自分の中でとても興味深い舞台だったので、備忘録まで。 幕が開いた瞬間から分かるんですが、普段私が見てるミュージカルと文法が違う(笑)。予習はこちらのサイトでしたのですが、「ジュークボックスミュージカル」に近いという一言が一番観劇の助けになりました。と言っても、私が見て来たどのジュークボックスミュージカルよりストーリーがありません。一応あらすじもあるのですが、なにせストーリーが進む歌がないのにほぼ全編歌という構成。ロックコンサートに物語の流れをつけたという方が正しいかもしれません。時代は現代でフラッシュ照明や映像を多用した演出、どこか無機質なセット、小人数構成のバンドと電子音、ダンサーとシンガーの垣根のない構成。ストーリーのふたを開けてみるとドラッグだセックスだ、アメリカになじみのない人間が「いかにもアメリカ」と思ってしまう代物。普段見ているものと全く違って、でもとても楽しかった!
「ミュージカルになにを求めているか」という疑問がずっと胸のうちにくすぶっていたのですが、とても意外な形で答えが得られた気がします。私はまず最初に、舞台にいる全員からプロフェッショナルとしてのエネルギーをもらいたいんだと思います。もちろんストーリーやテーマが好みであることも大切ですが、まず、プロの技量に圧倒されたいというのが一番だとわかりました。BWミュージカルファンに言わせたら今回の舞台のレベルが本土と比べてどうかはわかりませんが、個人的には全員(ここ重要)ちゃんと歌を聞かせてくれたので十分!登場人物たちは私とは全く違う世界の人間です。私には彼らの持っている不満も情熱もありません。行きどころがなくて持て余してるエネルギーも。求めているものも不満も全く違う。でもそんな彼らを突き放して見ることができなかったのは「音楽」があったからでした。さすがに人気バンドの曲ということでどれもいい曲で、初めて聞くのに耳にすっと入ってくる。ストーリーから物語の世界に入れなくても、音楽から物語の世界に入ることができる、そんなことを感じていました。ストーリーはお芝居だったら最初の5分で投げ出しそうなのに、1曲1曲が曲もダンスも演出も面白くて、次は誰がどんな歌を歌ってどんな演出なんだろうという部分で楽しみが続いていく。そして、曲が変わると雰囲気ががらりと変わって飽きさせない。ああ、これだからミュージカルって面白い!
でもこれ、本音を言ってしまうと、アメリカ本土で見たいです。全編がロックミュージックなんで、ノリの悪い私ですらじっと客席に座って見ているのが苦痛なほどリズミカルな音楽でした。カーテンコールも出演者全員がギター持って歌っているのだから、もっと客席と舞台の距離感が縮まってきたらもっと楽しいと思います。初日ということでまだキャストも観客も相手の出方を探っているという感じがしました。アメリカだったら観客がもっと素直に反応して楽しいんだろうなとか、どこが笑どころか微妙に分からなくってそれがもったいとか思ってしまいました。キャストと観客のノリが一致したらもっと楽しいというタイプの舞台だと思います。
そんなわけで、異文化交流並の畑違いの舞台だったのですが、とても楽しかったです。「アメリカンイディオット」と「21Guns」(これ、びっくりするほど好みの曲だった)はもう一回聞きたいです。あと、セント・ジミー登場シーン全般・・・そりゃまあトニー・ヴィンセント(彼がやってたらしいです、見たすぎるわ・・・)にはかなわないでしょうが、ツアー版の方もなかなかトリッキーで魅力的でした。雑然とした世界にあってもさらに浮かび上がる特異性って、すごいです。さえない若者3人のさえない人生がだらだら続くだけのストーリーだったので、とてもいい刺激でした。なんか強烈なインパクトが残っています。 ちなみに、もちろん全編アメリカ英語だったので、聞き取りはしょっぱなかなら放棄しました(イギリス英語やオーストラリア英語はなんとかなるけど、アメリカ英語はほんとダメ・・・)。ただ、字幕を読んでいてもパフォーマンスを見逃すことがないスピードだったので、もちろん字幕しか読んでいないので細かい意味は落しているでしょうが、十分歌詞の意味を追いながら舞台を楽しむことができました。
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