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ジキル&ハイドの楽しみ方

 ジキル&ハイドという作品が結構好きです。ウィーン版でその魅力のとりこになり、残念ながらそれを超える舞台には出会ってませんが、6演出11名のタイトルロールを見てきました。いくつも地雷を踏みましたがまだまだ懲りてはおらず、まだまだ見に行く気満々です。
 この作品、個人的にジキルとハイドを演じ分けるのはそれほど難しくないと思います。もちろん登場時間も長いし歌も簡単ではないですが、しかしこれだけキャラクターも違い、歌の音程も違うならある程度の役者なら演じ分けられてしまうのです。実はそれ以上に難しいのが「ジキルの性格付け」だと思っています。
 よく「ジキルとハイド」は善と悪の代名詞とされ、ジキル=善とされますが、この作品のジキルは台本レベルで見ていくと決して善人じゃありません。身内の病を治すためとはいえ、とんでもぶっとび理論を論じ、そのために人体実験をさせろと言い、揚句にそれを反対した人たちを偽善者だとそしる人をすんなりと善人と思うのは難しいです。そのほかにも人の話は聞かないしどちらかというと身勝手だし、台本(ドイツ語)を訳していらいらすること度々。だからジキルを台本通りに演じると、いけすかない男になると思います。けれど、それをやってしまうと実は物語が破たんしてしまう。なぜなら、ジキルという男は本当に愛されている人間だからです。

 まずはリザ(日本版ではエマ。演出によって異なる。韓国もエマ。ドイツ語圏がリザ)。家柄よろしく若くて美人。一人娘という難点はあるけど、嫁の貰い手は数多でしょう。少なくとも、父親が病気であり、ちょっと普通と違う考え方をする医者よりマシな結婚相手はいるでしょう。父親にも、もちろん同じ階級の人たちにも結婚を賛成されず、それでもリザはジキルを選ぶ。ジキルが実験に没頭し自分を顧みなくなっても彼を信じ、愛し続ける。それはなぜか。
 アターソンは人のいい男です。職業は弁護士、この条件が合わされば友達の数もそんなに少ないとは思えません。そんな彼はジキルのために、彼の行動が理解できないことがあっても奔走する。それはなぜか。
 結局この二つの問いかけに答えられないと物語が破たんするのです。ジキルがリザをどう愛しているか、なぜリザはジキルを愛せるのか。これが成り立たないとリザの存在意義がなくなる。アターソンがジキルの親友をしている理由も「彼がいい人だから」というだけならただ彼のいい人さだけが際立つ。なぜ彼がジキルの親友を続けられるのか。それが理解できなかったら、物語自体が成り立たない。ふたりの行動が納得できるジキル像を作らなくてはいけない。それがとっても難しいと思うのです。

 ジキルを愛したもう一人、ルーシーのジキルへの思いは先の二人に比べれば簡単です。娼婦で惨い暮らしをしているときに品性のある若い男性に同じ人間として扱ってもらえれば、そりゃころっと落ちます。だからこそ逆に「ジキルにはリザがいる」ということをジキルに不快感を抱かせず納得させるのは難しいと思います。ルーシー自身はとても可愛らしく魅力的な女性ですから。
 ルーシー関係で難しいのがむしろハイドとの関係。ルーシーにとってハイドというのはただの恐怖の対象じゃない。このあたりが「It's a Dangerous Game」で出てくるわけですが、日本人が苦手とする分野だと思うのでどうなるか大変興味があります。

 ジキル&ハイドという作品は善と悪の話ではないと思っています。ジキルはどういう人物か、なぜリザは彼を愛したか、なぜアターソンは彼を信頼したか。そしてジキルとハイドはどんな関係か。そんなそれぞれのキャラクターの設定と関係性が舞台の上で描かれば、物語は自然に一つの結末に達します。その関係性がとても面白いと思うので、何度も劇場に足を運んでしまうのです。

 というわけで、今度の石丸ジキル&ハイド、「いい人」でないジキルがどんな風に愛される人間になっているか、濱田さんとの「It's a Dangerous Game」がどんな雰囲気になっているかを最も注目しています。一応、楽しみにはしています。

[1826] ゆず (2012/02/12(Sun) 01:08:30)



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