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Kバレエ 海賊(2015/05/30) ソワレ
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メドーラ:中村祥子 コンラッド:スチュワート・キャシディ アリ:池本祥真 グルナーラ:浅川紫織 ランケデム:伊坂文月 ビルバント:杉野慧 サイードパシャ:ニコライ・ヴィユウジャーニン オーチャードホール ★★★★★
アップするタイミングを逸してしまいましたが、キャスト表を眺めてそれぞれの公演の紹介文を書いていました。そのとき、「Kバレエをあまり知らない人にもお勧めできる」と思ったのはこの公演でした。Kバレエは芸術監督を見ればわかるとおりどちらかと言えば勢いで押す感じの部分が強いので、ちょっと人に勧めづらいと言うか独特だと思うことがあるのです。でもこの公演はゲストの祥子さんがとても華があって美しいでしょうし、なによりアリの池本さんがとにかくバレエの美しさを体全体で表してくれると期待できました。それを見るためだけでも価値があるんじゃないかと思っていました。 実際ふたを開けてみて、だいたい思った通りの公演だと感じました。この日のマチネがKバレエの若手公演らしい、いろいろ欠点はありつつもその欠点をお互いの関係性や物語で覆い隠していく舞台だったのに対し、熊川版らしい特性を保持しつつも「王道」と思えるバレエだと思いました。 とにかくグランパドトロワが素晴らしかった!祥子さんの柔らかさがありながらも強靱な踊り、池本さんの的確でスマートな踊り。キャシディさんはさすがに年齢を感じてしまって手に汗握りましたが、女性を美しく見せるのはお手のもの。メドーラとアリの技巧合戦に加わることはなくとも、確かにメドーラのパートナーとしてそこに存在していました。「技巧合戦」ではあったのですが、あまり力押しが強すぎず、でもしっかり見せるものは見せてくれて、気持ちよく技に酔いしれて拍手することができました。 よい方向に意外だったのが祥子さんとキャシディさんの相性がとてもよかったこと。祥子さんはどちらかと言えばコンテンポラリーのイメージの方が強く、背も高くがっしりした感じに思っていたのですが、キャシディさんの隣にいると程良くかわいらしい。一目で恋に落ちるというのも不思議はなく、ちゃんと二人のドラマを感じました。逆に予想通りだったのが池本さんのアリ。踊りについては本当にすばらしかったのですが、王子とは言わずともなにか品格を感じる。コンラッドに対して忠誠心は感じるものの、どちらかと言えば高貴な香り漂う忠誠心ではありました。まあ、あれだけ踊れればあとはいいんじゃないかと思える鮮やかさではありましたが。本当にあれはすばらしかった。
キャスト表を見たときから濃いなあと思っていた伊坂&杉野の悪役コンビ。予想通りの濃さでした。奴隷商人が天職なんだろうなあと思える伊坂ランケデムは重くなりすぎないのにはっきりとした悪人。さすがに再演を重ねているだけあってサポートもお手のものでした。杉野ビルバントはなかなか本心を見せない悪人。こいつはいつかどこかでなんかやらかす、そんな雰囲気を漂わせていました。まあ、鉄砲の踊りが予想通り色気のない力押しになったのはご愛敬…。そんなはっきりと黒い面を持っている二人のやりとりは予想通り力強く、大変おもしろいものでした。 浅川さんのグルナーラも相変わらず美しく、祥子さんのメドーラほどの華はなくともやはり好きなダンサーさんだなあと思いました。ただ、技術的な問題でなく個性をいうなら浅川さんは妹メドーラだと思いますし、祥子さんは姉グルナーラだと思うんです。それもあるし、祥子さんの方が身長が高いこともあり、「姉妹」というより「姉妹という設定のユニット」に見えてしまうことがあったのが残念でした。
翌日マチネも見たのでとりあえずこのくらいで。ちなみに奴隷市場のお金持ちさんたちはFBで確認できた石橋さん、篠宮さんと福田さん、井澤さんでした。福田さんはしばらく分かりませんでしたが、井澤さんはでてきた瞬間に分かったのが自分でも謎です…。
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(2015/06/07(Sun) 21:56:41)
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Kバレエ 海賊(2015/05/30) マチネ
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メドーラ:白石あゆ美 コンラッド:宮尾俊太郎 アリ:福田昂平 グルナーラ:浅野真由香 ランケデム:益子倭 ビルバント:兼城将 サイードパシャ:ニコライ・ヴィユウジャーニン オーチャードホール ★★★★★
こういう公演があるからKバレエに通うのはやめられない! そういう公演でした。キャスト表を見たときからバランスの良さそうな公演でしたが、バランスよく、まとまりよく、ストーリーも踊りもおもしろい、よい公演でした。すごく楽しかったです。 一点だけ難点がありまして…。この公演、ずっと追いかけてる兼城さんの久しぶりの公演でした。年末の「くるみ割り人形」の時から確信はしていましたが、やはりお怪我でお休みをしていたようです。久しぶりに、久しぶりに彼の姿が見られる、しかもちゃんと役が付いている。それがうれしくてうれしくて、メインの踊りでなくても彼の姿を追いかけていました。ストーリーのメインはメドーラでありコンラッドでありそしてアリであることはわかってはいたのですが、結構ストーリーそっちのけでビルバントを見ておりました…。そのせいで感想の軸が若干ずれているのはご了承ください。そういう意味でももう1回見たかったです(でももう1回あっても多分をビルバント見てる)。
冒頭、海賊たちが商戦をおそうシーン、一番驚いたのがアリの凶悪さでした。福田さんのアリが想像していたよりずっと凶悪な笑顔で笑っていました。血なまぐさい行為を望んでいる笑い。そういうアリがまず珍しく、また福田さんがそういう表現をしてくることに驚きました。 全体的にストーリーがまとまっていると感じた公演でしたが、このアリの気質がストーリーの根底にあるように思いました。宮尾コンラッドはどちらかというと穏やかな気質をしています。海賊業をしていて、人を引っ張っていく力はあるけど特に残忍さは感じない。そういう血なまぐさいところはアリが引き受けていた感じがしました。汚れ仕事をアリが引き受けているというよりはそれぞれ己に見合った仕事をしている感じ。それでもアリはコンラッドに仕えているのはわかりましたし、右腕であり、臣下でした。アリがコンラッドの行動に文句をつけることはない、そしてアリを失ったらコンラッドは海賊ではいられない。このあたりがすんなり理解できる組み合わせでした。 また、「くるみ割り人形」のときに感じたとおり、宮尾さんと白石さんはとても相性がいいです。二人が並んでいる姿を見るとしっくりくる。白石メドーラはどこかおっとりした感じの女性でした。なんとなく見ていて危なっかしいところがあって、海賊と一目に恋に落ちるのもなんだか納得できてしまう。宮尾さんと並んだ姿がすごくしっくりくるというのもありますし、また、彼女のおっとりしたところがあるから宮尾コンラッドの物腰の柔らかなところもそんなに強く感じなかったのかと思います。踊りとしてすごく美しかった、というより、二人が並んでいる姿を見るとなんだか気持ちが暖かくなるような雰囲気。洞窟での二人のパドドゥも踊りが美しいとかそういうことを強くは感じなかったのに、幸せそうな二人を見てこちらが幸せになるような思いで見ていました。 いきなり結末の話になりますが、アリと生きるためにコンラッドは海賊であり、メドーラと生きるためにコンラッドは海賊をやめたのだとすんなり理解できる組み合わせでした。宮尾コンラッドがどちらかといえば流されやすいところがあり、海賊業が天職であるアリと生きるのなら海賊でいるし、そういう血なまぐさい世界と縁がないメドーラと生きるのなら海賊をやめるしかない。前者を今まで以上に感じたせいか、後者もすんなりと理解することができました。主演はあくまでメドーラとコンラッド、でもアリは主演に等しいキーパーソンである…。最後にそう感じられた、とても良い公演でした。
浅野さんのグルナーラも魅力的でした。しっかり者だけどどこかふんわりした感じがあるというか…明らかに白石グルナーラのお姉さん。柔らかい雰囲気が姉妹だと感じさせたし、しっかり者のところがお姉さん。踊りについて驚くようなところはありませんでしたが、とらわれの哀れさも姉としての強さも感じられたので好きでした。たぶん今まで見た彼女の役の中では一番よかった。 今までの役の中で一番よかったのはグルナーラのお相手ランケデムの益子さんも同じでした。益子さんはどちらかというと「自分」を押す力が強くって若干くどく感じることがあったのですが、それを感じない。彼の気質からすると陽気な感じがするかと思ったらそんなところは全くない小悪党。金にがめつく、悪人面のよく似合う、いい悪党でした。 ベテラン陣のランケデムを思うと若干底の浅い普通の悪党の益子ランケデムですが、しっくりきたのは全体のバランスと兼城ビルバントとの相性の良さがあったからだと思います。兼城ビルバントもどちらかといえば普通の小悪党。変にこじれたところがなく、良くも悪くも浅い。コンラッドに逆らったのも腹の底からの怒りというより、どちらかといえばムカついたとか、そういう浅さを感じました。ランケデムを切り捨てるときでさえ、つまらない奴と手を組んだとあっさりと切り捨てる。そういう浅い奴だからメドーラに裏切りを暴かれて今度は自分が殺される可能性がでてきたときのおびえ方がとにかく惨めったらしくて情けない。だから宮尾コンラッドが、一時は仲間であったこの哀れで惨めで情けない男を、わざわざここで殺す必要はないって思うのも分かったんです。どちらかといえば穏やかな宮尾コンラッドなら、メドーラの前で彼を殺すわけがない。そう思えたので、なんだかファンなのにほめてるんだかいないんだかわからない文章になりましたが、ランケデムもビルバントも大変バランスがいいと感じました。 踊りについて、兼城さんはどちらかというと飛ぶ、はねるがうまい方だと思うので若干の物足りなさを感じつつも、一つ一つ丁寧な動きは見ていて大変幸せでした。実はいろいろ難しい鉄砲の踊りは、細かく一つ一つのポジションが的確にはまっており、雰囲気としてもしっとりした曲調の中にもビルバントの増長ぶりが感じられ、なかなかおもしろい雰囲気でした。
グランパドトロワ(と言っていいのでしょうか、メドーラとコンラッドとアリの踊り)は本当に素晴らしいものでした。白石メドーラは大変踊りが安定しており、軸がしっかりしてるから安定感があるのに彼女の雰囲気もあってふんわりとかわいらしい。そして福田アリ!このバレエ団に在籍してる人にとってアリという役が特別なものでないわけがなく、たった1回の公演でいかに踊りきるか…という勢いを感じる踊りでした。思い入れと気迫は感じましたが、それが空回りになっておらず、力強さを強く感じるいい踊りでした。 Kバレエはある程度公演期間があるせいか、初日は暖まってないことがまれにあります。それを全く感じない公演でした。それを強く感じたのは2幕冒頭の海賊たちの踊り。コンラッドに対して「俺たちの親分!」という勢いを強く感じました。 脇のキャストは印象的な方はこの後の公演でも変わらないのでまたの機会に。ソワレにはいなかったのは蘭さんのギリシャ娘。どちらかといえば鉄砲の踊りのほうが似合う方ですのでちょっと不思議な気持ちでしたが、色の薄い衣装を身にまとった蘭さんもなかなか素敵でした。もう一人、ソワレはビルバントだった杉野さんは海賊の男たちの一人でした。海賊たちの酔っ払いダンスを始める役割でしたが、こういう部分はうまいですね。後ろの方でなんかお酒飲まされてるなあと思っていたら、とても自然な流れで舞台の前方に飛び出してきました。なかなか楽しかったので、メインの役についてない後半でもぜひやっていただきたいです。
全体的に勢いがあり、バランスよく物語のある良い公演でした。まだまだおもしろくなる余地はあるけど不足を感じない良い公演でしたので、このキャストで是非また見てみたいと思っています。
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(2015/06/07(Sun) 00:42:01)
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デスノート(2015/04/19)
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一体どういう作品になるか分からなかったこの作品、蓋を開けてみたら結構評判がいい。見に行こうか迷っていましたが、なにせ相変わらずの繁忙期、行けるタイミングがほとんどなくどうしようかと思っていたら、唯一行ける日の公演についてツイッターでフォローさせていただいてる方からチケットを譲っていただけることになり、行ってまいりました。ちなみに原作は週刊誌のほうで全編読みましたが、コミックスでまとめて読んだわけではないので全く読み込んではおりません。 ちなみに今回の感想、どちらかといえば「ミュージカルとはどういうものか」ということが主軸になっておりますので、作品の感想をお求めの方は別のところを当たってください、ごめんなさい。
今回の作曲家、作詞家の新作というと、昨年11月に見た「アーサー王」を思い出します。同じ作曲家、作詞家でここまで雰囲気が違うのかと、驚かされました。「アーサー王」は「歌は素晴らしいけど話は別になかった」だったのに、今回は「歌はまあふつう、作品としてはしっかりまとまってる」という感じでした。歌については別に「デスノート」も悪くないです。鹿賀さん以外はしっかり歌えてました(これを書いてしばらくたつまで粧裕の存在をすっかり忘れてました。完全に記憶から抹消しておりました…)。ただ、ワイルドホーンの作品を聞いたときの「音楽が素晴らしい!」という感覚、他がダメでも歌がいいからすべて帳消しにできるという感覚はあまりありませんでした。このあたりなにが原因なのかは私自身引っかかっているところです。ひとつはキーが違うことかとは思います。欧州ではこれは教育メソッドの違いなのかもしれませんが、「甲高い」までに声の高い人が男女問わず結構います。皆様歌えてはいるのですが、あとちょっと声質の高い人の方が歌いやすかっただろうと思ってしまうことが多々ありました。もうひとつは音楽で遊んでないことと言ったらいいのか…。なんというか、楽譜通りには歌えているんです。正直、日本のミュージカルでそれが最近スタンダードになっているのはとてもうれしいです。でもあと一歩踏み込んでほしいというか、もっと自在に歌ってほしいなあと思ってしまいました。そして、ワイルドホーンの作品って欧州で見るとほぼ全編歌だと思うのですが、「デスノート」は芝居の間に歌が入っている印象でした。全部が…というわけではありませんが、印象的なシーンの間に歌が入ってる気はしました。 もう一点印象をあげると、違うメソッドで学んできた人たちが同じ板の上にいると行うこと。バレエなんかでもゲストありの公演だと、教育メソッドの根本が違うと感じることがまれにあります。そんな感じでした。もちろん四季のように劇団だとそろってて当たり前ですが、ドイツ語圏でミュージカルを見るときはあまりそれを感じないので不思議でした。
ただ、そういうことを全部ひっくるめて、これが日本のミュージカルなんだと納得した部分もありました。ミュージカルって、「これが正解」というものはないと思います。私が見たことがあるのはロンドンとドイツ語圏、それからフランス(来日)と韓国を少しくらいですが、歌に重きを置くか芝居を重きを置くか以前に「ミュージカル」の成り立ちそのものが違うように思えました。その話は長くなりますのでちょっとここは後回しにしまして、日本の場合は芝居の間に歌があるという形式で、キャストはミュージカル関係あるところないところからのかき集めで、いろんな才能を束ねて一つの作品にするという手法でミュージカルを作るという方法論が程度確立しているように感じました。たぶん以前から手法自体は確立していたとは思いますが、歌が下手すぎて気づかなかったのかもしれません。今回は歌に対するストレスが大変少なく、「いろいろな分野で活躍するいろいろな才能の持ち主が一つの舞台を作り上げる」ということをようやく感じることができた気がします。 「アーサー王」の自分の感想に「役者にあてがきされた役、役を魅力的に見せるためのシチュエーション、シチュエーションを生かすための歌、歌をつなぐためのストーリー」とありましたが、「デスノート」は原作があり、それに合うテーマを定め、いろんな都合で集まったキャストをうまく配置して物語を作ったように思えました。善し悪し含め、日本のミュージカルってそういうものなのかと思います。いろんな畑から出演者を集め、芝居を歌でつないでいく。それはそれで面白い作品ができるものだと感じました。
脚本はあの長い話をすっきりうまくまとめたと思います。ただ、1幕はおもしろかったのですが、2幕の序盤、月と海砂が出会うあたりのシーンは脚本家変わったのかと思うほどグダグダでした。海砂が歌でキラに思いを伝えようとするのは「なるほど、ミュージカルという媒体をここで生かすか!」と思ったのですが、そのあとのテレビ局へ送ったメッセージが蛇足だしやっつけで書いたのではないかと思える脚本で、どうなるのかと別の意味ではらはらしました。原作では月も海砂もあれこれ考えていると感じさせられましたが、全く何も考えていないように見えてしまい、「心理戦」の影も形もなくなってしまったのは残念でした。その後も2幕は海砂とレムのシーンで持ち直しましたが、終盤の月とLシーンがなんとなく緊張感なく終わってしまったのが残念でした。クライマックスは面白かっただけに、そこに至る過程をもう少し見せてほしと思いました。 心理戦についてはミュージカルだから表現できなかったというより、ミュージカルというのはそういう内面の表現に適しているのに最大限生かしていないと感じました。これは言葉がわかった故のストレスといえばその通りではあります。例えば大学の入学式で月とLスピーチをする際、実際に話している方ではなく、後ろで控えている方の心の声が観客に聞こえるというのはとても分かりやすいシーンでしたし、噂のテニスのシーンもそれぞれの内面を語るのにちょうどいい場面だと感じました。逆に原作にあったちょっとしたやりとり、例えばLがキラは関東にいると思ったのは音原田の事件がきっかけだったとか、海砂が第2のキラだという証拠は送ったビデオの指紋や消印からは検出されず、付着物等でわかった…という「色々考えて行動している」と分かる部分がカットされていたのが残念でした。こういう細かいギミックがむしろ助長になると感じたのかもしれませんが、特にフォローなくカットされていたので、「なにも考えてない」と感じられてしま部分がありました。これが歌中心のミュージカルだったら仕方ないと思えるのですが、どちらかといえば台詞に重きを置かれた作品だったので、もう少し何とかなったのではと思ってしまいます(いろいろ考えてたけどばれた、が原作で、なにも考えてないからやっぱりばれた、がミュージカル)。 物語として、一カ所違和感があったのが、月が秀才という設定。月は秀才で若干それを鼻にかけていうということは「自分が選ばれた」と思っていることでも明らかだと思うのですが、そこに違和感がありました。ただ、その点を除くと、「普通の青年が神に等しき力を手に入れやがて滅んでいく話」として大変すっきりしていました。その結末が見えているとやっぱり月の秀才設定が邪魔になるというジレンマがありますが、普通の青年が変わっていく…という流れは好きでした。
キャストは上記の通り大変よかったと思います。 月の柿澤さんは確かに月のイメージとは違いましたが、このストーリーの中で徐々に変わっていく様は見事でした。変わっていく…というか、ふと気づいたときそこに全く違う人間がいる…という感覚が近いかもしれません。終盤への流れが好きでした。ただ、曲の音域と声が合ってなかったのが少し残念。歌えてはいたのですが、それ以上を感じられませんでした。 Lはかなり原作そのままのイメージ。基本的に原作を知っている作品の映像化は苦手なのでほかは見ていないのですが、イメージに合ってる猫背なのに、ちゃんと歌えてることに驚きました。どちらかといえば台詞に節を付けている歌い方でしたが、結構心地よく聞いていました。 予想外によかったのが海砂。彼女の極端な主張が不思議なくらい自然なものに見えました。盲目的なひたむきさがとてもしっくりきました。正しいとか間違ってるとかそういうものは彼女にとって無意味で、ただ一途に心を捧げるというのがぴったりで、それが物語にもミュージカルという形式にもぴったりはまっていました。 死神二人はなんとも対照的。ミュージカルという音楽のある世界に生きていたのは濱田さんの方だと思います。相変わらずの聞かせる歌声と芝居が自然になじんでいました。世界観になじんでいて、この世ならざるものとしてちゃんとそこに「いる」。歌はもちろん見事だったのですが、佇まいがとても好きでした。芝居寄りで、確かに歌を聴かせる感じではなかった吉田さんも、ここまで歌えるなら十分と思えました。ただ、彼は歌を歌うことによって演技を制限されているように見えて、彼がミュージカルに出演する意味を考えなくもなかったのですが、ラストシーンが本当に見事なんですよね。ラストの台詞の一つ一つの重さ、言葉によって劇場の雰囲気が変わっていく感覚、それが「ミュージカル」かというと違うのですが、芝居として大変見事で、それを見られただけでも劇場に足を運んだ価値があったと思えたので、よかったとは思うのですがいろいろ悩ましい存在でした。
演出としてはすっきりしていて大変魅力的でした。シンプルなセットだったのですが、その無骨な作りがこの物語に合っているように思えました。特に空間の使い方がうまくて、リンド・エル・テイラーのシーンでは舞台上にある3つのシーンがうまく使い分けられてましたし、「L」というもう一人の主人公の登場にふさわしいインパクトもありました。全体的に照明も美しく、闇の中にぼんやりと光が浮かび上がる感じが、黒いノートをめくったときの感覚にも、闇の世界に光が射す光景にも思え、印象的でした。
ワイルドホーンの作品はどちらかと言えば作品のニュアンスだけをくんで、あとはオリジナル…というものが多い気がします。「モンテクリスト伯」も「アーサー王」もそんな感じでした。まあ、ネタバレになるのであまりどこがどう原作と違うかは言いませんが。例えば、今まで一番とんでも演出だった「ジキル&ハイド」では「ラストにジキルの作った薬を注射してリザ(日本版で言うところのエマ)を射殺するサイモン」というものでした。それに比べたらデスノートなんて原作そのままと言っていいほどです(笑)。2.5次元ミュージカルとそれ以外を分けるものはなにかと考えたとき、前者は原作を再現することを重視し、後者は原作の名前を冠しているけど原作と結構違う部分があるものではないかと思います。そう思うとデスノートは2.5次元ミュージカルよりは普通のミュージカル寄りですし、けれど日本の作品が原作だからかまだ原作から離れ切れてない気もします。別の国に行ってもっと原作から離れることもできるのではないかと感じさせられましたし、それはそれでおもしろい作品になると思います。韓国での上演予定はありますが、それ以外の国でも見てみたいと思えます。だからといって日本版がおもしろくなかったというわけではなく、細かい不満はありましたが、日本版も上演を重ねていってほしいと思えました。今の時点でちゃんと完成した作品でしたし、カンパニーが違っても見たいと思える作品でしたので、よい作品ができあがったと思います。 新作ミュージカルをいろいろ見ているうちに感じたことは、本当にオリジナルの作品を作ることの難しさです。もちろん成功した作品の中にそういうものがないわけではありませんが、それでも舞台の設定やキャラクター、物語の展開やエピソード、すべてがオリジナルである作品の方がまれだと思います。どの世界でも「原作」を求めていると感じます。「漫画」という原作は、今まで映画やドラマになることはあっても、ミュージカルは原作重視のいわゆる2.5次元ミュージカルが中心だったと思います。原作をそのまま再現するのではなく、その一部を抽出して新しい作品を作る、その流れがミュージカルに来たのは面白いのではないかと思っています。「デスノート」は素人目には成功したように見えるので、日本のミュージカル制作において新しい流れが来ないかと、少し期待しています。 楽しかったです。
以下、ちょっとドイツ語圏で見た新作を思い出しつつ。 若手男性二人が主役の新作というとスポットライトミュージカルの「コルピングの夢」を思い出します。作品のレベルとしては「デスノート」の方が高いのですが、キャストのバランスはコルピングの方がよかったなあと思っています。なんというか、若手が今持てる力を全力で演じているのに対し、ベテランのClaus DamやSabrina Weckerinが舞台全体のバランスを底支えしている気がしました。年齢のバランスとしてはデスノートも似た感じなのですが、ベテラン層に「バランス調整」を感じなかったのが不思議でした。そのせいで若干物語全体としての主張より、個々のキャストの主張の方を強く感じてしまったのです。うまいからといって主役を食ってしまうわき役は、本当にうまいのかなあとちょっと思ってしまいましたのも事実なのです。 あと、「モンテクリスト伯」は完全に初見(いろいろ巡り合わせが悪くてCDを聞かずに観劇)だったのですが、1回目で作品のテーマとなる曲とテーマが分かった…というか、作品として表現しきれてないけどこれがテーマ曲であると分かったのですが、「デスノート」はそれを感じませんでした。「アーサー王」はCDを聞き込んでいったのですが、CDを聞いたときには感じなかった「これがメインの曲」というのが舞台を見たらすぐに分かりました。「デスノート」はそういう曲がぱっと思い浮かばないのですが、別のプロダクションで見たら印象が一変するのではと、少し思っています。
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(2015/05/08(Fri) 00:44:45)
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ウィーンMorzart!キャスト発表
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今年9月開幕のMorzart!再演のキャストが(ようやく)発表されました。
Wolfgang Amadeus Mozart:Oedo Kuipers(Gernot Romic) Leopold Mozart:Thomas Borchert Hieronymus Colloredo:Mark Seibert Constanze Weber:Franziska Schuster(Jennifer Siemann) Nannerl Mozart:Barbara Obermeier Baronin von Waldstatten:Ana Milva Gomes Cacilia Weber:Brigitte Oelke Schikaneder:未定(Jakob Semotan)
Ensemble: Abla Alaoui Dorothea Baumann Floor Krijnen Gernot Romic Jakob Semotan Jennifer Siemann Jil Clesse Jon Geoffrey Goldsworthy Judith Jandl Karolin Konert Martin Pasching Maximilian Klakow Nicolas Boris Christahl Raphaela Pekovsek Rebecca Soumagne Sina Pirouzi Stefan Poslovski Susanna Panzner Thorsten Tinney
若手は抜擢が来るだろうとは思いましたが、案の定全く知らない方でした。 Markのコロレドはうわさ通り。 WMC2でちらりとその姿を見ることができましたが、全幕通すとどうなるか気になります。 レオポルトが初演と同じThomasで驚いています。 まあ、前回が若すぎたと言えば若すぎたのですが…。 なんにせよ久しぶりのウィーンでの上演、とても楽しみです。
この発表の後、若干初日が後ろに下がっていました。 理由はよくわかりませんが、お出かけの際はご注意ください。
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欧州大陸側ミュージカル | Link |
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(2015/04/15(Wed) 00:56:59)
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