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Kバレエ ロミオとジュリエット(2014/06/22)

★★★★
 先週見たキャストの公演、また見てまいりました。マキューシオとティボルトのための公演だと先週は思ったのですが、今週もさらにそれを感じました。マキューシオとティボルトのバランスがとてもよく、お互いが自身の実力以上のものを出せていると感じた公演でした。2回見ることができてよかったです。…まあ、マキューシオとティボルトが飛びぬけていいと、ティボルトが死んだ瞬間の燃えつき感が半端ないというところはあるのですが…。
 福田さんのマキューシオ、なにより印象的だったのが登場した瞬間から「マキューシオ」だったこと。マキューシオはムードメーカー、幕開きから雰囲気を盛り上げてくれていて安心しました。一年前はユースの公演に向けて王子になろうとしていた人とは思えないほど、とても味のあるキャラクターになっていました。女好きのお調子者、気が付くとどこでも女の子に声をかけているのですが、それがなんとなくほほえましく見れてしまう不思議なバランス。「陽気なお調子者」というのは福田さんのマキューシオの間違いのない個性でしたが、自分がそうやってその場にいることで回りの空気を和ませていることに気付いているように思えました。ロミオのこともベンヴォーリオのことも仲間として大好きで、ロミオの恋煩いを心配したり、ベンヴォーリオをなんとなく引っ張って行ってたり、なんとなく突っ込みに容赦がなかったり。ひょうひょうとした中に、押しつけがましくない程度の兄貴風を吹かせていたのかなあと思います。踊りもずいぶん軽やかになって、そこもマキューシオらしくなっていました。舞踏会のソロも軽やかで楽しかったです。
 杉野さんのティボルトも相変わらず堅調。自分の中にちゃんと正義があって、キャピュレット家の男子としての理想像があって、それに従って生きているように見えました。でもそういう正義や理想もまだ青い…というのかな、キャピュレット卿になにか言われたら揺らいで分からなくなると言ったらいいのか…確たる理想はあるけど、まだそれに芯が通ってない若いティボルトでした。もちろん全体的に若い方なので、「自分」が確立している遅沢ティボルトと違うけれどどちらもありと思えました(キャピュレット卿と真っ向から対立できるのが遅沢ティボルトで、どこかにキャピュレット卿に認められたいと思っているのが杉野ティボルかなあ)。踊りについては1幕はやはり判断できるほど踊ってないと思えましたが、2幕は鋭さが増したと思えました。惜しかったのがロザラインとの関係。明らかにロザラインに好意を持っているけれど、立場上自分を律しているように見えるティボルトでした。ただ、ロザラインがなにを考えているかわからず、また、ティボルトがロザライン以上に相手に好意を示していることに違和感を感じました。…これはロザラインからの感情が薄いからティボルトから感情を出したのかなあと勘ぐってしまうような不思議なバランスでした。

 役が自分の中で完成しているのにうまく周りとかみ合わなかった2人がその実力を本当の意味で発揮するのは二人が対峙する時でした。そもそも1幕の時点で、二人の剣の合わせる音の激しさというか力強さに驚かされました。ティボルトにはティボルトの正義があったと思います。キャピュレット家の人間としてその正義に従い、舞踏会に侵入した3人への決着をその場でつけようとした。けれどそのやり方をキャピュレット卿に頭から否定された。そこから深酒につながり、自分の手で決着をつけようとした。マキューシオはいつでも女の子にちょっかい出して楽しんでいるお調子者です。そんなひょうひょうとした彼が、勢いのあるティボルトの剣を軽々とかわしていく。その姿は爽快ですらありました。帽子を取ったとき、ひょうひょうとした中に気持ちを「本気」に切り替えたように見えました。自分の強さを疑ってなかったティボルトにとって、明らかにおちょくってる態度なのに確実に強いマキューシオの事は本当に腹立たしかったと思います。負けることなんて考えもしなかったティボルトは、「こけにされた」レベルで翻弄されていました。プライドもずたずたで、だからマキューシオに剣を突き刺した時、そこにはっきりとした殺意を感じました(もしかしたらティボルトが剣を落とした後、マキューシオが振り上げた剣に恐れを感じたとき、ティボルトは自分自身を許せず強行に及んだのかもしれません)。ティボルトはマキューシオを殺すつもりでしたし、そのあと、自分の心臓を指してさあ殺してみろとばかりに徴発さえしていました。この時、二人ともマキューシオの死は確実な未来として予感していたと思います。上の繰り返しになりますが、福田マキューシオは実際にお調子者の女好きで、そんな自分がムードメーカーであることを知っている人物でしたが、最期までの瞬間はそんな「お調子者の自分」を演じているように見えました。もう助からないことを分かったうえで、街のみんなから愛されていたムードメーカーである女好きでお調子者のマキューシオを演じて、誰かに心配をかけたり悲しませたりしないようにしながら、最期までマキューシオのまま生きて死んでいったように見えました。ティボルトはそんなことも構わず、自分の正義を全うしたような感じでした。マキューシオの血を払うような姿が冷酷で不気味ですらありました。マキューシオを殺すつもりで殺したティボルトは、ロミオに挑まれてロミオさえも殺すつもりだったでしょう。ロミオとの決闘では本来はティボルトのほうが強いけれど、ロミオの気迫に飲まれているような感じと、最後にはティボルトの疲労が勝敗を分けたように思えました。最期の瞬間まで闘争心を失わないティボルトで、自分の体から剣を引き抜いたのはそれでまたロミオに挑みかかるためのようにも見えました。
 とにかくこの2人の決闘のシーンが本当に濃かった!お互いに自分の個性が確立していて、それを全力でぶつけ合っているのが分かりました。特に福田さんは最初はただの調子のいい奴という雰囲気から、それだけが魅力ではないマキューシオの魅力を余さず見せてくれたと思います。次の公演、福田さんのホセは今でも全く予想がつきませんが、それでも彼には似合わないと思っていたマキューシオがこんなにぴったりだったので、なにか面白いものを見せてくれるのではないかと思っています。杉野さんについてはもうなにも言うことがありません。次の舞台でもきっと面白いものを見せてくれるであろうという期待感しかありません。次はどんな役を演じるのか、とても楽しみです。

 いつも目が足りなくて困るマンドリンは、今日も目が足りませんでした。今回は来週のモンタギュー3人組ことロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオがそろってるんですよね。3人ともなんとなく役の人柄がにじみ出ている気がしました。マンドリンは結構好き勝手できるのか、それぞれの雰囲気が全く違っておもしろいです。池本さんはどこかエレガントさが漂い、兼城さんはなんとなく女好きな雰囲気、益子さんは人なつっこい感じ。来週の公演は本当にふたを開けてみてどうなるか楽しみなのか不安なのか分かりませんが、とりあえずこの楽しい雰囲気が幕開きの時に伝わってくれば大丈夫ではないかなあと考えておりました。兼城さんの踊りは好きなので街の人々から見ていますが、マンドリンは始終歌っていて本当に楽しそう!あまりにも自然なのでこれが彼の個性かと思ったら街の人々はそこまで始終にこにこしているわけではありませんでした(当たり前)。相変わらずの重さを感じさせない跳躍で、大好きです。
 荒井さんのジュリエットは相変わらず堅調なのは分かります、とても愛らしくって軽やかだけど、なにをやっても安定している。ピルエットの美しさときたら言葉もありません。でもどうしても宮尾ロミオとのやり取りにしっくりくることがなく、ああ、きれいだなあと思って流れて行ってしまいました。
 栗山さんのベンヴォーリオと浅野さんのロザラインは悪くなかったのですが、福田さんと杉野さんが引き離した印象。この2人がもうちょっと違ったら作品全体の感想も違ったような気はします。

 というわけで若干ちぐはぐがある感じの公演だったのですが、とにかくマキューシオとティボルトがよかったので妙に印象深い公演となりました。

[2395] ゆず (2014/06/26(Thu) 01:14:33)



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