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Thomas Borchert(トーマス・ボルヒャート)ってこんなひと(その2)
「Thomasとワイルドホーンの作品」という側面で考えたとき、真っ先にあげたい作品が「モンテクリスト伯」かと思います。
これはThomas自身が何度も言ってることですので私もファンとしてしつこくしつこく言いますが、この作品は彼のために作られた作品です。
スイスのザンクトガレンという都市で初演されました
。
彼ありきの作品らしく、CDは上演前に発売された英語版も上演後に初演キャストで収録されたドイツ語版も、タイトルロールは彼が演じています。
とても好きな曲が二つ。
一幕最後の「Hölle auf Erden(地獄へ落ちろ)」。
これは先の記事でも書きましたが、彼の歌い方をそのまま楽譜に起こしたような曲だと思っています。
怒りをたたきつける歌、とにかく派手ですし、彼が歌いたいようにのびのび歌える曲だと思うので、大好きです。
最後の「アーメン」の叫びまでノンストップ、アレンジも多く、聞いているだけでテンションがあがります。
もうひとつが物語のクライマックスで歌われる「Der Mann, der ich einst war(あの日の私)」。
ネタバレなしに語ることは難しいのですが、憎しみを忘れ許すことによって自分自身が救われると感じる曲。
彼の温かみのある声で語られる祈りにも似た歌。
「Hölle auf Erden」とは全く逆の、ジャン・バルジャンを当たり役とした彼のもうひとつの魅力を引き出す曲だと思います。
この曲は公演で見たあとウィーンのF&FのCDで聞いたのですが、さらに深みが増していて驚きました。
それまでとどまっていた世界がなにもない閉じた世界に思え、だんだんとそこから解き放たれ、広い世界に飛び立ち、生まれ変わる。
新しい世界は光で満ちあふれている。
たった一曲、作品でなくコンサートの中の一曲でそれを感じさせてくれる曲だと思うので、「今」彼がどこまで表現できるかという意味で一番聞いてみたい曲です。
それはそれとして、この作品は主演俳優の喜びと絶望、怒り、憎しみ、そしてそれらからの解放と、感情の振り幅が大きく、好きな俳優で見てみたい作品の一つと言えると思っています(縁あってThomas主演以外でも見ていますが、作品としてとても好きです)。
彼がオリジナルキャストをつとめたのはもうひとつ、「アーサー王」です。
こちらも初演はザンクトガレン。
Thomasはもちろん主演ではなく、魔道士マーリンです。
正直、最初のシーンで岩に剣を突き刺すことくらいしか派手なことはやっていません。
それなのになんか偉そうで不思議な力を秘めてそうで、ただ立っているだけでなにか風情があるあたりがさすがベテラン。
曲としては今回来日するモルガナ役のSabrinaと歌う「Begehren(欲望)」が本当に好き!
今回の来日コンサートで是が非でも歌ってほしい曲の一つです。
男女の二重唱ですが、もちろんラブソングではありません。
基本的には歌で殴り合うみたいな曲で、大変迫力があります。
コンサートでは歌ってくれないだろうなと思いつつ、「Die Ruhmreiche Schlacht(栄誉ある戦い)」はアーサーが運命を受け入れることを決めた直後の歌で、アーサー、ランスロット、マーリンと男性三人の重唱で大変かっこよい歌でとても好きです。
声の重なり方が本当に美しいんです。
ところで、この作品は原作を詳しく知らない私でも「これ絶対原作と違うだろう」というとんでもない展開の上、とんでもないところで終わります。
ワイルドホーンらしい派手で耳なじみのいい曲と日本人好みの題材だと思うので、是非日本で上演してほしい作品でもあります(そしてみんなで全力でストーリーにつっこみを入れてほしい)。
「ドラキュラ」は上記2作と異なり英語圏初演の作品ですが、ドイツ語圏初演は同じくザンクトガレンでした。
物語の流れ上、最初は初老でそのあと若返るのですが、私が見たザンクトガレン版はこの若返り後のビジュアルが余りに微妙すぎて、初老時代の方がよかったとか思ってしまった思い出があります・・・。
さて、初演キャストではありませんが、彼のために作られたと思える曲があります。
グラーツ公演でヘルシングを演じたUweと二重唱、「Zu Ende」。
「遊びは終わり」という感じで、こちらも歌で殴り合うみたいな曲です。
音域がかなり高めで、正直今のThomasとUweでは歌えるのか謎に思うほど、当時の二人のための曲でした。
同性の二重唱ってあまりありませんが、これは本当に迫力があり、ソロもいいけどとにかく二重唱部分の調和が見事で、耳が幸せで、ミュージカルが好きな人には是非一度聴いていただきたい曲の一つです。
最後になりましたが、ワイルドホーンの「ジキルとハイド」。
アンデアウィーン(エリザベート初演、再演が上演された劇場)で上演されたときに主演でした。
ウィーンで主演ファーストキャストはそれが初めてでした。
私はありがたいことにセカンドシーズンに見に行くことができました。
私にとってはドイツ語圏にこだわるようになったきっかけの作品です。
音楽(含むオーケストラ)も演技も演出も見事で、「ミュージカルってここまで求めていいんだ」と思ったことを今でも覚えています。
他の作品以上に曲だけで聞いた時と作品を見た時で印象が違う作品だと思います。
誠実でまっすぐで、まっすぐすぎて扱いづらい感じのきまじめなジキルとか、色気とは違うけどなにか獣じみた迫力のあるハイドとか、特にコンサートで求めるつもりはないです。
それでも何年も何年も歌い込まれた「時がきた」は楽しみではあります。
(「対決」好きなんですけど、さすがに難しいだろうなあと・・・)
「罪な遊戯」はSabrinaと歌ったらなんとなく殴り合う感じの曲になるだろうとイメージがわくので、ジャッキーと歌うとまた違う雰囲気になるのではないかと期待してます。
作品として携わったのは上記の通りです。
でも、ワイルドホーンのコンサートはフランク&フレンズやそのほかのもの、いろいろ歌っているので、きっと上記の作品以外もおもしろいだろうと信じています。
[3051] ゆず (2015/12/06(Sun) 18:31:37)
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