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シンデレラ(2012/02/05) Kバレエカンパニー

オーチャードホール

シンデレ:神戸里奈
王子:浅田良和
仙女:浅川紫織
シンデレラの義姉妹:岩渕もも、湊まり恵
継母:ルーク・ヘイドン
★★★★☆

 シンデレラは誰もが夢見るおとぎ話と言うけれど、灰かぶり姫からいきなり王子の花嫁になった彼女は周りからあれこれ言われたりしてそんなに簡単に幸せになるわけがない・・・そういう意見を聞いたことがあります。それをふまえた上で、ハッピーエンドと言えるすてきな物語でした。

 まずはセットがものすごく豪華!シンデレラの家はなんともゆがんだ世界。リアリティはないのになぜか「普通の家」という感じがする。これは場面が進んで気づいたのですが、シンデレラの家はとても閉塞感がある。哲也がこだわった門の部分は確かに牢獄でなく門に見えるのに確かに窮屈な感じがする。だからこそ、門の向こう側がある種手の届かない外の世界、開かれた世界だと感じられる。そしてシンデレラが閉ざされた世界を飛び出して行った後はもう圧巻としか言いようがない!果てなく広がる星空、闇の中に浮かぶ真っ白い馬車、遠くに見える金色の門、それらを彩るコールドたちの輝き。あまりの美しさにぽかんと口を開けて見ほれたまま泣いていました。なんて美しい・・・。2幕のお城も大変に調和のとれた美しい世界でしたが、ここが本当に圧巻でした。
 衣装は善し悪し。シンデレラの普段の服は映像で見ていた以上にすてき〜。灰色なので着てみたいというあこがれは沸かないのに、灰色でみすぼらしく見えるのに美しい。これはちょっと不思議でした。逆に継母とお姉さんたちの衣装はもったいなかったかなあ。彩りはきれいなんですが、ちょっと色が重なりすぎてぼろ布を縫い合わせたみたいに見えてしまった。絵で見たらきれいかもしれないけど、ちょっときれいではなかったかなあ。王子の衣装もどこかミステリアスに見えてすてきでした。あのグリーンの色合いがまた浅田さんに合うのです〜。

 物語は全体的にコミカルに進みます。Kの作品としてはちょっと珍しい印象。継母とお姉さんがコメディ要員なのは周知の通り。継母たちを着飾る人もコメディ要員だし、2幕には道化も出てくる。シンデレラと王子、それから仙女たちと王子の友人たちがふつうのシリアス要員といった感じでした。
 神戸さんのシンデレラはものすごーくかわいかった!ファーストキャストが松岡さんのせいか、特に1幕は予想以上に大人びた感じ。「女の子」ではなくある程度成長した女性に思えました。だからこそあの灰色の衣装が確かにどこか妖艶に見える。心優しくて芯がしっかりしている、どこか夢見がちな女性。シンデレラというキャラクターを言葉で説明するならこんな感じになると思うのですが、まさにその通り。継母とお姉さんたちにいじめられ、これでもかといじめられ笑われ最後には形見のお母さんの写真(推定)を焼かれドレスをぼろぼろにされる始末。それでも嘆き悲しむけど恨みはしない。乞食の老女を家に招き入れたら継母たちになにをされるかわからないのに、暖炉の火にあて、わずかなパンさえ分け与える。このあたりが本当に演じてる感じでなく、彼女なら「私は暖かい家の中にいるから十分幸せ」と思って老女に親切にするだろうと思える説得力がありました。不幸だけど恨み言を言わない、惨めな状況でもショールを片手に夢を見るように踊ることができる。そんなかわいらしい女性だから、彼女が心から笑ってるとこちらまで幸せになってくるんです。1幕の終わりはセットや衣装がきれいだったというのもあるのですが、やはりなによりシンデレラが幸せそうだったからこちらも幸せな気分になったのだと思います。毎日毎日惨めに暮らしていたのに、いきなり全てが華やかに美しくなり、開かれた外の世界に飛び出していく。とにかく美しかった。
 2幕から登場の浅田王子は本当に「待ってたでしょう!」と言わんばかりに「どやっ」と出てくる。優しい雰囲気の浅田さんですらそれなんですから、哲也で同じことやったらしつこいと思う(笑)。線が細く甘い感じの浅田さんはやっぱり王子様にぴったり〜。甘やかされて育った感じがまさに王子様です。継母たちに押し負けてるのもいい感じ(笑)。そんな王子はシンデレラに一目で恋に落ちる。美しいからって言ってしまったらもともこもないけど、でも本当に一目惚れ。そのときのシンデレラは美しくはあったけど、それ以上に何というか暖かだった。お姉さんたちが押しが強く出がさつだからこそそれが際立ったのかもしれませんが、美しい世界に酔いしれるようにうっとりとたたずむシンデレラは彼女の本質が現れたように優しく暖かで美しかった。最初は王子のことを意識していなかったシンデレラだけど、優しく接してくれるから徐々に彼に惹かれていく。いつもは邪険にされたから、そんな風に優しく暖かく接してもらうことに戸惑いつつ、だんだん惹かれていく。この互いに惹かれていく過程がとっても暖かで優しくってうっとり見ほれていました。そして楽しい時間が過ぎ、12時が近づいていく。このとき周りの空気が一変する。あのかわいそうなシンデレラが幸せそうにしているからこちらも幸せな気分になったのに、追いつめられていく感じが痛々しくって見ていられなかった。そして魔法が解けてシンデレラは帰っていく。3幕までのシーンを見ながら思ったのが、この物語のテーマに「内と外」というものがあるのではないかということ。シンデレラは自分の家に、王子はお城に閉じこもっていた。もし二人が閉じこもったままなら二人は出会わなかった。シンデレラが家から出ていったから王子に出会い、そして王子が城を出ていったから彼女と再会できた。それを物語るように、王子の元を靴職人が、女たちが訪ねてきます。そうやって閉じこもったままだったらシンデレラと再会できなかった。
 元の家のシンデレラを見ていると、本当に全てが夢のように思えました。でも、バラやろうそくを並べてあれは夢だけど夢でなかったとばかり夢見心地のシンデレラがかわいい。
 ガラスの靴を偽造して自分ではいて見せた継母をとらえて首をはねよと式典長が命じたとき、シンデレラが出てきます。このタイミングが、王子と再会するためにしたことでなく継母を助けるためと思えたのがすばらしかった。だから、王子はそれがシンデレラだと思ったのだと思います。ガラスの靴を持っていたからでなく、自分をいじめてきた人さえ暖かな心を発揮できる彼女だから、気がついた。だからこのとき、王子とシンデレラが再会した瞬間がとってもすてきでした。シンデレラも最初は継母を助けるために必死で王子のことに気づいてなくて、王子が気付いてシンデレラもそれに気づく。「ああ、あなたを捜していたのです」暖かくそういうような王子とどこか戸惑うようなシンデレラ、二人の距離感がとても絶妙で大好きです。そして王子はシンデレラを見つけ、継母は許される。この流れがあるから最後に継母がシンデレラを敬うように振る舞うのも納得。ようやく互いを見つけだした二人の姿に、本当に幸せな気分になりました。
 この二人、間違いなく幸せに暮らせただろうなと思えたのはシンデレラが優しく暖かだったから、王子がシンデレラを本当に思っていたから。この先もシンデレラはきっといろいろ苦労するでしょう。けれどあれほどひどい仕打ちをしてきた継母を抱きしめられる人なら、この後の困難も乗り越えていけると思うのです。王子も甘やかされて育っていたけど、城を飛び出してシンデレラを見つけだす強さを身につけた。従者がぼろを纏うシンデレラに難色を示しても気にとめないくらい、彼女を思っている。そして彼は彼女の美しさはもちろん、その心の優しさを愛している。だからこの二人は幸せになるだろうと、とても幸せな気持ちで見守ることができました。
 二人とも踊りもとってもバランスがよかった!神戸さんは安定感が増してびっくりです。まだまだ伸びていく方なんだと思いました。浅田さんも絶好調!スマートな足さばきを含めてすてきな王子様ぶりでした。ああ、アルブレヒトが見たい・・・。

 ラストシーンで肩を並べて歩く二人を見て、本当に幸せな気分に。とても素敵な公演でした(他のキャストの方についてはソワレの感想と一緒に)。

[1825] ゆず (2012/02/06(Mon) 01:04:18)



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