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UTA・IMA・SHOW(2013/09/26)
ヤマハホール
★★★★★☆
出演:林アキラ、岡幸二郎
ゲスト:光枝明彦、木村花代
演奏:柏木玲子(エレクトーン)、江尻憲和(ドラム)
少なくとも、昨年から今年にかけて見た日本語ミュージカルの中で文句なく一番おもしろかったです。正直、セットリストが迷走していたWMC2と比較しても遜色ないというか、こちらの方が上回るのではないかと思う瞬間があるほど。至福の時間を過ごすことができました。
全体を通して感じたのは、日本語でミュージカルを聞ける幸せ。確かに翻訳の問題がないわけではありませんが、それでも「物語」であるミュージカルにおいて、歌詞と意味と音が、一気に耳に入ってきて、すぐに理解できるのは快感でした。言葉を理解するために一音も漏らすまいと耳をそばだてることなく意味を理解できるってなんて幸せなんでしょう!「よいミュージカルは音と意味が一致しているから、翻訳をするとどうしても魅力が減る」というのが持論ですが、理屈ではそうだとわかっていても、日本語で聞くことのできるミュージカルの魅力にはあらがえないと思いました。また、そう思えるほど、みなさまちゃんと言葉が音をとらえていて、西洋の音階と相性の悪いはずの日本語がとてもきれいに響いているのです。二人だけれども躍動感のある演奏、コンサートとしてでなく「物語」として歌ってくれる出演者たち、音におぼれるような気分になるほどの声量、そしてそれでも消えることなく耳に届く歌詞。日本語ミュージカルに感じていた不満がすべて解消されている、極上のコンサートでした。
特に好きだった曲について。
・ありのまま(岡&木村)
岡さんでJ&Hが見たいと言い続けておりますが、意外な曲で見ることができました。これがめちゃくちゃよかった!もー、ほんとケルン公演以来かもしれません、ルックスから歌声まで魅力的なジキルとエマ!年齢や雰囲気のバランスがいいし、温かだし、そしてあふれでる声量!きまじめでどこか神経質そうなジキルは魅力的だし、温かで聡明そうなエマの澄んだソプラノは天使の声だし、もうこのまま本公演やってください・・・。
・我こそはドン・キホーテ(光枝&林)
一曲だけで泣ける。光枝さんのキホーテは細身ながらも心に強さを秘めていて、自分の信じる道をまっすぐ進んでいるように見えた。わき目もふらず、まっすぐに、自分の信じるものを。その純粋なまでのまっすぐさが、悲しいくらい美しかった。林さんのサンチョは本当にかわいい!実際の体型以上にころころしているように見えて、マスコットのよう。なにより、セルバンテスが大好きであることがよく分かる。隣にいられることがとても幸せそう。二人のぶれない歌声としっかりした役作りが本当にすばらしかった。
以上、これでチケット代元取ったと思った二曲でした。以下はすべて「チケット代を越えたサービス」です。・・・コストパフォーマンスよすぎです・・・。
・クレイジーフォーユー序曲
曲のみ。そう、CFYはこの躍動感あふれる、幸せな音楽があってこそです!手が20本あると岡さんが言っていたように、エレクトーンが本当にすばらしかった。・・・四季、テープ演奏でもいいけど、こういう弾むような楽しさをちゃんと客席に与えてほしい。
・蜘蛛女のキス(蜘蛛女さん←林アキラさん談)
いやすごかった。私はこの作品を知らないのでこの曲を本当の女として歌ったのか、女の姿をした男として歌ったのかは知りませんが、圧倒的でした。スパンコールきらめく衣装もすごかったが、なにより歌声とその蠱惑的で圧倒的な存在感!支配されるように魅せられる。高い声も低い声も自在に操り、わずかに露出した手をなまめかしく動かしてこちらの心を絡めとる。いや、ほんとすごかったです。・・・この指先を見ながら、クロロックやってくれないかなあと、相変わらずのことを思ったのでした。
・ナッシング(木村)
どちらかと言えばソプラノ担当の木村さんでしたが、地声の曲をどれだけ生き生き歌えるかを示した曲。ころころ変わる表情がかわいいし、とても生き生きしている。どこで歌っているか分からないほど台詞なのに、ちゃんと音楽として聞こえる。すごいなあと今は思うけど、見ているときはただただ楽しいだけだった。
・アンダー・ザ・シー(光枝)
光枝さん、着ぐるみを着て登場(笑)。大井町のかにには負けないそうです(笑)。正直言ってしまうと、こういう曲は若干年が見えて、彼の最盛期はすぎてしまったかなあと思うのですが、今年で76歳とのこと、とてもそうは見えません。活動の場が狭まってしまうのは仕方ないですが、是非とも歌い続けていただきたいです。後ろにいるにぎやかしの林アキラさんと花代さんが歌のお兄さんとお姉さんのようでかわいかったです。
・ゲッセマネ(岡)
聞いたことのない訳でした。ほとんど四季版と意味は同じなのですが、何カ所か違うところがありました。覚えてないのが悔しいところですが。岡さんのジーザスが見たいかというとそんなことはないのですが、迫力のある熱唱には気押されました。舞台とコンサートと比べるわけにはいかないけど、それでもこの迫力はなかなか拝めないと思ったのは事実。最後にスタンドマイクを背負って退場というパフォーマンスあり(笑)。
・ガス〜劇場猫(光枝&木村)
猫と人間の間という不思議な雰囲気の二人でした。光枝ガスの前足で体を掻くしぐさが不自然でないのはさすが、普通の服を着てるのに(笑)。雰囲気がとても温かく、物悲しげでありながらなんだか幸せを感じる曲でした。最後に木村さんが光枝さんにそっと寄り添い、その姿が月明かりに照らされたゴミ捨て場で寄り添う猫二匹に見えました。
・ペニース・ア・ムーンレス・スカイ(岡&木村)
私このキャストで本公演見たかった・・・(涙)。
ほんっとうによかった!日本語の歌詞がしっかり聞き取れて、聞きながらオペラ座の怪人台無しだなあと思いましたが、とにかく音が、音がすばらしい!!ミステリアスであり悩ましげなファントムの声がなんともいえない色気を含んでおり、天使のように澄んだクリスティーヌの声は晴れ渡った冬の空のようにどこまでも美しいように思えて、それでいて歌詞が歌詞なのでなんともいえない女の色香を含んでいる(どちらかというときまじめな感じのする声なので、それが歌詞のなまめかしさを中和していて、個人的にちょうどよかった)。歌詞はつっこみどころだらけでどうしようかと思いましたがとにかく二人の声の相性がすばらしく、また音楽が本当に素晴らしくて。これを聞くためだけにチケット買えます。LNDはストリーはつっこみどころだらけ、音楽を聴きにいくものと聞き及んでいましたが、納得しました。そして、こんな魅惑的な曲がいけるんなら行かずにはいられないと思いましたので、このキャストで公演お願いします・・・。
・私だけに(木村)
最初に岡さんが歌い始めて「いやよ」といったところまで来てお辞儀というパフォーマンスあり(笑)。いえ、でも、いつか歌って欲しいものです(とファンはみんな思ってるはず)。
「皇后」という言葉にとらわれているのか、ちょっと高慢な感じがしました。私はもっと子供っぽい、子供が「自我」に固執するような雰囲気の方が好きだなあと思いました。・・・歌声自身には文句がなかったのです、ええ・・・。いるんだ、この曲をこんなに美しく、ちゃんと言葉に心をこめて歌える女優さんが日本に、ちゃんといるんだ・・・。
・闇が広がる(岡&林)
消去法で行ったらこの組み合わせしかないよなあと思っていましたが、コンサートのみのびっくりキャストきました。ビジュアル的には全然違うのですが(ルドルフが)、声質としては全然ありでした。林アキラさん、こんなやわらかで若々しい声が出せるなんて!岡さんのトートについてはもう言うまでもありませんね、迫力のある、どちらかといえば威圧感のあるトートでした。トートでも見てみたいですが、やはりこの威圧感はクロロックで(以下略)。
・スターズ(岡)
私がレミゼに通っていた時期と微妙にかぶっているので、意外と聞いております。何度聞いても美しすぎるジャベールだと思いますが、さすがに年を重ねた分、美しさ以上に頑なさを感じ、ああ、これはこれでいいなあと思えるようになりました。というか、この迫力で歌われたら従うしかないわ、すごい・・・。
・サドンリー(林)
ご本人が訳詞をつけたとのこと。温かな雰囲気と声が歌詞にぴったりでした。歌う前にトークで「いい歌」と言っておりましたが、本当にいい歌ですね。歌詞がダイレクトに伝わってくる分、映画以上によさを感じました。印象的だったのは、最後にマイクを外した歌ったとき。生声で響く声が闇の中に吸い込まれて、ふっと消えた次の瞬間、拍手が起こりました。なんでしょう、このタイミング。とても気持ちのいいタイミングの拍手で、美しい歌声がなおさら引き立つように感じました。舞台って観客がいてこそだと感じました。
・ピープルズソング(全員)
もはや問答無用・・・。四人用にアレンジした曲でしたが、この四重唱が絶妙のバランスでとても聞き応えがありました。歌声の魅力ってこれだと思います、重なれば重なるほど、足し算ではない魅力がどんどん積み重なっていく。とても四重唱とは思えない、豪華なコンサートのラストを飾るにふさわしい、豪華な重唱でした。歌いはじめは岡さんでした。やっぱり、私にはこれが一番しっくりきます(苦笑)。この位置にいる岡さんの輝かしい姿、ご本人の実力、そして思い入れ、いろんなものを感じた圧倒的存在感でした。
正直、このレベルの「舞台」がコンスタントに見られたら、私ここまでドイツに通ってなかったと思います(苦笑)。いいコンサートでしたけど、やはりコンサートはコンサート、作品よりパワーが弱く、心に残りにくいです。欧州に引けを取らない役者さんたちはいる、ではなぜ欧州に引けを取らない舞台に巡り会えないのか。最後はいつもと同じ問いかけに戻ってきてしまいます。もったいないなあ。
全曲目は以下の通り。
第一部
コメディ・トゥナイト (ローマで起こった奇妙な出来事) 全員
ビギン・ザ・ビギン (ジュビリー) 林
君住む街角 (マイ・フェア・レディ) 岡
イフ・アイ・ラブ・ユー (回転木馬) 木村
魅せられて (パル・ジョーイ) 光枝
ありのままの (ジキル&ハイド) 岡・木村
我こそはドン・キホーテ (ラ・マンチャの男) 光枝・林
クレイジー・フォー・ユー 序曲
蜘蛛女のキス (蜘蛛女のキス) 岡
ナッシング (コーラスライン) 木村
チャリティ (ダディ・ロング・レッグス) 林
アンダー・ザ・シー (リトル・マーメイド) 光枝
シャーマン兄弟メドレー (メリー・ポピンズ/チキチキ・バンバン) 全員
第二部
ゲッセマネ (ジーザス・クライスト・スーパースター) 岡
ガス〜劇場猫 (キャッツ) 光枝・木村
エニー・ドリーム・ウィル・ドゥ (ジョゼフと不思議なテクニカラーのドリームコート) 林
ベニース・ア・ムーンレス・スカイ (ラブ・ネバー・ダイズ) 岡・木村
ザ・グレイテスト・スター・オブ・オール (サンセット大通り) 光枝
私だけに (エリザベート) 木村
闇が広がる (エリザベート) 岡・林
今、彼女に会った (ミス・サイゴン) 木村
アメリカン・ドリーム (ミス・サイゴン) 光枝
スターズ (レ・ミゼラブル) 岡
サドンリー (レ・ミゼラブル) 林
ピープルズ・ソング (レ・ミゼラブル) 全員
ザ・パーティーズ・オーバー (ベルズ・アー・リンギング) 全員
[2291] ゆず (2013/09/29(Sun) 22:45:49)
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