Tanz der Vampire |
2010/11/03 |
Ronacher Theater |
Graf von Krolock | Thomas Borchert | |
Professor Abronius | Gernot Kranner | |
Alfred | Lukas Perman | |
Sarah | Marjan Shaki | |
Chagal | James Sbano | |
Rebecca | Katharina Dorian | |
Magda | Anna Thoren | |
Herbert | Robert D. Max | |
Koukol | Thomas Weissengrauber | |
Gesangsensemble | Cornelia Braun | |
Barbara Obermeier | ||
Maike Katrin Schmidt | ||
Dora Strobel | ||
Christina van Leyen | ||
Marianne Tranowskij | ||
Kai Hüsgen(Carpe Noctem Solo2) | ||
Sven Fliege(Carpe Noctem Solo1) | ||
Martin Planz | ||
Sebastian Smulders | ||
Tanzensemble | Nina Weiss | |
Christa Helige | ||
Marcella Morelli(Rote Stiefel Tanzsolo) | ||
Jennifer Pöll | ||
Susan ten Harmsen | ||
NickFleuren | ||
Ivo Giacomozzi | ||
Florian Theiler(Schwarzer Vampir Tanzsolo) | ||
Gernot Romic(Weißer Vampir Tanzsolo) | ||
Kevin Perry | ||
Swing | Esther Mink | |
Dirigent | Carsten Paap |
注:キャストは3日のものですが、感想は3,4,6日通して感じた全体の雑感です。 |
舞台のおもしろさってどこで決まるんだろう。 実はTdVを見る度にその疑問にぶつかります。 ベルリンでも感じたし、オーバーハウゼンでも感じた。 全てに共通しているのは私はこの作品の全てに満足しているわけではないこと。 いろいろ言いたいことはあるが、少なくとも演出は毎回毎回懲りずに文句を言うくらいは不満がある。 演出の流れが一番いいと思ったのはハンブルクで、雰囲気が一番良かったのがオーバーハウゼン。 全てが素晴らしいという舞台は残念ながら出会えてない。 それなのに、TdVという作品はそういう細かいことを忘れて「素晴らしい舞台だった!」と叫ぶことのできる魔力を持っている。 そのことを改めて感じた。 というわけで、Thomasクロロック前楽、楽、Drewクロロック初日という大変濃い3公演を見て参りました。 良い舞台であろうことは想像にたやすかったのですが、本当に良かった。 見に来て良かったと言うよりは生きてて良かったレベルの舞台。 昼間観光した上に夜は同じ舞台を連続で見るという悪条件だったため細かい公演ごとの感想は忘れてるのですが、全体的な印象を。 良い公演だった理由を探しているのですが、やっぱり全体的なレベルが高かったからだろうなとは思います。 Thomas、Drewは言うに及ばず、Marjanザラ、Lukasアルフレートは完璧だった。 Gernot教授は個人的に作りすぎかなあと言うところがあったけどうまいか下手かといったら間違いなく格別にうまいし、シャガール、レベッカはうまいだけでなく芝居のリアリティがすてき。 マグダもまあこれらの人たちの濃さには劣るけどうまいし、ヘルベルト、クコールも基本ははずしてない。 歌、芝居の好き嫌いはあっても上手い下手でいったら「うまい」人だけの舞台ってやっぱりすごい。 アンサンブルも歌もダンスも迫力あった。 雰囲気もばっちりだったし。 オーケストラはさすがウィーン劇場協会と思えるレベル。 正直セットと衣装は相変わらず担当者出せと怒鳴りたくなるレベルだけど、美しいか美しくないかといったらやっぱり美しいとは思う。 あれほど嫌いだったクロロックの衣装も、やっぱりThomasの背を低く見せる奇跡の衣装だとは思うけど、でも細やかな模様や色合い、生地の質なんかは素晴らしいと思った。 もっと上をめざせる要素はたくさんある。 でも、今の時点で十分と思えるレベルのものがそろってるのも事実だと思った。 そして二人のクロロックはそれぞれ違う魅力で違う世界を見せてくれた。 Thomasのクロロックは美しくって力強かった。 相変わらず演技が細やかで、骸骨のように見える指の白さ、翻るマントの裏地の赤さが、全て計算された美しさに見えた。 前楽と楽は不思議なことに、もしかしたら当たり前なのかもしれないけど、全く違った。 前楽は今までの延長線上にあると思えたけど、楽は別世界。 力強かった、迫力があったというのもそうだけど、クロロックそのもの。 今まで、休んだりほかの舞台にでたりしながら足かけ8年間、この役を演じてきた集大成だと思った。 そして「Die unstillbare Gier」。 私は彼の「Gier」がとっても好きなのです。 これについては私が彼のファンだと言うところがあるとは思うけど、でも、本当に好きだし、この曲を聴けるのは人生の中で大きな幸いの一つだとさえ思う。 Thomasはこの役が好きで、この曲が好きで、それを突き詰め突き詰め演じていること、そしてそれを聞けること。 今まで彼の「Gier」を聞いて、彼はこの曲に驚くほど可能性を見ていると感じた。 いろいろな世界を見せてくれる。 曲の意味を考え、それを形にするのはどれだけ楽しい仕事だろうと思った。 前楽までそれを感じ、楽ではそれを感じなかった。 楽は、今まで彼が舞台の上で感じたことをそのまま考えずに形にしたように見えた。 深く響く声がとにかく魅力的で、私もなにも考えずにぼんやりと聞いていた。 舞台を覆い尽くす、神のような威圧感、存在感。 本当に素晴らしかった。 そしてFinaleの前、通路を歩くその姿は血の最後の一滴までクロロックに入れ替えたような冷たさと美しさで、最後の高笑いで高まった気持ちが頂点に達し、そして一瞬で消えた。 ああ、全てはこの瞬間のためにあったのだ。 そう思える、最高の瞬間だった。 Drewのクロロックは今まで見たクロロックと違った。 なにが違うのかと最後まで見てわかった。 今までのクロロックって、大抵「Gier」を一種の集約点としていたと思う。 Drewのクロロックも「Gier」はやっぱり良かった。 でも、そこが集約点とならず、「Finale」までが一つの線となるようなクロロックだった。 これは今までの演出ならあり得ないことだけど、ウィーン新演出だったらこれはあるべき解釈だと思うし、だけどThomasには難しいと思う。 ウィーン以前の演出の方がなじんでると思うから。 やっぱり初演を越えるのって難しいと思うし無理だとすら思うし、逆にそういう無理をしなくてもいいんじゃないかと思う。 歌い方もどちらかというとロックより。 アレンジ大好きThomasと比べても、初日なのにアレンジが多いのも彼の特長だと思う。 こういう新しい形で、新しい世界を作るのもいいんじゃないかなと、良い方向にウィーン新演出を受け止めることができました。 正直、この演出はThomasのためのものと思っていたThomasファンに、Drewはこの演出ならではの新しい切り口を見つけたと思わせただけで十分すぎるほどすごいと思うのだ。 最後のカーテンコールは、Thomasの前楽と楽に舞台に放り投げられた花と、楽の舞台上の拍手が印象的。 いつもと同じ回数のカーテンコール。 東宝みたいに挨拶もない。 初めて来た人だったら気づかなかったかもしれない。 でも楽の、「お疲れさま」とその日で終わるクロロックとマグダ、そのほか数名を称えるような暖かい拍手、そのことをよく知っている多くの人の耳が痛くなるような拍手が、とても印象的だった。 Drewの初日は何台かカメラが入ってました。 カーテンコールになった途端、通路をかけてきたカメラマンにちょっとびっくりしました。 Thomasがいなくなって寂しくなるなあと思った私の心をがっちりつかんだDrewクロロックと、今までの集大成を見せてくれて、今まで追っかけてきて本当によかったと思わせてくれたThomasクロロック。 二人のクロロックを見ることができた3日間は大変密度が濃く、とても幸せな時間でした。 |