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アイーダ(2011/4/2)

アイーダ  :濱田めぐみ
アムネリス :佐渡寧子
ラダメス  :阿久津陽一郎
メレブ   :中嶋 徹
ゾーザー  :飯野おさみ
アモナスロ :石原義文
ファラオ  :勅使瓦武志

 オリジナルキャストが来たということで、大阪まで行ってきました!とっても楽しかったです、また行きたい!

 アイーダは東京千秋楽直前にみたのですが、キャストがいまいち気に入らなかったので、このオリジナルキャストは本当にうれしかったです。キャストが良くなった分、良いところと悪いところがはっきりした気がしますが、やっぱり好きな作品です。
 濱田さんのアイーダは眼福でした。そもそも今回の遠征のきっかけはツイッター上で「濱田さんはアイーダそのもの」という呟きを見たからでした。東京で見たときのアイーダも力強くて素敵でしたが、「そのもの」といわれるキャストはやはり舞台ファンとして見てみたいものです。実際に見てみて納得しました。何者にも捕られない王女、自由で愚かで高貴。すべてが魅力的で、特別だと思わせる。なによりその歌声!日本の女優さんってソプラノの方が多い気がするのですが、メゾソプラノ、アルトの声って素晴らしいと思えました。力強く迫力のある、しかも音域ぴったりと思える歌声は聞き応えがありました。この声だけでも、遠征の甲斐があったというものです。
 アイーダは彼女の思うとおり、人の上に立つ者として優れているわけではないと思います。その自由な心は魅力的だろうけど、それ故に捕らわれたのだとしたらやはり王族としてふさわしくないと思う。それでも育ちはいいから気品はあるし、彼女を女神として求める人の気持ちも分かる。自由でありたいと思う心、人に求められ運命に縛り付けられる姿、それでもラダメスに惹かれる心。私はアイーダは愚かだと思ってる。でも、愛に殉じて王女になりきれなかった彼女がとても魅力的だと思うのです。
 阿久津さんのラダメス、やっぱりラダメスはがたいがいいと見応えありますね。こちらも眼服(笑)。ダメダスと一部で呼ばれているだめな男ですが、だめな男だけど惚れるのは分かるなあと。ルックスがいいのはもちろんですが、自分に正直で不器用なところが魅力的。見終わって、ラダメスはアイーダに会って初めて人の心を持ったのかもしれないと思った。アイーダに会った直後、彼女に体を洗えと言ったときの笑い方動き方がとても残忍だった。それが徐々に変わっていく。自分の物をすべて与えてしまう(将軍だったら奴隷を救うのにもっと遠回りだけど深いことができるはずだけどそれをしない)、全てをなくしても家を造ることができると思う(自分たちで作るというより、誰かに作らせるような側面が強い)、彼は結局最後までぼんぼんで将軍だったけど、愛を知らない心で精一杯アイーダの愛を得ようとした。そんな不器用なところが、そんな素直で真っ直ぐなところが、たまらなく魅力的だと思えました。
 ドイツ語圏ミュージカルファンとして思ったこと二つほど。Markのラダメスはそれは見応えがあっただろうなと思います、主に体の面で(笑)。ドイツ語圏のオリジナルラダメスはMathiasですが、彼はクロロックのセカンドもやったことがあります。20代か30代そこそこでやっているはずなので、阿久津さんがやってもおかしくないんだよなあと思いながら見てしまいましたが、悪くないと思います。たっぱと声量があれば、後はメイクと熱意と解釈だけ。ちょっと高めの声はクロロックの音域にも不自由しなそうですし、あり得ないことですが見たいなあとちょっと思ってしまいました。若いクロロックはそれはそれで魅力的なのですよ。
 話を戻しまして、アイーダとラダメスのこと。二人ともものすごく自然に演じていたのはもちろんですが、反発するところ、惹かれるところも自然でした。反発しあうのはとても当然だし、だんだん惹かれていくのも、うまくいえないのですが二人が互いにとって特別だというのがとてもよく分かった。二人が惹かれる姿がとても分かりやすかったから、二人の王女の物語でなく、ちゃんと3人の物語に見えたのだと思います。
 もう一人の主人公というか真の主人公というか、アムネリス。佐渡さんの声は見事でした。高音部が全く裏返らず、伸びやかに出てくるあたり、脱帽です。ほのかアムネリスの方がかわいらしいかなと思ったのですが、最後まで見るとその芯の強さと内側の娘らしさ、そして王女としての凛々しさ、物語のもう一人の主人公として完璧なアムネリスでした。アイーダという物語は愛に殉じるアイーダとラダメスの物語であり、アムネリスの成長物語でもあるのは、今更私が言うことでもありませが、まさにその通りだと思います。最初、アムネリスは芯の通ったバカと言いますか、ある程度ものが分かった上で美しさを磨くことに命を懸けてる。ラダメスを昔から好きだったのだろうなというところにも嫌みが全くないし、頭の軽そうな物言いもかわいらしい。そして後半は指導者として目覚めていく。彼女を見ていると、この物語の先には穏やかで平和な未来が待っていると思えるのです。ちょっと夢見がちなことをいってしまうと、アイーダとラダメスは生まれ変わり再会するのですが、アムネリスは多分生まれ変わってない。アイーダとラダメスは自分の役目を果たしてないから、そしてアムネリスはその役目を果たしたからだと思うのです。アイーダはヌビアを救えなかったけど、アイーダとは異なった立場で、アムネリスはヌビアを救ったと思うのです。強く凛としていて争いを好まない賢い女王、アムネリスを見ているとそんな未来が見えるのです。それにしても、佐渡さんそんなに若くないはずなのに、「完璧なスタイル」という言葉に恥じないスタイルがすごい・・・!
 飯野ゾーザー、お目当ての一人でした。7年前に見たかったとちょっと思いましたが、見れて良かった。出しゃばりすぎることはないけど確かに主張しているその存在感はさすがの一言。特別残忍なことをしようとしているのでなく、王を毒殺しようとするのもアイーダを殺そうとするのも、目的のために必要な手段だから当然やるのだと当たり前のように言うのが、ゾーザーという人間なのだと思わされました。
 このあたりのキャストさんたち、何かが違うと思ったら、そのものなんですよね。なぜそうするのか、どうしてそう感じるのかということがちゃんと説明できていて、こちらに伝わってくる。やはり、長年演じている方々は別格です。

 作品についてあまり語ってきませんでしたが、エジプトというロマンを感じる舞台設定でありながらシンプルで子供連れでわくわく楽しむ気のしないこの作品、とても好きです。
 ローブのダンス、この曲はイメージしていたよりずっと重くて、初めて見たときはびっくりしました。アイーダが戸惑うのも、ヌビアの民がアイーダを求めるのもよく分かる。つぎはぎだらけのローブに込められた思い、そして彼女にそれを全て背負えと迫るヌビアの民の迫力。この迫力があるから、アイーダがどれだけ必要とされているか分かるし、それ故にアイーダが追いつめられ迷うのも分かる。このシーンと同じ意味で、奴隷たちのところにゾーザーの手下がアイーダを探しに来るシーンが好きです。アイーダがどれだけ必要とされているか、そしてその重圧がすでにアイーダ自身にとって背負いきれないものになってることもよく分かるから。

 一通りほめたのですが、どうしても納得ができない桟橋のシーン!そこにいる人たちの思惑が交差しあい、未来が決する重要なシーンのはずなのにだんどっているようにしか見えないのですよ・・・。ものすごく大切なシーンなんだから、もうちょっとがんばっていただきたいです。

 なんで東京にいるときに通いつめなかったんだろうと後悔した作品は、また大阪に来たい思うに十分なおもしろさを持った作品でした。ただ、おもしろいことはおもしろかったのですが「ヌビアはなくならない、私たちの中で生きている」という言葉がなんかリアリティーを持ってびしびし響きました・・・。不幸なときは無条件に幸せな物語を、暗い物語はある程度幸せなときにと言う事実をちょっと突きつけられたりしたのでした。

[1710] ゆず (2011/05/05(Thu) 18:34:37)



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