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ボニー&クライド(2012/01/21)

青山劇場
★★★☆

ボニー: 濱田めぐみ
クライド: 田代万里生
バック(クライドの兄): 岡田浩暉
ブランチ(バックの妻): 白羽ゆり
テッド(ボニーの幼馴染の保安官): 中河内雅貴
ヘンリー(クライド父): 中山昇
シモンズ刑務所長: 芝崎健太
クロウソン看守: 戸室政勝
ジョンソン保安官代理: ヨウスケ・クロフォード
ファーガソン州知事: 徳垣友子
アンジェラ: 家塚敦子
クレア: 保科由里子
エレノア: 宇野まり絵
キャミー(クライド母): 明星真由美
ヘイマー特別捜査官: 岸祐二
牧師: つのだ☆ひろ
バド保安官代理: 戸井勝海
エマ(ボニー母): 池田有希子
シュミット保安官: 木場勝己

 濱田さんの舞台復帰公演、見てきました!
 しかし久しぶりに見てしまった、言っていることはわかるけど伝えたいことがわからない作品・・・。脚本レベルで話は分かるのです、でも役者を通してしまうとそれがいっさい伝わってこない。役者は歌もうまい、演技もうまい、でも伝わってこない。原因はキャスティングと演出と演技かなあ。
 最初っから不安だったのですが、不安的中して予想通り作品の完成度の下げていたのは明らかに田代さん。これはもう、彼の責任じゃなくてキャスティングした側の責任じゃないかなあ。育ちの良さがにじみ出てるんですよ。「こんなところから抜け出したい!」と言っていても、「ああ、やっぱりイギリスの名門校の寄宿舎は校則厳しいか・・・」と思ってしまうようなノーブルさ。これは彼の育ちのいい雰囲気を生かせなかったキャスティング側に問題があると言い切ってしまいたくなるくらい、雰囲気が合わなかった。それでも彼も役者、物語の後半で銃を振り回しているところは予想外にはまっていました。でも、やっぱり問題は育ちの良さ。テントで暮らしていたと言っても、大らかなお父さんとキャンピングカーで旅行に行った姿しか浮かばない。堅実に暮らしていたはずなのに、銀行に土地を奪われ、雨風すらろくにしのげない生活になった。きっと食べるものすら事欠く、着るものもろくにない惨めな生活だっただろう。まじめに生きてたってろくなことはない、どうせだれも助けてくれない、そんな焦燥感、権力に対する憎しみ。そして誰にも気にとめられず見捨てられるものの惨めさ。金があればなんでもできると思うから強盗をする、権力へのいらだちがあるから銀行を襲い警官を撃ち殺す、誰にも気にとめられない存在だったから新聞の一面を飾ることに喜びを感じる。こうだったんじゃないかなあと、せりふを聞きながら思っていました。でも残念ながらそれが伝わってこなかった。その原因はいろいろあると思いますが、一つおおきなものが彼の品の良さだと思うのです。生きていくことに対する焦燥感のようなものが感じられなくて、彼の行動原理がいまいち伝わってこなかったのが残念。彼のキャラクターが生きていたのって監獄で暴行を受けてたシーンくらいでしょうか。あんなかわいい顔した子がいたら、そりゃねえと思ってしまいました(苦笑)。歌はすごーくよかった。役者としても思ったよりタイプじゃない役をしっかり演じていた。だからこそもったいなくて仕方ないのです。
 ボニーの方は若さが足りないなあとキャスティングの時から思っていましたが、やっぱり足りなかった・・・。こちらも焦燥感が足りないのかなあ。穏やかに特に目立つこともなく静かに生きていく人生もよいものだということを全く理解できない幼さ。全体的にかわいらしくて年齢は感じさせなかったけど、どうしても田代さんを引っ張っていくのに役としてはついていく感じのちぐはぐさがありました。ボニーってまだ若いけどちょっと大人びた感じの女性なんじゃないかと思いました。だから、ある程度年齢を重ねてしまうと難しいのかもしれません。死んだように生きるくらいなら華やかに派手に生きて殺された方がまし、そこまでの焦燥感を感じなかった。見ているうちに、濱田さんと田代さん逆がいいんじゃないかとさえ思ってしまいました(笑)。名声を得るために犯罪に手を染める危険な女と彼女にあこがれるまじめだけが取り柄だけどそんな人生に希望を見いだせない青年。なんかそっちの方がしっくりくるのです(と舞台を見ている間に思ってしまった・・・)。
 一番よろしくなかったのは、「時代」が描けていなかったことかなと思います。史実では彼らは一種のヒーローであり、彼らをかくまう支持者もいた。抑圧された時代、だからこそ生まれたアンチヒーロー、彼らを支持する人々。そういうものがあってこそ、ボニーの「死んだように生きるよりまし」という言葉が生きるのではないでしょうか。。「死んだように生きる」という言葉の意味が私は分かるし、世の中にあふれてる。でもそれが舞台の上にない。ブランチは幸せそうだった、無理をしてるとも思わなかった、だから彼女が神に感謝して生きるのは当然だと思ってしまった。バックが自分で稼げない、愛する女に貧しい思いをさせている惨めさというのが伝わってこなかった。ほかの人たちも決して不幸には見えなかった。ふつうに楽しく生きているように思えた。だからボニーとクライドが犯罪者になったわけがわからなかった。二人が世の中に支持されていたというのが伝わらなかった。そして二人の味方が多く、一見華々しかったという側面がないと、実は二人ともそんなにおもしろおかしく生きていたわけではないといういわば「影」の部分が生きてこない。そういう側面が脚本からは伝わってくるし、二人の情報をWikipediaレベルで読んでも伝わってくる。でも舞台からは伝わってこない。いい作品なんだけどもったいないなあというもやもやしたものが残りました。
 曲はどちらかというとアメリカのスタンダードナンバーに近いかな。聴いたことがある曲も彼の今までの作品というよりはスタンダードジャズナンバーに近いし。アンサンブルの曲と神父の曲は迫力がないし聞き取れないしがっかり度が高かったのですが、二重唱はとっても耳が幸せ。男同士女同士の重唱ってなんてきれいなんでしょう・・・。CDがほしいんですが、BWも日本もこけた感じがするので難しいかな・・・。
 キャストがよく作品も好みなのになんかいまいち喉に骨が引っ掛かったような作品ですっきり説明できないなあ。演出もセットも悪いわけじゃない。ちょっと暗転というか出たり引っ込んだりが忙しいけど、照明はきれいだったし薄暗いセットも好みだった。ブランチは歌はうまいしかわいかった、テッドの誠実さもとてもよかった。ボニーの母親には本気で泣かされたし、保安官も良かった(こっちサイドの曲ももうちょっと欲しかった)。でもいろんな好材料がうまくかみ合ってなくてちぐはぐなままという印象でした。うーん、もったいない・・・。

[1818] ゆず (2012/01/22(Sun) 01:11:44)



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