American Idiot(2013/08/07)
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自分の中でとても興味深い舞台だったので、備忘録まで。 幕が開いた瞬間から分かるんですが、普段私が見てるミュージカルと文法が違う(笑)。予習はこちらのサイトでしたのですが、「ジュークボックスミュージカル」に近いという一言が一番観劇の助けになりました。と言っても、私が見て来たどのジュークボックスミュージカルよりストーリーがありません。一応あらすじもあるのですが、なにせストーリーが進む歌がないのにほぼ全編歌という構成。ロックコンサートに物語の流れをつけたという方が正しいかもしれません。時代は現代でフラッシュ照明や映像を多用した演出、どこか無機質なセット、小人数構成のバンドと電子音、ダンサーとシンガーの垣根のない構成。ストーリーのふたを開けてみるとドラッグだセックスだ、アメリカになじみのない人間が「いかにもアメリカ」と思ってしまう代物。普段見ているものと全く違って、でもとても楽しかった!
「ミュージカルになにを求めているか」という疑問がずっと胸のうちにくすぶっていたのですが、とても意外な形で答えが得られた気がします。私はまず最初に、舞台にいる全員からプロフェッショナルとしてのエネルギーをもらいたいんだと思います。もちろんストーリーやテーマが好みであることも大切ですが、まず、プロの技量に圧倒されたいというのが一番だとわかりました。BWミュージカルファンに言わせたら今回の舞台のレベルが本土と比べてどうかはわかりませんが、個人的には全員(ここ重要)ちゃんと歌を聞かせてくれたので十分!登場人物たちは私とは全く違う世界の人間です。私には彼らの持っている不満も情熱もありません。行きどころがなくて持て余してるエネルギーも。求めているものも不満も全く違う。でもそんな彼らを突き放して見ることができなかったのは「音楽」があったからでした。さすがに人気バンドの曲ということでどれもいい曲で、初めて聞くのに耳にすっと入ってくる。ストーリーから物語の世界に入れなくても、音楽から物語の世界に入ることができる、そんなことを感じていました。ストーリーはお芝居だったら最初の5分で投げ出しそうなのに、1曲1曲が曲もダンスも演出も面白くて、次は誰がどんな歌を歌ってどんな演出なんだろうという部分で楽しみが続いていく。そして、曲が変わると雰囲気ががらりと変わって飽きさせない。ああ、これだからミュージカルって面白い!
でもこれ、本音を言ってしまうと、アメリカ本土で見たいです。全編がロックミュージックなんで、ノリの悪い私ですらじっと客席に座って見ているのが苦痛なほどリズミカルな音楽でした。カーテンコールも出演者全員がギター持って歌っているのだから、もっと客席と舞台の距離感が縮まってきたらもっと楽しいと思います。初日ということでまだキャストも観客も相手の出方を探っているという感じがしました。アメリカだったら観客がもっと素直に反応して楽しいんだろうなとか、どこが笑どころか微妙に分からなくってそれがもったいとか思ってしまいました。キャストと観客のノリが一致したらもっと楽しいというタイプの舞台だと思います。
そんなわけで、異文化交流並の畑違いの舞台だったのですが、とても楽しかったです。「アメリカンイディオット」と「21Guns」(これ、びっくりするほど好みの曲だった)はもう一回聞きたいです。あと、セント・ジミー登場シーン全般・・・そりゃまあトニー・ヴィンセント(彼がやってたらしいです、見たすぎるわ・・・)にはかなわないでしょうが、ツアー版の方もなかなかトリッキーで魅力的でした。雑然とした世界にあってもさらに浮かび上がる特異性って、すごいです。さえない若者3人のさえない人生がだらだら続くだけのストーリーだったので、とてもいい刺激でした。なんか強烈なインパクトが残っています。 ちなみに、もちろん全編アメリカ英語だったので、聞き取りはしょっぱなかなら放棄しました(イギリス英語やオーストラリア英語はなんとかなるけど、アメリカ英語はほんとダメ・・・)。ただ、字幕を読んでいてもパフォーマンスを見逃すことがないスピードだったので、もちろん字幕しか読んでいないので細かい意味は落しているでしょうが、十分歌詞の意味を追いながら舞台を楽しむことができました。
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(2013/08/08(Thu) 00:23:16)
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ジャック・ザ・リッパー(2012/10/01,2012/10/03 ソワレ)
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ダニエル:ソン・スヒョン / オム・ギジュン ジャック:キム・ボムレ / シン・ソンウ アンダーソン:ヨン・ミンギ / ユ・ジュンサン モンロー:イ・ジョンヨル ポリー:ソ・ジヨン グロリア:J-Min / ソニャ
金がない時間がないと言っていたはずなのに、なぜか2回も行ってしまいました・・・。大変楽しかったです。公演期間がちょっとだけ残ってますので簡単な感想を言ってしまうと、ジキル&ハイドが好きな方ははまる可能性が高いですので是非。J&Hに似ているというのはいたるところで言われていますが、私は今まで見たどのJ&Hよりもウィーン版(というかブレーメン演出)を思い出しました。裏路地の醜さ、殺人鬼の恐ろしさ。そういう暗い面を感じられたのが大変うれしかったです。音楽や脚本は傑作というほどではありませんが、十分楽しいです。殺人鬼と、それを追う新聞記者、そして二組のカップル・・・もう終わった二人とこれから始まる二人・・・の物語。いい作品でした。
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(2012/10/04(Thu) 22:49:12)
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チェス イン コンサート(2012/01/29)
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青山劇場 ★★★★☆ フローレンス:安蘭けい アナトリー:石井一孝 アービター:浦井健治 フレディ:中川晃教
繁忙期スタートにつき、唯一行ける日程だった公演に行ってきました。全体的にとても面白くて、このレベルの作品がコンスタントに見られたら国内ミュージカルの観劇数減らなかったろうなあとしみじみ思ってしまいました。ちなみに、舞台自体は良かったですが、カーテンコールの千秋楽あいさつは苦手でした・・・。やっぱり板の上で役者さんが衣装を着たまま素に帰るのは苦手です。普通のカーテンコールは素と役の間にいる感じがして、それが好きなのに。ものすごく感動してたんですが、役者さんがこの作品を上演するにあたってどれだけ苦労したとか語られてすっかり冷めてしまった・・・。この習慣なくなってほしいなあ・・・。いや、私が千秋楽に行かなければいいのかもしれませんが、これだけ上演期間短いと選択権ないの・・・。 というわけで最後の最後で感動が吹っ飛びましたが、舞台自体は良かったです。あくまでコンサート、お芝居じゃないのでストーリーは分かりづらかったのですが、場面場面はしっかり演じてくださって満足です。本公演があった上でコンサートをやってるんじゃないかと思うくらい役者さんたちは役が肌にしみ込んでいるみたい。私は今回が「チェス」という作品完全初見だったので物語について行きづらいところはありましたが、「コンサート」と銘打ってるので十分です。なんとなく本当は作品を上演したかったけど客入りが難しそうだからコンサートにしたのかなと。東西冷戦時代でソ連で亡命で、ストーリーを前面に押し出したら観客が逃げていく雰囲気がありますから・・・。でも個人的にはチェスという一つのゲームがある種の代替戦争となり、個人の思惑とは別に政治が動き、人の心が亡命という選択を取らせる・・・という部分はとても好みだったのでこのキャストで作品版を見たいと思いました。キャストの皆様は本当に素敵でした〜。フレディはエキセントリックな雰囲気がまさに天才と思わせてくれました。素行は悪いけど、絶対に人には真似できない能力を持ってるのが感じられる。アナトリーはいかにもチェスチャンピオンというインテリの雰囲気。物語の中で最も変化する立場なので、もっと心の揺れ動きを見たかったという意味で一番作品版を見たい人かも。アービターの浦井さんは久しぶりに見たのですが、確かにいい役者さんですね。狂言回しのような立場、癖があるのに丹精。この実力者、アルフレートとかにしちゃ勿体ないでしょ、役者の無駄遣い。トートを希望する声の大きさに納得でした。こういう実力のある王子様じゃない若手の活用方法って日本にはないものか・・・(ドイツだったらジキハイとかジーザスとかファントムとかトートとかルケーニクラスだな・・・)。フローレンスの安蘭さんはあまりいい印象がなかったのですが、なかなかかっこよくてほれました!知的な美女だけど、この人ももっとお芝居の部分が見たかった・・・! そして皆様個々の褒め言葉に「歌がうまい」と付け加える必要がないほどうまかった〜。日本でもこのレベルの作品ができるんじゃないですかー!比較的歌詞も聞き取りやすく、なんでこのレベルの作品が量産できないのか帰って首をかしげるほどでした(苦笑)。ダンサーの踊りもクラシックを基調にしつつもクラシックバレエとは一味違って魅力的。道化のような軽やかさで、面白かった。曲は聞いたことがないかと思いきや、やはり何曲かはどこかで聞いた曲。かなり癖のある音程ですが、すんなりいい曲だと思える力のある曲でした。でも、玄人向けというのもちょっと分かるかも。迫力はあるけど、「奇麗」とはちょっと違う、でもとても魅力的でした。演出もシックで好きでした。セットも衣装も白、黒、そして灰色に統一されていてとてもセンスがいい。オケも「バンド」でなくちゃんとミュージカルとしての人数がいて、久しぶりに音楽も満足!もう1週やっていたらもう1枚チケット足してもいいと思えました。たった4日で終わってしまうなんて、もったいない!ぜひぜひ、この成功を糧に作品版の上演につなげてほしいです。 それにしても、梅芸主催の公演は最近面白いものが多いですね。役者のレベルは上がってるので、こういう刺激的な作品を生み出す団体にはぜひぜひ頑張っていただきたいです。
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(2012/01/29(Sun) 23:07:25)
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