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モーツァルト!ブダペスト版感想・その2
ヴォルフガングがパリに行ってから戻ってくるまでの、場面ごとの感想です。場面解説+その時感じたこと、記憶があいまいなものも含めて全部書いてます。その点をご了承ください。
キャストについては
こちら
を。
セットについては
こちら
を。
曲名だけ通常の文字の色にして、詳細は白文字になってますので、反転して読んでください。
ハンガリー語のタイトル(というかシーン解説?)と同じシーンと思われる東宝版のタイトル、およびウィーン版のタイトルを書いておきます。参考までに。
ZOLDSEGPIAC SALZBURGBAN
(Ah, das Fraeulein Mozart!:まァ、モーツァルトの娘さん)
ヴォルフガングが母親を呼びながら下手に駆けて行くと、上手の天井に引っ掛けてある細長い布をアンサンブルさんが引っ張ってきて、そこは市場に。舞台の上から斜めに広がる布が露天の屋根のように見えるんです(こういうところの場面転換が本当にうまいと思う)。そしてまたよく踊るアンサンブルさんたち。いや、だからもう少し歌に集中して・・・。リズムのいいステップは好きなんだけどね、うん。
ウィーン版に比べてのりがいい感じがするせいか、どこか牧歌的な感じがする。・・・その雰囲気から微妙にういているように見えたマチネのナンネル・・・。きれい過ぎるというか、上品過ぎるというか・・・・。
途中でなかなかかっこいい外套を着たアルコが出てきます。それはいいけど、この曲知らない、なに!?他の曲に比べて、さらにロックでした。何かの曲のアレンジのような気もしたのですが、全く分かりませんでした。ちなみに、そのあと耳慣れたアルコの曲もちゃんと入ってました。さっきのあれは何?
A WEBER CSALAD LAKOKONYHAJA MANNHEIMBEN
(Eine ehrliche Familie:マトモな家族)
舞台中央の円柱の部屋が持ち上がってきて、ウェバーさんの家に。真ん中に大きなベッドがあり、上手に椅子、下手に洗面台だったかな?ベッドの上に枕が6つあったんですが・・・え、みんな一緒に寝るの?ちなみに枕も布団も「清潔感」などというものとは当然縁もゆかりもなさそうな代物でした(笑)。ベッドの上にいるのはセシリアとアロイジアを除く姉妹たち。下着姿でいいのかな?コルセット、それからぺろんと薄いスカート姿です。ああ、胸の谷間がまぶしい・・・・。娘の話を聞こうと目を輝かせて身を乗り出すセシリア、アロイジアは上手の椅子に座って話しながら服を脱いでます。彼女だけ、コルセットだけの姿に。太もも丸出しのまま話を進めますか、そうですか。メイクばっちりヘアスタイルばっちり、でも下着姿というのは・・・なんだか妙な感じ。そのあと4人姉妹がベッドの上でじゃれていて、クッションのひとつが破けて中の綿が空中に四散してました。なんとも「姉妹」という賑々しい感じがして、なんでもないシーンですが好きです。そのあと5人一列になって踊るんですが・・・微妙に色気があるんだか間抜けなんだか分からない不思議なものでした(笑)。
そのあと父親がやってくるのですが、娘4人下着姿なのに、全くうろたえない娘たち&父親。なんなんだこの家族は・・・。
妙な生活観(ありえないけど彼らには「常識」という生活観というか・・・)があり、不思議な素朴さがあり、おかしくて好きなシーンです。ヴォルフガングが出てこないまま、いったんこのシーンは終わります。
ZENETEREM A SALZBURGI TANCMESTERHAZBAN(Vasba zard a szived)
(Schliess dein Herz in Eisen ein:心を鉄に閉じ込めて)
そうか、ここでこの曲が来るか・・・。セットは街のシルエットです。このあとは「レオポルトの心配」「ヴォルフガングのありえないほど見事な放蕩」が交互に出てきます。レオポルトの心配が的外れどころか本当に正しかったのだと頷かされる演出でした。というか、あまりにヴォルフガングが放蕩過ぎて、心底心配するレオポルトが本当にかわいそう・・・。
途中でナンネルが家に帰ってきます。何か不安そうな顔をして手紙を父親に渡すナンネル。弟から手紙が届いたのに全嬉しそうにえなかったのが寂しかった。レオポルトとナンネルの間の空気も、なんだか冷たかった。きっとレオポルトはこの手紙(間違いなく能天気)に長い返事を書くのだろう。本当に、心配事しかなかったんだろうな・・・・。
A WEBER CSALAD LAKOKONYHAJA MANNHEIMBEN
(Eine ehrliche Familie:マトモな家族)
息子のことを本当に案じるレオポルトのすぐ後で相変わらず頭使ってないばか息子登場。この二つのシーンのギャップが本当にすごい。
部屋の奥から親とヴォルフがしゃべっているところを観察している4姉妹。獲物に狙いを定めた・・・といったところでしょうか(このときはもちろん服は普通です)。しばらくして「娘達を紹介しよう」と言われたのかな。いきなり服のほこりをはたいて鼻毛抜いた(ように見えた)マチネヴォルフ、今着ている服をちょっとでも気取ったものに見えるようにと工夫してたソワレヴォルフ。ああ、わかりやすい・・・。コンスタンツェを紹介されたヴォルフガング。一目で気に入ったのかその名前をつぶやき彼女を見詰めてうっとり。でも両親お勧めはアロイズィアですからそちらに必死で気持ちを向けようとする二人。アロイズィアが歌うことになって、椅子に悠然と座ってたヴォルフガング。何か言われて、彼女に楽譜を渡します。アロイズィアはそれを見てしばらく音取りしていたんですが、ふと気がついて楽譜の上下を逆に。・・・おーい・・・・。そして歌い始めるアロイズィア。なんだか色気を振りまいているというか、自分をアピールするように動いて歌うのがいかにも彼女らしい。ヴォルフガングは我を見失って彼女を称えてました。彼がアロイズィアと二人っきりになりそうだったとき、口を挟んだコンスタンツェの口に楽譜を突っ込んだアロイズィア。うーん、さすが百戦錬磨!ヴォルフはすっかり彼女に夢中で、お金を渡すときも本当にアロイズィアしか見えてない!という感じでした。上手の階段をアロイズィア先導で上って、円柱状の部屋の天井に向かうふたり。登っていく途中で上着を脱いで上半身裸になるヴォルフガング。
ちょっと待て。
コンスタンツェのことは見事お空の彼方に吹き飛んでました。その後、ヴォルフは天井部分に仰向けに寝転んじゃって、セットの構造上その姿は見えなくなりました。見えているのは彼の上にまたがってるアロイズリアの上半身のみ。その後は・・・まあ・・・以下略・・・。明るい曲にあわせてなんちゅーことやってくれるね、ブダペスト。しかも色気をほとんど感じさせないと言うところが、なんかすごい。コケティッシュって言うのかなあ。アロイズィアが天使の姿をした小悪魔みたいで、本当にかわいい。ちなみにヴォルフガングは「情けない」。途中「ぶらぼー」という声が聞こえるんだけど、本当に涙が出るほど情けない。ああ、誰だよこんなばか育てちゃったのは。
余談ですが、このシーンがめちゃくちゃ音楽にぴったり合ってて印象深くって、忘れられないんですが・・・。日本版のCDを久しぶりに聞いていたら頭の中で駆け巡るアロイズィアの(以下略)の姿。なんか、この曲を聴くたびに思い出しそうな気がする・・・。
SALZBURGI DOM
(パリ旅行)
祈祷台に膝をつき、祈りを捧げるレオポルト。
ごめんなさい
。
・・・・・なんだか謝んなきゃいけないような気がするんです、祈ってる彼を見ると。だってあまりにもレオポルトが真剣に心配してるのに、ヴォルフガング本当にばかなことしかしてないし!って言うか、本当にありえないくらいばかだし!
PARIZSI TER
(Der Mensch wird erst Mensch durch den aufrechten Gang:フランス革命チェイサー)
レオポルトの曲の途中で街のシルエット背景が取り払われて、舞台はパリに。実際の革命の前にも、そりゃ色々あっただろうなと、いまさらこれを見て納得。「武器を取って蜂起」という感じではなく「革命の火種」という感じでした。レミゼの学生たちにどことなく似てるような気がしました(時代が違うのは分かってます)。それを橋の上からめちゃくちゃ楽しそうに見ているヴォルフガング。嬉しそうにその輪に加わろうとしているのを、マリアが必死で止めています。具合が悪いのか何度も咳き込んでいました。ヴォルフガングは、もちろんいうまでもなく、母の体のことなんか全く、気付いてません。だめだこりゃ・・・。
SALZBURGI DOM
(パリ旅行)
場面は再びレオポルトに戻ります。どんなに心配してもその心配が的中するばかりで思いは息子には
一欠けらも
届かない。レオポルトの思いが深いことが分かるから、すごく辛かった。ヴォルフガングは、まあ「彼ならやるだろう」と思うようなことしかしてないわけだし・・・。
SZEGENYES KONCERTTERME PARIZS KULVAROSABAN
(ピアノ・ソナタハ短調)
ピアノを弾いているヴォルフガング、確か後ろでアマデが同じようにピアノを弾いていたと思います。オーディションというのかな、雇い主にピアノを聞いてもらってるという感じがしました。でもそう考えると母上が聞いていて、演奏が終わると彼女が立ち上がって拍手したというのがおかしいな、あれ?どこで何を覚え間違えたかな?
EGY SOTET SZOBA PARIZSBAN
(母の死)
何もうまくいかないことに苛立つヴォルフガング。そんな彼を慰めるようなマリアの具合はさらに悪くなっているように見えました。でも、彼は全く気付いていない。ただ自分の身に襲い掛かっている理不尽な運命を呪っている。マリアの咳どころか、彼女の慰めすら彼には届いてないように見えました。
ベッドに寝かせながら「いつかうまく行く」と言うヴォルフガング。それは母親を安心させようとして言ったんじゃなくって、しゃべってるうちに本当に「何とかなるか」と思えてきたからそう言ったように見えました。まあ、基本的に物事深く考えてないみたいだから、楽天的にもなるでしょう。でも、明るい未来を想像する彼の声を聞きながらマリアは息絶える。そのときようやくヴォルフガングは母親の身に何が起こっていたか気付きます。あわてて医者を呼ぶときの取り乱し方が本当に痛々しい。本当に右も左も分からなくなったみたいにうろたえてる。「もっと早く気付けば助けられたのに」なんて突っ込みを許さないくらい。まさに天国から地獄に落ちたその表情がすごい。やってきた医者が彼の肩に触れたとき、もう何も見えない聞こえないという状態で無意識にその手を振り払ったマチネヴォルフ、なんでもないことのはずなのに酷くおびえてその手の主を見たソワレヴォルフ。まさに自業自得なのに、どこか常軌を逸してるその姿が哀れだった。医者は母上の死を確認するとそのほかの人たちと共に彼女を連れて行ってしまう。ろうそくの火の間を進んでいく姿が、不思議な美しさを持っていた。その様子を魂が抜けたような感じで眺めていたヴォルフガング。思ってることがすぐ行動に出てしまう人間だってもう分かってるから、それが本当に痛々しい。
PARIZSI UTCA
(Wie wird man seinen Schatten los?:影を逃れて)
で、何でここでこの曲が来るのか!?「Was fuer ein grausames Leben:残酷な人生」は完全に削除されています。うう、聞きたかったのに!
呆けた目で歌うヴォルフガング。そのときアマデは、黙々と作曲していた。何が起こったのか何も「知らない」という状態で曲を書いていた。曲が書きあがったのか、「自分の影から逃れられるのか♪」あたりで彼は楽譜をヴォルフガングに差し出す。ヴォルフガングは苛立つままにそれを丸めて捨てる。それだけでは気が済まずアマデの赤い上着を脱がすとそれを手に橋の上まで駆け上がる。そんなヴォルフガングをアマデは橋のてっぺんから突き飛ばす。感情を持っているように見えないアマデのことが「恐い」と感じた初めての瞬間でした。何も感情がないことが、恐ろしい。降りた先にいるのは暗い色の布をかぶった人たち。その中にヴォルフガングは捕らわれているように見えました。
すごく象徴的で面白かったシーンなのに忘れてるなー。マチネヴォルフは明るい歌がいいなーと思っていたのですが、何かに追い詰められているような曲がさらに素晴らしいとここに来て認識を改めました。追い詰められ、取り乱し、苛立ち、その中であがいているのが分かった。好き、嫌いの感情が全て考えるより先に出てしまうからこそ、焦燥したその姿が痛々しかった。そして、走りながらも声量が落ちることのない役者さんにも拍手。最後のオクターブ上げも見事。いや〜、これが聞きたかったの♪
ソワレは微妙にシャウトがいまいち・・・焦燥感はあるんだけど、声がいまいち。オクターブ上げは悲鳴のようで、こちらはこちらですごかった。
このシーンのアマデとヴォルフガングのやり取り、すごく気に入ってます。ヴォルフガングが何をやっててもアマデはただ曲を書き続けるのだと、すごく印象付けられました。考えすぎかもしれませんが、アマデに当たるヴォルフガングが「どんなに悲しんでいても曲が思い浮かんでしてしまう自分を嫌悪している」ように見えました。
[103] ゆず (2005/04/03(Sun) 05:07:10)
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