ベルリンノートルダム
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フィーバスのこと。 原作やフランス版(以下両方併せてフェビュスとします)をご存じの方には言うまでもなく、フェビュスはクズです。原作はまあいる感じのクズ男ですが、フランス版はあえてさらに腹が立つように創られてます。じゃなかったら、「婚約者の彼女か、ジプシーのあの子か、どちらか片方なんて選べないー」「あの魔女にだまされてたけど、僕は君のところに帰ってきたよ!」なんてとんでもない曲を歌う訳ないんですよ。フランス版のフェビュスは「このクズ男め!」と思うために存在している。とはいえ、婚約者のフルールドリは好きなので、「彼女の尻の下なら生きててもいい」くらいの距離感で接してます。 ・・・という気持ちがあるので、フィーバスのことを素直に善人として受け入れられない。別物だとわかっていても、フィーバスが善人であることそのものが受け入れられない。四季版のフィーバスは大変魅力的だったのですが、何度も何度もこの先入観に足を引っ張られました。
さて、ベルリンのノートルダム。そもそも行くつもりでしたが、発表されたフィーバスのキャストはMaximilian Mann。これで一気に私の中の風向きが変わったと言いますか・・・。Maximilianはここ数年熱心に追いかけている俳優さんです。日本国内で仕事してないのに、すでに4演目10回以上見ているというあたりがいろいろアウト。ちなみに上海でフランツヨーゼフとコロレドを演じた方なので日本人でも見ている方はいるのではないかと(私が見た後ふたつの役は貴族階級の軍人とガチ聖職者(労働者側に立ってるアクティブな方でフロロとは全く別のタイプ)。軍属と宗教関係者の役が多いと勝手に思ってる)(宣伝終わり)。 彼に対する愛着が勝つか、それともフェビュスに対する積年のいらだちが勝つか・・・それによって作品に対する感想ががらりと変わりますので、我がことながら人事のように楽しみにしていました。
で、実際に観劇してみたら冒頭のシーンで即どこにいるか見つけて、ハートマークを飛ばし始める有様。フェビュスに対するいらだちというか、ストーリーに入る前に彼への愛着が勝ってしまい、とても心穏やかに作品を楽しむことができました。 自分でもおもしろいと思ったのですが、「あそこにいるのはフェビュスではない」と自然に思っていたので、作品全体にある「原作との違い」にいらだちを感じませんでした。どうしても「原作に近づけた」と言ってるのに映画版を引きずっているのが気にくわなかったのですが、本当の意味で「原作と違う作品」としてみることができました。そのため、素直に作品自体を楽しめたと思います。 そんなわけで、作品自体をみる目線としても、なかなかおもしろい観点で楽しめたのが予想外の収穫でした。
それはさておきフィーバス関係メモ。 笑うとかわいい、すごむと怖いフィーバス。本当に笑うとかわいい。女たらしで軽い雰囲気出してたのに、エスメラルダとキスした後の浮かれ方というか笑いかたが初々しいというかなんというか。そういうところがすごくかわいく、けれど軍人としてまっすぐ立つと迫力がありすごみがある。そのあたりの落差が大変魅力的でした。エスメラルダが比較的小柄なこともあって、なんとなく片手で抱え上げられてしまうくらいのバランスなのもまた良かった。その身長差があるからノートルダムで再会したときのやりとりがまた魅力的。小さな女性が大男を翻弄するのはやはりおもしろい。 Maximilianは今まで見たすべての役で感じたのだけど、まじめというか、一度決めたらてこでも動かないというか、そういうところがある。そんな彼の個性にぴったりの役。フロロに火をつけろと言われてなにか適当にごまかしたりせず、正面からはっきりと彼に従わないと宣言する。その不器用なまでの実直さが大変魅力的でした。
2幕は全体的に「・・・この怪我やばいんじゃない?」という雰囲気。右手はほとんど動かさない、さわられるとすごく痛がる、割と足下がふらついてる、終盤は若干意識がもうろうとしているところを意地でなんとかしている感じ。うん、よろしくない。本当に右手を動かさないんです。プログラムの写真なんかだと奇跡御殿でエスメラルダと行くと言った後、一列に並ぶときは右手をふつうにしているのですが、手は動かさずエスメラルダが腕に手を添えている感じになってました。そのあとフロロたちがやってきたときのかばい方も、右手を使わず不自然に左手でエスメラルダをかばってましたし。エスメラルダの処刑の直前に出てきたときも意識が飛かけてるような目つきで足下がふらつき、とにかく適切な手当をしてくれと、はらはらしながら見ていました。クロパンから解放されたときもほとんど右手を使わず左手だけで体を支えて櫓から身を乗り出し・・・ここで初めて右手を挙げる。ひどい怪我で、痛くて、それでも人々を鼓舞するために右手を挙げた姿が、とにかく魅力的でたまらなかった。 最後、エスメラルダの亡骸を抱え上げようとするができない。以前は片手でもできそうだったのに、なんというか、足下に力が入らないというのもあって彼女を抱き上げられない。物語の結末としていいなあと思ったのが、ある意味このあたりがフィーバスの敗北だったから。エスメラルダの命を救うことはできなかったけど、カジモトは火の中から彼女を救い、守った。フィーバスはそれすらできず、亡骸を抱え上げることさえできない。はっきりとフィーバスが敗北を感じていたのが何というか、私にとってこの作品に対する最後のピースとなったというか・・・最後にエスメラルダを得るのはカジモドであるということを、カジモドとフィーバス二人が表現してくれたのが、なんか腑に落ちるところがありました。
おもしろい作品でしたので書きたいことはたくさんあるのですが、とりあえずフィーバス周りのことだけ。
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(2017/07/28(Fri) 21:50:34)
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ベルリンノートルダム 感想にもならないあれこれ
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ベルリンからこんばんは。寝る前にノートルダムの感想を少しだけ。
とても久し振りに日本で見た舞台をドイツで見ました。いろいろ感じたことがあったのですが、ひとつはっきりしたのはよく言われている「言葉がわからないからおもしろく感じる」というのはあるかもしれないということ。今回、四季版を3回見た後でしたので、話の流れはほぼ把握していました。言葉は不自由なりに、耳を澄ませば今なにについて話しているかはわかるレベル。四季で見たときよりおもしろいと感じたのですが、その理由のひとつが言葉がわかりづらいことだと思いました。 この話、私はテーマとストーリーが剥離していると思っています。言いたいことはわかるけど、うまくストーリーとかみ合ってない。言葉がわかるとそれがいちいち気になるのですが、音が耳に入ってきて、それをなんとか言葉として理解して、その後でストーリーを考えて・・・という手順を踏むと、だんだんそのかみ合ってなさがどうでも良くなって、目の前にあるものだけを楽しむようになってきました。そういう意味で言葉がわからない方が楽しめると感じた次第です。 あと、四季で見たときはどうしても原作に寄せているのが気になってここが違うとそればかりに気を取られていたのですが、今回はかえって別作品として楽しめました。なんというか、原作とディズニー版は別だとわかっていてもフィーバスを見るとぶん殴りたい気持ちになったのに、ベルリンではひいきの役者だったため、大変心穏やかに見ることができました。
気になったこと。 カジモドは独り言を言っているときはそうでもなかったけど、実際に誰かと話すときは骨格的にとても話しづらそうだった。アフロディージアスも覚えられないと言うより、その言葉を音にするためにはどう口を動かせばいいかわからない感じ。 フロロは四季に比べてエスメラルダに色目を使うエロジジイ感あり。そのかわりジャンへの愛情は薄かったかなあ。「弟を愛していた」がすごくとってつけた感じ。愛していたけど愛情表現がへたくそすぎてちぐはぐになってしまったと感じられた四季版と違い、愛していたのでなく自分の思い通りにしたかっただけだろうという感じ。だから最後にカジモドに殺されて納得なんだけど、私はジャンをゆがんだ形で愛するフロロが好きというジレンマ。 エスメラルダ、もしかして若いのかなあと。大人びて見えるけど実は「少女」なのかと思いました。
フィーバスメモ書き。 フロロに初対面の後、「今度の仕事はこういう奴におべっか使うのか」みたいな顔していた。カジモドが道化の王の後半で皆にいじめられてるとき、フロロの部下だから助けに入れないことをすごく悔しく思っていたよう。だから迷わず助けに行ったエスメラルダをどこか羨望のまなざしで見てる。オフの写真とか見たときちょっと太ったかと思ったけど、衣装込みで見ると軍人らしく貫禄があって良かった。背も高く、肩幅もあるので大変圧しが強くて良い。(カッテの時は細身で若さが伝わってきたけど、今回はいい感じに貫禄があって、実戦経験のある感じがする)これはMaxの個性だと思うけど、どんな夢みたいなことでも彼が言うと信じられるという雰囲気はこの役にとても合っていた。そしてフィーバスはこの後どうなったか謎でしたが、死んだのではないかと思う流れでした。フロロの刺し傷がわりと深いようで、ちゃんと手当しないと死ぬぞとはらはら見ていましたが手当してもらってなかったので、そろそろやばいかなと。最後、エスメラルダを抱き抱えようとするもそれができず、カジモドに譲ったのが印象的。最後にエスメラルダを勝ち得たのはカジモドで、それをフィーバスも受け入れた感じがしました。
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(2017/07/26(Wed) 09:00:54)
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