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モーツァルト!ブダペスト版感想・その7
ええと、ここからの感想は「ノンストップ、アクセルは踏みますがブレーキは踏みません」という状態です。かなり明後日の方向に飛んでますので、ご注意を。ブダ版は本当に好きだけど、ここから先は、もう、言葉に出来ないくらい好きなのです・・・・。
BECSI UTCA
(Mummenschanz/Ratsellied:誰が誰?/謎解きゲーム)
天井から青い細長い布が何本も出てくる。それを持って舞台を駆け回るアンサンブルさんたち。最初、アマデだけが舞台の上を走り回っていて、途中で側転したりバック転してたりした。ヴォルフはその後ろを追っかける感じがしました。東宝版でいうと、「目に見えなくて、言葉にできなくて」あたりの「問いかけ」部分になると、問いかけが一つ一つ重なるたびに青い布が彼の体に絡んでいって、がんじがらめに彼を動けなくしていった。そんなさなか、レオポルトが棒のついた仮面を持って銀橋の上を渡っていった。「僕こそ音楽」のときと同じように彼がいるところだけ舞台がせりあがる。父親に気付いたヴォルフだけど、がんじがらめになってて動けないから手を伸ばすことしか出来ない。そこにいるのに、行こうと思っても駆けて行くことができない。「パパ!」という悲鳴のような声が、本当に哀れだった。ヴォルフが全く身動きが取れないまま、レオポルトは去っていく。そしてその後、ようやく彼をがんじがらめにしていた布が解かれる。呆然とするヴォルフの前に現れたのは男爵夫人。父親に気を取られるヴォルフの傍らを、彼のことが見えているのか見えていないのか分からないようなそぶりで通り過ぎていく。ヴォルフガングに対して何かをしろといったことを言っていた気がします。その声が、後姿が、驚くほど冷たかったのが印象的。なんだか幻のように見えました。彼はその姿を相変わらず呆然と見詰めていました。
曲の終わり、上手にアマデがいて、下手にヴォルフガングがいる。アマデが指揮を始めると、それにあわせてヴォルフガングも同じ動きをする。そうするとモーツァルトが作曲した(曲名分からない・・・)音楽が流れ始める。マチネ、さっきまで呆けていたヴォルフガングがどこか嬉しそうに見えたので、曲を作っている(音楽に触れている?)ときだけは楽しいのかと思いました。ソワレでは明らかにヴォルフガングは我を失っていた。まるでアマデに操られるかのように、彼は手を動かしていた。
MUVESZETI KABINET A SALZBURGI REZIDENCIAN(A gyozedelmes zeneszo)
(Wie kann es moeglich sein?:神よ何故許される)
音楽が流れる中、舞台中央がせり上がってくる。書物に囲まれたその部屋はコロレドの書斎かなんかだろうか。彼もヴォルフガング、アマデと同じように手を動かしていた。音楽を口ずさむ彼の目は明らかに明後日の方向を向いていて怖い。今まで散々彼については「スマート」と言い続けていましたが、その雰囲気がこのシーンでは完全に無くなってました。何かに取り付かれたかのように、楽譜を見つめていました。
この部分、一時ですがアマデ、ヴォルフガング、コロレドが同じ曲を指揮していました。アマデがヴォルフガングを支配し、同じようにコロレドも支配してるように見えて、本当に見事でした。ちなみにこのシーンのコロレドの衣装、なかなかシックな感じでかっこよくって素敵でした(どうでもいい)。
メスマー博士が脳を持ってあれこれ説明してるけどコロレドの耳には全く届いていない。脳のひとつを手にとってそれを見詰めるコロレド。脳の模型は微妙に気持ち悪いし、コロレドの目は明らかにあっちの世界に行っちゃってる。怖い・・・・。レオポルトを呼びにやった後、また苦しそうにお腹押えてたけど、やっぱり胃炎?それを押えるようにレオポルトの話を聞いていたけど心ここにあらず。ヴォルフガングのこと以外は聞く気はないということが態度に表れていました。体が悪くなってるのか、すごく辛そうだった。そして話の途中、もう耐え切れなくなったかのように「アルコ!」と叫ぶ、これが、本当にすごかった。「もう沢山だ」という叫び、体の痛みを感じさせるような、その叩きつけるような声にこちらまで震えた。「血を吐くような」という言葉がぴったり来るような感じ、正気の人間のすることじゃない。正気の人間だったら出せる声じゃない、そう感じられました。そして、全ての苦しみを、そして不条理を叩きつけるような歌。本当に怖くて、本当に、凄い。最後、コロレドは楽譜とろうそくを手に円柱の部屋の二階部分に駆け上がって行く。全てを消し去るためにその楽譜を火にくべようと震える手で楽譜を持つ。しかしどうしてもそれが出来ずにゆっくりと両手を広げ、そして最後に頭を後ろにそらせる。その姿が、すごくきれいだった。
正気と狂気の間にあったコロレド。完全に取りみだり焦燥したその姿は恐ろしかった。それは目をそらしたくなるようなものでは無く、目を離すことが出来ない、そんな恐ろしさだった。まさに圧巻。CDではあまり好きではなかったのですが、実際に聞いてみたらすごくよかった!
あ、最後に一度照明が暗くなって、また少し明るくなりました。何で?
[193] ゆず (2005/07/06(Wed) 01:06:04)
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