Szentivánéji álom
2009/03/15
BUDAPESTI OPERETTSZÍNHÁZ

OberonHomonnay Zsolt / Szabó P. Szilveszter
TitániaFüredi Nikolett / Janza Kata
LysanderSzerényi László
HermiaVágó Zsuzsi / Vágó Bernadett
DemetriusBálint Ádám
HelénaPeller Anna
PuckKerényi Miklós Máté / Sánta László
TheseusJantyik Csaba / Németh Attila
RendörfönökPalfalvy Attila / Petridisz Hrisztosz
HippolytaCsengeri Ottilia / Nádasi Veronika
ZubolyPeller Károly / Bereczki Zóltan
VackorCsuha Lajos / Földes Tamas
GyaluGyörgy-Rózsa Sándor
DudásSánta László / Olah Tibor
OrrondiKonkoly Balázs / Faragó András
ÖsztövérLanger Soma / Dézsy Szabó Gábor
HegedüsImre Sebastian
NandaRónai András


(キャストが二人書いてある場合は左がマチネ、右がソワレです)

 オリジナルミュージカルでいいのかな? シェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」です。 ハンガリーらしさ(笑)満載のなかなか素敵な作品でした。 「ここにまた、R&Jハンガリー版に続くシェイクスピアが生きていたら頭を抱えたであろう素敵な作品が誕生した!」と言いたくなるような感じで(笑)。 このあたり、苦手な人は苦手だろうけど好きな人にとってはたまらないハンガリーらしさ満載でした。 ただもう一度見たいかと言われるとちょっと悩む。 とにかく一幕も二幕も最低5分は削れと言いたくなるようなぐだぐだした脚本にもう一度おつきあいできるか謎。 でも、確実にファーストキャストが見れるなら絶対に行く! これ明らかな当て書きと思っていたのは途中まで、見終わる頃には「これ、Ynza様とSzaboさんのために作られた作品なんじゃないの?」と思うほど二人の世界でした。 たぶん、Dolhai君についても同じように当て書き以上の彼のために作られた世界だと思う。 セカンドキャストはその分どうも分が悪くって、1回は見てみて楽しかったけど、2回目はファーストキャストがいいなというのが本音です。

 それにしてもダブルキャストの「真夏の夜の夢」を見るというときに、ライサンダー、デメトリウス、ヘレナを一人しか見れないってなんの嫌がらせ!?(苦笑) たぶんお芝居好きならこの悲しさをわかってくれると思っています。 たとえヘレナがファーストであっても、やっぱり二人とも見たいと思うのが芝居好きというものでしょう。 せっかくそれぞれの見せ場、役柄ごとの組み合わせを変えての見せ場があるのにそれが昼夜ほぼ同じなのが残念でした。 Dolhai Attilaが見れなかったのも残念だけどね、それ以上にキャストが固定だったのが残念。 予定ではちゃんとダブルであるはずだったようで・・・この辺ほんと、ギャンブルです。

 「真夏の夜の夢」は一応原作を読了してからいったのですが、だからこそなおさらこのミュージカル用の脚本が出演者に対する当て書きであり、また改変がすさまじいことになっていると感じました。 英語の字幕は出ていましたが、ほとんど読んでません。 文字が小さくて私の視力では無理というのと、歌になると全部大文字になって読みづらいことこの上ないからというのがその理由です。 ハンガリー語は分からないので、基本的に原作の知識とその場の雰囲気だけで解釈しています。
 幕が開いてすぐさま目の前に広がるのはどこぞの宇宙空間・・・もとい、どこぞのロックバンドのコンサート会場・・・もとい、妖精の世界。 パックとその仲間たち(これがまたロックバンドみたいな黒を基調とした奇抜な格好をしてる)がいるところから物語が始まります。 そしてパックが下手にいるところに、上手にオベロンの登場。 離れたところからパックの持っている本のページをめくり、何か気に食わなかったのか閉じると本を放り投げます。 このやりとりが静かで異世界観たっぷりでおもしろかったのですが、「オベロンがページをめくってる」ということになかなか気付かなくってちょっともったいないことをしました。
 しかしまあ、オベロンの美しいこと! Szaboさんの容姿って本当に一から十まで私の好みなんです。 あまりの美しさに息も止まる思いで眺めていました。 彼は役者さんなんであまり容姿をほめすぎるとかえって侮辱になるかもしれないので控えめにしますが、でも、出てきた瞬間「これは当て書き」と思えるほど彼の美しさを極限まで引き出していたと思います。 黒光りする明らかに真人間でない衣装と一部に色を付けた黒髪が白塗りされた肌を浮き上がらせ、顔に書かれた模様と相まって人間ではないと思わせる美しさになっていました。 コロレドも素敵だったけど、もしかすると彼の本領が発揮されるのはこういう人間ではない役かと思いました。 人間でないと思えばあの美しさにも納得がいく。
 原作では話にあがるだけだったインドの子供ですが、このミュージカルではいきなり出てきます。 台詞はなく、上半身は裸で体に模様を書いた少年の姿は、何ともエキゾチックで、神秘的なものがあります。 最初はオベロンの側にいた少年ですが、タイターニアの登場とともに彼女に連れられていきます。
 そしてまたJanza様も美しかった・・・! 彼女については2幕の方がその美しさが際だっている気がしましたが、1幕でも美しいものは美しい。 もう「生粋の」と言ってしまっていいだろう決然とした女王のオーラに目眩がするほど魅せられました。 冒頭の妖精の世界の王者二人が対決するところだけでもう目はおなかいっぱい。 付き合いの長さを感じさせる遠慮のなさと、人間離れした強気で美しい二人がぶつかり合うその様は言葉にできぬ魅力と迫力がありました。 このキャスティングを聞いたときから楽しみだと思っていましたが、実際に見てみても素晴らしかった・・・!
 しかしこの「真夏の夜の夢」、オベロンとタイターニアがインドの子供を取り合っているというより自分がなんと言っても聞かないほど一つのことに執着するタイターニアにオベロンが嫉妬しているように見えます。 この冒頭のやりとりだけで何となくそれは感じられ、物語が後半に行くに従ってそれはますます顕著に現れてきます。
 対する人間たちの世界ですが・・・ここはどこだ!? 領主さんのはずがアメリカンマフィアのボスとその女(スペイン系)にしか見えないし、父親もどこのアメリカンポリス(ただし悪役)かと思うし。 ハーミアはまだはすっぱなだけで普通の子だけど、ライサンダーもウェストサイドストーリーあたりにでてきそうな普通の子だけど、ヘレナはどこぞの服飾学校あたりにいそうな奇抜な色の服を着ているし、デメトリウスはマフィアのだめだめ2代目ぼんぼんみたいだし・・・。 そしてみんなほっとくといきなりチャルダッシュ踊り狂うし・・・。 なんだこれは、ここはどこだ!? はっきり言って固有名詞さえ耳に届かなければ、これが「真夏の夜の夢」であることに気付くのは困難だと思います。 それだけめちゃくちゃ・・・というかやりたい放題です。 まあ、そこまで分かっていても「楽しい」と思えるあたりがこの作品の不思議な魅力なのですが(笑)。
 さて、夜逃げするライサンダーとハーミア。 ライサンダーがいい感じに考えなしで、Dolhaiなら似合ってただろうなとちょっと思ってしまう(苦笑)。 一人眠るハーミアの隣で思いを歌うライサンダー・・・何でそこでチャルダッシュで踊り狂うの? (そして客席はノリノリで手拍子)
 デメトリウスは少し線の細い感じで、ヘレナは結構気が強くいい性格してそうな感じでした。 線が細い弱気そうな色男を言いたいことはずけずけ言う気の強い、でも色恋についてはどこかいじらしい 娘さんがおいすがるという構図はなかなかおもしろい。
 パックがライサンダーを見つけたときには脇にデメトリウスもいました。 ですから二人とも一緒に魔法にかかったことになります。 それにしてもこのライサンダーとデメトリウスの迫り方は楽しいわ。 本当に「君にぞっこん!」という感じで抱きつくあたりがいかにもハンガリー。 お互いを牽制しあってどつきあうあたりは別にかまわないけど、スカートまくりあげたり襲いかかるようなのはどうかと思うよ(笑)。
 さて、この話は若い四人の話、職人たちの話、それから妖精世界のタイターニアとオベロンの話の三つが絡み合っています。 一つ目は残念ながら昼夜ともに同じでちょっと物足りなく、逆に三つ目は昼もなかなかよかったけど夜はこれがファーストキャストなのかとうっとりため息をつきたくなるようなおもしろさでした。 二つ目はマチネよりソワレの方が確かにおもしろかったけど、言葉が分からないこともあって最もだれて疲れました。 アドリブが多かったから、言葉が分かれば楽しめたのかしら。
 というわけで訳の分からないシーンなのですが、職人たちがシーシアスの元に戻ります。 何かを言っているのはいいのだけど、このシーンで舞台上の人が一人残らずチャルダッシュを踊り狂うのが謎(笑)。 客席は心得たもので手拍子で迎えますがね。 このあたり、この国以外でできない作品だと思わせてくれます。
 タイターニアの取り巻きの妖精たちは最初の方は明るい衣装、最後には黒い衣装になります。 この黒い衣装がまた派手で、なんか見たことがあると思ったらTdVのラストに出てくるダンサーさんによく似てる(笑)。 タイターニアと取り巻きが出てくるシーンでは決まって鈴が鳴るような女性的な音楽が流れます。 華やかな女性たちの中に青年にはまだ二歩ほど届かない年頃の少年が一人いるってなんとも不思議な色気を持ってます。 少年はモダンの入ったバレエのような振り付けで踊ります。 下手ではないけど、踊り慣れていない感じがちょっとちぐはぐ。
 パックはいたずら心から職人の一人をロバに変えます。 このロバさん、マチネは人間の頃から粗野な感じがしていたのですが、ソワレはかなりの色男で好青年! これはこれで惚れるだろうと思ったら、ロバになったとたんにどうしようもない野卑な男になりました。 頭だけロバをかぶるかと思っていたら、体の方もちょっとけむくじゃらという感じ。 この品のないところがタイターニアと合わない合わない(笑)。 しかしオベロンとしてはこれはこれでおもしろくないみたい。 二人でよろしくやってるシルエットを見て(いかにもハンガリーだがこれでいいのだろうか、主に道徳的面で)、「取り返しのつかないことをした!」というようなことを言ってるんじゃないかという雰囲気で一幕は終わります。 これがあるので、オベロンはタイターニアからの愛情を受けたいだけなんじゃないかと思ってしまうのです。
 パックはマチネは人外、ソワレはさらに人外で身が軽かったのですが、どちらかと言えばマチネの方が好きかも。 両方とも妖精に見えないんですが(笑)、ソワレの方はちょっと猿っぽいかなと。 「孫悟空」(西遊記の方ね、もちろん)という風情でした。 いたずら好きでどじな妖精という感じではありませんでした。 ちょっと「悪い妖精」という感じもした。 まあそれでも確かに「憎めない」感じはしましたが。 この改変だからこそ成り得たパックだと思います。
 さて、四角関係がこじれた四人。 ヘレナもハーミアも気が強くってかわいいな。 特にヘレナはかなり強いので「みんなで私をバカにして!」というのがかわいそうにならずかわいく映ります。 先ほどまでハーミアに愛をささやいていたのにヘレナを追っかけているライサンダー。 魔法にかかっているという設定もあるけど、それ以上に実直バカに見えるので追いすがるハーミアを払いのけてもそんなに腹が立たないのがおもしろかった。 またハーミアも結構気の強い感じなので払いのけられても追いすがる姿がそんなに哀れに見えないの。 どたばたコメディなのだからこのくらい口当たりが軽い方がいいのかなと思います。
 そして歩き疲れてハーミアとヘレナは寝てしまいます。 対決を始めたライサンダーとデメトリウス、なんでそこでオベロンが仲裁に入ってマントを取られてライサンダーに姿を見られちゃうっていうアレンジが入るかな!? どうもオベロンのマントは特別製らしく、それを付けてないと人間に姿が見られちゃうようです。 だからここでマントを巡ってオベロンとライサンダーの対決の歌が・・・作った奴ちょっと出てこい(笑)! これがセカンドキャスト二人で見ている時点ではっきり分かるファーストキャストのDolhaiとSzaboさんの当て書きソングでした(苦笑)。 M!での対決ソング(ヴォルフガング&コロレド)がすばらしかった二人だとは思いますが、それを別作品でまたやらなくても・・・とちょっと思ってしまいました。 オベロンはライサンダーに「私は妖精たちの王だ」と自己紹介までしてましたし、いろいろ謎でした。 しかしこのマントがないとオベロンは弱るのかそれともナイフで刺されたのか知らないけどちょっとふらふらしているオベロン。 羽衣を取られた天女でも見ているような気分になり、返してあげようよという気分になります。 そしてなんだかんだあってマントはオベロンの手に戻るのですが・・・じゃあこのシーンはなんのためにあったんだという疑問が残ります・・・。
 森で迷子の四人それぞれを眠らせます。 ハーミアは一人寂しそうに歌うと疲れきったように眠ります。 そんな彼女を抱き抱えるオベロン。 いろいろつっこみたい部分はありますが、大変美しい構図でした。
 眠りこける四人をちゃんと二組に分けて魔法をとこうとするパック。 ポップな曲にあわせ、手下二人と一緒に四人を操ります。 この操られながら踊る四人と生き生きと踊る妖精三人というのがなかなかおもしろかった。 妖精がどこかのロックバンドにしか見えないので我ながら「妖精」と言うのをためらうのですが。
 タイターニアに薬を付けるのはパックに手を借りたオベロンだったと思います。 そして正気に返った彼女はロバ男が隣にいるのを見て彼を退けようとします。 ところが彼の方はまだやる気満々。 タイターニアはぶち切れつつ追い払います。 このあとタイターニアは「なんであんなのと!」といわんばかりに腕を水で洗います。 マチネでは「汚されてしまった!」とでもいう感じで哀れでしたが、ソワレではプライドを傷つけられた怒りというのを強く感じました。 そして怒り狂う姿が美しいのがKata様のすごいところだと思います。 一幕やロバ男にメロメロしているところとは比較にならない圧倒的美しさを感じました。 さすが女王様だ!
 魔法がとけてちゃんと二組のカップルになった四人。 恋人同士のはずなのになんで布一枚まとってるだけのような格好になってるのか説明してもらおうか!(笑) シェイクスピア先生の気遣いが台無しです。 そしてそのまま彼らは町に連れ戻されます。 なんだかんだいって原作通り、カップルが誕生して皆で結婚式をすることになってハッピーエンド、となります。 このあとは原作にあったとおりこのあと職人たちのお芝居になります。
 職人たちのお芝居は台本を読んでるときからいまいち楽しめなかったのですが、舞台でみてもいまいち。 特にアドリブを多用されちゃうと字幕を見てもついてけないから大変でした。 話に決着が付いたわけではないのだから(オベロンとタイターニアの物語が終わってない)、もう少しあっさり終わってほしかったなと。
 そして華やかなパーティの最中に雷鳴が鳴り響き、セットが爆発し、火を噴きます。 うん、今日もハンガリーは正常運転だ(笑)。 そして怒り狂った女王様の登場。 このときの黒い衣装がまた凛としていて美しかった。 ぶち切れたタイターニアに対してオベロンは膝をつき頭を下げます。 そしてオベロンに魔法の薬を使うことで彼の罪を報いさせようとします。 両方の手を妖精たちにとられひざまづくオベロンには王者としての貫禄もなく、愛している女性を傷つけたのだからその怒りを真正面から受け止める一人の男でした。 その姿さえ人ならぬ美しさを持ってるあたりがさすがSzaboさんです。 そして閉ざした瞳を開いたとき、オベロンの目の前にいたのはタイターニアだった・・・こうして二人は和解します。 結局二人がラブラブ夫妻になってハッピーエンドという話の流れでした。 インド人の子供の話はほとんどなかったことになっています(このあとの場面で舞台上部から下界を見守っていましたが)。 この場面、この二人が主役なのかな以上の存在感があり、むしろKata様とSzaboさんのためにこの話は書き下ろされたんじゃないかと思うほどでした。 熟年カップルが愛を再度確かめるという雰囲気のオベロンとタイターニアの姿は大変美しく、目の保養でした。 本当にあなたのことが好きよ〜というオーラたっぷりでした。 この二人って対決しているときの方がはまるかと思っていましたが、まっとうなカップルをやっている姿もはまるのですね。
 そして二人はマントを取ると人間たちの結婚式に紛れます。 タイターニアの方はマントと共に黒い服も脱ぎ、真っ白いドレスになります。 3組のカップルの結婚祝いが4組になったというような盛り上がり方でパーティーが繰り広げられます。 パーティの最中で1、2メートルくらいの長さの火の上を花嫁たちがリフトされていくという場面がありましたが、だからなんで火なんだハンガリー・・・(笑)。
 そして最後を締めるのはやはりパック。 踊り疲れ眠るような人間たちの周りをささやくように歌いながら去っていきます。 途中はいろいろ寄り道もありましたが、最後はきれいに「真夏の夜の夢」っぽく終わったと思います。
 正統派の「真夏の夜の夢」ではなくハンガリーアレンジがいっぱいきいた作品ではありましたのでシェイクスピア先生はどう思うか分かりませんが(笑)、ハンガリーミュージカルファンとしては大変楽しい作品でした。 はるばる見に来てよかったです。

 これでAttila君さえいればなあ・・・。



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