海賊(Kバレエカンパニー)
2008/08/02
文京シビックホール

メドーラ荒井祐子
コンラッドスチュアート・キャシディ
アリ遅沢佑介
グルナーラ浅川紫織
ランケデム宮尾俊太郎
ビルバントビャンバ・バットボルト
サイード パシャルーク・ヘイドン
ギリシャの少女たち東野泰子
樋口ゆり
神戸里奈
小林絹恵
仙頭由貴
副 智美
柴田有紀
白石あゆ美
日向智子
木島彩矢花
中谷友香
渡部萌子
海賊の男達杜海
ニコライ・ヴィユウジャーニン
橋本直樹
小林由明
ピョートル・コプカ
荒井英之
小山憲
ピエトロ・ペリッチア
内村和真
石黒善大
スティーブン・ウィンザー
物乞い小林絹恵
アレクサンドル・ブーベル
第一ヴァリエーション東野泰子
第二ヴァリエーション樋口ゆり
第三ヴァリエーション副 智美
鉄砲の踊り中島郁美
松根花子
内冨陽子
杜海
ニコライ・ヴィユウジャーニン


(2014/10/29 ブログから移行のため修正)

 「海賊」昼夜公演見てきました。 何のかんの言って結局楽しんでまいりました。 バレエとして色々突っ込みどころがあるのはわかるんですが、この「血がたぎる」感じはやめられません。 ABTと比べるとやっぱりバレエらしい華やかさは欠けてたけど、ABTの時のあの蹴っ飛ばされそうな足の勢いがなくって一安心。 バレエ団って色々個性があって面白いなあ。
 マチネソワレと比べて、ソワレのほうが面白かったです。 マチネは哲也がいる前提でキャスティングされていて、ソワレは都さんが屋台骨を支えてくれたから…というのは間違いなくあると思うけど、それ以上に、なんと言うかバランスが良かった。 マチネは遅沢さんが「哲也の代役として」アリを演じてたけど、ソワレはちゃんと自分の演じるアリとして、いるべきところにいた。 同じ人なのにマチネとソワレで、共演者でこんなに雰囲気が違うものかとちょっとびっくりしました。

 マチネのお目当てはもちろん哲也のアリ。 それから遅沢さんのランケデムに浅川さんのグルナーラ、ビャンバさんのビルバント。 哲也のアリと遅沢さんのランケデムに振られたのは残念だけど、宮尾さんのランケデムが見られたから気持ちを持ち直す。 この演出で力が入ってると思われる登場人物を順に並べるとアリ>(越えられない壁)>ランケデム>ビルバント>グルナーラ>(越えられない壁)>コンラッド>メドーラとなります。 なんか色々間違ってます。 コンラッドとメドーラは前回完全置き去りにされてると思ってたので少しは改定して欲しかったなと思ったんですが、手が入ってなくってがっくり。 コンラッドとメドーラのパドドゥなんて、次のシーンまでのつなぎにおまけで入れた感じ。 都さんとキャシディさんだとそれでも多少印象的なんですが、荒井さんとキャシディさんはいまいち。 荒井さんは妹キャラだと思ってるので、ドラマティックなグルナーラよりもメドーラのほうが好きかも。 浅川さんがお姉さんキャラなのとあいまって、雰囲気が違うのにちゃんと姉妹に見える不思議な二人でした。 荒井さんの踊りはいつも安定してるんだけど、今日は微妙にぶれてたような? キャシディさんは相変わらず演技はよく、特に冒頭のメドーラに心惹かれていく辺りの演技の細やかさなんてさすがだったんだけど、踊りについては「もうコッペリウスとドロッセルマイヤー以外は踊んなくて良いから」という感じでした。 なーんか消化不良。 そんなわけで、アリを加えたパドトロワもいまいち盛り上がれないのでした。
 遅沢さんのアリは明らかにソワレで株を上げたんですが、マチネもなかなか魅力的と思えました。 いままでアリはどちらかといえば小柄だったので、ストイックで大柄なアリってちょっと珍しかった。 珍しいけど、その無私の様子が結構アリにはまってました。 ランケデムの方が似合うかもとは思ってしまったけどね。 あと、申し訳ないがあの髪型とメイクは「アリメイク」じゃなくって「熊川アリメイク」だ。 大柄同士のアリとランケデムのおっかけっこは大柄な同士でちょっと重かったかも。 このシーンは未だに熊川&橋本の幻影がちらつきます。 他のシーンではそんなことないのに。
 そんなわけで見れないことが残念だったのにいきなり見れることになっちゃった宮尾さんのランケデム。 相変わらず5番が汚いのと体が硬いのが気になりましたよ…。 舞台度胸があって、大柄で、憎めない個性って魅力的だと思うんですが、ちょっとなんか足りなかった。 浅川さんのグルナーラとのパドドゥはやっぱり派手で素敵でした。
 浅川さんは随分華やかになりましたね。 体も柔らかいし、徐々に足の安定感も増してきてる。 まだ舞台の使い方が小さいので気持ちが2階席まで届ききらないというところはありましたが、それでも見てて楽しかったです。 また次に見るのが楽しみだ♪
 ビャンバさんのビルバント、笑顔が黒くないのに悪人に見える不思議。 わざとらしさはないけど、根の黒さを感じさせてくれる不思議なビルバントでした。
 絹恵さんとブーベルさんのベガーペア(乞食ペアじゃなんかなんなんで言い方変えてみた)。 やっぱりコケットでキュートでかわいい!! この作品のひそかな見所だと思ってます。 あ、明日見れないんだった…(ブーペルさん、アリやるから)。 今回は特に絹恵さんのキュートさに頭がくらくらしました。 ランケデムの鞭が怖くって脅えてる様子を見てるうちにストーリーが進んでたよ…。
 あと、忘れちゃいけないパシャ! ルーク・ヘイドンがやると聞いて小躍りしてたんですが、いやー、これで良いのかと思うほど印象的で素敵なパシャでした。 何がだめって、おっさんなのに、いやらしい目で女性を見て、触ってくるのに、その所作にどこか品があって「この人のハーレムなら入ってもオッケー!」と思ってしまったのですよ(笑←己の容姿では追い出されます)。 大きな目が魅力的な素敵なおぢさまでした。

 演出はほとんど変更なし。 2幕の謎のバリエーション3人娘も変更無し。 東野さんは相変わらず見るたびにかわいらしくなります。 副さん、トリプルほぼ成功してて、なんだか一安心(苦笑)。 次のファーストソリストはあなただと信じてるんで、がんばって!

 ラストのアリが撃たれるくだりの演出はとにかく好きです。 もうね、これがやりたいがためにこの作品演出した哲也の気持ちが分かるくらい好き。 ここでアリが死ぬことの是非を真面目に説いてる人もいますが、そんなの意味のないこと。 哲也はそこでコンラッドのために死にたかった、それだけ。 この作品は、ある意味このシーンのために存在するのだ。 (このシーンを生かすために色々足りてないところもあるんだが、それは今は置いておく) 前回あったかは忘れたけど、このあとのシーンでコンラッドが海にアリのシンボルの羽飾りを還していたのがとにかく印象的。 そうすることによって全てにけじめをつけ、前を向いて進んでいくことを決意したように見えた。 この一連の流れがあまりにもつぼにはまり、それまで色々満足しなかったことなどどうでも良くなり、感動してるのにあまりにも胸いっぱいで拍手できないという不思議な事態になりました。 あー、このシーンを見るためだけでもKバレエの「海賊」に足を運ぶ価値あるわ…。



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