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アイーダ(2012/04/15)

四季劇場(秋)

アイーダ:秋 夢子
アムネリス:大和貴恵
ラダメス:阿久津陽一郎
メレブ:大空卓鵬
ゾーザー:飯野おさみ
アモナスロ:川原洋一郎
ファラオ:石原義文

★★★☆

 昨年気づいたら大阪に3回遠征したアイーダ。交通費に比べるとチケット代なんてかわいいものだよねと、間違ったことを悟りつつ、久々の観劇となりました。
 まず、オーバーチュアを聞いたとたんに、分かってはいたけどげんなり。テープの平面な音。チケット代が違うことが分かっていても、この間のジキル&ハイドはよかったとしみじみ思い出してしまいました。今回気付いたのが、テープの音は耳で聞いてるけど、生オケは体で感じてるということ。私の聞いてる生オケというのは数名のバンドからバレエのフルオーケストラまでそれこそピンキリなのですが、やはりすべて音が体に染み渡ってくる感じがするんです。でも、テープだとそれが体に響いてこず、音が鳴ってるのを耳が拾ってるだけという感覚になります。そう考えると私が好きなシーン、例えばローブのダンスや「ケパイヤ」のあたりのシーンで舞台で足を鳴らしたり物を打ちならすというのはそれはそれで一つの「生音」なのだと感じました。声以外の音が響くから、なんだか体が揺すられる感じがするのです。それがとても心地よかった。

 ということを真っ先に書いてしまうくらいには物語に入り込めませんでした・・・。あーあ・・・。私これを見に大阪まではるばる行ったのかと首を傾げるほど。ひとつはまーたひどくなった開口しゃべり。四季がこれを推し進めるのは日本人の役者さんも外国人の役者さんも同じイントネーションでしゃべれるようにするためだとうがってしまうほど。やはり幕が開いたばかりということで、代表の思惑が強く働いてるのでしょうか・・・。せりふが生身の人間ぽくなくてつらかったです。
 もうひとつは、えーと、これはいいお芝居ってどういうものか論になってしまうのですが・・・。舞台を見ていてなにが楽しいかって、脚本レベルでは理解できなかったことが理解でき、脚本レベルでは好きでないキャラクターを大好きになることだと思うのです。それは役者さんのほんの些細な仕草や話し方でなんとなく感じることで、それが脚本に対する正解なのか、それ以前に本当に役者さんはそれを表現したかったのかさえ分かりません。ただ、ふと瞬間、なぜか「ああ、そういうことだったのか!」と腑に落ちることがあるのです。その答えはひとつではないので、何度同じ作品を見に行っても出演者によって、また受け取る側の体調と気分と置かれた状況によって異なるため、舞台というのは何度見ても新しい発見があり、おもしろいのだと思うのです。「アイーダ」という作品が難しいと思う理由のひとつに、主役であるアイーダが誰からも理解され、愛されるキャラクターではないことがあると思います。アムネリスは逆で、誰からも愛されるタイプだと思います。辛さを乗り越え、成長していく彼女の姿は涙を誘い、よほど間違えない限りこの作品を見た観客は彼女に共感すると思います。逆にアイーダはアムネリスのように優れた王者の資質を示せたわけでなく、やっぱりキャラクターとして弱い。けれど演じる役者さんによって彼女の気持ちが理解できて、彼女を愛することができる。話が長くなってしまいましたが、つまりアイーダを好きになれなかったから面白くなかったんだろうなということです。秋さん、技術的な破綻はいっさいありませんでした。演技が下手だったわけでもないんですが、どうしてもアイーダという女性が好きになることも嫌いになることもできず、物語がざるを水ですくうようにひっかかりなく流れていってしまいました。好きだという方もいらっしゃるので相性だと思います。そんなわけで主役に対してうまいと思えても魅力的と感じられなかったので、あれもこれもさらりと流れていってしまい、そういえば先週は仕事きつかったな・・・などということばかりが頭にこだましておりました。江畑アイーダのときも似たような感じだったので、私にとって好きになれるアイーダ役者さんの範囲ってとても狭いのかもしれません。
 なーにみにきたんだっけなーとただ下がりのテンションを上げてくれたのが「この父にしてこの子あり」。いやー、飯野さんと阿久津さんの組み合わせ(私にとって重要な順(笑))は大阪でさんざん見ましたが、やっぱり素敵です!四季の舞台って全体に模擬戦と言ったらいいのか、なんというか気持ちを本気でぶつけ合う感覚が薄かったのですが、ここは別!本気で、お互い遠慮なく気持ちをぶつけ合う姿がとっても爽快でした。ここまでくると開口も気にならない(笑)。とっても気分良く聞くことができました。阿久津さんについては大阪では気にならなかった開口が気になったのとやはりアイーダに共感できてなかったからラダメスの魅力も減っていたのが残念だったなと。しかし、相変わらず疑いを知らぬ実直バカぶりがとてもすてきです。飯野さんは今日もすてきなゾーザーでした・・・。ちょっと年かなと思うところもありましたが、それでも本当にすてき。見に行くのを迷っている方には、彼のゾーザーは見ておくべきと太鼓判を押します(笑)。なんというか、こういう年輩でしっかり歌と演技ができて、舞台を引き締めてくれる人ってミュージカル界の宝です。開口もあまり気にならず・・・どうしたらほかの若手もこんな風に自然にしゃべれるのかしら・・・。記憶よりずいぶんソフトな感じで、彼も父親なんだなと感じられるところもあったからこそ、彼の底に流れる非情さがはっきりして、とても好きなバランスでした。
 大和さんのアムネリスはアムネリスの中では異色でないかと思います。1幕もあまりきゃぴきゃぴしておらず、ある程度地に足がついてる感じがします。王女としての威厳と女の子らしさのバランスがあと一息かなと思うところもありましたが、私、彼女のアムネリス大好きなのです。高すぎないテンションとか、それでも美しい王女を演じてるところとか、あとそこにいるだけで華やかなとことか、意外とかわいらしいところとか、最初はどこか高慢で冷たい感じがするとか、そしてもちろん、最後の威厳と二人への優しい眼差し!相変わらず伸びやかな美しい声をしていて、高身長という珍しいハンディを持っていますが、是非これからも活躍してほしい方です。
 アモナスロは川原さんだから、押しの強さはあったけど若干近所のおっちゃんっぽかったです。ぼろを着ていてもにじみ出る威厳がなかったのは残念でしたが、牢屋の中の台詞に「父親だからこそ」という面があり、今までとは違った感覚で見られたのが面白かったです。アンサンブルさんは最近よく分かっておりませんが、脇坂さんはさすがかっこいい人がいるなと思ってみてみると脇坂さんだったということばかりでした。さすが素敵です。

 四季のミュージカルってこんなものよね、という感じでした。役者の実力も演出も破綻はしてないけど何か物足りない。でも、この作品の底力はそんなものではないと知ってるので、また機会を見つけて見に行きたいです。

[1846] ゆず (2012/04/15(Sun) 23:57:01)



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