだかんだ言いましたが、公平な目で見れば難点の多い舞台でしたが、楽しかったです。 自在に音符を操るように歌っていたThomas Borchert、Jens Janke、Katja Berg、演じていると感じさせることが全くなかった Stefan Büdenbender、別世界まで連れて行ってくれたVanni Viscusi。 これらの方々には、是非同じ舞台でまた再会したいです。
 一月たったあとでも余韻に浸れる、素敵な舞台でした。 やっぱりこの作品、大好きです。



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