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ジャック・ザ・リッパー(2012/10/01,2012/10/03 ソワレ)

ダニエル:ソン・スヒョン / オム・ギジュン
ジャック:キム・ボムレ / シン・ソンウ
アンダーソン:ヨン・ミンギ / ユ・ジュンサン
モンロー:イ・ジョンヨル
ポリー:ソ・ジヨン
グロリア:J-Min / ソニャ

 金がない時間がないと言っていたはずなのに、なぜか2回も行ってしまいました・・・。大変楽しかったです。公演期間がちょっとだけ残ってますので簡単な感想を言ってしまうと、ジキル&ハイドが好きな方ははまる可能性が高いですので是非。J&Hに似ているというのはいたるところで言われていますが、私は今まで見たどのJ&Hよりもウィーン版(というかブレーメン演出)を思い出しました。裏路地の醜さ、殺人鬼の恐ろしさ。そういう暗い面を感じられたのが大変うれしかったです。音楽や脚本は傑作というほどではありませんが、十分楽しいです。殺人鬼と、それを追う新聞記者、そして二組のカップル・・・もう終わった二人とこれから始まる二人・・・の物語。いい作品でした。


 以下、ラストシーンも含めて全力でネタばれしてますのでご注意を。
 しみじみ振り返っていい作品だったと思ったのが、物語ともう一つのテーマがちゃんと一つにまとまっているということ。メインは殺人鬼ジャックを追う物語、それに振り回された二組のカップルの物語。このカップルは全てとは言えませんが、対照的に描かれています。ダニエルとグロリアはとても特別で、最後のすれすれまで未来を見ていました。アンダーソンとポリーはすでに終わった二人で、二人ともどこかせつな的。この5人でメインのストーリーが回っていますが、物語をひっかきまわし引っ張っていくのがモンロー。彼の言っている世間の残酷さ、より刺激的なニュース、他人の不幸を望むというテーマは別段新しいテーマではありません。そういう人の醜さを明るい音楽で語るというのは若干珍しいですが、この作品自体がどこかくらい世界も明るい音楽で流すところがあるので流れ的には自然です。良いなあと思ったのが、ダニエルが射殺された後の「同情するな」という言葉。それはただ純粋に愛のために狂ってしまったダニエルの姿が美しく見えていたので胸に突き刺さりました。あの言葉は観客への言葉に思えました「お前たちはどうせこういうラブロマンスが好きなんだろう」と、そう言っているように聞こえました。それこそ、お前たちも刺激的な殺人事件を求める人間に変わりはないのだと、鏡を突きつけられるような気分でした。そういう世の中だから、アンダーソンはすべてを心に秘め、すべてを封じる。ダニエルとグロリアという若く美しい二人の悲恋の前には裏街で生きて死んでいった女たちの命はアンダーソンの言葉通り、ただの飾りになってしまう。物語が全て一つにまとまり、そして最初のシーンに戻る。この流れが大変美しくって、今も余韻に浸っています。
 そう感じられた理由はなによりダニエルが良かったからかと思っています。ギジュンダニエルはルックスがいいわけではありませんが(失礼)、とにかく一途で、愛情に疑いも迷いもなく、純粋で、だからこそ不幸な事件によって自分を見失い狂ってしまったように見えました。最後にグロリアを抱きかかえる姿がとにかく美しくって…。その姿が美しく見えたからこそ、そして最後まで生きる望みを失ってなかったのについに自殺したグロリアの純粋さがまた美しく見えたからこそ、アンダーソンの「同情するな」という言葉が突き刺さりました。
 そしてもちろん、アンダーソンとポリーも良かった。同じ娼婦でもグロリアは夢を信じられる位置にいた、けれどポリーは本当に底辺に生きている感じがしました。ダニエルはグロリアを救い出す力と未来を持っていた(考え方もそうですし、お医者さんということで前途も明るい)。逆にアンダーソンはコカイン中毒で厭世的。未来をさっぱり感じない。そんな影のような二人なのに大変魅力的なのが不思議です。私はこちらのカップルの方が好きです。まだ互いに未練を残していて、でも互いに一歩を踏み出すことができない。2幕でポリーの髪に触れようとして触れなかったアンダーソンの横顔とか、抱きついてきたポリーが離れてもそのぬくもりを腕に感じてそうなところとか、肩を叩かれたときそれがアンダーソンだと思って嬉しそうにほほ笑むポリーの物悲しさとか・・・。雪が降る街でなく灰の降る街角ですれ違い続ける二人の悲しさが、本当に好きでした。この二人がもう一度見たいとか言いだしております・・・。
 ジャックというキャラクターが大変面白かったです。二人が全く違うキャラで、それでも物語が成り立ってるのがすごい。それこそJCSのヘロデ王並に好き勝手やってるのに、登場時間の長い、物語にがっつり絡んでるのに、これほどキャラクターが違っても物語が成り立つのが面白いです。そして書いていて気付いたのですが、彼がエンターテイメントの部分をかなりになっているから、全体的に重い話を楽しく見ることができるのではないかと思えました。どちらかというとボムレさんが好きですが、これは明らかに最初に見たのであの声がしっかり身に沁み込んでおります。

 ストーリーとしては時間軸が行ったり来たりするので、今見てる時点がどこに当たるかが1回目では分かりづらかったのがちょっと残念でした。2回見るとしっくりきて、あそことここがこうなのか、と分かるんですけどね。字幕が付いてたから良かったものの、言葉が分からなかったらきつかっただろうなあと思います。でも、最初と最後がつながっている物語の流れは好きです。

 モンローが若干弱いかなと思いましたが、全体的に歌唱力が素晴らしく、キャストの一人や二人置いてってくれないかなとちょっと思いました(笑)。ダニエルは正統派王子様でもできる役ですが、特にアンダーソン、ジャック、モンローは個性がないと埋もれてしまう役であるから、これだけ個性的で華があって歌える人がいていいなあとうらやましく眺めておりました。女性もパワフルでどちらかと言えば汚れ役ですし。物語も好みで、役者のパワーに圧倒された楽しい舞台でした。ダンスがちょっと古い気がしたのはご愛嬌かな(苦笑)。このレベルのミュージカルをコンスタントに見たいなあと思っております。

[1889] ゆず (2012/10/04(Thu) 22:49:12)



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