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ジーザス・クライスト=スーパースター エルサレムver.(2011/5/5)

ジーザス・クライスト   :芝 清道
イスカリオテのユダ    :金森 勝
マグダラのマリア     :高木美果
カヤパ(大司教)     :金本和起
アンナス(カヤパの義父) :阿川建一郎
司祭1          :平山信二
司祭2          :内海雅智
司祭3          :伊藤潤一郎
シモン(使徒)      :本城裕二
ペテロ(使徒)      :飯田達郎
ピラト(ローマの総督)  :村 俊英
ヘロデ王         :下村尊則
★★★★★

 JCSが好きです。
 今まで見た舞台の中で、この作品が一番好きです。10数年前に初めて見てそう思い、今もその思いは変わってません。中でも特に四季のジャポネスクが好きです。国外で見たのはイギリスとドイツで1回ずつだけですからあまり偉そうなことは言えませんが、とりあえず今のところ、四季版が一番好きです。

 久しぶりにJCSを見たという満足感でいっぱいです!好きな作品だからまだ上を目指して欲しいというところもありますが、久しぶりに胸一杯満足がいく作品が見れて本当に幸せです。こういう満足感があるから、舞台を見るのってやめられないのですよ!

 初日直後に1回行ったのですが、段違いによくなっていました。特にジーザス。芝さんのジーザスは悪くないけど何かあとひと味足りないというのがなくなり、きちんとジーザスとして一貫した個性が見えました。まだもう一息という部分もあるのですが、まだ伸びしろがあるという感じでこれからどう伸びていくかとっても楽しみです。
 芝さんのジーザスは神になりきれなかったジーザス。人と違う力を与えられ、けれど神にはなれなかった、そして人にも戻れない。このあたりのジレンマが「ジーザスの神殿」辺りから出てきて、その中途半端さが、やりきれなさがとても切なかった。自分を求める人たちに手をさしのべるけどなにもできない、その苦しさが、追いつめる群衆の力強さと相まってこちらに伝わってきました。群衆の手を振り払ったとき、ジーザス自身も傷ついたのがよく分かった。そしてゲッセマネで捕らえられた後も、彼は結局神にはなりきれなかった。嘲りの声を聞くまいとしても聞こえるし、痛みを感じまいとしても痛いし、心も傷ついていた。それを精一杯顔に出さずこらえようとするのが、芝さんのジーザスでした。神になりきれなかった男は人間のまま、それでも神の名を唱えて死んでいく。前回は見えなかった芝さんのジーザス像が今回はちゃんと見えて、満足です。

 金森ユダも良かった。運命に翻弄される一人の人間。 前回は何にも感じなかったジーザスとユダのやりとりも、今回はちゃんと二人の感情の流れが見えた。ジーザスはユダを振り払いたくなかったし、ユダは振り払って欲しくなかった。ジーザスはユダのことを信頼していて、振り払っても彼を失うことはないと思っていたけれど、そうじゃなかった。ユダが出ていったとき、ジーザスは自分の運命を受け入れることを決めたように思えました。ユダを見送ったあとで一人背中を丸めうずくまるジーザスの姿が本当に哀れだった。
 舞台ってたまに理屈ではそこまですごいと説明できないけど、とんでもなく心が揺さぶられることがあります。今日のスーパースターはまさにそれ。なにが心にぴったりはまったのか分かりませんが、声を上げて泣きたい気持ちを抑えながら見ていました。金森さんのユダの声も迫力があったし、うまいけど上品でないそのしゃがれ声はユダにぴったり。ジーザスは地べたを這うように十字架を背負い歩いていく。芝さんはご存じの通りそんなにスタイルはよくありませんが、その姿は14世紀くらいの宗教画のように、人間的であり神々しくもあった。それは意地だったのかもしれない、無心だったのかもしれない。その姿を、群衆たちの動きを、司祭たちの視線を、その場にあるものすべてを感じながら、見入っていました。この瞬間、私は舞台じゃなくって今起こっている事件を見ていたのだと思います。そのくらい、のめり込みました。
 そして最後、今までの騒ぎが嘘のように静かになったゴルゴダの丘の上で息絶えたジーザスと十字架を見上げるマリアと弟子たちの姿、そして地面に描かれた十字架の影をそれこそ夢を見るような気持ちで見ていました。本当にいい舞台でした。

 ほかのキャストも今回はびっくりするほど「当たり」でした。特に大当たりで喜んでいるのが司祭の5人!みんな歌がうまくってあくどくて、聞いていて本当に幸せです。ユダを追いつめる存在感もあるし、ジーザスに対するものとして存在している。
 シモンは今回特に好きでした。歌も迫力あるし、若くて勢いがある。なにより体が柔らかいのか足がきれいに開いているのですが、これが程良くがに股に見えて(笑)、なんとも言い難い品のなさになっておりました。これがまたこの作品の泥臭い雰囲気を盛り上げてくれたと思うのですよ。
 ペテロも気に入っています。線が細く、弱い感じのする青年。この弱さがちゃんと声にも姿にも出てて良かった。
 楽しみにしていた下村ヘロデ。久しぶりに見ましたがやっぱりいいですね♪今回は若干衣装がよれよれしている感じでしたが、5分間のエンターテイメント、大変楽しませていただきました。スリットから覗く細い足、金のおぱんつ、自在に操る赤いマント、そして王者らしい威圧感とジーザスに対する嫌らしいまでの圧力。きらびやかな衣装に負けてないその豪奢な雰囲気と、重い空気を振り払いこの先のさらに重い展開のための体力を蓄えるための余裕を与えてくれる華やかさ。十分に堪能いたしました。

 キャストが全体的に良かったのもそうなんですが、群衆が久しぶりに良かった!これですよ、これ、ジーザスはこれがないと!四季のジーザスはジーザスよりも群衆が大事といっても過言ではないかもしれませんん。全力で愛し、全力で求め、そして全力で裏切り、憎む。この力のぶつかり、舞台で転げ回る人々、これがあってのジーザスです。前回見たときは「群衆じゃなくってこれじゃアンサンブル!」と切れたものですが、今回はちゃんと群衆でした。雑多で猥雑な感じ、薄汚れて顔のない感じ、そこにいるのは個人じゃなくて群衆という大きな存在の一部。その雰囲気が良く出てました。個人的にエルサレムで一番注目している群衆、鞭打ち男は今回もいい男で満足でした。あの跳び蹴りが魅力的なのです。

 上を求めればもっときりなく求められます。芝さんのジーザスはまだ作り込めるし、群衆ももっと力強くなれる(あとマリアどうにかして・・・)。それでも今日はこれだけの舞台を見せてもらえて本当に満足しています。近頃四季の舞台を見てもどうも上品に品よくおとなしくまとまっている感じがしましたが、歌も芝居も、いい意味ではみ出していて迫力がありました。四季特有のしゃべり方も全編歌ということで違和感なし。それどころかあのはっきりしたしゃべり方のおかげで一言一句ちゃんと聞き取れて、ストレスなく聞くことができました。
 これから続くジャポネスクとアンコールエルサレム。このままさらに上を目指し、駆け抜けていって欲しいです。

[1711] ゆず (2011/05/05(Thu) 18:45:13)



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