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  Kバレエカンパニー「海賊」(2012/05/26 ソワレ)

メドーラ/浅川紫織
コンラッド/遅沢佑介
アリ/橋本直樹
グルナーラ/佐藤圭
ランケデム/宮尾俊太郎
ビルバント/伊坂文月
パシャ/ニコライ・ヴィユウジャーニン

★★★★☆
オーチャードホール

 哲也のいない公演、ソワレです。キャストから言ってこちらはアンダーキャストというよりあくまで団員のみでやるとしたらベストに近い状態でしょう。男性プリンシパルが哲也とキャシディさんしかいないのですから、実際女性プリンシパルもいない方がバランスが良いと思います。
 マチネも楽しかったのですが、やっぱりソワレの方が面白かったです。序曲で紗幕の向こうに海賊たちが見える時からレベルの違いを感じました。マチネはなんとなくたらたら動いているだけに見えたのに、ソワレは重みのあるスローモーションに見えて、この先の物語への期待が高まりました。
 全体的にバランスがいい、しかし金曜日の公演に比べて一回り小さい感じのする公演でした。面白かったけど、もう一息、でも、十分楽しかったです。金曜日の公演に比べてよかったと感じたのがやはり遅沢さんと橋本さんの若さ。キャシディさんと哲也のようなカリスマ的な存在感はありませんが、体力がある分、踊りに余裕があって見ていて気持ち良かったです。お芝居についても十分楽しめました。遅沢さんは演技に定評がありますが、やはり彼のコンラッドは若干の育ちの良さを感じさせつつも粗野で悪人っぽいし、そんな彼がメドーラの暖かさに惹かれて変わっていくというがとても分かりやすかった。浅川さんはどちらかというとお姉さんタイプですが、ちゃんと妹でかわいかったです。パシャのハーレムのシーンなどではちょっと気の強さを見せつつ、でもかわいらしさも十分にありました。コンラッドに徐々に惹かれていくところもよかった(最初の出会いのシーンで、音楽のそれこそ最後の音符で二人の目線が合うのがとても素敵でした)。橋本アリはとっても楽しそうに、余裕しゃくしゃくで踊っておりました。幕明きの船のシーンでの笑い方からぐっと心を捕まれました。哲也のような小生意気さはありませんが、明らかに少年の心を持った彼のアリは作品にぴったりでした。実はコンラッドはいいとこの生まれだけど窮屈な生活を嫌って海賊家業を始めた、アリは乳兄弟で臣下として片腕としてずっと隣にいてくれた・・・などと話が勝手に頭の中で広がっていきました。西野さんが本当に三歩くらいコンラッドの後ろにいるのに対して、橋本さんは影となってすぐ隣にいる感じでした。コンラッドにとってアリが配下として自分のすぐそばにいるのが当たり前という距離間が魅力的でした。そういう二人の関係があるからこそ、ラストで「決して失われることはないと思っていたものを失った」という物語が際立つのではないかと思います。アリがコンラッドを常に気にかけていたのもとってもよかったです。
 踊りについては浅川さんがきらりと光るものを見せてくれたのがとってもうれしかったです。ヒロインとして舞台の中心で輝いている。回転をもう少しがんばってと思うところもありましたが、あれだけ柔らかな動きをしてくれたことがうれしかった。遅沢さんはリフトもそこそこ堅調、踊りも安定感があってよかったですが、やっぱりコンラッドは振り付け自体がおもしろくないのかもしれません・・・。アリについては言うことありません。勢いよく伸び伸びと踊ってくれたので大変楽しかったです。橋本さんは踊り自体が楽しいのはもちろんなのですが、「この人は何かやってくれる」と期待できるのがまた楽しいです。
 シンデレラで見られなかった圭さん。この方は私好みの踊りをしてくださると白鳥の頃に思いましたが、やっぱりその通りでした。どこか堅実な感じのする踊りで、浅川さんとの雰囲気もぴったり。「お姉さん」のしっかりした感じも注意深いところも優しいところもあって、とっても素敵なグルナーラでした。残念だったのが、メイクがいまいちだったこと。素顔の方が美人と思ってしまうほどのさえない雰囲気で、本当にもったいなかった・・・。あと、体力がないのか奴隷市場のシーンで若干息切れを起こしていたように見えたのが気になりました。好きなタイプのグルナーラだったので、次回には期待したいです・・・!
 昼夜お疲れさまですの宮尾さん。私は彼がそんなに好きではないのに、彼のランケデムを今回はよく見るのでちょっと残念に思っていたのですが、いやはや、びっくりおもしろかったです・・・!そんな体力どこにあるんだと言いたくなるくらいめいっぱい踊ってくれて踊りの面でもマチネの不満が嘘のように楽しく見ることができました。彼は大柄だから、ちょっと飛んだりはねたりするだけでも迫力があります。演技の面では伊坂さんのように黒くはないけど悪党っぽさはあって彼がでてくると雰囲気が明るくなるけどそのふてぶてしさがいい意味で鼻に引っかかりました。とっても軽やかに、堂々と、伸び伸びと。舌なめずりする姿も鞭さばきも体になじんでいて、大変楽しいランケデムでした。これだったら何度でも見たいです!
 昼夜お疲れさまの伊坂ビルバントですが、なにがあったのかと思う程良くなってました。伊坂さんらしい黒さがでてるし、踊りもシャープになっています。これを見るとマチネは遠慮しすぎだったのかと思えました。「ビルバントはやりすぎと思うほどやってしまっていい」・・・そのことに開眼したのかと思える伸び伸びとした演技でした。洞窟のシーンで悪党っぽさが際立っていたし、女奴隷たちへの下心が分かりやすかったし、鉄砲の踊りはちょっとバレエの基礎からはみ出てたけどだからこそ鋭い勢いがあってよかったし、「俺さますごい!」という慢心もたっぷり見えたし、伊坂ビルバントと聞いて期待したとおりのものが見れて満足です。ところでちょっと気になったのですが、洞窟のシーンの終わりはビャンバさんだと「大丈夫か、ばれないよな?」という雰囲気なんですが、伊坂さんは「しめしめ、丸め込んだぞ」という感じなんです。どっちもありだと思うのですが、結構大きな違いにびっくりしました。
 パシャは今日もかわいかったです。

 K版の「海賊」で一番好きなのは最後のハーレム襲撃のシーンです。ここがあるから通いつめてるといっても過言ではない(笑)。このシーンについては哲也に「いいものを作ってくれてありがとう!」ではなく「同士よ!」と言いたくなるんです(笑)。こういうの素敵よね、分かるわーって。後ろの幕に写る海賊の存在に胸がざわめき、ランケデムの小さなソロがまた楽しい。海賊たちの登場の仕方がまたかっこいいし、ランケデムとアリのチャンバラにも迫力がある。1幕でもそうなのですが、決着が付くときのタイミングが本当にうまいと思います。アリがランケデムの足を切るのも、よく考えているなと。乱闘の中でランケデムに気付いたビルバントが彼の殺し、唾さえ吐きかけるあたりがいかにも悪役。素知らぬ顔をしてコンラッドの元に戻るとメドーラにすべてを見抜かれる。このあたりのやりとりも好きなんですが、実は下手でアリとグルナーラが仲良く言葉を交わしてるもの好きです。目が足りない。そしてビルバントはコンラッドを撃ち殺そうとし、アリが飛び出す・・・。私がずいぶん回数を見ているせいか、それとも再演を重ねてきたからか、初演と同じだけのことをやっているはずなのに、ずいぶん全体がすっきりした気がします。以前は音の中にみっちりはまりすぎてきつきつだったように思えたのですが、きれいに音の中に収まった気がします。ビルバントを殺せなかったコンラッド、恨みを晴らそうとしたビルバント、ただコンラッドを守ることを旨としていたアリ・・・。哲也の思いいれがぎゅっと詰まったシーンだと思います、何度見ても、大好きです。今日もとっても楽しかった・・・。遅沢コンラッドが結構長いこと倒れたアリに呼びかけていたこと、ビルバントに銃を向けられて多少ひるんだけれど彼へ向かう歩みを止めなかったこと、細かいことだけど、心に残りました。
 ところで、銃声がやはり聞きづらいです。後ろの方では聞こえないのではないかと懸念しております・・・・。昨日は完全に無音でしたが、今日は2回とも間抜けに小さな音が響いておりました・・・。コンラッドが引き金を引いたか、引かなかったかって結構大きな部分だと思うので、どちらかはっきりしてほしいです・・・。

 洞窟のシーンで後ろで踊ってる「そのほかの海賊たち」が12人もいることにちょっと感動しました。そりゃボリショイのスパルタクスはさらに1ダース以上の男性がいたかもしれませんが、日本のバレエ団でこれだけの男性が、しかも誰一人へたれることなく踊ってるのは感動ものでした。やっぱりこういう「個性的で力強い男性陣」を見たかったら今はKバレエがベストだと思います。酔っぱらい海賊ダンスも女奴隷たちを交えて8組という大所帯で、大変見応えがありました。日本でもここまでの男性ダンサーを見ることができるようになったのですね・・・。

Kバレエ
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(2012/05/28(Mon) 22:07:27)





  Kバレエカンパニー「海賊」(2012/05/26 マチネ)

メドーラ/松岡梨絵
コンラッド/宮尾俊太郎
アリ/西野隼人
グルナーラ/井上とも美
ランケデム/浅田良和
ビルバント/伊坂文月
パシャ/スチュアート・キャシディ

★★★★
オーチャードホール

 哲也のいない公演その1です。キャスト表を眺めていて気づいたのですが、この公演は本当にアンダーキャストという雰囲気です。ソワレのキャストは東京文化会館で2公演ある時のキャストと酷似していますが、この公演はこの公演限りという人が結構いたので楽しみでした。

 一番のお目当てだったのは浅田さんのランケデム♪大変残念なことに夏公演の主要キャストに名前はないし、ランケデムはこの日限りだし、ファンとしては見られる限り見るしかありません。やはり生まれ育ちの良さを感じさせてしまう人なので品が残ってしまうし笑い方も凶悪さ控えめという感じなのですが、やはり踊りは絶品だと思います。絶対吊ってるとしか思えないゆったりとした滞空時間、その中で見れる姿勢も本当にきれい。あと、彼のつま先は本当にきれいで、いつ見てもうっとりです。とっても楽しそうに演じていてくれてみているこちらも大満足でした。細かいところなんですが、死に方は横になったために息をしていることが分かりづらくって気に入りました。ちょっと陽気な感じで明るいところが長所でもあり欠点でもあるかな。鞭さばきも前回に比べてずっとよくなっていたので、個人的にもっと見たかったです・・・。
 キャシディさんのパシャという贅沢キャストを見られるのは、私は今回限りでした。外れるわけがない、びっくりするほど存在感抜群、サポートが鉄壁なパシャでした。ニコライさんに比べてコミカル度は低めでしたが、大金持ちだけどなんかやりたいことがうまくできてない、愛すべきおじさまでした。ちょっとした仕草に品があるのがさすがキャシディさんです♪他のパシャと違うと思ったのが、実はメドーラに本気で一目惚れしたんじゃないかと思えたところ。ハーレムで彼女が戻ってきたときの喜びが、なんだか他の人と違う気がしました。
 井上さんのグルナーラ、意外とよかったです。井上さんは今まで全く注目してませんでしたが、こんなに踊れる人がいたのかとちょっとびっくりしました(回転がちょっと弱いかな)。みんなのお姉さんという雰囲気がありつつもふわりと優しい踊り。初役とは思えない安定感でした。個性が薄い感じがしたので、今後そのあたりを期待します。
 メイン3人なんですが、昨日は3人それぞれ異なった迫力がありましたが、この公演は真ん中に大輪の花一つ、後は添え物と言った感じでした(苦笑)。悪くないんですが、昨日のような迫ってくる迫力はなし。宮尾さんのどこかぼんぼん然としたコンラッド、西野さんの端正なアリ、どちらも悪くないんですが、せっかくの冒険活劇なんだからもっとはじけてほしかったです。このあたりがおもしろいなと思った点なのですが、キャシディさんや哲也の方がバレエ本来の型を大きく崩してるから迫力があるんです。どの程度まで崩してもバレエ本来の型から逸脱しないと知っているかのように。そういう意味で宮尾さんや西野さんは小さくまとまっていて、きれいだけど迫力が足りなくて、「海賊」という作品には物足りなかったのが残念でした。
 西野さんは踊りが本当に端正でした。王子を踊るにはまだちょっと存在感が足りないとは思いますが、貴族を踊ったらとても映えるであろう雰囲気。男性的魅力のある哲也や橋本さんのアリと違って、どこか彫像のような美しさがありました。振り付け的にはアリを踊るだけの実力があったと思います。回転系は哲也のコマのような回転には劣りますが、それでも軽やかな勢いのある若手らしい跳躍は見ていて胸が躍ります。アリを演じるのがとてもうれしいんだろうという一つ一つしっかりした丁寧な踊りには好感が持てましたが、もっとはじけて心のままに演じてほしいなというところもありました。・・・書いていて分かりました、ちょっと堅かったんだと思います。役に対する思い入れ、ただの「海賊のアリ」でなく「熊川版海賊のアリ」に対する思い入れはひしひしと感じられたので冒頭とか終盤はすっごく良かったのですが、全体的な盛り上がりをもっと希望。でもいいダンサーには違いないので、次に期待したいです。
 宮尾さんはいっつもコメントに困る・・・。やっぱり彼は踊りの基礎がなってないのですよ。足がバラバラしてる、軸がとれてない。もうこの年になったら基礎がまともになることはないかなあと、ちょっと残念に思っています。彼についてコメントが困る理由はそういうだめなところだけでなく、それだけだめなのに舞台の中心にいることに不自然さがないこと。多くの部下たちを引き連れて舞台の真ん中で見得を切るシーンがぴたりとはまるんです。はったりかもしれませんが、このはったりは本当に彼が天から授けられた才覚だとさえ思います。誰にでもできることじゃない。そういういい面と悪い面の二つを同時に見せられてしまうので、彼についてはいつもコメントに困ります。
 松岡さんは安定の美しさでした。荒井さんにはまだちょっと及ばないとは思いますが、それでも哲也が気に入るのが分かる美しさ。踊りもずいぶん安定してきましたし、やっぱり彼女はずっとこのバレエ団で育ってきたので踊り方が振り付けにぴったり合っていて素敵です。以前はアームスの使い方が引っかかったんですが、今日はそれもなし。クールビューティーといわれている彼女ですが、今日はちゃんとかわいらしさもありました。
 初役の伊坂さんのランケデム。伊坂さんはキャラクターを演じると本当にはまることはランケデムでも証明されてるので、とっても期待していましたが、逆にビャンバさんのすごさを思い知ることになりました・・・。演技が淡泊、踊りに鋭さがない。ビャンバさんだったらここがもっと分かりやすかったのに、ここでこんな細かいおもしろいことをやってたのにといろいろ浮かんでしまいました。初演の頃はそこまで大きな役でなかったのに、ビャンバさんがしっかり演技も踊りもうまくないと栄えない役にしたのだなあと思ってしまいました(彼についてはソワレに続く)。

 そして、キャスト表にニコライさんとビャンバさんの名前を見つけてびっくり。何という働き者・・・。見るだけでもこんなに大変なのに(笑)。

Kバレエ
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(2012/05/28(Mon) 22:00:49)





  Kバレエカンパニー「海賊」(2012/05/25)

メドーラ/荒井祐子
コンラッド/スチュアート・キャシディ
アリ/熊川哲也
グルナーラ/白石あゆ美
ランケデム/伊坂文月
ビルバント/ビャンバ・バットボルト
パシャ/ニコライ・ヴィユウジャーニン

★★★★★
オーチャードホール

 しみじみ思ったのだけど、世界で一番「海賊」をおもしろく上演できるのはこのバレエ団だと思います。「美しい」とか「芸術的にレベルが高い」でなくて「おもしろい」。「海賊」はそもそもストーリーをみれば単純明快で子供っぽい。おもしろく上演しようと思っても制作者に「ストーリーには目をつぶって・・・」という思いが少しでもあれば、それは作品に反映される。ただそれはそれで華やかな世界を楽しむためのものと割り切れば「美しい」ものや「芸術的にレベルが高い」ものはできると思うんです。哲也は自分の演出したこの作品を、誰もが楽しめる物語だと思っていると信じています。分かりやすい冒険活劇だけどわくわくしてどきどきして、そしてアリの生きざまは世界で一番かっこいい・・・Kバレエの「海賊」は哲也のそんな思いが至るところで感じられます。だからKバレエの「海賊」は世界一楽しいのだと、しみじみ感じました。

 本当に楽しかったです!明日死んでも後悔しないくらい楽しいってこういうことを言うのかと一人納得してました。いや、明日は困るな、まだチケットが山盛りある(笑)。楽しいものを見たというより、アドレナリンが無限にわき出る感じ。久しぶりに現実を歩いてる感覚なく劇場を後にしました。いやはや楽しかった。
 おもしろかった原因の一つがお芝居の的確さ。今日はちょっとグルナーラが弱いところはあったのですが、コンラッドとメドーラの物語がいつになくきれいに目に入ってきてとっても楽しかった!単純な「ボーイミーツガール」に落ち着いたと思います。荒くれ男が普通の女の子に恋して、人生を変える。そんな単純な物語なんですが、二人の心境の変化を丁寧に描いてくれているし、海賊たちの荒っぽい世界とメドーラの生きる世界が違うことも描いてるし、なにより冒険活劇としてだけでもとっても楽しい!というわけですっかり物語の世界にのめり込んでいました。哲也のアリはちょっと後に回すとして、キャシディさんのコンラッドと荒井さんのメドーラはやっぱり鉄壁です。踊りについては安定感の格が違う。荒井さんと白石さんが同じ動きをするとはっきりしてしまうのですが、ちょっとした空間の使い方、足裁き、それが歴然と違う。キャシディさん、相変わらず踊りはさておき、サポートが絶品です。本当にそっと支えてるだけなのに荒井さんの美しさがきれいに引き立つ。その姿も羽のように軽やかに思える。明日以降はこうはいかないだろうなと、ちょっと思ってしまいました。本当にお手本みたいにきれいだった。
 そして踊りに安定感があるから、芝居がとっても細やか。海賊たちが諍いを起こす度、メドーラはおびえます。コンラッドのことを嫌ってはいないから逃れようとはしないけど、でも、何かある度、二人の間に距離ができるのがわかりました。ビルバントを最初は殺さなかったのも、海賊稼業を続けられなくなったのも、原因は彼女がいたから。メドーラの怯えとコンラッドの戸惑いが最後につながって、コンラッドは海賊稼業をやめたんだろうなと思えるのです。ああ、言葉にすると単純になってしまうんですが、そうやって人間が変わっていく心の動きがすごく丁寧に描かれていて、とてもわかりやすかったです。すごくありきたりの分かりやすい物語なんですが、荒井さんとキャシディさんが本当に血肉の通った人間として丁寧に演じてくれていたので、薄っぺらな物語にならなかった。この辺のバランスが、やはりベテラン二人、絶妙でした。出会ったとき徐々に恋に落ちていくところ、奴隷市場で覆面をしたコンラッドにその腕の暖かさで気付いたところ、洞窟での楽しそうなやり取り、そしてしっとりとしたパドドゥ。この二人の物語に芯が通ってるとやはりラストシーンが感動的ですし、アリがコンラッドをかばって撃たれるという物語の流れも必然性が出てきます。これでもう少し洞窟のシーンでメドーラがグルナーラのこと思い出してくれれば完璧だったと思うので、次回に期待します。とにかく、今までで一番ドラマティックなメドーラとコンラッドでした。

 そしてもう一人のベテラン熊川アリですが、大変楽しかったです。踊りについてはずいぶん振り付けを変えてきた気がします。ジャンプがさらに減って、回転や普通のステップに代わっていた。もっとずっと熊川アリって飛んでたイメージがあったのですが、今の哲也の体力に合わせて減らした感じです。その判断は正しいと思います。ジャンプの数としては「こんなもんかな」だったのですが、踊り自体としてはすっごく楽しかった!無理をしない分、彼の持つ「熊川哲也はやっぱり特別!」というオーラがすごくいかされていたと思います。パドトロワも良かったのですが、奴隷市場でのランケデムとの丁々発止が本当に楽しかった!普段はなかなか見ることのなくなった挑発的な少年ぽい哲也の動きが、挑発的なアリの踊りとリンクしてなにが起こってるか理解不能の楽しさでした。ここは哲也の怪我をしたいわくつきのシーンですが、この部分でアクセント的にアリとランケデムの踊りが入るのは大変面白いと思うのです。

 今回初役となる白石さんは破綻はなかったものの、あまりインパクトは感じませんでした。いままで、Kバレエの「海賊」はグルナーラはドラマティックだけどメドーラは空っぽという感じだったのに、今回はメドーラとコンラッドの物語がしっかりしているとは感じましたがグルナーラはあまり印象に残りませんでした。線が細いせいで「姉」らしさを感じなかったからかもしれません。ちょっと薄幸そうな面差しの方なので、うまく役にはまると面白そうだと思うのですが・・・。
 同じく初役のニコライさん。昨日に引き続きですが、こちらはとっても楽しかった!ルーク・ヘイドンのように「この人のハーレムに入りたい!」という感じではありませんでしたが、なんとなくコミカルな雰囲気が憎めなくてかわいいのです。ハーレムの夢の中で白い幻影の娘さんたちの中で一緒に楽しそうにしているところがとっても面白かったです。なんでしょう、このキュートなおじさまは!
 DVDでおなじみの伊坂ランケデムとビャンバビルバントは絶好調でした!伊坂ランケデムの小賢しい感じの悪人顔が決まっていて相変わらず本当に楽しかったです。回転も以前より軸がきれいになって安心して見ていられました。ビャンバさんのビルバントはもう何も言うことのない安定感です。踊り手というよりストーリーテラーという感じの部分がありますが、悪役としてしっかり物語を回してくれました。相変わらず足もきれい♪毎回観察してるので今回も追記すると、最後のハーレム襲撃のときビルバントはアリに足を切られ、ランケデムに首をかっ切られておりました。
 男性ダンサーはそのほかの皆様も本当に良かったです。海外の大きなバレエ団には負けますが、それでもこれだけ踊れる個性豊かな男性がいるのは目の保養に大変うれしいです。これで、主役を踊れる遅沢橋本宮尾はお休みというのですから、ずいぶん男性ダンサーが充実してきたものです。女性ダンサーは、もう一息頑張ってください・・・やっぱりちょっと物足りない・・・。でも、パドトロワの第3バリエーションがトリプルを回ってくれたのはうれしかったです。

 とっても楽しかったのですが、ラストに台無し一つ。コンラッドのうった銃声がしなかった!演出の変更でなく、スタッフのミスと思います・・・うう、残念・・・。

 最後に、今日の時点で振り付けが変わったと思ったのは以下のシーンです。
 ・洞窟でのアリと海賊たちの踊り(アリの踊りが減った)
 ・海賊の酔っ払いダンス(相手がギリシアの少女たちから女奴隷になった)
 ・コンラッドとメドーラのパドドゥ

 Kバレエの「海賊」はやはり特別。そう思えた観劇でした。楽しかった!

Kバレエ
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(2012/05/26(Sat) 02:33:39)





  Kバレエ夏公演

今年の夏公演は『真夏の夜の夢』『ラプソディ』『ウォルフガング』とのことです。
キャストはこちら

Kバレエ
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(2012/05/23(Wed) 02:05:18)





  部分日食観察突発

 始まりは20日の夕食。日食楽しみとは前々から言っていたのですが、21日の東京の天気は曇り。日食なので雲の切れ間から楽しめそうだなと思いつつ、ゆっくり観察したいから晴れてる所に行きたいわ〜などと話していたら、父親から「せっかくだから行った方がいい、金環とか部分とか関係ない」と猛烈にプッシュを受けました。調べてみると、確実に晴れ&交通の便がいいところで一番金環日食帯に近かったのが仙台。とりあえず着替えと日食観測用メガネをかばんに突っ込み、9時前の新幹線に飛び乗り、11時ごろには出発直前に予約した仙台ホテルにいました(月曜日は元から午前半休取得済み)。あー、なんかもういろいろ恐ろしい・・・。
 さて、ここまでして曇ってたらどうしようかと思いましたが、最近の天気予報は優秀ですね。無事に雲ひとつないいい天気でした。特に観測する場所も考えてなかったのですが、ホテルの周りをぶらぶら歩いていたらちょうど開けていて人通りも少ないところがあったのでそこで7時前から8時過ぎくらいまでみっちり観測してました。観測と言ってもメガネ以外は持っていなかったので写真を撮るでもなく、普段は太陽に背中を向けて、たまに振り返って太陽が削れていくのを見るくらいでした。それがすっごく楽しくて、見続けてしまいました。太陽に背中を向けていても太陽の熱があるのは分かるのですが、それが徐々に弱くなっていくのが分かるのが面白かったです。それでも回りは明るいのが本当に不思議でした。食の最大の時、若干周りが夕暮れとも違う不思議な薄暗さになりましたが、あんなに隠れててもこれだけ明るいということがとても不思議でした。「日食です」と言ってくれなかったら気付かなかったと思います。仙台は金環日食ではなく部分日食だったのですが、部分とはいえ線のように細くなった「C」の字型の太陽の光がとてもきれいでした。右上から欠けて行って、右上の欠けた「C」の字がくるっと時計回りに180度回転し、左下の欠けた「C」の字になるのを見ているのはとても刺激的でした。学術的に「金環日食」でないことは否定しませんが、私にとっては十分刺楽しいイベントでした。
 写真は撮れなかったのですが、一つだけ。日食メガネに反射した日光が日食の形でした。

20120521.JPG

 部分日食を観測してて思ったのですが、ちょっと今回の金環日食、観測できない場所をおざなりにし過ぎかなと・・・。確かに「部分日食」は数年に一度ありますが、今回私が仙台で見た日食って、2030年の北海道での金環日食のときの東京の食の大きさより大きいんですよ。私が居住地近郊で今日以上の日食を見ようとしたら2035年まで待つしかないんです。そういう意味で今日、金環日食帯からは外れていたけど晴れていた地域の方々は見ても損はなかったと思うし、それはそれで数十年に1度規模のイベントだったと思うのですが、そういう盛り上がりがなくて残念です。部分日食も「5割未満」「5割以上8割未満」「8割以上」とか分けてくれればいいのに・・・。
 ちなみに、国立天文台暦計算室のシミュレーションで日食のシミュレーションが見れます(ツイッターで教えてもらいました、ありがとうございます!)。「アニメーション」「太陽を固定」にすると実際に見ている時に近い状態になります。

日記
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(2012/05/22(Tue) 01:01:17)





  ベルリンのクロロックは3人目のThomasに

5月12日にベルリンの3人目のクロロックThomasの初日を迎えました。
その日はイベントということで、昼の部はKevinの最終公演、夜がThomasの初日、そしてその間には二人のクロロックに会えるイベントがあったとのことで・・・なんで私は日本にいるのか・・・。

以下、その様子です。

Kevinの最終公演のカーテンコール

Thomasの初日

ファンイベントの様子 

Thomasの公演は現時点で8月末までとのことです。
休演日についてはこちらのサイトでチェックできます(確定ではありませんが)。


Thomas Borchert
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(2012/05/14(Mon) 02:23:18)




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