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白鳥の湖(Kバレエ) (2011/09/29)

ジークフリード:宮尾俊太郎
オデット/オディール:浅川紫織
ロットバルト:遅沢佑介
ゆうぽうとホール
★★★★

 久しぶりのKバレエの公演はとても楽しいものでした。言いたいことがないわけじゃないんですが不思議と満足して帰路につきました。
 Kバレエの白鳥は2幕仕立てですが、説明しづらいので以下の感想は全4幕として幕数を数えます。
 1幕、3幕の面白さは言うまでもないです。若干「貴族?」といった感じはしますが、みんなで騒いでいる感じはとても楽しいです。4幕も3幕で盛り上がった物語の流れをそのまま引き継いでいるので楽しい。問題は2幕・・・いや、これは本当に難しいですね、私がいまさら言うまでもありませんが。浅川さんの楚々とした中にも凛とした強さのあるオデットは美しいし、宮尾さんはちゃんと王子のたたずまいで優しさがありかっこいい、二人の間に愛情も見える、踊りもきれいに踊れてる、でも全然足りない。この幕の良さを、美しさを、まだまだ二人は引き出せていない気がしました。特に浅川さんは以前見た時オディールよりオデットの方がいいと思えました。でも今回は明らかにオディールの方が良かった。彼女の役者としての能力が高くなったからオディールは踊れるようになったけど、でもオデットはそこまで伸ばすことができなかった。この作品の奥の深さを、恐ろしさを、改めて感じてしまいました。
 ちょっとテンションが下がったところで2幕が終わったのですが、3幕はとても楽しいものでした。いかにもKバレエ、分りやすい(笑)。ジークフリートは「わあ、オデットだ!この間会った時と雰囲気が違うけど、おしゃれをするとこんなに変わるんだ、素敵だなあ」とでも思ってるかのよう。もう、頭を抱えたくなるほどのレベルの甘やかされて育ったお人好しのぼんぼん。目の前にいるのがオデットであると疑っていない。対するオディールは妖艶さはそこまで前面に出ていない。ただその微笑みは自分がどう微笑めば男がなびくかよく知っている頬笑み。優しそうに見えて、柔らかな面差しをしているように見えて、悪女のような内面をのぞかせています。そしてロットバルトはオディールの上に立つものにふさわしく人間を、愛を嗤っている。王者のような威厳をもち、たやすく罠に落ちるジークフリートを嘲っている。こう来ると、物語のテーマとして「最後に愛が愛を嗤った悪魔を打ち負かす」というのが明確になってきます。分かりやすい単純な物語と言ってしまえばそれまでなんですが、なぜか胸を打つものがありました。そもそもジークフリートはおばかではありますが憎める性格ではありません。不誠実ですらない、ただおばかなだけ。今までのほほんと生きてきた彼がようやく守りたいと思える相手に出会い、しかし彼が生まれて初めて受け取ったであろう敗北は彼女への裏切り。人間的に大きく成長するきっかけ・・・に見えなかったのがちょっと残念ではありますが、ロットバルトから母親を守ろうとした後、ただ彼女への愛のために駈け出して行く姿はとても良かったです。そしてオデットに謝る姿は、許しを求めるというよりただ彼女に謝りたいという風情でした。その姿が誠実に見えたから、オデットはジークフリートを突き放すことはなかったと思うのです。ロットバルトを倒した後のエピローグ的な部分が好き。死後の世界で二人は幸せになりました・・・と言ってしまうと身も蓋もないけど、そういう暗さを感じさせない。呪いが解けたことを素直に喜ぶオデットの朗らかさ、ただオデットの後ろ姿を追いかけてきたらここまでたどり着いてしまったという雰囲気のジークフリートの暢気さ。「二人は別の世界で幸せになりました」という雰囲気の、とても心温まるラストでした。
 浅川さんは確かにうまくなってると思います。以前オディールで見た時はその黒い衣装が全然似合ってなくて、彼女自身がその黒さを薄めてるようにさえ見えた。今日のオディールはどぎつい妖艶さはなくともオデットと全く違う存在であるという雰囲気があって良かった。でもオデットは、白い空気は似合ってるものの腕の固さが目に付いてしまう・・・本当に難しい役です。
 宮尾さんもよくはなっていました。ファーストソリストになったことに納得できるほどには。舞台の中心に立つことに慣れてきてるし、所作もずいぶん優雅になった。演技も丁寧で分かりやすいんですが、踊りなんとかならないかな・・・。サポートじゃなくてソロに不安があるKのダンサーは彼だけですよ・・・。1幕のソロがなくなったからまだ良かったものの、3幕のソロでずっこけた。軸がとれてない回転、どうにかして!
 だんだん貫禄が出てきて嬉しい遅沢さん。哲也ジークフリートを思うと若干不安ですが、浅川&宮尾コンビであれば余裕で3幕は場を牛耳ってる感じでした。悪役の色気というか風格というか、3幕ではただそこに佇むだけで、マントを翻すだけで感じられたのがうれしい。4幕でも存在感抜群だっただけに、2幕ではなぜか存在感が薄かったのが謎だしもったいない。3幕でオディールの衣装の羽が取れるというハプニングが発生したのですが、個人的にはもっとスマートに回収してくれるとありがたかった(贅沢を言ってみる)。
 ベンノは伊坂さん。3幕はちょっと息切れしたかなと思うところもあったのですが、1幕がとっても良かった!幕開きの場を盛り上げる役でもあると思うのですが、本当に楽しそうにはつらつと踊ってるから見ていて気分が盛り上がる!彼が最初に飛んで跳ねて楽しそうにしてくれたから、1幕は存分に楽しめたのだと思います。あと、ピルエットがいつもより1回多くなったかな?数えてないんで分からないのですが、そう感じるはつらつさでした。
 パドトロワ3人は若手ソリストの3人。若くてはつらつとしてて3人それぞれの個性と魅力を持っていてとっても楽しかった!秋元さんは上からつっているようなバッチュときれいに90度にアラベスクしたまま空中で静止してるようなジュッテアントゥルラッセ。やっぱり彼うまいです。春奈さんは本当にかわいらしくアームスもポアントも柔らかで見ていてとても心地いい。ちょっとまだ個性が確立してない気がするので、ソロの役がもっとつくようになったらおもしろいだろうと思っています。日向さんは相変わらず初夏のようなさわやかな闊達さで見ていて心地よかった。足さばきは以前より良くなったと思います。あとはアームス頑張って・・・。
 演出はまたちょこちょこ変わってました。1幕と家庭教師がらみと、ジークフリートのソロがなくなったあたりが大きな変化かな?あと、家庭教師がらみですが彼がロットバルトを一瞬目撃します。これはちょっと蛇足だと思いました。

 なんだかんだ言ってとても楽しく、このまま府中も行ってしまおうかと思ったのですが、当たり前ですがもうありませんでした(笑)。とりあえず日向さんのクララ目当てにくるみを1枚追加。やはりこのバレエ団、大好きです。
 指揮者が福田さんでした、ラッキー♪

[1757] ゆず (2011/09/29(Thu) 23:13:10)



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