前にジャポネスクを見てからずいぶん時間がたちました。 その間にいろんな舞台を見ました。 好きなものも感じ方もあれこれ変わりました。 でも、やっぱりこの作品が一番好き! はっきりとそう思えました。 難は色々あったけど(苦笑)、好きだ!!
 というわけで、まず、その「難」。

・大八車を組み替えるときの音が意外とうるさい。
・喜納さんの声が作品の雰囲気に微妙に合わなかった。
・ユダとシモンがいなかった。
・ソウルガールの衣装が変わってた。
 こんなところかな? ひとつ致命傷が混じってる気がするのは気にしない方向で。

 良かった点。
・やっぱり柳瀬さんのジーザスはエルサレムよりジャポネスク!!
・井上マリアかわいーーー!!
・高井カヤパ、似合いすぎ。
・大塚ヘロデ、大穴、だけどぶらぼー!
・やっぱりこの真っ白い別世界の演出、好きだーーーー!!!

 今日の感想はこんな感じでしょうか。 もしこれから見る方で、今までジャポネスクを見たことがない方がいましたらアドバイスをひとつ。 エルサレムとジャポネスクは全く違う作品です。 そう思って見たほうがきっと楽しめます。
 そんなわけで、以下、詳しい感想です。 演出の細かなところまで突っ込みを入れてるので、見てない方にはあまりお勧めできません。

 客席に入って真っ先に目に入ったのは真っ白い世界。 なんというか「あ、帰ってきた」という気分でした。 ある意味、ジャポネスクは私の原点です。 白子さんたちが出てきて、音楽が始まり、大八車がゆっくりと出てくる。 って、あれ、もう少しここって滑らかに動かなかった? このあたりはもう、以前に見たものに対する思い入れが強すぎたため先入観があるのかもしれませんが・・・。 とにかく、このあたりは私がはじめてジーザスを見たとき、一目ぼれしてすっかりその世界に引き込まれた部分です。

 ジャポネスクの好きなところに、この大八車セットの使い方の面白さがあります。 これを動かすだけで、そこは荒野になったり、司祭様たちの場所になったりヘロデさん宅になったり。 その場面転換の早さと美しさが、なんともいえず好き。 オーバーチュアの急傾斜から群集が降りてくるところから、もう、大好き。 ちょっとその傾斜に慣れていないようなところはありましたが、まあ、気にしない。 音と共に顔が出てきて人が出てくるというのは、なんだかそれだけで感動的。 そして駆け上がろうとする群集を突き落とすような司祭様たち。 このシーンはあったかどうか記憶が定かでなかったので、それを確認できて一安心でした。
 このあとも細かく行きたいのですが、何せ時間がないので、大八車使いで好きだったところ。 「ジーザスは死すべし」で微妙に建物っぽくなってるところ。 その間を軽々と行き来する司祭様たちが素敵、そのあとやってくる群衆も素敵。 「裏切り」、カヤパ、アンナス、そして司祭様たち、この登場の仕方が様式美というかなんというか・・・ 鳥肌が立つほどきれいでした。 「ヘロデ王の歌」から「やりなおすことはできないのですか」、この移り変わりの速さと、それぞれの世界を 白い板で作り上げてしまうセンスがたまらなく好き。 「ユダの自殺」、坂を滑り落ちていくところがいいなと。 今まで気付かなかったのですが、「地面に異変を感じて叫ぶ」「下方向に退場」というのは ジャポネスク、エルサレム共通なのね。 「スーパースター」、ジーザスの乗った大八車が、ジーザスと兵士たちを乗せたまま動いていくところが本当にきれい。 そのあとのゴルゴダの丘までの道もまた良い。 そんなわけで、大八車の動きを見るだけでも満たされるのでした。 こういう「演劇ならではの嘘」をうまくついてくれる作品って、大好き。 好きなところは沢山ありますが、この大八車というポイントは、個人的に外すことの出来ないものです。

 ところで、エルサレムのときに散々うるさく言っていた群集のこと、今回はそこまでひどいとは思いませんでした。 うまくなったというよりは・・・うーん、今回のキャストにジャポネスクがあっていたというか・・・・。 エルサレムで何が腹が立ったかって「きれいに動こうとする」人が結構目に付いたことがあります。 バレエのように、一瞬一瞬が写真になるような「きれい」な姿になるように、意識して動いてる。 エルサレム版で求められるものって、そんな「優美」なものでは、少なくともない。 でも、ジャポネスクではそんな動きが、プラスになるわけではないけど、マイナスにはならない。 あと、エルサレムでは思いがそのまま「動き」になったような部分がほとんどなのに対して、 ジャポネスクでは「振り」と言い切れる部分がある。 エルサレムのほうが、演技としてごまかしがきかないのかもしれないと、見ていて思いました。 そんなわけで、群集さんたち、うまくなったとは言いませんが、エルサレムのときより全然面白かったです。 まだ、こちらの精神力を消耗させるような恐ろしさがないので、そのあたりの精進をお願いします。 エルサレムのときは文句を言うのにも疲れたけど、今回は素直に「この先楽しみ」といえる。

 ところで、ソング&ダンス3で結構気に入って、エルサレムで来るかと思ってたのに来なくて、ようやく見れた井上マリア。 最初に見たときはメイクが似合ってないかと思いましたが・・・見ているうちにそれは勘違いだと分かりました。 かわいい、とにかく、何はなくともかわいい。 存在がかわいい、仕草がかわいい、ジーザスへの思いが表れたその姿が本当にかわいい。 歌はまだちょっと安定感が足りないかと思うところはありましたが、かわいいから、いい! ジーザスの妹のようなマリアでした。 姉のような、母親のようなマリアばかり見てきたので、これはとても新鮮。 「今宵安らかに」での「愛してる」というより「好き」という感じのいじらしさ。 子供っぽいわけではないけど、でも、どこか幼く、頼りない。 でも、「私はジーザスがわからない」では「愛してる」と歌うに相応しくなっている。 そんな変化が、うまくいえないけど、なんだか心に残りました。 ちょっと予想外の部分があって、驚いたというところがあってまだ受け止めきれていないのですが、 こういうマリアも好きです。 なんか久しぶりにジーザスを愛しているマリア、マリアを愛してるジーザスを堪能した気がしました。 幸せ♪

 そして今回の大本命、柳瀬ジーザス。 始めてエルサレム版を見たときから「柳瀬さんは絶対ジャポネスクのほうが良い」と思い続け、 やっぱり今日、柳瀬さんはジャポネスクが良いと改めて思いました。 とにかくきれい。 それがどうしたと言われるかもしれないけど、きれいだからなんとなく目がそちらに行ってしまう。 異質な光を放ってる、なんとも静かな美しさ。 いつまでもいつまでも見ていたくなってしまう。 それが顕著だったのは「最後の晩餐」。 ユダが出て行ったあと、一人で上手側に座ってるジーザス。 そのときの使徒たちの配置がまたなかなかきれいでそちらを見ていたかったのだけど、それができなかった。 一人残され、立つことさえ出来ないでいるジーザスから、動くことのない彼から、どうしても目を離せなかった。 痛々しいまでの孤独とでもいうのでしょうか。 自然と目がひきつけられてしまう存在感がありました。 その他、とにかく思わず目が行ってしまうジーザスでした。 もう、本当に、いつでも、いつまででも見ていたい! 歌については少しエルサレムを引きずっているのでしょうか、ちょっと不安定なところがありました。 でも、それを差っぴいても十分魅力的なジーザスでした。 難を言うならあの鬘、もう少しサラサラだと個人的にうれしいです(笑)。 今回は見れなかったけど、次回は「ホサナ」での冷めたような表情、「ジーザスの神殿」で 無表情に入ってくるところなども見たい。 このあたりが、また、白塗りメイクとよく似合ってて、きれいなんだ♪

 で・・・・問題はユダなんだ。 吉原さん、歌は思ったより良かったです。 でも、なあ・・・・。 高さんのシモンと同じなんですが・・・なんでこの作品にいなくてはならないかがよく分からない・・・・。 シモンならまあまだ救いはあるんですが、ユダでそれをやられると・・・致命傷・・・・。 そんなわけで、話の軸がずれてました。
 マリアはジーザスを愛していました。
 ジーザスはマリアを愛していました。
 また、ジーザスはマリアとは全く違った意味でユダのことも愛していました。
 でも、ユダはジーザスのことを愛していませんでした。
 今日のジーザスをストーリー的にまとめるとこんな感じです。 ありえないって。 「最後の晩餐」でユダが裏切るところなんて「ジーザスはこんなにあんたのことを必要としてるのに、何で出てくんだよ!」 とユダに言いたくなった。 柳瀬さんのジーザスは相変わらず研ぎ澄まされたような痛々しさがあるので、そのつらさだけが胸に刺さってきました。 本当に、何で裏切ったかよく分からないユダだった・・・・。 「自殺」で「私はあいつが死んでも生きていられるか」といわれても全くぴんと来ない。 ユダってやっぱりジーザスへの愛が役としての核であり、また、JCSという作品の核でもあると思う。 JCSって本当は「ジーザスとユダの物語」というところが強いと思うのですが、 今日は明らかに「ジーザスの物語」でした。 歌と姿は良いので、お願いですからジーザスを愛してください。 裏切りのときもキスしようよー。

 そのほかの方々。
 高井さんのカヤパ。 もはや「良い」ではなく「貫禄」の粋に達しています。 はげ頭、隈取メイク、奇天烈な衣装、全てが似合いすぎるほど似合ってます。 そんな姿で、徹底的に悪人をやってくれるから、怖い、怖いところが素晴らしい。 エルサレムでも良いと思いましたが、ジャポネスクは天井ぶっちぎりで素晴らしいです。 本当に、いつまでも見ていたくなる、聞いていたくなるカヤパ様だ。
 そして忘れてはならない大塚ヘロデ。 ぶらぼーー(省略)ーーー!!(省略)!!! 今日、行きがけに携帯でキャストチェックをして叫びそうになりました。 そして見てみて、期待以上のものを見せていただきました。 まだちょっと硬いところがありましたが、とにかく面白い。 頭は青い爆発ヘア、服装も着物じゃないということで、下村ヘロデとは全く別物。 下村さんがスルースが終わったら出てくるからそれまでの限定ということにするのはもったいないかも。 いや、下村ヘロデは見たいけど(ファンの戯言)。 作品の中で唯一明るいシーンで、見事はじけてくれていました。 エセ歌舞伎といった風情でした。 あの短い時間、「次は何をしてくれるんだろう?」とわくわくしっぱなしでした。 最後のほうで笑い声があがったのも納得。 変でおかしくて、何より楽しい。 のりが良いし、声も本当に伸びやか。 初日でこれなんだから、先々本当に楽しみです。 ちなみに声はスペイン版のヘロデに似ている気がします(役に立たない参考)。 難点を挙げるとしたら、ヘロデのときはシモンをやってくれないことくらいでしょうか(笑)。 やろうよー、やろうと思えばできるよー。
 ショックだったのはソウルガールの衣装が変わっていたこと。 なんだあのエセ尼さんはーー!!?? ゴンドラも地味になっていたし・・・寂しい・・・・。 あのエセ着物、白とオレンジのあの衣装がめちゃくちゃ好きだったので、 かなり寂しい思いをいたしました。
 そうそう、ジャポネスクの演出で好きな部分、「スーパースター」でユダが茨の冠を投げるというところ。 ようやくじっくり見れて感慨深いです。 これがあるからジャポネスクが好きと言いたくなるくらい、好きな部分。 前回の公演のときは、受け取った兵士とユダが共犯者のように笑っていたのがすごく好きだった。 今回はどうなのか・・・楽しみ。(場所が悪くってよく見えなかった)

 オーバーチュアの謎のダンス、「狂信者シモン」での「とりあえず何でも良いから派手なもの叩いとけ」というような音楽、 十字架の下に竹棒を持ってきて磔を眺めている群集、最後にマリアしか出て来ないラスト。 隈取りメイクの兵士たちは、冷たく、恐ろしく、とても残酷に見えた。 そこにある何もかもが好きだと、この作品をはじめてみたときに思った。 そして今日も、やっぱり何もかも好きだと思った。 確かに奇抜だけど、奇抜だけではない、何か心をえぐるものがあった。

 JCSという作品はとてもくせのある作品です。 ジャポネスクの演出も、嫌いな人は本当に嫌いだと思います。 そんな人たちすら引き込むような力のある出来栄えだったかというと、そこまですごくはなかったともいます。 でも、面白かった。 やっぱり好きだし、面白い作品だった。 色々言ったけど、おなかいっぱい、満足です。 久しぶりに「明日この作品を見れない不幸」を感じました。 仕事が暇だったら行くのに!
 やっぱりこの作品が好きだと実感できた、とても幸せな休日でした。 (2004/08/08)


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